『緋弾のアリア』2巻の未成年者拐取罪は既遂か未遂か (5巻までのネタバレがあります)  
               弁護士 岡本 哲
 『緋弾のアリア』(Aria The Scarlet Ammo)は、赤松中学による日本のライトノベルであり、MF文庫J(メディアファクトリー)より、既刊29巻(2018年8月現在)、アニメ化・コミカライズされており、2018年11月の時点で累計800万部を突破しているライトノベルを代表する作品である。 凶悪犯罪に対抗するため、武力を行使する探偵「武偵」の存在が当たり前の社会。2009年、武偵を育成する東京武偵高校に通う青年・遠山キンジは、普通の生活を求めていた。しかし、ある日現れたSランク少女武偵である神崎・H・アリアと出会ったことにより、彼女を取り巻く戦いの日々に身を投じていくことになる。

  キンジの幼馴染・星伽白雪は東京武偵高校の同学年であるが。犯罪組織【イ・ウー】のジャンヌダルク30世は、メンバーとして、『超偵』である白雪を仲間に迎えるために「魔剣」として東京武偵高に現れ、白雪を脅迫して武偵高校地下の火薬庫に拉致する。2巻199頁ではアリアがかけつけて「未成年者略取未遂罪で逮捕する」と叫んでいる。この後キンジとアリア、普段は抑えていた力を解放した白雪によってジャンヌ・ダルク30世はは破れることになる。

  私見では未遂ではなく既遂ではないかと考えている。
  イ・ウーは実は第二次世界大戦中のイ号潜水艦(日本)とU(ウー)ボート(ドイツ)とをあわせたものであり、ジャンヌ・ダルク30世の計画では、火薬庫から東京湾に通じる水路を潜水艦によって白雪を連れ去る予定だったので主観的な犯罪計画上は未遂かもしれない。しかし、未成年者が身体の安全を失っているのはもう明白であるから、この段階で既遂であろう。  水戸地裁平成28年10月27日判決では、略取誘拐について自動車に押し込める前の段階では未遂としている。自動車に押し込めた段階で既遂なのか、目的地についた段階で既遂なのかは明らかではない。 略取誘拐についてては、解放減軽があるので既遂を早期に認めても、中止犯規定の適用がなくなるデメリットはないので、押し込め完了段階で既遂でもよさそうである。 各逮捕,営利略取未遂,強盗致傷,身の代金拐取予備被告事件 【事件番号】 水戸地方裁判所判決/平成27年(わ)第534号、平成27年(わ)第596号 【判決日付】 平成28年10月27日