代理出産と出生届

 

                  岡本 哲

 

 

タレントの高田伸彦は、最近ではNHK教育テレビの「野菜の時間」にでていたりする。いまでは中年おとうさんの役がおおい。プロレスファンにはもう20年以上前になるがUWFのエースだった時代とか、高田総統時代とかを思い出す。法律的には生殖補助医療、代理出産で産まれたこどもの出生届問題の当事者として有名である。

 

 1983年に最初の体外受精子が生まれて以来、2014年では21人に1人が体外受精によって生まれている。

体外で受精できるから、精子・卵子・胚と懐胎を自由に組み合わせることが可能になった。たとえば、提供精子体外受精・提供卵子体外受精。提供胚移植、代理母、代理出産ができるようになった。これについては、家族法についても対応がせまられている。体外受精が可能になるまでは、実母は分娩した母以外ありえなかった。日本民法は分娩したものを母とする建前になっている。(明文があるわけではない、というか条文上は認知によって親がきまるというどうも文言からはそうではないのでは、という疑問もあるのだが、最高裁判例もある伝統的解釈である。)

 高田伸彦の妻はガンで子宮摘出されている。夫の精子と妻の卵子を体外受精した胚をアメリカのネバダ州でアメリカ人女性に移植して双子をもうけた。妻もタレントであったため当初からマスコミ報道がなされていた。日本では夫妻の嫡出子としての出生届が受け付けられなかった。

代理出産の場合子育ては分娩そした女性がおこなうことは、通常ないので、分娩者が母というルールとは齟齬をきたしている。日米で裁判がなされた。日本の裁判が高裁係属中にアメリカのネバダ州の地方裁判所判決では依頼者夫婦、つまり高田夫婦を父母と認める判決が確定した。日本では、外国判決の承認を定める民事訴訟法118条の適用あるいは類推適用が問題とされた。東京高裁平成18年9月29日決定 判例時報1957号20頁では、民事訴訟法118条の適用ないし類推適用によりネバタ州地裁判決は効力を有するとして国に対して出生届の受理を命じた。

国が上告し、最高裁は逆転して国が勝訴した(最高裁平成19年3月23日決定 民集61巻き)2号619頁)。最高裁の理屈は日本民法は出産という事実により当然に母子関係が成立するものとしている、子を懐胎し出産した女性とその子に係る卵子を提供した女性とが異なる場合においても現行民法の解釈としては出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、その子を懐胎・出産していない女性との間には、その女性が卵子を提供した場合であっても、母子関係の成立を認めることはできない、ネバダ

州判決はわが国民法の根本のところに反するものであり、民事訴訟法118条の公序に反するものとして承認できない。というものであった。

 最高裁判決では意見がついており、特別養子で親子関係を設定する可能性をのべており、実際、その後特別養子縁組が成立したようである。

 

2 各国の法制および立法の可能性

 代理出産に関しては圧力団体が存在しないためか、日本では立法が滞っている。;

キリスト教的には「神」の意思がどうであるかの問題にかかわるためか、イギリス・フランス・ドイツ・アメリカでは立法的手当てがなされている。

 

イギリス

 1990年にヒトの受精および胚研究に関する法律を定め、生殖補助医療によって生まれた子の親子関係について定め、2008年には全面改正された。

 1990年法では母は懐胎した女性と定められていたが、2008年改正法では代理懐胎を以来した夫婦はどちらかの配偶子が用いられている場合は親決定手続;によって生まれた子の父母となることができる。

 

フランス

 1994年に生命倫理3法を制定した。代理懐胎契約は無効とされ、外国で代理懐胎によって子をもうけて連れ帰った場合も親子関係を認めず、養子関係も認めなかった。2014年にこのような対応は欧州人権条約違反とされている。遺伝上の親との親子関係は認められることとなろう。

 

ドイツ

 1990年に胚保護法が規定され、代理懐胎は認められていない。外国で代理懐胎した場合の親子関係についてはフランスのところで述べた欧州人権条約違反判決の影響で親子関係を認めるにいたっている。

 

アメリカ

 州ごとにばらばらであるが、モデル法である統一親子関係法では代理懐胎の要件を定めている。

 

日本

 日本でも依頼者を親とする規定があれば出生届は受け付けられることになる。ただ、戸籍実務は大量処理をおこなうものであり、明確な形式的解釈で運用されるものであるから最高裁の平成19年決定自体はやむをえないものと考えられる。

 

 

参考文献 石井美智子「生殖補助医療によって生まれた子の親子法のあり方法律論89巻5・6合併号 2017年3月