2019年のカルロス・ゴーン弁護団の勾留理由開示請求に動くという各紙報道を受けて

やっていますか、勾留理由開示請求
2008年に新日本法規のメールマガジンにかいたものです、
                弁護士 岡本 哲

 被疑者弁護を当番弁護士でやっている当事務所の若手弁護士が最近2件勾留理由開示請求をやっていた。岡山地裁ではひさしぶり、ということで裁判所側もけっこうドタバタしたそうである。

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 白取祐司「刑事訴訟法(第3版)184頁によると2003年の実施件数は被告人48、被疑者338となっている。岡山だと全国の1パーセント程度であろうから年間3件
程度だったということであろう。
 勾留された被疑者・被告人は、自分がいかなる理由で勾留されたのかを公開の法廷で明らかにしてもらう権利を有する(刑事訴訟法82~86条)、207条1項)。これを勾留理由開示制度という。憲法34条前段において「何人(なんびと)も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人およびその弁護人の出席する法廷で示されなければならない」とされ、憲法上の根拠にもとづいている。
 勾留理由開示制度を憲法で求めている趣旨は説がわかれている。英米法のhabeas corpusを背景としていることは共通の理解となっている。勾留理由の告知(84条1項)は条文だけではたりず、勾留理由につき証拠によって認定した具体的事実を告げるべきであり、意見の陳述に代えて書面の提出を求めるのは(84条2項但書)、きわめて例外的な場合に限られなければならない。また、開示裁判で勾留の理由または必要性のないことが判明したら勾留を取り消すべきである、とされている。しかし、取り消された例は寡聞にしてきかない。

 白取前掲184頁では、「弁護人としては、この勾留理由開示制度を活用し、身体拘束からの解放を求めるべく、努めなければならない。ただ、現実には、勾留理由開示から直ちに勾留の取消などに結びつくことはむずかしいごともあって、実際にはあまり利用されていない。(中略)しかし、被疑者・被告人を公開の場に登場させ、勾留の理由を裁判長に告げさせることは、手続の適正確保にとって重要なだけでなく、被疑者・被告人を精神的に励ますことになる。この最後の点もまた、重要な弁護活動である」とされている。
 被疑者に弁護人がつくメリットは被害弁償等での起訴猶予、公判が予想される場合の
はやい段階での保釈請求が最大のものであって、それ以外にはあまりすすめていない。
しかし、被疑者国選等の被疑者側の金銭的負担が少ない場合には、弁護人が動いたとい
うアリバイつくりとしてもいいかもしれない。家族が傍聴にきてくれる場合はなおさら
である。
 ただ、請求後5日以内に法廷をいれなければならず、忙しい弁護士だと不可能な場合があること、また、地元裁判所の苦労を目のあたりにしているベテラン弁護士にとっては、裁判官や書記官の負担をついつい考えて、請求をためらってしまうのも現実問題としてありうる。
 書式等についてはインターネット上で簡単に入手できるようになった。
 起訴前弁護をする際には十分選択肢として考えるべき制度といえるのではないだろうか。