2025年04月
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納税者一部勝訴の東京地裁平成30年4月12日
納税者一部勝訴の東京地裁平成30年4月12日
租税判例百選7版 213頁解説 渕圭吾『租税法講義』有斐閣・2024年・101頁
所得税更正及び加算税賦課決定一部取消等請求事件
東京地方裁判所判決/平成28年(行ウ)第164号
平成30年4月12日
【判示事項】 不動産貸付業者である原告が,平成22年から24年分までの所得税の確定申告及び修正申告に対する過少申告加算税の賦課決定を受けたのに対し,同処分を違法として取消しを求めた事案。裁判所は,不動産取得の必要経費について,22年・23年の修繕費及びリフォーム代金の一定部分の必要経費算入を認め,一定の敷金の不算入を相当とするなどし,総所得金額,納付すべき所得税額,過少申告加算税賦課決定処分のうち,一定額を超える部分を取り消した事例
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 税経通信74巻9号201頁
税務事例51巻5号83頁
法律のひろば73巻5号69頁
主 文
1 三島税務署長が平成26年3月14日付けで原告に対してした原告の平成22年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額3509万1112円及び納付すべき所得税の額837万7300円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分のうち66万9500円を超える部分をいずれも取り消す。
2 三島税務署長が平成26年3月14日付けで原告に対してした原告の平成23年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額2897万8658円及び納付すべき所得税の額526万7700円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分のうち53万8000円を超える部分(ただし,いずれも平成27年11月4日付け裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用はこれを6分し,その5を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 三島税務署長が平成26年3月11日付けで原告に対してした原告の平成22年分から平成24年分までの各年分の所得税に係る過少申告加算税各賦課決定処分をいずれも取り消す。
2(1) 三島税務署長が平成26年3月14日付けで原告に対してした原告の平成22年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額2287万4991円及び納付すべき税額518万6900円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分のうち3万2000円を超える部分をいずれも取り消す。
(2) 三島税務署長が平成26年3月14日付けで原告に対してした原告の平成23年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1747万4324円及び納付すべき税額318万1600円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成27年11月4日付け裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
(3) 三島税務署長が平成26年3月14日付けで原告に対してした原告の平成24年分の所得税の更正処分のうち総所得金額2179万4839円及び納付すべき税額464万8300円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成27年11月4日付け裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
不動産貸付業を営む原告は,平成22年分から平成24年分までの各年分(以下「本件各係争年分」という。)の所得税について,各確定申告(以下「本件各確定申告」という。)及び各修正申告(以下「本件各修正申告」という。)をしたところ,三島税務署長から,(ア)本件各修正申告に基づく過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分1」という。)を受けるとともに,(イ)本件各係争年分に係る原告の不動産所得につき,①必要経費に算入することができない修繕費や修繕積立金等を必要経費に算入したこと,②不動産の減価償却費を過大に必要経費に算入したこと,③総収入金額に算入すべき敷金を算入していないことなどから,本件各修正申告後の申告額が過少であることを理由に,各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及びこれらの更正処分に基づく過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分2」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」ということがある。)を受けた。
本件は,原告が,(ア)本件各更正処分は,その根拠とされている上記①~③がいずれも誤りであるから違法である(したがって,これらの更正処分に基づく本件各賦課決定処分2も違法である。),(イ)本件各賦課決定処分1及び本件各更正処分等は,理由附記の不備があるから違法である,(ウ)本件各修正申告に係る修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」(国税通則法65条5項)に行われたものであって,本件各修正申告には同条1項の規定は適用されないから,これに反してされた本件各賦課決定処分1は違法である,(エ)本件各更正処分に基づく税額計算の基礎となった事実につき更正前の税額計算の基礎とされなかったことについて「正当な理由」(同条4項)があるから,同項を適用せずにされた本件各賦課決定処分2は違法であると主張して,本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分1及び2(ただし,平成23年分及び平成24年分については平成27年11月4日付け裁決により一部取り消された後のものに限り,かつ,課税の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いのない部分を除く。)の取消しを求める事案である。
1 関係法令等の定め
関係法令等の定めは別紙2-1~11に記載したとおりである(別紙2-1の国税通則法〔平成28年法律第15号による改正前のもの〕については以下「通則法」といい,別紙2-2の所得税法〔平成27年法律第9号による改正前のもの〕については以下「所得税法」といい,別紙2-5の減価償却資産の耐用年数等に関する省令については「耐用年数省令」という。また,別紙2-6の調査関係通達とは国税通則法第7章の2〔国税の調査〕関係通達〔平成24年9月12日付け課総5-9ほか国税庁長官通達〕を,別紙2-9の措置法関係通達とは租税特別措置法〔山林所得・譲渡所得関係〕の取扱いについて〔昭和46年8月26日直資4-5(例規)ほか国税庁長官通達〕を,別紙2-10の耐用年数通達とは耐用年数の適用等に関する取扱通達〔昭和45年5月25日付け直法4-25(例規)ほか国税庁長官通達〕を,それぞれいう。以下同じ。)。
2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 原告等
ア 原告は,別表B2(別表は別紙の後ろにつづっている。)記載のとおり東京都内又は千葉県内に不動産(いずれも土地及びその土地上の建物であり,建物は区分所有の対象となるものを含む。以下,これらを総称して「本件各物件」という。また,各物件の略称は別表B2「名称」欄の括弧書きの記載に従い,「本件入船西物件」などという。なお,同別表の順号7の物件は,後記ウのとおり3段階にわたって区分所有権が取得されており,それぞれの取得時ごとに,本件亀戸A物件,本件亀戸B物件及び本件亀戸C物件とされているが,これらの物件を総称するときは「本件亀戸物件」という。)を所有し,その賃貸業を営んでいる。
なお,原告の現在の住所地は千葉市若葉区内であるが,本件各確定申告当時の原告の納税地(住所地又は所在地)は,静岡県伊豆市内であった。
イ 株式会社D(以下「本件会社」という。)は,原告の住所地を本店の所在地とし,不動産賃貸,不動産管理及び不動産リフォーム業務等を目的として平成19年10月1日に設立された,公開会社(会社法2条5号)に該当しない株式会社である。本件会社の取締役には,原告(同日に代表取締役に就任し,同年11月14日に辞任した。)及び原告の妻(原告の辞任と同日に代表取締役に就任した。)が就任している。(甲20,21)
ウ E管理組合(以下「本件管理組合」という。)は,平成15年7月16日,本件亀戸物件の敷地及び共用部分の管理等の業務を行うことを目的として同物件に係る区分所有者(建物の区分所有等に関する法律〔以下「区分所有法」という。〕2条2項の区分所有者をいう。以下同じ。)の全員を構成員として設立された区分所有者の団体である。原告は,別表B2記載のとおり,平成16年8月に本件亀戸A物件を,平成18年9月に本件亀戸B物件を,平成19年7月に本件亀戸C物件をそれぞれ取得し,これらをもって本件亀戸物件に係る全ての区分所有権を取得するに至ったため,これ以降の本件管理組合の構成員は原告のみとなった。
(2) 本件各物件について
本件各物件に係る土地及び建物の所在,建物の構造及び建築年月,原告の取得年月,売買契約の契約書における売買代金額及びその内訳等については,別表B2に記載のとおりである。
(3) 本件会社が本件各物件に関し原告又は本件管理組合との間で締結した契約について
ア 管理委託契約
(ア) 原告は,平成20年1月1日,本件会社との間で,本件各物件の事務管理,清掃及び設備管理の業務(本件亀戸物件については一部を除く。)を委託する旨の契約(以下,「本件管理委託契約1」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件管理委託契約書1」という。)を締結した。本件管理委託契約書1には,次のような定めが置かれている(甲24の1)。
a 本件管理委託契約書1の3条は,本件各物件の管理に関する業務のうち,原告が本件会社に委託する業務(本件亀戸物件については,本件会社と本件管理組合との間の後記オ(イ)の管理委託契約に係る委託業務の内容とされているものを除く。)を,「事務管理業務」,「清掃業務」及び「設備管理業務」とし,その詳細を同契約書別表において定めるとしている。なお,同条においても,同表においても,本件各物件の「設備の修繕」を委託業務に含むものとする旨の記載はない。
b 本件管理委託契約書1の6条1項は,原告は本件会社が委託業務を行うために必要とする一切の費用を負担する旨を定めている。
c 本件管理委託契約書1の6条2項は,原告は本件会社に対し,同条1項の費用(上記b)のうち「その負担方法が定額で且つ基本的に清算を伴わない費用」(以下「定額管理費」という。)について,毎月次のとおり支払う旨を定めている。
(a) 委託管理費及びその他修繕費用の額 月額107万4399円とする(1号)。
(b) 支払期日 当月分を翌月末日までに支払う(2号)。
そして,本件管理委託契約書1別紙2は,上記(a)の費用の内訳について記載しているところ,そこには,①「修繕積立金」として月額31万0300円(なお,本件入船西物件,本件美浜東物件及び本件亀戸物件に係るものを除いた月額は28万円),②「設備の修繕費」として月額13万円と記載されている。
d 本件管理委託契約書1の6条3項本文は,本件会社は,同条1項の費用(上記b)のうち修繕費(同条3項8号)についても,原告からの定額管理費をもってその支払を行う旨を定めている。
e 本件管理委託契約書1の6条4項は,本件会社は,同条3項8号の修繕費について,原告の指示に基づき,修繕積立金又は設備の修繕費から支払を行う旨を定めている。
f 本件管理委託契約書1の6条6項は,本件会社は,修繕積立金について,原告からの預り金として,本件会社の会計処理とは切り離して資金を積み立てるものとし,修繕積立金の取崩しについては,書面をもって原告の了解を得て着手する旨を定めている。
(イ)a 原告は,平成23年10月1日,本件会社との間で,本件各物件の事務管理,清掃,設備管理及び設備修繕の業務(本件亀戸物件については一部を除く。)を委託する旨の契約(以下,「本件管理委託契約2」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件管理委託契約書2」という。また,本件管理委託契約1及び2を併せて「本件各管理委託契約」という。)を締結した(甲24の2)。
b 本件管理委託契約書2においては,本件管理委託契約書1の内容が,大要,次のとおり変更されている(甲24の2)。
(a) 本件管理委託契約書2の3条は,本件各物件の管理に関する業務のうち,原告が本件会社に委託する業務(本件亀戸物件については,本件会社と本件管理組合との間の後記ウ(イ)の管理委託契約に係る委託業務の内容とされているものを除く。)を,「事務管理業務」,「清掃業務」,「設備管理業務」及び「設備の修繕業務」としている。設備の修繕業務は,本件管理委託契約書2において追加された業務である(変更前については上記(ア)a参照)。
(b) 本件管理委託契約書2の6条4項は,本件会社は,同条3項8号の修繕費については,設備の修繕費から支払い,修繕が大規模修繕に該当する等の場合には,修繕積立金を取り崩して支払を行うものとしている(変更前については上記(ア)d,e参照)。
(c) なお,修繕積立金については,本件管理委託契約書2の6条6項において,原告からの預り金として,本件会社の会計処理とは切り離して資金を積み立てるものとし,修繕積立金の取崩しについては,書面をもって原告の了解を得て着手する旨を定めている(本件管理委託契約書1と同じ)。
イ 賃貸管理委託契約
(ア) 原告は,平成19年10月1日,本件会社との間で,本件各物件における各貸室に係る賃貸借契約を解約した際の退室時の立会い,原状回復費用の負担割合の決定及び清算に関する業務等を委託する旨の契約(以下「本件賃貸管理委託契約1」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件賃貸管理委託契約書1」という。)を締結した。本件賃貸管理委託契約書1には,次のような定めが置かれている。(甲23の1)
a 本件賃貸管理委託契約書1の1条1項は,原告は貸室の賃貸管理に関する業務のうち次の(a)~(f)の業務を本件会社に委託する旨を定めている。
(a) 賃借人の募集及び決定をし,原告に代わり賃貸借契約を代行する業務(①号)
(b) 賃料・共益費,敷金,礼金及び更新料の受領並びに敷金返還に関する業務(②号)
(c) 賃貸借契約の更新に関する業務(③号)
(d) 退室時の立会い,原状回復費用の負担割合の決定及び清算に関する業務(④号)
(e) 賃貸借契約に付随する緊急時の対応及び処置に関する業務(⑤号)
(f) その他書面により特約した業務(⑥号)
b 本件賃貸管理委託契約書1の5条1項は,原告が本件会社に支払う業務委託料は,次の(a)~(d)の事項を勘案して本件各物件に係る建物ごとに計算した定額である月額59万8700円とする旨を定めている。
(a) 運営代行業務委託料 原告によって新規に賃貸借契約が成立したときは,同契約後に本件会社が行う賃貸人の窓口を始めとする賃貸事業運営の代行業務費用の対価として(①号)
(b) 更新業務委託料 原告によって更新契約が成立したときには更新事務手数料として(②号)
(c) 出納保管業務委託料 原告によって行われる出納保管業務の手数料の対価として(③号)
(d) 入居者の居室のリフォーム費用 入居者が退去した場合の立会いの対価,リフォーム費用として(④号)
そして,本件賃貸管理委託契約書1別紙3は,上記業務委託料の内訳について記載しているところ,そこには,①「賃貸業務委託料」として月額37万8700円,②「賃室リフォーム代金」として月額22万円と記載されている。
(イ)a 原告は,平成23年10月1日,本件会社との間で,本件各物件における各貸室に係る賃貸借契約を解約した際の退室時の立会い,原状回復費用の負担割合の決定及び清算に関する業務等を委託する旨の契約(以下「本件賃貸管理委託契約2」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件賃貸管理委託契約書2」という。また,本件賃貸管理委託契約1及び2を併せて「本件各賃貸管理委託契約」という。)を締結した(甲23の2)。
b 本件賃貸管理委託契約書2においては,本件賃貸管理委託契約書1の内容が,大要,次のとおり変更されている(甲23の2)。
(a) 本件賃貸管理委託契約書2の1条1項は,原告が本件会社に対して委託する本件各物件の賃貸管理業務について,「賃借人退去後の賃室の原状回復工事を含むリフォーム工事業務」(同項⑤号)を含むものとしている。上記の原状回復工事を含むリフォーム工事業務(以下「原状回復業務」という。)は,本件賃貸管理委託契約書2において追加された業務である(上記(ア)a参照)。
(b) 本件賃貸管理委託契約書2の5条1項は,原告が本件会社に支払う業務委託料につき本件賃貸管理委託契約1と同額の月額59万8700円としているが,上記金額を定めるに当たって勘案される事項を以下のとおり記載し,貸室の原状回復業務に係る費用は,定額月額22万円の賃室リフォーム代金の支払によることとして原告と本件会社との間で清算を伴わないことが明記されている。
Ⅰ 運営代行業務委託料(①号)
(本件賃貸管理委託契約1と同じ)
Ⅱ 更新業務委託料(②号)
(本件賃貸管理委託契約1と同じ)
Ⅲ 出納保管業務委託料(③号)
(本件賃貸管理委託契約1と同じ)
Ⅳ 解約清算業務委託料
貸室の解約が成立したときにおける立会い清算の業務費用(④号)
Ⅴ リフォーム費用(貸室の原状回復業務に係る費用)
貸室の原状回復業務及びこれに関連する一切の費用については,本件各物件に係る建物ごとに計算した賃室リフォーム代金の定額月額22万円で賄い,原告と本件会社で清算を伴わないものとする(⑤号)
ウ 本件亀戸物件の管理規約及び管理委託契約
(ア) E管理規約(甲26)は,本件亀戸物件の管理又は使用に関する事項等を定めたものであるところ,E管理規約には次のような定めが置かれている。
a 区分所有者は,区分所有者の共同の利益を増進し,良好な住環境を確保する目的を達成するため,区分所有者全員をもってE管理組合(本件管理組合)を構成する(6条)。
b 区分所有者は,敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため,管理費,特別修繕費及び組合費(以下「管理費等」という。)を本件管理組合に納入しなければならない(23条1項)。
c 本件管理組合は,特別修繕費を修繕積立金として積み立て(26条1項),同条2項各号に掲げる特別の管理(次の(a),(b))に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる(同項)。
(a) 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕(同項①号)
(b) 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕(同項②号)
d 特別修繕費及び修繕積立金については,管理費及び組合費とは区分して経理しなければならない(同条4項)。
e 組合員の資格は,区分所有者となったときに取得し,区分所有者でなくなったときに喪失する(28条)。
f 本件管理組合は,次の(a)~(c)に掲げる業務等を行う(30条)。
(a) 本件管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下「組合管理部分」という。)の保安,保全,保守,清掃,消毒及びごみ処理(①号)
(b) 組合管理部分の修繕(②号)
(c) 修繕積立金の運用(⑧号)
g 本件管理組合は,上記fの業務の全部又は一部を,第三者に委託し,又は請け負わせて執行することができる(31条)。
h 次に掲げる事項については,総会の決議を経なければならない(45条)。
(a) 26条2項に定める特別の管理(上記cの(a),(b))の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し(⑥号)
(b) 組合管理部分に関する管理業務委託契約の締結(⑫号)
i 規約により総会において決議すべきものとされた事項について,組合員全員の書面による合意があるときは,総会の決議があったものとみなす(46条)。
j 総会の議事については,議長は議事録を作成しなければならない(47条1項)。
k 組合員は,納付した管理費等及び専用使用料について,その返還を求めることはできない(56条4項)。
(イ) 本件管理組合は,平成19年10月1日,本件会社との間で,本件亀戸物件の事務管理,清掃及び設備管理の業務を委託する旨の契約(以下「本件亀戸物件管理委託契約」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件亀戸物件管理委託契約書」という。)を締結した。本件亀戸物件管理委託契約書には,次のような定めが置かれている。(甲31)
a 本件亀戸物件管理委託契約書2条2項は,同契約に係る管理の対象となる部分は,E管理規約による敷地及び共用部分等とする旨を定めている。
b 本件亀戸物件管理委託契約書3条は,本件亀戸物件の管理に関する業務のうち本件管理組合が本件会社に委託する業務を,次の(a)~(c)の業務とする旨を定めている。
(a) 事務管理業務(同契約書別表1に掲げる業務)(1号)
(b) 清掃業務(同契約書別表2に掲げる業務)(2号)
(c) 設備管理業務(同契約書別表3に掲げる業務)(3号)
c 費用の負担等に関する定めは,次のとおりである。
(a) 本件亀戸物件管理委託契約書6条1項は,本件管理組合は,本件会社が委託業務を行うために必要とする一切の費用を負担するものとする旨を定めている。
(b) 本件亀戸物件管理委託契約書6条2項は,本件管理組合は,同条1項の費用のうちその負担方法が定額でかつ清算を伴わない費用(定額管理費)を,本件会社に対し,毎月,次のとおり支払うものとする旨を定めている。なお,本件亀戸物件管理委託契約書別表4には,定額管理費の内訳として,「E管理組合修繕積立金」につき月額16万1800円と定められている。
Ⅰ 定額管理費の額 月額43万6600円とする。(1号)
Ⅱ 支払期日 当月分を翌月末日までに支払う。(2号)
(c) 本件亀戸物件管理委託契約書6条3項は,同条1項の費用(上記(a))のうち同条3項各号に定める費用についても,本件会社は本件管理組合からの定額管理費をもってその支払を行う旨を定めており,その8号として修繕費が掲げられている。
(d) 本件亀戸物件管理委託契約書6条5項は,同条3項8号の定める修繕費(上記(c))については,本件会社は,本件管理組合の指示に基づき,管理費又は修繕積立金のうちからこれを支払う旨を定めている。
(e) 本件亀戸物件管理委託契約書6条7項は,修繕積立金については,本件管理組合からの預り金として,本件会社の会計処理とは切り離して資金を積み立てるものとし,本件会社は,同積立金の取崩しについては,書面をもって本件管理組合の了解を得た上で着手する旨を定めている。
d 本件亀戸物件管理委託契約書19条は,本件亀戸物件管理委託契約の有効期間につき,平成19年10月1日から平成21年9月30日までとする旨を定めている。
エ コンサルティング委託契約
(ア) 原告は,平成20年1月1日,本件会社との間で,本件各物件の運用に係る検討等に関する業務を委託する旨の契約(以下「本件コンサルティング委託契約1」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件コンサルティング委託契約書1」という。)を締結した。本件コンサルティング委託契約書1には,次のような定めが置かれている。(甲34の1)
a 本件コンサルティング委託契約書1の1条1項は,原告は次の各業務を本件会社に委託する旨を定めている。
(a) 本件各物件の過去,現状,将来の適正な価格の算出(①号)
(b) 本件各物件のキャッシュフロー分析(②号)
(c) 本件各物件の売却,移管の検討(③号)
(d) 新規不動産購入のための不動産選定作業(④号)
(e) 新規不動産購入のための評価作業(⑤号)
(f) 新規不動産購入のための銀行融資に係る資料の作成(⑥号)
(g) 原告の経理システムでの月次ごとのBS,PL,キャッシュフローデータを用いた財務分析(⑦号)
(h) 原告の経理システムでの年次ごとのBS,PL,キャッシュフローデータを用いた将来の財務分析(⑧号)
(i) 原告の経理システムでの年次ごとのBS,PL,キャッシュフローデータを用いた現状の節税対策の立案(⑨号)
(j) 原告の経理システムでの月次ごとのBS,PL,キャッシュフローデータを用いた将来の節税対策の立案(⑩号)
(k) 原告の不動産の不動産鑑定作業(⑪号)
(l) 原告の所得税の異議申立書の作成(⑫号)
(m) 不服審判所への原告の不服申立ての諸作業の代行(⑬号)
(n) 所得税に係る変更等があった場合に,その内容を理解して,原告に代わって,検討を行い検討書を作成し,原告に提出する(⑭号)。
b 本件コンサルティング委託契約書1の2条1項は,原告が本件会社に支払う「業務委託料」は,本件各物件に係る建物ごとに計算した月次の定額月額2万3500円とする旨を定めている。
(イ)a 原告は,平成23年10月1日,本件会社との間で,本件各物件の運用に係る検討等に関する業務を委託する旨の契約(以下「本件コンサルティング委託契約2」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件コンサルティング委託契約書2」という。また,本件コンサルティング委託契約1及び2を併せて「本件各コンサルティング委託契約」という。)を締結した(甲34の2)。
b 本件コンサルティング委託契約2は,本件コンサルティング委託契約1の内容が変更されたものであるところ,本件コンサルティング委託契約書2においては,本件コンサルティング委託契約書1において原告が本件会社に委託していた業務のうち,「(k) 原告の不動産の不動産鑑定作業」(⑪号),「(1) 原告の所得税の異議申立書の作成」(⑫号),「(m) 不服審判所への原告の不服申立ての諸作業の代行」(⑬号),「(n) 所得税に係る変更等があった場合に,その内容を理解して,原告に代わって,検討を行い検討書を作成し,原告に提出する業務」(⑭号)が委託業務から削除された(上記(ア)a参照)。
オ 会計税務事務委託契約
(ア) 原告は,平成20年1月1日,本件会社との間で,本件各物件の経理,決算,税務申告等の業務を委託する旨の契約(以下,「本件会計税務事務委託契約1」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件会計税務事務委託契約書1」という。)を締結した。本件会計税務事務委託契約書1には,次のような定めが置かれている。(甲35の1)
a 本件会計税務事務委託契約書1の1条1項は,原告は次の(a)~(i)の本件各物件の経理,決算,税務申告等に関する業務を本件会社に委託する旨を定めている。
(a) 本件会社から送られてくる原告の不動産に関わる支払明細書,建物管理報告書,賃貸契約書,入居申込書,各種領収書等の整理とファイリングする業務(①号)
(b) 上記帳票類のうち原告の青色申告をするために必要な事項の仕訳帳等への記帳(経理システムへの入力)及び毎日の銀行預金残高確認作業(②号)
(c) 上記記帳による経理システムでの月次ごとの家賃明細,更新料明細,修繕費明細,管理費明細,借入金明細等の管理帳票の作成(③号)
(d) 上記記帳による経理システムでの月次ごとのBS,PL,キャッシュフロー分析等の作成(④号)
(e) 上記記帳による経理システムでの年次のBS,PL,キャッシュフロー分析等の作成(⑤号)
(f) 上記作業を経て,原告の不動産青色申告のための各種資料の作成(⑥号)
(g) 上記作業を経て,税務署への申告書提出のための作業(⑦号)
(h) 原告の代理として,銀行通帳への記帳,租税公課の支払等の作業(⑧号)
(i) 税務調査対応作業(⑨号)
b 本件会計税務事務委託契約書1の2条1項は,原告が本件会社に支払う「業務委託料」は,本件各物件に係る建物ごとに計算した月次の定額月額3万1500円とする旨を定めている。
(イ)a 原告は,平成23年10月1日,本件会社との間で,本件各物件の経理,決算,税務申告等の業務を委託する旨の契約(以下,「本件会計税務事務委託契約2」といい,同契約の内容が記載された文書を「本件会計税務事務委託契約書2」という。また,本件会計税務事務委託契約1及び2を併せて「本件各会計税務事務委託契約」という。)を締結した(甲35の2)。
b 本件会計税務事務委託契約書2は,本件会計税務事務委託契約書1の内容が変更されたものであるところ,本件会計税務事務委託契約書1の1条1項において原告が本件会社に委託していた業務のうち,「(f) 上記作業を経て,原告の不動産青色申告のための各種資料の作成」(⑥号),「(g) 上記作業を経て,税務署への申告書提出のための作業」(⑦号),「(h) 原告の代理として,銀行通帳への記帳,租税公課の支払等の作業」(⑧号),「(i) 税務調査対応作業」(⑨号)が委託業務から削除された(上記(ア)a参照)。
(4) 原告と賃借人との契約関係
ア 原告は,平成19年6月16日,本件北松戸物件(別表B2の順号6)の403号室(以下,単に「403号室」ということがある。)について,F(以下「F」という。)との間で,賃貸借契約(以下「403号室賃貸借契約」といい,同契約の内容が記載された文書を「403号室賃貸借契約書」という。)を締結した。403号室賃貸借契約書には,敷金について次のような定めが置かれている。(甲46)
(ア) Fは,403号室賃貸借契約から生じる債務の担保として,敷金10万0500円を原告に預け入れるものとする(6条1項,頭書(3))。
(イ) Fは,403号室賃貸借契約が終了する日までに403号室を明け渡さなければならない。この場合において,Fは,通常の使用に伴い生じた損耗を除き,同号室を原状回復しなければならない(12条1項)。
(ウ) 原告は,403号室の明渡しがあったときは,遅滞なく敷金の全額を無利息でFに返還しなければならない。ただし,原告は同号室の明渡し時に賃料の滞納,通常の使用に伴い生じた損耗を除く原状回復に要する費用の未払いその他の403号室賃貸借契約から生じるFの債務の不履行が存在する場合には,当該債務の額を敷金から差し引くことができる(6条3項)。
イ 原告は,平成13年10月26日,本件桜木物件(別表B2の順号3)の106号室(以下,単に「106号室」ということがある。)について,G(以下「G」という。)との間で,賃貸借契約(以下「106号室賃貸借契約」といい,同契約の内容が記載された文書を「106号室賃貸借契約書」という。)を締結した。106号室賃貸借契約書には,敷金について次のような定めが置かれている。(甲47)
(ア) Gは,原告に対し敷金11万円を預託する(4条1項,頭書「2.賃貸条件」欄)。
(イ) Gに106号室賃貸借契約に基づく債務不履行があるときは,原告は任意に敷金をGの債務の弁済に充当できる(4条2項)。
(ウ) 明渡しの際は,ハウスクリーニングをすることとし,費用はGの負担とし,預り敷金を充当することができる(頭書「3.特約条項」6項)。
(エ) Gは,106号室賃貸借契約の終了時には,106号室を完全に明け渡さなければならない(13条1項)。Gの同契約終了時の完全な明渡しに際し,Gの費用負担で,故意,過失を問わずG又は入居者が生じさせた同号室についての汚損,破損,紛失等(経年変化によるものを除く。)を修繕し,同号室を原状回復しなければならない(同条2項)。
(オ) 106号室賃貸借契約が終了し,Gが106号室を完全に明け渡し,原告に対する同契約に基づく一切の債務を清算した後,1か月以内に原告はGに敷金を返還する(4条4項)。
(5) 本件訴えの提起に至る経緯等
ア 原告は,平成23年1月20日,平成24年2月19日及び平成25年1月26日,三島税務署長に対し,別表A1~3の各「確定申告」欄記載のとおり,本件各係争年分の所得税の各確定申告(本件各確定申告)をした。
イ 原告は,平成26年2月26日,三島税務署長に対し,本件各物件の減価償却費の計算に誤りがあったとして,別表A1~3の各「修正申告」欄記載のとおり,本件各係争年分の所得税の各修正申告(本件各修正申告)をした(以下,本件各係争年分ごとに表記する場合には「平成22年修正申告」などという。また,本件各修正申告に係る修正申告書を「本件各修正申告書」といい,本件各係争年分ごとに表記する場合には「平成22年修正申告書」などという。)。
なお,本件各修正申告において修正されたのは,本件各物件に係る減価償却費の計算に関する部分であり,本件各確定申告において,本件各物件の取得価額を土地(減価償却資産に当たらない。)と建物等に区分せず,その全ての額について減価償却費の計算の基礎としていたのを,本件各修正申告においては,土地と建物等とに区分した上で減価償却費の計算をするように修正したものである(もっとも,本件各修正申告における区分の方法は,後述のとおり,被告の主張する方法とは異なる。)。
ウ 三島税務署長は,平成26年3月11日,原告に対し,別表A1~3の各「本件賦課決定処分1」欄記載のとおり,本件各係争年分の所得税について,本件各賦課決定処分1をした(以下,本件各係争年分ごとに表記する場合には「平成22年賦課決定処分1」などという。また,本件各賦課決定処分1に係る賦課決定通知書を「本件各賦課決定通知書」といい,本件各係争年分ごとに表記する場合には「平成22年賦課決定通知書」などという。)。
エ 三島税務署長は,平成26年3月14日,原告に対し,別表A1~3の各「本件更正処分等」欄記載のとおり,本件各係争年分の所得税について,本件各更正処分等をした(以下,本件各係争年分ごとに表記する場合にはそれぞれ「平成22年更正処分」,「平成22年賦課決定処分2」,「平成22年更正処分等」などという。また,本件各更正処分等に係る更正・加算税の賦課決定通知書を「本件各更正処分等通知書」といい,本件各係争年分ごとに表記する場合には「平成22年更正処分等通知書」などという。)。
オ 本件各賦課決定処分1及び本件各更正処分等において附記された理由は,別紙3「本件各賦課決定通知書及び本件各更正処分等通知書に附記された理由」記載のとおりである。
なお,本件各賦課決定処分1は,本件各修正申告に基づく過少申告加算税の賦課決定処分であるところ,本件各賦課決定通知書においては,本件各修正申告書の提出は,その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものである(通則法65条5項に該当しない)旨の記載がされている。
また,本件各更正処分につき,本件各更正処分等通知書においては,原告の申告につき,①所得税法37条1項に規定する必要経費に算入されるべきでないものが必要経費として算入されていること(後記3(1)ア~カ参照),②減価償却費の金額の計算に誤りがあること(後記3(1)キ,ク参照),③総収入金額に算入されるべき敷金の額が算入されていないこと(後記3(1)ケ参照)が記載されている。
本件各賦課決定処分2は,本件各更正処分に基づく過少申告加算税の賦課決定処分であるところ,本件各更正処分等通知書においては,本件各更正処分に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに本件各更正処分による更正前の税額の計算の基礎とされなかったことについて正当な理由があると認められるものはない(通則法65条4項に該当しない)旨が記載されている。
カ 原告は,平成26年5月7日,三島税務署長に対し,本件各賦課決定処分1について異議申立てをし,同月12日,同税務署長に対し,本件各更正処分等について異議申立てをした。
キ 三島税務署長は,平成26年8月4日,原告に対し,上記カの異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。
ク 原告は,平成26年8月25日,国税不服審判所長に対し,本件各賦課決定処分1及び本件各更正処分等につき審査請求をした。
ケ 国税不服審判所長は,平成27年11月4日,上記クの審査請求のうち,本件各賦課決定処分1に係るもの及び平成22年更正処分等に係るものについてはこれを棄却し,平成23年更正処分等及び平成24年更正処分等に係るものについては,別表A2及び3の各「審査裁決」欄の「本件更正処分等」欄記載のとおり,これらの処分の一部を取り消す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。
(6) 本件訴えの提起
原告は,平成28年4月25日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
(7) 先行訴訟の状況
ア 平成16年分から平成18年分までについて
原告は,平成21年10月30日,原告の当時の納税地を所轄する千葉東税務署長が平成20年2月27日付けで行った平成16年分から平成18年分までの所得税に係る各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,裁決により一部取り消された後のもの)の一部の取消しを求める訴訟(以下「前々回訴訟」という。)を千葉地方裁判所に提起した。
同訴訟においては,本件における争点⑦及び⑧(後記3参照)と同様の点が争われたところ,千葉地方裁判所は,平成23年12月9日,原告の請求を棄却する旨の判決をした(乙1)。
原告は,平成23年12月19日付けで,上記第一審判決を不服として控訴をしたところ,東京高等裁判所は,平成24年5月31日,控訴棄却判決をした(乙2)。
原告は,平成24年6月11日付けで,上記控訴審判決を不服として上告及び上告受理申立てをしたところ,最高裁判所は,平成26年3月28日,上告棄却及び不受理の決定をした(甲39の1)。
イ 平成19年分から平成21年分までについて
原告は,平成24年6月5日,三島税務署長が平成23年3月14日付けで行った平成19年分から平成21年分までの所得税に係る各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,裁決により一部取り消された後のもの)の一部の取消しを求める訴訟(以下「前回訴訟」という。)を東京地方裁判所に提起した。
前回訴訟においては,本件における争点①~⑧及び⑫(後記3参照)と同様の点が争われたところ,東京地方裁判所は,平成26年2月28日,原告の請求を一部認容し,その余の請求を棄却する旨の判決をした(乙3)。
原告は,平成26年3月3日付けで,上記第一審判決を不服として控訴をしたところ,東京高等裁判所は,平成26年10月29日,控訴棄却判決をした(乙4)。
原告は,平成26年11月11日付けで,上記控訴審判決を不服として上告受理申立てをしたところ,最高裁判所は,平成28年3月18日,不受理の決定をした(乙5)。
3 争点
本件の争点は,本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分1及び2(ただし,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分2については,平成23年分及び平成24年分につき本件裁決により一部取り消された後のもの。以下同じ。)の適法性であり,具体的には,以下の各点が争われている。
(1) 不動産所得の金額の算定に関する争点(いずれも本件各更正処分に係るもの)
ア 原告が本件管理委託契約1(前記2(3)ア)に基づいて本件会社に支払った平成23年9月分までの「設備の修繕費」月額13万円(以下「本件修繕費」という。)は,必要経費に算入すべきものか(争点①)
イ 原告が本件各管理委託契約に基づいて本件会社に支払った「修繕積立金」月額28万円(本件入船西物件,本件美浜東物件及び本件亀戸物件に係るものを除く金額。以下「本件修繕積立金」という。)は,必要経費に算入すべきものか(争点②)
ウ 原告が本件賃貸管理委託契約1(前記2(3)イ)に基づいて本件会社に支払った平成23年9月分までの賃室リフォーム代金月額22万円(以下「本件賃室リフォーム代金」という。)は,必要経費に算入すべきものか(争点③)
エ E管理規約又は本件亀戸物件管理委託契約(前記2(3)ウ)に基づく「修繕積立金」月額16万1800円(以下「本件亀戸物件修繕積立金」という。)は,必要経費に算入すべきものか(争点④)
オ 本件コンサルティング委託契約1(前記2(3)エ)に基づく「業務委託料」月額2万3500円(以下「本件コンサルティング委託料」という。)は,必要経費に算入すべきものか(争点⑤)
カ 本件会計税務事務委託契約1(前記2(3)オ)に基づく「業務委託料」月額3万1500円(以下「本件会計税務事務委託料」という。)は,必要経費に算入すべきものか(争点⑥)
キ 減価償却費の計算上,土地及び建物等を一括購入した場合における建物等の取得価額をどのように算定すべきか(争点⑦)
ク 減価償却費の計算上,建物本体と建物附属設備の区分及びそれぞれの取得価額をどのように算定すべきか(争点⑧)
ケ 本件北松戸物件403号室の賃借人F(前記2(4)ア)から差し入れられた敷金のうち9万6312円(以下「本件敷金1」という。)及び本件桜木物件106号室の賃借人G(前記2(4)イ)から差し入れられた敷金11万円(以下「本件敷金2」といい,本件敷金1と併せて「本件各敷金」という。)は,総収入金額に算入すべきものか(争点⑨)
(2) 処分手続等に関する争点(次のアは本件各賦課決定処分1及び本件各更正処分等に係るもの,イは本件各賦課決定処分1に係るもの,ウは本件各賦課決定処分2に係るもの)
ア 理由附記の不備の有無(争点⑩)
イ 本件各修正申告につき「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものではないとき」(国税通則法65条5項)に当たるか(争点⑪)
ウ 「正当な理由」(国税通則法65条4項)の有無(争点⑫)
4 争点に関する当事者の主張の要旨
争点に対する当事者の主張の要旨は,別紙4「当事者の主張の要旨」記載のとおりである(なお,被告が本件に関して主張する課税の根拠及び計算は別紙5記載のとおりであるところ,原告は,争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。)。
第3 当裁判所の判断
当裁判所は,争点①及び③に関する原告の主張(本件修繕費及び本件賃室リフォーム代金を必要経費に算入すべきとするもの)はその一部(本件会社による修繕及びリフォーム工事等の実施並びにこれらによる原告の費用支払債務の確定が認められる部分)につき理由があり,その余の原告の主張はいずれも理由がないことから,本件各更正処分等のうち平成22年分及び平成23年分に係るものの一部について原告の請求を認容し,その余の請求については棄却すべきものと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。
修繕費か資本的支出か 大阪高裁昭和34年
修繕費か資本的支出か 大阪高裁昭和34年 渕圭吾『租税法講義』有斐閣・2024年・101頁
所得額決定取消並びに変更請求控訴事件
大阪高等裁判所判決/昭和31年(ネ)第1303号、昭和31年(ネ)第1519号
昭和34年4月15日
【判示事項】 1、所得税法第10条第2項にいわゆる事業所得の計算上必要な経費に算入すべき修繕費の意義
2、店舗および住宅に併用されている家屋に設定された電話の料金の必要経費への算入
【判決要旨】 1、所得税法第10条第2項にいわゆる事業所得の計算上必要な経費に算入すべき修繕費とは、事業用固定資産の損耗額を減価償却において予見した額に至るまで回復するのに必要とする経費であり、かつ、その損耗は、当該企業の通常の経営過程においてその収益を得るために発生したものに限られる。
2、店舗および住宅に併用されている家屋に1本だけの電話が設定されているにすぎない場合でも、納税人が営業と家事とをはつきり区別して、右電話を家事用には全然使用していないことが認められるときは、右電話料金全額を事業所得の計算上必要経費に算入することができる。
【掲載誌】 行政事件裁判例集10巻4号735頁
訟務月報5巻6号797頁
税務訴訟資料29号329頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト17号70頁
主 文
原判決を左の通り変更する。
控訴人が昭和二十八年七月三日被控訴人の昭和二十七年度分所得金額を金三十六万八千七百五十五円、同税額を金六万八千九百円とした再調査決定(但し大阪国税局長の昭和三十年三月七日附審査決定により所得金額二十二万九千円、同税額二万四千五百円と変更)の所得金額金二十二万六千八百三十九円及びこれによつて算定される税額を超える部分はこれを取消す。
被控訴人のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じてこれを十分しその一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
理 由
当裁判所は、被控訴人主張の金二千四百円の修繕費及び金二千百三十一円の通信費に関し、左の通り判断する(従つて原判決理由中のこの点に牴触する部分は、その限度において変更されたことになる)ほか、原判決の理由をここに引用する。
(一)被控訴人が昭和二十七年度中にその主張の額の修繕費を支出したこと、被控訴人が同修繕費のうち、その営業用の商品置場として使用している本件離屋の屋根瓦葺替えのための費用中金二千四百円を営業上の必要経費として算入したところ、控訴人においてこれを必要経費として算入することを否認したこと、右屋根瓦替えを必要とするに至つた事情は本件当事者間に争がない。被控訴人は右金二千四百円は、所得税法にいわゆる事業所得の計算上必要な経費に算入すべきものにあたり、控訴人がこれを否認するのは違法である、と主張するけれども、同法にいわゆる事業所得の計算上必要な経費に算入すべき修繕費とは、事業用固定資産の損耗額を、減価償却において予見した額に至るまで回復するのに必要とする経費であり、かつその損耗は、当該企業の通常の経営過程において、その収益を得るために発生したものに限られる、と解すべきところ(所得税法第一○条の二、同第一〇条の三参照、)被控訴人主張の屋根の破損の修繕費は、なんら被控訴人の企業の通常の経営過程においてその収益を得るために発生した固定資産の損耗の修繕費と言いえないことは、被控訴人の主張自体に徴して明かであるから、控訴人において右金二千四百円をもつて被控訴人の事業所得の計算上必要な経費に算入すべきことを否認したのは、何等の違法ではない、といわねばならない。
(二)次に被控訴人主張の金二千百三十一円の通信費について考える。被控訴人が昭和二十七年度中に総額金一万五千二百七十三円の通信費(内電話料は金一万二千二百三円)を支出したこと、被控訴人がその全額を事業所得計算上必要な経費として算入したのに対し、控訴人が内約十四パーセントに相当する金二千百三十一円を被控訴人の家事用の電話使用料とみなして、右必要費であることを否認したことは当事者間に争がなく、原審証人北山太一の供述によると、被控訴人方には、電話は一本よりないことを肯認することができる。かような事情にある本件においては、他に反証がない限り、被控訴人が、右電話を家事用にも、控訴人の従来の徴税経験上相当と主張する通信費総額の十四、五パーセント程度使用するものと推認するのを一応妥当と思料するけれども、前示証人及び原審ならびに当審における被控訴人本人の各供述に弁論の全趣旨を綜合すると、被控訴人はきわめてきちようめんな性格の人で、営業と家事とをはつきり区別して、電話を家事用には全然使用していないことが認められるから、控訴人が被控訴人主張の右金二千百三十一円を、被控訴人の事業所得の計算上必要な経費に算入することを否認したことは違法であるといわねばならない。
そうすると本件控訴及び附帯控訴はいずれも右の範囲内に限り相当であるから、民事訴訟法第三八五条、第三八六条に従つて主文第二項の通り変更し、被控訴人のその余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法第九十六条第九十二条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 藤城虎雄 亀井左取 坂口公男)