岡本法律事務所のブログ

岡山市北区にある岡本法律事務所のブログです。 1965年創立、現在2代めの岡本哲弁護士が所長をしています。 電話086-225-5881 月~金 0930~1700 電話が話中のときには3分くらいしてかけなおしください。

2025年11月

深見敏正裁判長不当判決 東京高裁平成29年 渕講義439頁

アルマ2版186頁           あてはめが不当

法人税更正処分取消請求控訴事件

東京高等裁判所判決/平成29年(行コ)第46号

平成29年7月26日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 青森税務署長が平成23年5月24日付けで控訴人に対してした平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス11億8294万6785円を超える部分及び翌期に繰り越す欠損金額11億8294万6785円を下回る部分を取り消す。

第2 事案の概要(略語は,原判決の例による。)

 1 本件は,控訴人が,控訴人の子会社であるA株式会社に対して有していた貸付金等債権3億5155万3294円(ただし,正確な合計額は3億5201万7720円)につき,Aが仙台地方裁判所に対して申し立てた特別清算手続において,同裁判所の許可を得て,平成22年3月1日,前記債権を放棄する旨の契約を締結し,株式会社B(B,Aと併せて本件子会社2社)に対して有していた短期貸付金債権6億4277万7926円(前記貸付金債権と併せて,本件貸付金等債権)について,Aが青森地方裁判所に対して申し立てた特別清算手続において,同裁判所の許可を得て,同年3月3日,前記債権を放棄する旨の契約を締結し,前記各債権の放棄をし(本件債権放棄),放棄されたAに対する3億5201万7720円及びBに対する6億4277万7926円の各債権の合計額9億9479万5646円(本件債権放棄額)を「その他の特別損」勘定として損金の額に算入し,平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度(本件事業年度)に係る法人税の確定申告をしたところ,青森税務署長(処分行政庁)から,本件債権放棄額は本件子会社2社に対する法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)37条の寄附金の額に該当するとして,法人税の更正処分(本件処分)を受けたため,被控訴人に対し,本件処分のうち,控訴人主張の所得金額マイナス11億8294万6785円を超える部分及び控訴人主張の繰越欠損金額マイナス11億8294万6785円を下回る部分の取消しを求める事案である。

 2 原審は,(1)本件債権放棄は個別和解によって行われたものであって,裁判所の特別清算協定認可の決定を経たものではないから,基本通達9-6-1(2)の適用の前提を欠いており,これに準じて損金算入することもできない,(2)基本通達9-6-1(4)が個別和解による債権放棄に適用がないということはできないが,本件債権放棄に係る債権の全額が回収不能であったとは認められず,基本通達9-6-1(4)の適用を受けない,(3)基本通達9-4-1は,経営権を事実上移譲しているか否かを問わず適用対象となるが,本件子会社2社は,本件債権放棄当時倒産の危機に瀕しておらず,本件債権放棄は,C銀行からの要請を受けたものではなく,平成21年5月26日付け本件計画書上も明記されていないなど,控訴人における財務及び収益の改善計画において必要不可欠とはいえないから,基本通達9-4-1所定の基準又はこれに準じて法人税法37条1項所定の寄付金に該当しないとして損金算入することはできない,(4)基本通達9-4-2は,業績不振の子会社等の倒産防止のためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものであるなど,その債権放棄等について相当な理由があると認められるときに寄付金の額に該当しないと定めており,本件のように本件子会社2社が解散した後に行われた本件債権放棄については適用がないとして,控訴人の請求を棄却した。

 3 これに対し,控訴人は,原判決を不服として控訴した。

 4 関係法令の定め等,前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり付加訂正し,後記5のとおり,当審における当事者の補足的主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」1から5まで(原判決2頁15行目から38頁19行目まで,別紙2及び別表1ないし3を含む。)に記載のとおりであるからこれを引用する。

  (1) 原判決6頁6行目ないし7行目の「争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実」を「証拠によって認定した事実は,各項末尾かっこ内に認定に供した証拠を摘示し,その記載のない事実は,当事者間に争いがない。」と改める。

  (2) 原判決6頁19行目ないし20行目の「乙3,4,」を「乙3ないし5,21及び」と改める。

  (3) 原判決11頁21行目の「乙13」の次に,「,同裁判所平成21年(ヒ)第7号」を加える。

  (4) 原判決12頁1行目の「乙19」の次に「,同裁判所平成21年(ヒ)第10005号」を加える。

  (5) 原判決13頁15行目から16行目の「本件処分の一部について」を「本件処分のうち,平成21年度分の法人税額等の更正通知書更正の理由4-(1)寄付金の損金不算入額の一部である本件事業譲渡に係る9億9479万5646円について取消しを求める」と改める。

 5 当審における当事者の補足的主張

  (1) 控訴人の主張

   ア 争点(1)(本件債権放棄額が貸倒損失の額に該当するか否か)について

    (ア) 基本通達9-6-1(4)(回収不能の債権の免除に係る貸倒損失)について

     a 本件子会社2社の資産状況や支払能力等について

       原判決は,Bの売上高が増加し,売上総利益も堅調に推移していること等の事実を挙げて,このような債務者側である本件子会社2社の資産状況や支払能力等の事情に照らし,直ちに本件債権放棄に係る全額が回収不能であったとはいい難いと判断している。

       しかし,原判決は,回収可能性ないし借入金の支払余力において着目すべき会計費目を取り違えている。

       すなわち,原判決は,売上高及び売上総利益並びに預金額を捉えて,本件子会社2社の資産状況や支払能力等を判定するが,売上総利益全額を金融機関等の債権者の支払に充てることはできないのであり,少なくとも人件費等販売費及び一般管理費を控除すべきである。また,Bについては,平成18年度以降売上高総利益率が改善する一方で,製造原価から販売費及び一般管理費に一部の費用が移行したため,売上高販売管理費率が上昇しているのであり(甲43の138頁),Bについて,売上総利益に基づき返済能力を判定することが合理的でないことは一層明らかである。Aについても,最終損益がマイナスになっており、販売管理費や特別損失を考慮しない売上総利益によって返済能力を捉えることは不合理である。

       さらに,原判決は,定期預金その他の預金の額にも着目するが,預金は,日常の資金繰りのために確保する必要があり,通常業務を継続する上で必要不可欠なものであるし,預金は事実上金融機関の担保として差し入れられていたから,これを直ちに返済に充てることはできないものであり,預金を考慮することも誤りである。

     b 本件子会社2社の財務改善について

       原判決は,本件計画中の製造会社3社の数値目標である改善額が,飽くまで数値目標であるにすぎないにもかかわらず,これをあたかも実績値のように実現確実なものとして採用している点で誤っている。

       すなわち,原判決は,一方において,金銭債権の貸倒損失を法人税法上の損金に算入するには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならないと判示しながら,他方において,単なる計画ないし見通しにすぎない製造会社3社の集約計画の数値目標を財務改善計画の立案時までの財務の実績等の客観的事情と区別せずに判断の基礎に取り込んでおり,判断の枠組みと事実認定に食い違いがある。Dにおいて償却前経常損失を計上した原因は,本件財務改善計画に記載された諸施策の実施の懈怠などではなく,計画内容自体の合理性又は実現可能性の欠如にあった。

     c C銀行の債権放棄要請の有無について

       原判決は,C銀行は債権放棄を要請しておらず,本件計画書にも記載がなく,債権者である控訴人等においてこれを直ちに回収しようとしていた事情もうかがわれないと判示している。

       しかし,原判決は,控訴人がC銀行からBに対する手形割引の枠の更新拒絶を契機にグループ全体の財務改善を要求され,財務改善計画策定中にもかかわらず,控訴人自身の当座貸越残高を手形貸付に変更し,当座貸越契約を解除されていること,本件債権放棄により控訴人本体に生じる繰越欠損金の税効果を踏まえて本件計画上の返済計画が立案されていることを看過している点で誤っている。本件債権放棄は,本件計画書に,数字上明確に表れているものである(乙23の16頁以下)。

     d 本件債権放棄の対象となった債権の一部又は全部をDに債務として承継させることが許される状況になかったことについて

       原判決は,本件事業譲渡の当事者であるDと本件子会社2社がいずれも控訴人の子会社であることを債権回収に必要な労力等の債権者側の事情や経済的な環境等として挙げている。

       しかし,C銀行からは,本件子会社2社について,資金援助の取りやめを勧告され,事業譲渡前と同様の債権管理を行うことは許されておらず,本件債権放棄の対象となった債権の一部又は全部をDに債務として承継させることによって,繰越欠損金による税効果を織り込んだ控訴人本体の返済余力を減じることが許される状況になかったのであるから,C銀行からの要求を考慮せずに,単に事業譲渡の当事者が子会社であることをもって,「債権回収に必要な労力等の債権者側の事情や経済的な環境等」について論じることはできない。

    (イ) 基本通達9-6-1(2)(特別清算協定認可の決定に係る貸倒損失)について

      原判決は,特別清算手続における協定の認可と同手続において行った個別和解について,個別和解は法的規制や裁判所の合意内容の審査,決定を欠いており,その内容につき合理性が客観的に担保される状況下で合意されたものとはいえないから,基本通達9-6-1(2)の適用はないと判示している。

      しかしながら,基本通達9-6-1(1)に関し,更生計画認可前に裁判所の許可を得て少額弁済を受ける代わりに当該弁済額を超える部分の金額について債権放棄を行う場合に,当該債権放棄は裁判所の許可を受けた更生手続の一環として行われる債権放棄であるから,経済的な価値に基づくものであるとして貸倒損失と認められているものであり(国税庁の質疑応答事例,甲37),特別清算手続における個別和解も,裁判所の許可を得て行う点で会社更生手続における和解と何ら異なる点はないから,この点について何ら言及することなく基本通達9-6-1(2)の適用を否定した原判決は理由不備の非難を免れない。

   イ 争点(2)(本件債権放棄額が寄付金の額に該当するか否か)について

    (ア) 基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)について

     a 原判決は,債権放棄等に経済的合理性の観点から特段の必要性があるか否かを判断する旨判示しているところ,その判断枠組みは適切である。

       しかし,原判決の認定事実に誤りがあり,特に,本件計画書が客観的に合理的であるとの判断が前提において誤っており,このような事実誤認に基づいて,本件子会社2社が倒産の危機にあったといえないとの判断は重大な事実誤認である。

     b また,子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等に関するタックスアンサー(乙50号証)では,再建支援等事案の事前相談に係る検討事項の概要が記載されているところ,そのフローチャート(乙50の14枚目)の検討項目に沿ってみても,本件債権放棄は経済合理性を有している。

    (イ) 基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)について

     a 原判決は,基本通達9-4-2について,本件債権放棄が本件子会社2社の解散後に行われたことを理由として,本件債権放棄が本件子会社2社の再建に当たらないとして,前記通達の要件を満たさないと判示している。

       しかしながら,本件債権放棄は,本件子会社2社の事業継続に有益な資産や負債と事業継続を阻害する資産や負債とで分けて,前者の資産等については事業譲渡の対象とし,後者の資産等が残された会社を清算手続によって閉鎖する一連の再建計画の一環として行われたものである。したがって,本件債権放棄が時期的に事業譲渡や旧会社についての清算手続の開始後であることをもって,基本通達9-4-2にいう「再建」に当たらないと判断するのは形式的すぎる。

     b 原判決は,基本通達9-4-2を適用する余地があるとしても,本件子会社2社が倒産の危機に瀕した状況に至っていたとはいえないとして,本件債権放棄につき経済的合理性の観点から特段の必要性があったとはいえないとしている。

       しかし,既に述べたとおり,与信枠の削除を含めたC銀行の強い働きかけにより,控訴人らから本件子会社2社に対する債権について,回収ないし放棄をせざるを得ない状況にあったから,基本通達9-4-2の要件と本件の事実関係を検討しても,その適用の前提となる事実がないとの原判決の判断は誤っている。

  (2) 被控訴人の主張

   ア 争点(1)(本件債権放棄額が貸倒損失の額に該当するか否か)について

    (ア) 基本通達9-6-1(4)(回収不能の債権の免除に係る貸倒損失)について

     a 本件子会社2社の資産状況や支払能力等について

       控訴人は,原判決が,本件貸付金等債権に対する本件子会社2社の返済能力について,本件子会社2社の売上高や売上総力等で判断したことは誤りである旨主張する。

       しかしながら,原判決は,本件子会社2社の売上高や売上総利益等を考慮して,本件貸付金等債権の全額が客観的に回収可能であったか否かを総合的に判断したものであり,売上高や売上総利益の推移が1年間の経営成績を示す客観的な指標であることに変わりはないから、売上高や売上総利益等をその判断要素の一つとして判断することは妨げられない。

       また,控訴人は,原判決が預金の額を考慮していることについて,本件貸付金等債権の客観的な回収可能性を判断するに当たって,預金を考慮することが誤っていると主張するが,本件子会社2社が一定の運転資金を保有する以上,預金を考慮することは当然であるし,本件子会社2社が預金を担保に差し入れていたことについて何ら立証がないから,控訴人の主張は理由がない。

     b 本件子会社2社の財務改善について

       控訴人は,原判決が,本件財務改善計画中の製造会社3社の数値目標を,あたかも実績値のように実現確実なものとして採用している点で誤っている旨主張する。

       しかし,本件財務改善計画は,C銀行からの財務改善要請を受けた控訴人が,経営コンサルタント会社のE社へ委託の上で(乙22),複数回にわたる修正及びC銀行の理解を得て作成されたものであり,合理性又は客観的可能性を欠く計画が策定されるはずがない。

       また,控訴人は,平成21年3月末時点で休業状態であったDが本件子会社2社の保有していた事業を引き継ぎ,その後も事業を継続している(甲4の3頁,甲17,19,21)ことを踏まえておらず,このような事実からすると,本件計画が合理性又は実現可能性を欠くかのような控訴人の主張は,証拠に基づかないものである。

     c C銀行の債権放棄要請の有無について

       控訴人は,本件計画書(乙23)の記載を根拠に,本件債権放棄は本件計画書に数字上明確に表れていると主張するが,控訴人単体の財務改善計画の骨子(乙23・6頁)には,本件債権放棄を実行する旨の記載はなく,本件契約書を通してみても,本件債権放棄を実行する旨の記載は見られない。

       また,控訴人は,本件計画書上に特別損失として「うち短期貸付金評価損」986百万円が計上されていることもって,本件債権放棄が本件計画書に明記されている旨を主張するようである。しかし,そもそも「評価損」と「債権放棄」とはその性格を異にし,同義とはいえないから,「うち短期貸付金評価損」が計上されていることをもって,本件債権放棄が本件計画書に明記されているとはいえない。

       このように,控訴人の主張は,控訴人自身の憶測を述べて原判決を理由なく批判するものであって,失当である。

     d 本件債権放棄の対象となった債権の一部又は全部をDに債務として承継させることが許される状況になかったことについて

       控訴人は,C銀行の意向からすると,本件債権放棄の対象となった債権の一部又は全部をDに債務として承継させることによって,繰越欠損金による税効果を織り込んだ控訴人本体の返済余力を減じることが許される状況になかったと主張する。

       しかしながら,そもそも本件債権放棄についてC銀行からの要請はなかったから,本件債権放棄の対象となった債権の一部又は全部をDに債務として承継させることが許される状況になかったということはいえず,控訴人の主張は,前提において理由がない。

       この点を措くとしても,資本関係があることに加え,代表者を同じくする会社間においては,そうでない会社間に比して債権回収に必要な労力等はかからないから,D及び本件子会社2社がいずれも控訴人の子会社であることに鑑みて経済合理性の観点から特段の必要性があったとはいえないとの原判決の判断に不合理な点はない。

   イ 争点(2)(本件債権放棄額が寄付金の額に該当するか否か)について

    (ア) 基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)について

     a 控訴人は,原判決が,本件子会社2社が倒産の危機にあったといえないと判断したことは重大な事実誤認であると主張するが,この点に事実誤認がないことは,前記ア等において主張したとおりである。

     b 控訴人は,子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等に関するタックスアンサー(乙50号証)に沿って検討してみても,本件債権放棄は経済合理性があると主張する。

       しかしながら,本件債権放棄について,本件子会社2社が経営危機に陥っているとはいえないことはこれまで述べたとおりであるし,支援者たる控訴人にとって損失負担等を行う相当な理由があるとはいえず,損失負担等の額が必要最低限度であることについて何ら具体的な主張立証はなされていない。また,控訴人以外の本件子会社2社の債権者に対して支援を要請した形跡はうかがわれないから,債権者損失負担等をする支援者の範囲は相当といえず,損失負担等の割合も合理的とはいえないから,乙50号証に沿って検討しても,本件債権放棄が経済合理性を有しているとはいえない。

    (イ) 基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)について

      控訴人の主張は争う。

第3 当裁判所の判断

 1 当裁判所も,原審と同様に控訴人の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は,原判決44頁16行目及び18行目の「約」をそれぞれ削り,20行目の「約6億3750万円」を「6億3750万円」と改め,後記2のとおり,当審における当事者の補足的主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1ないし3(原判決38頁21行目から62頁9行目まで。別紙2並びに別表2及び3を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。

 2 当審における当事者の補足的主張に対する判断

  (1) 争点(1)(本件債権放棄額が貸倒損失の額に該当するか否か)について

   ア 基本通達9-6-1(4)(回収不能の債権の免除に係る貸倒損失)について

    (ア) 本件子会社2社の資産状況や支払能力等について

      控訴人は,原判決が,回収可能性ないし借入金の支払余力において着目すべき会計費目を取り違えているとし,原判決が,本件子会社2社の資産状況や支払能力等を判定するに当たり,売上高や売上総利益で判定するのは誤っており,人件費等販売費及び一般管理費を控除すべきであるし,原判決が本件子会社2社の預金の額を考慮していることも誤りである旨主張する。

      そこで検討するに,法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入する際の判断枠組みは,原判決第3・1(2)アにおいて判示するとおりであり,その際に,債務者の資産状況,支払能力等もその要素として考慮すべきところ,その判断に当たって,債務者である本件子会社2社の売上高及び売上総利益の推移を一つの事情として判断することが誤っているということはできない。

      控訴人は,売上総利益が直ちに返済に充てられるものではないとして原判決を批判するが,原判決も,売上総利益の全額を債権者への支払に充てることを前提に判断しているものではなく,売上高や売上総利益の推移のほか,預金額や借入額の推移,債権者数,債権者が控訴人及びその子会社のみであること等を踏まえて、本件子会社2社の資産状況や支払能力等を判断しているものであり,控訴人の批判は的確なものとはいえない。しかも,証拠(乙8ないし12,16ないし18)によれば,原判決第3・1(2)イ(ア)のとおり,本件子会社2社について,販売費及び一般管理費等を控除した税引後の当期純利益の推移についてみても,Bについては,平成16年12月期から平成20年12月期まで毎年利益が計上されており,Aについては,平成16年12月期から平成18年12月期までは利益が計上されており,平成19年12月期及び平成20年12月期について,損失が計上されているものの,平成19年12月期は特別損失を計上したことが損失計上の要因となっていると認められるから,販売費及び一般管理費を控除したとしても,原判決の判断に影響を与えるものとはいい難い。

      また,預金についても,会社にとって重要な資産であることは明らかであって,これを直ちに返済に充てることができるか否かはともかく,本件子会社2社が一定額の預金を保有していることをもって,資産状況や支払能力等の判定の考慮要素とすることが誤りとはいえない。

      したがって,この点についての控訴人の主張は理由がない。

    (イ) 本件子会社2社の財務改善について

     a 控訴人は,原判決が,本件計画中の製造会社3社の数値目標である改善額をもって,数千万円規模の財務改善が見込まれていると判示しているが,前記改善額は飽くまで目標にすぎないのであり,これをあたかも実績値のように採用している点で誤っていると主張する。

       しかしながら,本件計画の作成経緯は,原判決第2・2(2)ないし(5)に判示するとおりであり,控訴人がC銀行からの財務改善要請を受け,C銀行の推薦した経営コンサルタント会社の一つである(乙40)E社へ委託して財務改善計画書第1案を作成し,その後,C銀行からの指摘を受けて内容を再検討し,第2案を作成したが,更にC銀行の意向を踏まえて同最終案を作成し,C銀行を含めた全ての取引金融機関の了承を得たものである。したがって,控訴人の財務改善計画は,経営コンサルタント会社が関与し,C銀行を含む全ての取引金融機関も了解したものであって,客観的な資料に基づいて策定された相応の根拠のあるものとうかがわれるから,本件計画の数値目標を本件債権放棄時における見込み額として考慮することが誤りということはできない。

     b また,控訴人は,原判決が,一方において,金銭債権の貸倒損失を法人税法上の損金に算入するには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならないと判示しながら,他方において,単なる計画ないし見通しにすぎない製造会社3社の集約計画の数値目標を財務改善計画の立案時までの財務の実績等の客観的事情と区別せずに判断の基礎に取り込んでおり,判断の枠組みと事実認定に食い違いがあるとも主張する。

       本件債権放棄時における客観的な回収可能性の判断をするには,その時において既に発生している事実のみならず,将来にわたる財務改善の見込み等,事後の事実をも考慮することは必要なことであり,その際,将来にわたる財務改善の見込みについて,債権放棄の時点における相応の根拠のある数値によることが必要であるとはいえるものの,将来の改善見込み額を考慮すること自体が許されないということはできないものであり,そのような認定をしたことをもって,判断枠組みと事実認定の間に食い違いをもたらすということはできない。

       そして,本件計画における財務改善見込み額が相応の根拠のあるものであることは前記aにおいて判示するとおりである。

     c したがって,この点についての控訴人の主張を採用することはできない。

    (ウ) C銀行の債権放棄要請の有無について

      控訴人は,C銀行が債権放棄を要請していないと認定したことについて,原判決は,財務改善計画策定中にもかかわらず,控訴人自身の当座貸越残高を手形貸付けに変更し,当座貸越契約を解除されていること,本件債権放棄により,控訴人本体に生じる繰越欠損金の税効果を踏まえて本件計画上の返済計画が立案されていることを看過している点で誤っていると主張する。

      しかしながら,控訴人主張に係る点は,証拠(甲6,45)からうかがわれないではないが,仮にそうした事実があったとしても,そうした事実は,C銀行が控訴人グループの財務改善を求めていたことを裏付けるものではあっても,本件債権放棄を求めていたことまで根拠付けるものということはできない。そして,この点について,C銀行が本件子会社2社に対する債権放棄を要請したことがなかったことは,原判決第3・1(2)イ(ウ)において判示するとおりである。

    (エ) 本件債権放棄の対象となった債権の一部又は全部をDに債務として承継させることが許される状況になかったことについて

      控訴人は,C銀行からの要求により,本件債権の一部又は全部をDに債務として承継させることが許される状況になかったから,C銀行からの要求を考慮せず,単に事業譲渡の当事者が子会社であることをもって,「債権回収に必要な労力等の債権者側の事情や経済的な環境等」について論じることはできないと主張する。

      しかし,前記認定のとおり,C銀行から債権放棄の要請があったと認めることはできないから,債権の一部又は全部をDに債務として承継させることが許される状況になかったとの控訴人の主張は,前提において失当であって,採用し得ない。

   イ 基本通達9-6-1(2)(特別清算協定認可の決定に係る貸倒損失)について

     控訴人は,基本通達9-6-1(1)に関し,会社更生手続において,更生計画認可前に裁判所の許可を得て少額弁済を受ける代わりに当該弁済額を超える部分の金額について債権放棄を行う場合に,貸倒損失と認められており(甲37),特別清算手続における個別和解に基本通達9-6-1(2)が適用されないというのであれば,会社更生手続との相違や甲第37号証(国税庁の質疑応答事例)との関係について言及すべきであるにもかかわらず,原判決は,この点について何ら言及しておらず,理由不備の非難は免れないと主張する。

     しかしながら,原判決は,原判決第3・1(1)イのとおり,会社更生法,民事再生法はもとより特別清算の法的整理の手続において更生計画認可,特別清算協定認可等裁判所の決定に基づき法人の有する金銭債権が消滅する場合には,当該債権の消滅に係る協定及び計画の内容の合理性が法令の規制及びこれに係る裁判所の審査と決定によって客観的に担保されている一方,特別清算手続における個別和解について,そのような法令の規制及び裁判所の審査と決定を欠いている旨の判示をしており,会社更生手続における債権の消滅と特別清算手続における個別和解との相違について判断していることが明らかである。

     そして,原判決の前記判示は,会社更生手続及び特別清算手続の個別和解に関する法令に照らし相当なものであるから,控訴人の主張は的外れというほかない。

  (2) 争点(2)(本件債権放棄額が寄付金の額に該当するか否か)について

   ア 基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)について

    (ア) 控訴人は,本件計画書が客観的に合理的であるとの判断が前提において誤っており,このような事実誤認に基づいて,本件子会社2社が倒産の危機にあったといえないとの判断は重大な事実誤認であると主張する。

      しかしながら,本件計画が客観的に合理的なものであることは,前記(1)ア(イ)aにおいて判示するとおりであり,これを踏まえて,本件子会社2社が倒産の危機にあったとは認められないとした原判決の判断が誤っているということはできない。

    (イ) また,控訴人は,乙第50号証の検討項目に沿ってみても,本件債権放棄は合理性を有していると主張する。

      そこで検討するに,乙50号証は,国税庁作成に係る子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等であり,控訴人が主張するフローチャート(乙50の14枚目)は,再建支援等事案の事前相談に係る検討事項の概要を示すものであって,そのような記載内容に照らし,前記質疑応答事例等が,本件訴訟において本件債権放棄の合理性を判断する基準として的確なものか否か疑問の余地がある。

      この点を措くとしても,前記認定のとおり,本件債権放棄について,本件子会社2社が経営危機に陥っているとはいえないこと,支援者たる控訴人にとって損失負担等を行う相当な理由があるとはいえないこと等の事実からすると,乙50号証に沿って検討しても,本件債権放棄が経済合理性を有しているとはいえない。

      したがって,この点の控訴人の主張には理由がない。

   イ 基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)について

     控訴人は,本件債権放棄が時期的に事業譲渡や旧会社についての清算手続の開始後であることをもって,基本通達9-4-2にいう「再建」に当たらないと判断するのは形式的すぎるとし,書籍(乙48)においても,本件と同様の方式の場合に,基本通達9-4-2の適用を認めている旨の主張をする。

    しかしながら,前記書籍は,本件のような子会社の解散後に親会社が子会社に対する債権放棄をする場合について,基本通達9-4-2の適用がある旨を述べているものではないから,前記書籍を根拠とする控訴人の主張は理由がない。

 2 控訴人はその他種々主張するが,いずれも前記認定及び判断を左右するものではない。

第4 結論

   よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

    東京高等裁判所第1民事部

        裁判長裁判官  深見敏正

           裁判官  吉田尚弘

           裁判官  餘多分宏聡

 

岩井伸晃裁判長不当判決 東京地裁平成29年 法人税更正処分取消請求事件

岡村ほか「租税法 第二版」有斐閣・2020年登載 渕講義439頁

【事件番号】       東京地方裁判所判決/平成25年(行ウ)第414号

【判決日付】       平成29年1月19日

【判示事項】       1 親会社がその企業グループの財務改善計画の一環として行った子会社の事業譲渡に伴って当該子会社に対して有する債権の全額を放棄した場合において,当該債権の額につき,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)22条3項3号所定の「当該事業年度の損失の額」に含まれる貸倒損失に該当するものとして損金の額に算入することはできないとされた事例

             2 親会社がその企業グループの財務改善計画の一環として行った子会社の事業譲渡及び解散に伴って当該子会社に対して有する債権の全額を放棄した場合において,当該債権の額につき,法人税法37条1項所定の「寄附金の額」に該当しないものとして損金の額に算入することはできないとされた事例

【判決要旨】       1 親会社がその企業グループの財務改善計画の一環として行った子会社の事業譲渡に伴って当該子会社に対して有する債権の全額を放棄した場合において,当該子会社の資産状況や支払能力等,債権者らの当該子会社との企業グループ関係や債権回収に未着手の状況等,当該親会社の主要取引銀行による財務改善要請の内容等の経済的環境等に照らし,当該親会社が無条件に当該債権の放棄に係る損失を全額負担することに経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認められないという判示の事情の下では,当該債権の額につき,法人税法22条3項3号所定の「当該事業年度の損失の額」に含まれる貸倒損失に該当するものとして損金の額に算入することはできない。

             2 親会社がその企業グループの財務改善計画の一環として行った子会社の事業譲渡及び解散に伴って当該子会社に対して有する債権の全額を放棄した場合において,当該子会社の資産状況や支払能力等,債権者らの当該子会社との企業グループ関係や債権回収に未着手の状況等,当該親会社の主要取引銀行による財務改善要請の内容等の経済的環境等に加え,当該親会社が当該事業譲渡の内容や条件について主体的かつ自由に判断できる立場にあったこと等に照らし,当該親会社による当該債権の放棄は経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難いという判示の事情の下では,当該債権の額につき,法人税法37条1項所定の「寄附金の額」に該当しないものとして損金の額に算入することはできない。

【参照条文】       法人税法(平22法6号改正前)22-3

             法人税法(平22法6号改正前)37-1

【掲載誌】        判例タイムズ1465号151頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】       ジュリスト1518号199頁

             税経通信72巻13号207頁

             税務弘報65巻13号150頁

 

       主   文

 

 1 原告の請求を棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   青森税務署長が平成23年5月24日付けで原告に対してした平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス11億8294万6785円を超える部分及び翌期に繰り越す欠損金額11億8294万6785円を下回る部分を取り消す。

第2 事案の概要

   本件は,原告が,原告の子会社である角弘三協サッシ株式会社(以下「角弘三協サッシ」という。)及び株式会社角弘スチール加工センター(以下「角弘スチール」といい,角弘三協サッシと併せて「本件子会社2社」という。)に対して有する債権の放棄(以下「本件債権放棄」という。)をし,その放棄された債権の額9億9479万5646円(以下「本件債権放棄額」という。)を損金の額に算入して平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)に係る法人税の確定申告をしたところ,青森税務署長(以下「処分行政庁」という。)から,本件債権放棄額は本件子会社2社に対する法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)37条の寄附金の額に該当するとして,法人税の更正処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,被告に対し,本件処分の一部(原告主張の所得金額を超える部分及び原告主張の繰越欠損金額を下回る部分)の取消しを求める事案である。

 1 関係法令の定め等

  (1) 法人税法

   ア 法人税法22条1項は,内国法人(国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう(同法2条3号)。以下同じ。)の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨を定めている。

   イ 法人税法22条3項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,次に掲げる額とする旨を定めている。

    (ア) 当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他これらに準ずる原価の額(1号)

    (イ) 上記(ア)に掲げるもののほか,当該事業年度の販売費,一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額(2号)

    (ウ) 当該事業年度の損失の額で資本等取引(後記エ参照)以外の取引に係るもの(3号)

   ウ 法人税法22条4項は,上記イ(ア)ないし(ウ)に掲げる額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨を定めている。

   エ 法人税法22条5項は,上記イ(ウ)の資本等取引とは,法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引及び法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律115条1項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)をいう旨を定めている。

   オ 法人税法37条1項は,内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(同条2項の規定の適用を受ける連結完全支配関係がある連結法人に対して支出した寄附金の額を除く。)の合計額のうち,その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は,当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入しない旨を定めている。

   カ 法人税法37条7項は,上記オの寄附金の額は,寄附金,拠出金,見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず,内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費,接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする旨を定めている。

  (2) 法人税法施行令

   ア 法人税法施行令73条3項は,同条1項各号に規定する所得の金額は,内国法人が当該事業年度において支出した法人税法37条7項(寄附金の意義)に規定する寄附金の額の全額は損金の額に算入しないものとして計算するものとする旨を定めている。

   イ 法人税法施行令78条は,法人税法37条7項(寄附金の意義)に規定する寄附金の支出は,各事業年度の所得の金額の計算については,その支払がされるまでの間,なかったものとする旨を定めている。

  (3) 法人税基本通達(昭和44年5月1日付け直審(法)25(例規))(以下「基本通達」という。)

   ア 9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)

     基本通達9-4-1は,法人がその子会社等(当該法人と資本関係を有する者のほか,取引関係,人的関係,資金関係等において事業関連性を有する者を含む。以下同じ。)の解散,経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下,併せて「損失負担等」又は「債権放棄等」という。)をした場合において,その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは,その損失負担等により供与する経済的利益の額は,寄附金の額に該当しないものとする旨を定めている。

   イ 9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)

     基本通達9-4-2は,法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下,併せて「無利息貸付け等」又は「債権放棄等」という。)をした場合において,その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは,その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は,寄附金の額に該当しないものとする旨を定めている。

     なお,基本通達9-4-2は,上記の合理的な再建計画かどうかについては,支援額の合理性,支援者による再建管理の有無,支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について,個々の事例に応じ,総合的に判断するものとし,例えば,利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は,原則として合理的なものと取り扱う旨を注記している。

   ウ 9-6-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)

     基本通達9-6-1は,法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には,その金銭債権の額のうち下記に掲げる金額は,その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する旨を定めている。

         記

  (1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において(以下,更生計画及び再生計画を併せて「更生計画等」といい,更生計画認可及び再生計画認可を併せて「更生計画認可等」という。),これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

  (2) 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において(以下,この協定を「特別清算協定」といい,この認可を「特別清算協定認可」という。),この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

  (3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

   イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債権者の負債整理を定めているもの

   ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

  (4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し,その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において,その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

  (1) 当事者等

    原告は,建設関連資材卸及び石油燃料販売等を業とする法人であり,原告の子会社等合計12社との間で企業グループ(以下「角弘グループ」という。)を形成していた。

    本件子会社2社及び角弘エスアンドエー株式会社(平成21年2月25日の変更前の商号は東北ホームイング株式会社。以下,商号変更の前後を問わず「エスアンドエー」という。)は,いずれも原告の子会社であり,株式会社青森サンキョウ(以下「青森サンキョウ」という。)も,同年10月31日に解散して平成22年2月15日に清算を結了するまでは原告の子会社として事業を行っていた。

    原告の事業年度は,毎年4月1日から翌年3月31日までであり,本件子会社2社の事業年度は,毎年1月1日から同年12月31日までである(乙3,4,弁論の全趣旨)。

  (2) 原告の財務改善計画書(第1案)の作成経緯

   ア 原告は,平成20年3月25日,経営コンサルタント会社である株式会社グラックス・アンド・アソシエイツ(以下「グラックス社」という。)との間で,角弘グループの財務調査業務,同グループの所有する不動産の評価業務及びこれらの調査結果を踏まえた同グループの財務改善計画書の作成業務を委託した(乙22,弁論の全趣旨)。

   イ グラックス社は,原告に対し,平成20年7月30日付け角弘グループ財務改善計画書(第1案)(以下「本件計画書第1案」という。)を策定した。本件計画書第1案の内容は,おおむね以下のとおりである。(乙3)

    (ア) 角弘スチールは,その営む事業を原告に譲渡し,その後,特別清算をする。

    (イ) 角弘スチールの事業譲渡及び特別清算により,角弘スチールは製造機能に集中し,原告が営業機能を担当することによるシナジー効果の発揮及び税務メリット(事業税等の税負担の軽減並びに子会社の特別清算を通じた貸倒損失及び株式の評価減の損金処理)という効果が見込まれる。

    (ウ) 財務改善策として,原告の自己資本の増強を図るため,原告が財務体質の良好な子会社である株式会社ビジネスサービス(KBS)と合併する。

  (3) 原告の財務改善計画書(第2案)の作成経緯

   ア 原告のメインバンクである株式会社青森銀行(以下「青森銀行」という。)は,本件計画書第1案を了承せず,平成20年8月22日,原告に対し,原告の回収不能な債権についての処理方法の明確化,角弘グループで行っている不採算事業からの撤退及び従業員のリストラを含む抜本的な収益改善策並びに青森銀行からの貸付金を10年程度で返済することを織り込んだ財務改善策を策定するよう要請した。なお,青森銀行は,同年9月8日,原告の当座貸越契約の一部を解除して手形貸付けに切り替えるとともに貸付利率を0.125パーセント引き上げることを決定した。(甲4,9,弁論の全趣旨)

   イ 原告とグラックス社は,上記アの要請を受けて,平成20年12月9日付け角弘グループ財務改善計画書(第2案)(以下「本件計画書第2案」という。)を策定した。本件計画書第2案の内容は,おおむね以下のとおりである。(乙4)

    (ア) 本件子会社2社及び青森サンキョウ(以下「角弘子会社3社」という。)が,その営む事業を原告に譲渡し,その後,それぞれ特別清算をする。

    (イ) 角弘子会社3社の原告に対する事業譲渡により,原告の営業力をいかした販売強化及び管理費用の圧縮ないし削減を通じて収益力の改善を図る。

      角弘スチールについては特別清算による「負の遺産」の一括処理を行い,角弘三協サッシ及び青森サンキョウの営む事業については,上記事業譲渡によっても収益が改善しない場合には,同事業からの撤退を検討する。

  (4) 角弘子会社3社の事業譲渡に係る経緯

   ア 青森銀行は,平成20年12月24日,本件計画書第2案につき,角弘グループ内の不採算事業からの撤退を再度求め,原告の債務超過の解消と有利子負債の圧縮の観点から角弘子会社3社の事業継続の必要性について再度検討した上で財務改善計画案を策定するよう要請した。これに対し,原告は,平成21年1月22日,青森銀行に対し,角弘子会社3社の事業譲渡先をエスアンドエーに変更した上で,角弘子会社3社を清算するとともに,原告が本件子会社2社に対して有する債権を放棄するという内容の計画案に変更したい旨の打診をした。青森銀行は,同年2月3日,原告に対し,角弘子会社3社の事業統合では現状と変わらず,財務改善の効果がない旨を指摘した。(甲4,弁論の全趣旨)

   イ 原告は,青森銀行からの上記アの指摘を受けた後も,角弘子会社3社の事業統合が必要であるとの方針を変更せず,以下のとおり,角弘子会社3社の事業譲渡(以下「本件事業譲渡」という。)を実施した(甲4,弁論の全趣旨)。

    (ア) 角弘子会社3社は,平成21年2月17日,エスアンドエーとの間で,それぞれの事業の全部を同年3月31日付けでエスアンドエーに譲渡する旨の契約を締結した(乙6,14,20)。

    (イ) 本件事業譲渡に係る譲渡すべき財産,譲渡の対価及び決済方法等の項目については,譲渡契約締結後,別途協議の上で決定することとされ,平成21年4月24日には角弘スチールが,同年5月8日には角弘三協サッシが,それぞれエスアンドエーとの間で上記項目につき覚書を作成した。本件子会社2社の事業譲渡に係る譲渡の対価及び決済方法に関する覚書の内容は,以下のとおりである。(乙24,26)

     a 角弘スチール分

       事業譲渡の対価は8億1961万0659円(譲渡資産時価総額7億8530万0750円及びのれん3430万9909円の合計)とし,上記譲渡の対価の額は,エスアンドエーが角弘スチールから譲り受ける負債の金額と一致するため,角弘スチールとエスアンドエーの間における金銭の授受はないものとする。

     b 角弘三協サッシ分

       事業譲渡の対価は2億8619万5761円(譲渡資産時価総額2億5873万6215円及びのれん2745万9546円の合計)とし,上記譲渡の対価の額に係る債務については,エスアンドエーが角弘三協サッシから譲り受ける負債とその対当額について相殺する。

  (5) 原告の財務改善計画書(最終案)の作成経緯

   ア 原告は,本件事業譲渡の契約締結を受けて,角弘子会社3社の事業譲渡先をエスアンドエーとする財務改善計画書(最終案)を策定し,平成21年3月3日,青森銀行に対し,これを提示し,同月12日,同銀行の了承を得て,同月16日から同月26日にかけて,全ての取引金融機関に対し,上記の最終案の内容を説明し,了承を得た(甲4,弁論の全趣旨)。

   イ 原告は,上記アの最終案を基に,以下の内容の平成21年5月26日付け角弘グループ財務改善計画書(以下「本件計画書」といい,これに基づく角弘グループの財務改善計画を「本件計画」という。)を策定し,青森銀行にこれを提出し,同年8月24日に同銀行の同意を得た(甲4,乙23,弁論の全趣旨)。

    (ア) 角弘子会社3社は,その営む事業を,原告ではなく,休眠中であるエスアンドエーに譲渡し,1社に集約(従業員の引受けを含む。)をすることにより,コストないし管理費用の削減及び収益管理の徹底ないし強化を行い,収益力の改善を図る(なお,角弘子会社3社の金融機関からの借入金については,エスアンドエーが全て承継する。)。角弘子会社3社については,本件事業譲渡後に特別清算をすることとし,これに伴い,原告は,本件子会社2社に対して有する不良債権を損失処理する。なお,エスアンドエーが承継した事業の収益が本件事業譲渡後も改善しない場合には,同事業からの撤退を検討する。

    (イ) 本件事業譲渡及び特別清算の主なスケジュールについては,以下のとおりとする(なお,上記スケジュールは,飽くまでも本件計画書の策定時における目安であり,実際の実施に当たっては若干異なることがあるとされている。)。

     a 平成21年2月

       角弘子会社3社につき,取締役会及び株主総会において本件事業譲渡の承認を得て事業譲渡契約を締結する(本件計画書上,実施済みとされている。)。

     b 平成21年3月末

       不動産及び動産の個別移転手続,債権譲渡及び債務引受の手続,従業員雇用契約の締結等(本件計画書上,実施済みとされている。)

     c 平成21年4月1日

       角弘子会社3社の事業譲渡の効力発生日

     d 平成21年秋口

       株主総会(解散決議)

     e 平成22年3月末まで

       角弘スチール及び青森サンキョウに係る特別清算の申立て

     f 平成23年3月末まで

       角弘三協サッシに係る特別清算の申立て

    (ウ) 角弘子会社3社からエスアンドエーへの事業統合後は,製造会社の集約による管理コストの削減等により5532万円の財務改善効果を見込むとともに,売上高の増加を目指し,償却前経常利益は,平成21年12月期(ただし,同年4月1日から同年12月31日までの9か月間)においては6700万円,平成22年12月期においては8500万円,その後の事業年度においては9400万円ないし9500万円の達成を目指すものとする。

  (6) 本件子会社2社の解散及び特別清算

   ア 角弘スチールについて

    (ア) 角弘スチールは,平成21年11月27日,臨時株主総会の決議により,同月30日をもって解散することとされた(乙28)。

    (イ) 角弘スチールは,平成21年12月24日,青森地方裁判所に対し,特別清算開始の申立てをし,同裁判所は,平成22年1月20日,角弘スチールにつき,特別清算の開始を決定した(甲23,乙13)。

   イ 角弘三協サッシについて

    (ア) 角弘三協サッシは,平成21年10月23日,臨時株主総会の決議により,同月31日をもって解散することとされた(乙29)。

    (イ) 角弘三協サッシは,平成21年12月3日,仙台地方裁判所に対し,特別清算開始の申立てをし,同裁判所は,同月17日,角弘三協サッシにつき,特別清算の開始を決定した(甲25,乙19)。

  (7) 原告による本件子会社2社に対する貸付金等債権の放棄(本件債権放棄)

   ア 原告は,平成22年2月10日,臨時取締役会の決議により,角弘三協サッシに対する貸付金等債権3億5155万3294円(短期貸付金9086万0520円,未収入金(土地売掛金)1億6619万2774円及び長期貸付金9450万円の合計額。なお,後記(9)のとおり,正確な合計額は3億5201万7720円であった。)及び角弘スチールに対する短期貸付金債権6億4277万7926円(以下,併せて「本件貸付金等債権」という。)の全額をそれぞれ放棄することを決定した(乙30,31)。

   イ 角弘三協サッシは,平成22年2月25日,上記アの債権放棄(角弘三協サッシ分)に係る契約を締結することにつき,仙台地方裁判所の許可を得た上で,同年3月1日,原告との間で,同契約を締結した(甲26,39,乙32)。

   ウ 角弘スチールは,平成22年3月2日,上記アの債権放棄(角弘スチール分)に係る契約を締結することにつき,青森地方裁判所の許可を得た上で,同月3日,原告との間で,同契約を締結した(甲24,38,乙33)。

  (8) 本件子会社2社の特別清算の終結

   ア 角弘スチールは,平成22年3月15日,青森地方裁判所から特別清算終結決定を受け,同年4月10日,同決定は確定した(甲4,乙7,弁論の全趣旨)。

   イ 角弘三協サッシは,平成22年3月11日,仙台地方裁判所から特別清算終結決定を受け,同年4月8日,同決定は確定した(甲4,乙15,弁論の全趣旨)。

  (9) 本件処分等の経緯

    本件処分等の経緯は,次に掲げるもののほか,別表1のとおりである。

   ア 原告は,平成22年3月31日,角弘三協サッシに対する貸付金及び土地売掛金に係る債権合計3億5201万7720円(上記(7)アの金額がこれと異なるのは,上記(7)アの臨時取締役会議事録及び同イの債権放棄契約書の各作成時における計算の誤りによるものであり,上記(7)アの未収入金(土地売掛金)1億6619万2774円の正確な額は1億6665万7200円である。)及び角弘スチールに対する貸付金債権6億4277万7926円の合計9億9479万5646円(本件債権放棄額)を「その他の特別損」勘定に損失として計上した(乙34,弁論の全趣旨)。

   イ 処分行政庁は,平成23年5月24日,原告に対し,本件子会社2社に対する債権放棄により計上した上記アの特別損失の合計額9億9479万5646円(本件債権放棄額)は本件子会社2社に対する経済的利益の供与として寄附金の額に該当するとして,更正処分(本件処分)をした(甲2)。

   ウ 原告は,平成23年7月15日,国税不服審判所長に対し,本件処分の一部について審査請求をしたが,同所長は,平成25年3月25日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲3,4,弁論の全趣旨)。

  (10) 本件訴えの提起

    原告は,平成25年7月5日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。

 3 税額等に関する当事者の主張

   被告が本件訴訟において主張する本件処分に係る課税の根拠及び計算は別紙2「課税の根拠及び計算」記載のとおりであるところ,原告は,後記4の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。

 4 争点

   本件の争点は,原告が本件債権放棄額を損金の額に算入すること(以下「損金算入」ともいう。)の可否であり,具体的な争点は,以下のとおりである。

  (1) 本件債権放棄額が貸倒損失の額に該当するか否か

  (2) 本件債権放棄額が寄附金の額に該当するか否か

 5 争点に関する当事者の主張の要旨

  (1) 争点(1)(本件債権放棄額が貸倒損失の額に該当するか否か)について

   (被告の主張の要旨)

   ア 基本通達9-6-1(2)(特別清算協定認可の決定に係る貸倒損失)について

    (ア) 個別和解手続への適用の可否について

      基本通達9-6-1は,所定の事由が発生した場合には,法人の有する金銭債権の額が消滅することとなるので,これらの金額をその事実発生の日の属する事業年度において損金の額に算入することとしたものであるところ,基本通達9-6-1(2)に特別清算協定認可の決定が掲げられているのは,裁判所の決定に至る過程において当事者間の公平が担保されていること(関係者集会や債権者集会が必ず開催され,複数の債権者等による合意等の形成が法律上予定されていること),私的自治が大幅に修正されていること(個別の当事者の意思にかかわらず権利が消滅すること等)に基づくものであり,個別和解による本件債権放棄は,上記の場面とは異質のものというほかない。

      原告は,特別清算手続における裁判所の許可の下で行われる個別和解(会社法535条1項4号)についても基本通達9-6-1(2)が適用されるべきである旨主張するが,上記の個別和解については,飽くまでも協定の認可とは別個の手続であり,当事者間の公平を担保し又は私的自治を修正するための規定も見当たらないから,基本通達9-6-1(2)の趣旨に合致しない。特別清算手続が税務対策手段として一般的に利用されている実情があるとしても,特別清算手続を利用すれば,子会社の整理に関する親会社の負担額を無条件に損失に算入することができるわけではなく,基本通達等の要件を満たすことが必要となる以上,上記の実情を理由に本件債権放棄に係る個別和解が基本通達9-6-1(2)の適用を受けるということはできない。

      なお,個別和解による債権放棄が,債務超過の子会社を整理するためにその親会社により行われた場合には,後記イにおいても述べるように,それに伴って生じた損失は,一般的には,基本通達9-4-1の適用によって処理されるべきである(ただし,本件においては,後記(2)(被告の主張の要旨)ア(ア)において主張するとおり,基本通達9-4-1の適用の前提を欠くから,その適用を受けない。)。

    (イ) したがって,本件債権放棄額については,基本通達9-6-1(2)の適用により損金の額に算入することはできないというべきである。

   イ 基本通達9-6-1(4)(回収不能の債権の免除に係る貸倒損失)について

    (ア) 適用範囲の限定の有無について

      上記アにおいて主張したとおり,個別和解による債権放棄が,債務超過の子会社を整理するためにその親会社により行われた場合には,それに伴って生じた損失は,一般的には,基本通達9-4-1の適用によって処理されるべきであるから,本件債権放棄額につき,基本通達9-6-1(4)は適用されないというべきである。

    (イ) 本件における基本通達9-6-1(4)の要件該当性について

     a 仮に,本件において基本通達9-6-1(4)が適用されるとしても,金銭債権の貸倒損失を損金の額に算入するには,単に当該金銭債権の債務者につき債務超過の状態が継続しているだけでは足りず,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならない。そして,法人税法33条2項等が預貯金,貸付金,売掛金その他の債権を評価損の損金算入の対象から除外していることからすると,金銭債権の一部の貸倒れを損金の額に算入することは許されないと解されるところ,以下の事情に照らすと,本件債権放棄額の全額が回収不能であることが客観的に明らかであり将来的にも弁済を受ける見込みがなかったものとは認められないというべきである。

      (a) 角弘スチールにおいては,売上金額が増加傾向にあり,平成20年12月期以前の税引後当期利益は2000万円超であった上,平成16年12月期以降,借入金の額も減少傾向にあった。加えて,同社の事業を承継するエスアンドエーにおいても,角弘スチールとの関係で1690万円の経費削減等を見込んでいたため,更なる財務状況の改善が可能であった。

      (b) 角弘三協サッシにおいては,平成19年及び平成20年の各12月期に損失を計上しているものの,平成18年12月期以前は利益を計上しており,上記損失も売上が減少する中で労務費や人件費を削減することができなかったことが要因と考えられるところ(なお,平成19年12月期については,機械の入替えに伴い特別損失が発生したこともその要因であった。),平成21年当時においても角弘三協サッシが原告から借入れをする際に売掛金の回収等による返済を見込んでいたこと,角弘三協サッシの事業を承継するエスアンドエーが当該事業につき人件費や設計外注費1662万円の削減等を見込んでいたことからすれば,更なる財務状況の改善が可能であった。

      (c) 原告は,角弘子会社3社の事業を存続させることが必要との認識を持ち,角弘子会社3社の事業をエスアンドエーに引き継がせることを予定していたのであり,現に青森銀行から債務超過先と判断されていた本件子会社2社も倒産又は休業をすることなく営業を継続していたから,その債務超過が当然に債権の回収不能に結び付くものではなく,本件事業譲渡の際に本件債権放棄に係る債権もエスアンドエーに引き継がせてその回収を図ることは十分に可能であった。

      (d) 角弘子会社3社から事業譲渡を受けたエスアンドエーは,本件計画上,事業統合後約9000万円前後の償却前経常利益を計上する見込みであり,当該利益は,本件事業譲渡がなければ,本件債権放棄に係る原告の本件子会社2社に対する債権の返済の財源となり得るものであった。

      (e) 本件子会社2社の主たる債権者は原告や原告のグループ会社であったが,原告らが直ちに債権を回収しようとしていた状況や,原告ら以外の債権者に対する債務の支払が困難となっていた事情はなく,原告が本件子会社2社に対して支払猶予や利息の免除をすれば債権放棄と同様の資金繰りが得られたはずであった。

     b 原告は,何とか利益を計上するために本件計画を策定して本件事業譲渡を実行したのであり,通常の回収努力を払わずに意識的に貸倒損失として処理したわけではないから,基本通達9-6-1(4)の適用上問題はないなどと主張するが,原告は,本件計画を通じて,計画的に本件子会社2社に実態のない資産と原告に対する負債のみを残し,実質的な倒産状態を生じさせたものであるところ,本件事業譲渡により,本件子会社2社から債権の回収見込みがなくなるのは当然であって,原告が本件子会社2社及びエスアンドエーの親会社であり,本件計画の策定及び実行を主体的に決定できる立場にあったことからすれば,原告は,通常の回収努力も払わずに意識的に本件債権放棄をして貸倒損失に計上したというべきであり,最終的に債務超過となったからといって,本件債権放棄額につき貸倒損失としての損金算入が認められるべきではない。

    (ウ) 損金算入の時期について

      上記(イ)の点をおくとしても,貸倒損失の損金算入については,前事業年度に債権の回収不能又は放棄の事実が確定したものを後の事業年度に繰り越して損金の額に算入することは許されず,法人の意図的又は恣意的な利益調整を排除した上で,その計上時期を厳密にしなければならないところ,本件では,原告の主張を前提とすれば和解契約締結のはるか以前に回収不能と判断された金銭債権の額について,事後に本件債権放棄に係る書面があることを理由として,本件事業年度における損金の額への算入を求めるものであって,このような損金算入は許されないものというべきである。

    (エ) したがって,本件債権放棄額については,基本通達9-6-1(4)の適用により損金の額に算入することはできないというべきである。

   (原告の主張の要旨)

   ア 基本通達9-6-1(2)(特別清算協定認可の決定に係る貸倒損失)について

    (ア) 個別和解手続への適用の可否について

      本件債権放棄は,特別清算手続において裁判所の許可に基づき行われた個別和解に基づくものであるところ,基本通達9-6-1(2)は,特別清算が,私的整理とは異なり,裁判所の厳重な監督の下において,特別清算会社の資産と負債を無にして会社を清算させる手続であるため,恣意的な判断や財務上の不正が行われ難いことから,法人税法上,当該手続によって法律上消滅した金銭債権については,当然にその全額を損金の額に算入することを認めたものである。

      そして,子会社を整理する際には,債権者である親会社が自己の債権を貸倒れとして損金の額に算入するために特別清算手続を利用するいわゆる対税型の手法が実務上定着しており,この場合における債権者は親会社のみであることが多いことから,会社法570条による協定の認可ではなく裁判所の許可に基づく個別和解により債権を消滅させることがほとんどであり,このようにして消滅した債権額については,基本通達9-6-1(2)により貸倒損失として損金算入を認める旨の運用が実務上定着している。このことは,基本通達9-6-1(2)と同趣旨の規定である基本通達9-6-1(1)(更生手続に関するもの)において,更生計画認可前に裁判所の許可を受けて行う少額弁済により債権者が放棄することになる弁済額超過部分の債権額が,貸倒損失として損金の額に算入されるものとされていることからも裏付けられる。

      被告は,本件債権放棄に係る個別和解については,特別清算協定認可の決定がない以上,基本通達9-6-1(2)の適用を受けないなどと主張するが,個別和解も,特別清算協定認可の決定と同様に,裁判所の許可を受けた特別清算手続の一環として裁判所の監督の下で行われるものであり,特別清算協定認可は,債権者集会によって出席債権者の過半数及び総債権額の3分の2以上の債権者の同意を得ることが要件とされているところ,本件債権放棄当時における本件子会社2社の債権者は原告及びその子会社(エスアンドエー)のみであったから,裁判所の許可に基づいて行われた上記個別和解は,特別清算協定認可の決定と同視し得るものである(被告の主張に係る基本通達9-4-1ないし同9-4-2は,個別和解による子会社に対する債権放棄につき,その親会社が当該子会社の第三者に対する債務を肩代わりしたような場合に適用されるものであるが,本件ではそのような事情は認められないから,原則どおり,基本通達9-6-1(2)の適用を検討すべきである。)。

    (イ) 本件における基本通達9-6-1(2)の要件該当性について

      原告は,角弘スチールが特別清算開始決定を受けた後,青森地方裁判所から,原告が角弘スチールに対して有する貸付金債権の債権放棄の合意につき許可を得て,当該債権を放棄するとともに,角弘三協サッシが特別清算開始決定を受けた後,仙台地方裁判所から,原告が角弘三協サッシに対して有する貸付金及び土地売掛金債権の債権放棄の合意につき許可を得て,当該債権を放棄したものであるから,本件債権放棄は,特別清算手続における裁判所の許可に基づいて行われたものであり,基本通達9-6-1(2)の要件を満たすというべきである。

      この点については,本件子会社2社の特別清算や本件債権放棄に係る債権の回収不能状態の発生が原告の恣意的な判断によるものであれば,当該特別清算に基づいて切り捨てられた本件債権放棄額を損金の額に算入すべきでないとの評価もあり得るところである。しかしながら,本件子会社2社は,平成18年12月期の時点で実質的な債務超過(角弘スチールにつき約5億0100万円,角弘三協サッシにつき約5800万円)であると評価され,平成19年12月期の決算においても減価償却不足(角弘スチールにつき約2億4500万円,角弘三協サッシにつき約1億0900万円)による実質的な債務超過(角弘スチールにつき約6億4818万円,角弘三協サッシにつき約3億5775万円)に陥っており,原告からの資金援助により事業を継続していたものであるところ,このような状況の下において,原告は,青森銀行の強い要請により当該資金援助を継続することができなくなった結果,本件子会社2社が単体で事業継続をすることが困難な状態となったものであって,本件子会社2社に対する債権は,本件計画書第1案の策定(平成20年7月)より前から既に回収不能となっていたものである。

      なお,本件計画書上,本件事業譲渡によりその譲渡先のエスアンドエーが毎年約9000万円前後の償却前経常利益を計上する見込みとされていることからすれば,本件債権放棄に係る債権につき将来的な回収可能性があったとの評価もあり得るところであるが,これは青森銀行からの融資を継続させるために事業統合によるシナジー効果等のメリットを最大限評価して策定したものであり,客観的には,本件子会社2社の事業統合により実質的な債務超過の状態を改善できる可能性は極めて低く,本件計画書の記載をもって上記債権につき回収可能性があったと評価することはできない(本件計画書に関する被告の指摘は,本件子会社2社がそのまま存続した場合の見込みではなく,同2社がエスアンドエーに統合された後の見込みに関するものであるところ,原告において同2社の事業譲渡や事業統合をする義務を負うものではない以上,統合後の見込み等を回収可能性の判断において考慮すべきではない。)。また,エスアンドエーが本件子会社2社から承継した事業は,本件事業譲渡以前から収益性が低く,原告や角弘グループからの借入れなくして事業を継続することができない状況にあるなど,これらの借入金債務を返済するための収益を上げられておらず,現に,エスアンドエーは,本件事業譲渡の直後の決算期である平成21年12月期には約2400万円の償却前経常利益を計上しているものの,平成22年12月期及び平成23年12月期にはそれぞれ約7800万円及び約9900万円の償却前経常損失を計上しているのであるから,本件子会社2社に対する債権は,本件債権放棄の時点において,既に回収不能であり,将来的な回収可能性もなかったというべきである。

      このように,本件債権放棄に係る債権については,債権者である原告の恣意的な判断により回収不能な状態が生じたものではないから,本件債権放棄額は,基本通達9-6-1(2)の要件を満たすというべきである。

    (ウ) 損金算入の時期について

      基本通達9-6-1は,その事実の発生した日の属する事業年度を損金算入の時期と定めているから,基本通達9-6-2の場合(損金算入の時期は,債権全額が回収できないことが明らかになった事業年度とされている。)とは異なり,本件債権放棄額を損金算入すべき時期は,特別清算手続に基づく裁判所の許可による個別和解が成立した日(平成22年3月1日及び同月3日)が属する本件事業年度(平成22年3月期)である。

      本件のように,親会社が子会社を整理する場合(特に対税型の特別清算手続の場合),債権者である親会社が子会社に対する債権につき回収不能であると認識してから当該債権が法的に消滅して貸倒損失として処理されるまでの間,一定の期間が経過することになるが,これは法が当然に予定しているところであり,税務上,基本通達9-6-1による損金処理を選択した場合には,損金算入の時期についてもその通達の定めに従って判断されるのが当然であり,基本通達9-6-2に従って損金算入の時期を判断すべきではない。

    (エ) したがって,本件債権放棄額は,基本通達9-6-1(2)の適用により,貸倒損失として損金の額に算入されるべきである。

   イ 基本通達9-6-1(4)(回収不能の債権の免除に係る貸倒損失)について

    (ア) 適用範囲の限定の有無について

      一般に,法人が自己の債権を放棄した場合の処理としては,その債務者が当該法人の子会社に当たるか否かにかかわらず,当該債権につき回収可能性がない場合には貸倒損失に関する基本通達9-6-1等が適用され,回収可能性がないとはいえない場合には,原則として寄附金に該当するものの,子会社等の整理ないし再建に関する基本通達9-4-1ないし同9-4-2の適用が問題となる。そして,後記(イ)のとおり,本件債権放棄に係る債権については回収可能性がなかったというべきであるから,本件債権放棄については基本通達9-6-1(4)が適用されるというべきである。

    (イ) 本件における基本通達9-6-1(4)の要件該当性について

      以下の事情からすれば,本件債権放棄額は,その全額が回収不能であることが客観的に明らかであり将来的にも弁済を受ける見込みはなく,「債務超過の状態が相当期間継続し,その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合」に当たるので,基本通達9-6-1(4)の適用により,貸倒損失として損金の額に算入されるべきである(なお,原告の本件子会社2社に対する債権については,前記ア(イ)のとおり,債権者である原告の恣意的な判断により回収不能状態が生じたものではなく,貸倒損失の判断に当たっては,以下のとおり,債権者において「相当期間」継続して「弁済を受けることができないと認められる」という判断を要するものであるから,原告が慎重を期して特別清算手続の進捗を見極めてから本件債権放棄をしたことに何ら落ち度はない。)。

     a 基本通達9-6-1(4)における「債務超過」に当たるか否かは,簿価ではなく時価を基準に判断するものとされているところ,本件子会社2社は,前記ア(イ)のとおり,原告の財務改善計画書の策定より前から,本件事業譲渡の有無にかかわらず実質的な債務超過の状態に陥っていた。

     b また,基本通達9-6-1(4)にいう「相当期間」とは,通常,1年ないし2年の期間を指すといわれているところ,前記ア(イ)のとおり,本件子会社2社は,遅くとも平成18年12月期の時点では既に実質的な債務超過の状態に陥っており,本件計画書が策定された平成21年5月までの間に約2年6か月が経過している上,実際に本件債権放棄が行われた平成22年3月までの間に3年以上が経過しているから,本件子会社2社の実質的な債務超過の状態が相当期間継続していることは明らかである(特に,角弘スチールの原告に対する無利息の短期借入金は,角弘スチールの設立以降,増加し続け,昭和63年には債務額が8億円に達し,それ以降も所有不動産の売却利益に基づく一部返済により債務残高が約6億3750万円になったにとどまり,平成12年から本件事業譲渡が実施された平成21年までの間,上記債務は全く返済されないまま残存していた。)。

     c そして,債務超過の状態が相当期間継続していれば,通常,当該債務者は,弁済原資を有しておらず,支払能力がない状態にあると推認されるので,基本通達9-6-1(4)にいう「その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合」に当たるということができる。実際にも,前記ア(イ)及び上記bのとおり,本件子会社2社は,平成18年12月期には実質的な債務超過の状態に陥っており,原告による実質的な資金援助(支払猶予,資金注入)により事業を継続していたものの,青森銀行の強い要請により当該資金援助が中止された結果,事業継続が不可能となったものであるから,原告の本件子会社2社に対する債権は,既に回収不能なものとして上記の要件を満たすというべきである(本件計画書には,上記債権が回収可能であったかのような記載があるが,その客観的な実現可能性が極めて乏しいことは前記ア(イ)のとおりであり,本件子会社2社の事業を承継したエスアンドエーが,本件計画書上は経常利益を計上する見込みとなっていたものの,実際には平成22年12月期以降に償却前経常損失を計上していることからも明らかである。)。

    (ウ) 損金算入の時期について

      本件債権放棄額を損金算入すべき時期については,前記ア(ウ)記載のとおり,特別清算手続に基づく裁判所の許可による個別和解が成立した日(平成22年3月1日及び同月3日)が属する本件事業年度(平成22年3月期)である。

    (エ) したがって,本件債権放棄額は,基本通達9-6-1(4)の適用により,貸倒損失として損金の額に算入されるべきである。

  (2) 争点(2)(本件債権放棄額が寄附金の額に該当するか否か)について

   (被告の主張の要旨)

   ア 基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)について

    (ア) 適用範囲の限定の有無について

      基本通達9-4-1は,社会情勢等を踏まえ,子会社等の解散,経営権の譲渡等に伴い,親会社自体として今後より大きな損失を被ることを回避するためにやむを得ず債権放棄その他の損失負担等を行った場合には,その損失負担等の額は,親会社自らが生き残るために必要かつ不可欠のものとして負担したものであるとして,寄附金の額に該当しないこととしているものである。しかるところ,グループ内での事業譲渡のように実質的に子会社の経営権が移動していない場合には,第三者に経営権を譲渡する場合と異なり,当該損失負担等をしなければ経営権を譲渡できない等の事情を認めることはできず,また,損失負担等をしたとしても親会社としての経営責任は継続するため,当該損失負担等が親会社として今後より大きな損失を被ることを回避するためのものであるともいえない。したがって,上記のような場合における損失負担等は,経済的合理性がなく,親会社の存続のために必要不可欠ともいえないから,基本通達9-4-1の適用を受けないというべきである。

      そして,本件子会社2社の事業譲渡を受けたエスアンドエーが原告の完全子会社であり,エスアンドエーの代表取締役が原告代表者であることからすれば,原告は,本件子会社2社の事業を別の子会社であるエスアンドエーに統合し再編したにすぎず,本件子会社2社の経営権は移動していないので,本件債権放棄は基本通達9-4-1の適用を受けないというべきである(本件の場合,特別清算手続による本件債権放棄が,角弘グループの財務改善計画という一連の事業再編の枠組みの一環として本件子会社2社に対して行われたものであるから,本件債権放棄により生じた損失負担の寄附金該当性については,基本通達9-4-2によって判断するのが相当である。)。

    (イ) 本件における基本通達9-4-1の要件該当性について

     a 仮に,本件債権放棄に基本通達9-4-1が適用されるとしても,以下の事情からすれば,本件債権放棄は,青森銀行の要請に応じるためにやむを得ずしたものとはいえず,また,経済的合理性があるともいえないので,相当な理由があるものとは認められない。

      (a) 青森銀行は,原告に対し,財務面において債務超過及び過大債務(有利子債務)の解消を目指し,経営コンサルタントの関与の下,グループ再編,収益力の強化及び債権等のデータ管理を検討項目とした計画策定を要請したにすぎず,本件債権放棄を要請したり,本件債権放棄を含まない財務改善計画は受け入れられないなどと要求したりしていない。

【ゆっくり解説】実は全く違う植物…!?「大麦と小麦」、何が違う?を解説/大麦はなぜ主食になれなかった?麦という言葉の曖昧さと人類と進化の歴史

11月30日の岡山市の予想気温は3度から17度。


山の日は鏡のごとし寒桜 高浜虚子

中国に続き、ロシアもメンヘラ国家へ!!「仲直りした方が得!」「今合意するしかない!」ウクライナの汚職で情報工作戦更にスパート!!その背景に囚人兵すら確保困難な状況が?|上念司チャンネル ニュースの虎側

↑このページのトップヘ