戦争と国際人道法――その歴史と赤十字のあゆみ

2015年10月1日 初版第1刷発行

著者 井上 忠男(いのうえ ただお)

発行者 下田勝司

発行所 株式会社東信堂

ISBN978-4-7989-1312-4

C3032

 

目次

 

はじめに

凡例

 

序章 戦争と向き合う人類

 1.人類の歴史は戦争の歴史か

  戦争は人類最大の惨劇/戦争の負の遺産/戦争をどう理解するか

  戦争は人間の本能か/人道法は戦争を認めるのか/

  戦争の犠牲を減らせないか

 2.戦時の人道的慣行の歴史

  古代社会の人道的慣行/古代ギリシャ・ローマから中世の慣行/

  諸宗教に見られる人道的慣行

  近世における国際法の芽生え/近代人道思想の芽生え

 

 

部 国際人道法と赤十字の誕生

 

第1章ジュネーブ条約と赤十字のなりたち

 1.国際人道法の先駆者たち

  傷病兵救済への試み/南北戦争とリーバー法/

  イタリア統一戦争と赤十字思想/世界を動かした一冊

 2.国際人道法と赤十字の起源

  デュナンとその仲間たち/人道の夢追い人アンリ・デュナン/

  スイス陸軍の父デュフール将軍

  思慮深い医師モノアール/戦傷外科の権威アッピア/

  赤十字の巨魁モアニエ

 3.赤十字創設への歩み

  篤志救護隊の創設を提唱/鍵となった中立の概念/

  赤十字規約の採択へ

  各国救護社の設立/赤十字標章の誕生

 

第2章 ジュネーブ条約締結への道

 1.プロイセン・デンマーク戦争の教訓

  戦争の現実から学ぶ赤十字/

  手本となったキリスト教修道団/南北戦争の活動から学ぶ

 2.国際人道法の夜明け

  一八六四年のジュネーブ条約の締結/衛生活動の中立を宣言/

  条約の功労者を巡る論争/カトリック国も締約国に

 3.デュナンの後半生

  事業の破綻と信用の失墜/赤十字との決別

 

第3章ジュネーブ条約と赤十字の試練

 1.プロイセン・オーストリア戦争の教訓

  勝敗を決したプロイセンの火力/

  リッサの海戦の教訓/戦死者の惨状と遺族の苦悩

  戦死者の識別方法を改善/赤十字社の手引書『戦争と慈悲』/

  条約の海戦への適用を検討

  批准されなかった海戦規定/サンクト・ペテルブルク宣言

 2.主導権を発揮するプロイセン

  ビスマルクも注視した赤十字会議/

  海戦における救護の課題/平時の赤十字活動も議論

 3.赤十字と異文化の軋轢

  ジュネーブ主導への反発/

  プロテスタントとカトリックの確執/

  イスラム圏トルコの参加/標章を巡る異文化間論争

 

 

部 近代戦争と国際人道法の発展

 

第4章 近代ヨーロッパの戦争とジュネーブ条約

 1.普仏戦争の教訓

  両軍で一八万人が戦死/進んだプロイセンの衛生部隊/

  皇帝主導でジュネーブ条約を普及

  未熟だったフランス救護社/

  戦死より多かった病死者/死亡率を低下させた近代医学

 2.赤十字社の発展とデュナンのその後

  パリ市民を救済するデュナン/

  国際救援の始まりとバートン女史/

  救護社は赤十字社へ名称変更/パリ内戦が与えた影響

 3.捕虜救済と人道法の発展

  初の捕虜情報局を設置/捕虜救済の緑十字社を設立/

  ジュネーブ条約を巡る法律論争

  ブリュッセル宣言の採択/オックスフォード提要の採択

 4.東欧世界へ広がる国際人道法

  バルカン紛争とトルコ赤新月社/

  赤十字旗を切り裂くトルコ兵/赤の三日月の承認/

  セルビア・ブルガリア戦争で実績

 

第5章 近代日本とジュネーブ条約

 1.日本の赤十字とジュネーブ条約

  日本人と赤十字の出会い/

  西南の役と博愛社の設立/日本のジュネーブ条約加入

  賞賛された日本の条約普及/森鴎外の演説に〝ブラボー〟

 2.日清戦争の試練

  進む衛生活動の改善/世界が絶賛した日赤の活動/

  旅順口虐殺事件

  病院船の必要性を痛感/

  博愛丸・弘済丸の建造/義和団の乱と病院船の活躍

 3.日露戦争の人道的実践

  ロシア兵への手厚い看護/

  民間人の避難を勧告/日露赤十字社の活動

  武器の進化と傷病兵への影響/高く評価された法律顧問

 4.ジュネーブ条約の海戦への応用

 米西戦争で浮上した海戦の課題/

 一八九九年の海戦の条約の締結/病院船の保護規定を改善

  標章を巡る白熱した議論/ジュネーブ法とハーグ法の分岐点/

  一九〇六年のジュネーブ条約改訂

  一九〇七年のハーグ条約の意義

 5.国際社会と人道規範の普遍化

  人道の原則の法典化/文明国の人道と良心/

  現代に生きるマルテンス条項

 

 

部 世界大戦と国際人道法

 

第6章 大戦下の国際人道法と赤十字

 1.第一次世界大戦と未曾有の惨禍

  戦史に残る空前の世界大戦/

  欧州に日赤救護班を派遣/空襲による住民の被害

  毒ガス兵器の惨劇/毒ガス議定書の締結/

  進歩した医療技術の恩恵

 2.捕虜の待遇改善への取組み

  国際捕虜中央局を開設/抑留施設の訪問を開始/

  一九二九年の捕虜条約の締結

  平時活動での標章使用を承認/軍国主義への道

 3.第二次世界大戦と総力戦の犠牲

  国際連盟体制の挫折/史上最大の戦時救護/

  条約未批准国の捕虜の惨状

  想定越えた大量捕虜の運命/捕虜になれなかった投降敵国人民

 4.激増した民間人の犠牲者

  無差別爆撃による大量殺戮/

  ヒロシマとジュノーの活動/核兵器の使用は合法か違法か

  ホロコーストと赤十字の苦悩/閉ざされたユダヤ人救済の道

 

第7章 戦後社会と国際人道法の再出発

 1.大戦の教訓から条約の全面改訂へ

  新たな戦争違法化の歩み/新たに文民保護条約を採択/

  一九四九年のジュネーブ諸条約

 2.地域紛争と進化する国際人道法

  独立闘争と内戦の中で/ジュネーブ諸条約追加議定書への道/

  解放闘争を国際戦争と認知

  内戦の犠牲者保護を強化/第二追加議定書の意義

 3.国際人道法の精神

  命名者ピクテが託した思い/

  人類と文明社会への義務/命と尊厳に関わる法

  国際人道法の基本原則/両輪としての人道法と人権法

 4.赤十字基本原則の成立

  明文化された行動規範/人道機関の規範的メルクマール

 

第8章 現代の戦争と国際人道法の挑戦

 1.冷戦後の紛争と人道犯罪の多発

  激化する民族紛争と人道犯罪/加速する国連の介入/

  人道犯罪を裁く国際法廷の設置/人道支援で問われる民軍関係

 2.新たな戦争と国際人道法

  混迷深める「テロとの戦い」/例外なき交戦当事者の義務/

  新たな戦争の特色/保護される文民の概念とは

 3.変化する赤十字の役割

  変わりゆく赤十字と軍隊の関係/

  民間人の保護救済へシフト/国連と赤十字の特色

 4.赤十字標章と医療要員の保護

  赤のクリスタル標章の登場/赤十字標章の保護と適正使用/

  医療要員の権利と義務/有事関連法と国際人道法の履行

 

 

部 グローバル世界と国際人道法

 

第9章 近未来戦争とグローバル世界

 1.新たな殺傷兵器の出現

  劣化ウラン弾や燃料気化爆弾/

  無人攻撃機やレーザー兵器の出現/自律型殺傷兵器の脅威

 2.非殺傷兵器とサイバー戦争

  非殺傷兵器は人道的か/

  サイバー戦争が問いかけるもの/サイバー戦争は規制できるか

 3.未来兵器を規制するルール

  問われる新兵器の合法性判断/マルテンスから学ぶ普遍的規範

 

第10章 グローバル時代の戦争と個人

 1.身近になった戦争と国際人道法

  誰もが戦争に参加できる時代/

  重要性を増す国際人道法の普及/法は世界を救えるか

 2.グローバルな人道秩序構築に向けて

  グローバルな人間尊重のメカニズムを/

  普遍的な人道主義/憎しみの連鎖の中で

 

主要文献一覧

あとがき

人名索引/事項索引