なお,マネジメント職のような上位グレードの職種は被告社内でも数に限りがあるため,その就任は限られたポストの座席争いとなることが避けられず,人事権の行使としてマネジメント群からディベロップメント群への変更が生じることもやむを得ない結果であって,被告には,原告の異動前と同等のグレードを維持するために新たに職務・ポストを新設する義務はない。この点について,原告は,部下を持たない管理職として調査役等のポストを新設することは可能であり,実際にもそうしたポストに就いている者が被告社内に多数存在するから,そうした措置を採れば原告を降級させる必要性はない旨主張するが,被告において,調査役は,時限的なプロジェクトに携わるマネジメント職を置く場合,マネジメント職に相当する職務ではあるが部下を持たない場合,海外出向や次のマネジメント職に就くことが予定されている待機期間である場合等,一定の必要性がある場合に限ってこれを設置しており,原告について上でみたような必要性は認められないから,調査役を設けてこれに就かせる義務はなく,かえってそうした措置を採れば他の従業員との関係で不公平が生じる。このほか,原告は,原告がこれまでに就任したポストの前任者が原告と異なるグレードに属していたことをもって,職務とグレードとの間に対応関係がないなどと主張するが,原告が就任した「開発企画部第○チームリーダー」及び「医薬情報部治験安全性チームリーダー」については,原告就任の前後で職務の一部を他に移管したことに伴い職務の「大きさ」の再評価が行われており,その結果,原告とその前任者との間のグレードに相違が生じているのであって,原告の指摘する点をもって職務とグレードとの対応関係が否定されるものではない。
  (キ) 原告がGチームに異動する際,同チーム解散時には原告を元のポストに戻すという,原告主張のような申し合わせがされた事実はない。仮に,Gチーム設置当時にそうしたことが想定されていたとしても,被告内部で確定的に決定されたことはなく,従業員の配置は使用者の裁量権の範囲に属する事柄であるから,状況の変化に応じて適切な人事配置を検討し,これを実施することは当然に予定されている。
  (ク) なお,本件人事発令前にGチームに在籍していた際の原告に対する人事評価はマネジメント職として不十分なものであった。すなわち,平成23年度においては,誤記,検討不十分,他資料からの丸写し等が散見されるなど,作成資料の質に問題が多く,その結果,原告の担当は資料作成から資料のレビューに変わったが,担当したレビューの質もおよそ不十分であり,期待された水準には全く達していなかったことに加え,勤務時間中に携帯電話をいじるなどの業務外行為・無断外出が散見され,他の社員からもクレームが出ており,人事評価のフィードバック面接では部長から「他の社員から後ろ指を指されないよう自己管理を行うこと等」の指導が行われている。このため,原告に対する人事評価は全体のおおむね下位3割以内に属する「A-」とされた。さらに,平成24年度においては,新薬承認の功績として他のGチームメンバーはいずれも「S」評価が与えられる中,原告に対する評価はマネジメント職全体の5割から7割が属する「A」評価(「S」評価の2段階下)にとどまっており,Gチームの他のマネジメント職2名が事業部門表彰の対象となったのに対し,原告はその対象にもなっていない。原告に対しては,Gチーム異動前の平成21年度,医薬情報部チームリーダー時代にも,他チームの派遣社員女性と頻繁な私的なメール交換を行って部長から厳重注意が行われており,その人事評価は「A-」とされている。このように原告の働きぶりはマネジメント職として不十分なものであり,優秀な働きぶりで上司から厚い信頼を寄せられていた別の者を医薬情報部のチームリーダーに充てるとの判断に至ったものである。
 イ 原告
  (ア) 使用者が労働契約の内容である労働条件を変更するには,労働者との合意又は就業規則上の合理的な根拠を必要とするところ,原告は,本件人事発令に係る労働条件の変更に合意したことはなく,また,就業規則上の根拠も存在しない。被告の就業規則には降級の定め(63条)があるが,原告にはこれに該当する事実がない。
 被告は職務等級制度を採用しているとするものの,そこでの職務とグレードとの対応関係は後記イのとおり不明確であって,一般的な配転権限を定めた就業規則50条に基づいて,社員のグレードを引き下げることはできず,その引き下げには就業規則63条の定める事由,社員の帰責性が必要となるところ,原告についてこれを根拠付ける事実は存在しないから,本件人事発令によるグレードの格下げは就業規則の根拠を欠いた違法・無効な処分である。仮に,上記制度の下で,被告が配転権限に基づいて社員を配転し,これに伴うグレードの引き下げを行うことが可能であると解する余地があるとしても,グレードの引き下げという降級による不利益を伴う以上,当該社員がそれまでの職務に不適格であると判断した理由,配転を行う業務上の必要性の存在が厳格に判断されなければならないところ,本件人事発令については,原告に帰責事由がない上,原告の被る経済的不利益も甚大であり,配転理由の説明等,適正手続を欠いていることからすれば,人事権を濫用したものであって,いずれにしても違法・無効な処分というべきである。
  (イ) 被告は,被告の職務等級制度の下では,給与体系として担当する職務によりグレードが決定する仕組みであり,社員にいかなる職務を担当させるかは被告の裁量事項であるから,人事異動によるグレードや給与の低下も許容される旨主張する。しかし,被告の採用する職務等級制の下では,職務と職種・グレードとの間の対応関係が厳密に定まっていない。給与規則Ⅰの「職種別グレード基準書」をみても,「医薬職」について「医薬シニアA」から「医薬4」までの6グレードが設けられ,それぞれの「業務概要」を規定しているが,前記1(3)イウのとおり,その内容は概括的なものにとどまり,具体的職務とグレードとの対応関係は不明確であり,原告が従事する「医薬スタッフ業務」が「医薬職」のグレード「医薬1」に対応するということが就業規則上明確になっていない。また,マネジメント職については,そもそも給与規則Ⅱに,グレードごとの職務定義自体が存在しない。こうした規定は,実質的には,「従業員の賃金を,その職責,職務内容,職務能力に応じて決定する」などと定めた抽象的な規定と何ら異ならず,賃金減額の可否は厳格に判断されるべきものである。実際にも,チームリーダーの中には,「D」,「E1」,「E2」グレードの者もおり,原告が開発企画部及び医薬情報部でチームリーダーに就任した際も前任者はDグレードであるなど,実質的には,年功や経歴を踏まえてグレードが決定されるという運用が行われているのであって,原告が医薬スタッフになったからといって医薬1に一義的に対応するものではなく,E1を割り当てても何ら不都合はなく,実際にも部下を持たないにもかかわらず調査役等のマネジメント職のポストを設けて処遇している例は被告社内に少なくない。
  (ウ) 本件人事発令により原告に生じた不利益は,前記1(5)の基本給と基本給調整金及び地域手当A等との合計額の差額,賞与の差額だけでも,平成27年6月末までの時点で300万円を超えており,退職一時金についても前記1(3)エの計算式によれば,グレード「E1」のままであれば年間90万円相当に対応するポイントが加算されていくべきところ,グレード「医薬1」に格下げされ,格下げ後の上限ポイント数を達成済みである原告はその分だけ損害を被っている。このほか,原告がグレード「医薬1」の範囲基本給の上限に達しているため,グレード「E1」のままであれば期待できた昇給の機会も与えられていない。しかも,今後こうした原告の不利益が固定化され,少なくとも年間300万円の損害発生が継続する可能性も高い。
 なお,被告は,超過勤務手当を含めれば原告の給与等に減少はなく大きな不利益はない旨主張するが,超過勤務手当は時間外労働に対する対価であるから基本給を填補する性質を有しないこと,労働基準法が割増賃金の支払を義務付けているのも時間外労働を抑制し労働者保護を図る趣旨・目的に出るもので,これを基本給減額の正当化根拠とするのはそうした趣旨・目的に反すること,そもそも原告は本件人事発令前のポストでも労働基準法上の管理監督者の要件を満たしておらず,本来支払われるべき超過勤務手当が違法に支払われていなかったものであることから,本件人事発令後に支払われた超過勤務手当を考慮してその不利益の程度を判断すべきものではない。
  (エ) 原告がそれまで所属していた医薬情報部から時限的に設置されるGチームに異動するに当たっては,その解消後元に戻れるようなポストや人事を用意しておくという申し合わせがあった。しかし,H医薬情報部長(以下「H部長」という。)がこうした申し合わせを恣意的に反故にして別のスタッフを原告の上記異動前のポストであるチームリーダー職に昇進させ,戻るポストを無くして,原告をスタッフ職に降級させた。このような措置を採らなければならない業務上の必要性はなく,かえって,かつての部下が上司となり,能力と経験のミスマッチが生じるなど,適正配置の観点からも問題が生じているのが実情である。こうした申し合わせを反故にして行われた本件人事発令は,信義に反しただまし討ちにも等しい処遇である。
(2) 不法行為・慰謝料請求の成否
 ア 原告
 原告は,本件人事発令により,合理的な理由がないにもかかわらず,11年前に在籍していたのと同等のポストに降格され,経済的に大きな不利益を通告され,屈辱感や精神的ショックを受け,不眠や不安にさいなまれている。周囲からは何らかのミスをして降格されたのではないかという疑いの目で見られ,その弁明をしなければならない点でも精神的苦痛を受けている。こうした事情からすれば,違法かつ無効な本件人事発令は原告に対する不法行為を構成し,原告に生じた精神的苦痛に対し50万円の慰謝料が支払われるべきである。また,弁護士費用50万円についても被告の不法行為と相当因果関係のある損害というべきである。
 イ 被告
 前記(1)アのとおり,本件人事発令による原告のグレードの格下げは有効なものであり,その措置について不法行為が成立する余地はない。
 第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実(第2の1),証拠(〈証拠略〉,原告本人のほか,各項掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(1) 被告における人事給与制度,その運用の実情等
 ア 被告では,従前,いわゆる職能資格制度を中核とする人事給与制度(以下「旧制度」ということがある。)を採用しており,社員の職務遂行能力を基準に資格とこれに対応する給与を定めていたところ,平成18年4月,これに見直しを加えた新たな人事給与制度(以下「新制度」ということがある。)を導入した。新制度の導入に当たっては,資格体系のベースを「職能(人)」から「職務(仕事)」に改め,担当職務の「大きさ」に応じた資格(グレード)と基準を設定すること,給与制度についても,「職能及び属人的要素を含むもの」から「職務価値と市場価値に基づくもの」に改めること等を標榜しており,これを具体化した給与規則Ⅰ及びⅡを新たに定めて従前の給与規則を廃止するとともに,その導入に先立つ平成16年7月頃から,全L産業労働組合に対して新制度に関する説明や質疑応答を行うほか,制度変更の概要について記述したガイドブックを作成し社員に配布していた。
 イ 上記ガイドブックには,異動に伴い職種・グレードが変更となる場合の基本給の変更についての説明が加えられており,「スタッフ2」から「スタッフ3」へグレードが格下げされた場合の例では,従前の基本給から一定の計算によって得られた「算定基礎額」が,変更後のグレード「スタッフ3」の範囲基本給の範囲に収まっている場合は当該算定基礎額を,「スタッフ3」の最高基本給を上回っている場合は当該最高基本給の額を,それぞれ職種・グレード変更後の基本給とすることや,後者の場合にあっては,激変緩和の観点から,職種・グレード変更をした日の属する月から1年間に限り,上記算定基礎額と上記最高基本給との差額を「基本給調整額」として別に支給すること等が示されている。こうした基本給調整額の支給の仕組みについては,給与規則Ⅰ・Ⅱにこれに対応した定めが置かれている(Ⅰの16条,Ⅱの10条)。
(上記ア,イにつき,〈証拠略〉)
 ウ 旧制度の下で「管理職掌1系」と称する資格に対応するものが新制度の下では「マネジメント職」とされたが,マネジメント職に係る就業(ママ)規則Ⅱにあっては,ディベロップメント群やエキスパート群の各グレードについて給与規則Ⅰの定める「職種別グレード基準書」(前記前提事実(3)イ(ウ))に対応するものを置いていないため,その業務概要や業務内容が就業規則・給与規則上は定められていない。もっとも,被告社内には,職務評価判定委員会規程に基づき同委員会が設置され,マネジメント職に属する社員の担当する職務の評価を行うこととされており,年1回の定時委員会を開催するほか,組織又は職務の新設,変更又は廃止により,明らかに当該職務の評価が必要と認めた場合には,速やかに委員会を開催するものとされている。なお,給与規則Ⅱには,給与規則Ⅰに定めのある手当のうち,深夜勤務手当に関する規定は置かれているものの,超過勤務手当及び地域手当(A・B)に関する規定は置かれておらず,マネジメント職の職員に対して超過勤務手当及び地域手当を支給することは予定されていない。(〈証拠略〉)
 エ 新制度導入後,平成25年11月1日までの間に被告で行われたグレード変更のうち,基本給の減額が生ずるものは,本件人事発令も含めて1724件であり,基本給月額の減額幅が10万円を超える事例は80件を超える。また,件数は更に少ないものの本件人事発令による基本給の減額幅(13万8950円)を上回る減額が実施された例もあり,マネジメント職のグレードからディベロップメント群のスタッフ職のグレードに変更された者も複数存在する(〈証拠略〉)。
 オ 被告の医薬品の開発部門では,部門横断的にプロジェクトを組織して,開発・販売を進めるのが一般的であり,プロジェクトの運営担当者としてプロジェクトリーダーが置かれ,プロジェクトを円滑に進めるための連絡・調整に当たっているが,プロジェクトリーダーは被告社内では職制上の役職とは扱われておらず,マネジメント職と医薬職いずれのグレードの者が担当する場合もあった。他方,チームリーダーは被告社内の職制上マネジメント職の役職名と位置付けられており,組織上の管理者として一定の決裁権限・人事権が与えられ,複数のプロジェクトリーダーの役割を兼ねることもあった。(〈証拠略〉)
(2) 原告に係る人事異動の経緯等
 ア GチームはG用の新薬開発を目的として2年程度を想定した時限組織として設置され,被告社内の各部署から集められたメンバーで構成された。それまで医薬情報部に所属していた原告は,原告が適任であるとしてH部長からGチームへの参加を勧められ,これを受け入れることになった。その際,原告が就いていた治験安全責任者のチームリーダーのポストはH部長が兼務することになり,H部長から原告に対してGチーム解散後は原告を元のポストに戻す予定である旨の説明があった。
 イ 平成25年5月にはGチームが開発した新薬が発売に至り,同年6月に同チームが解散することとされ,同月4日,原告は本件人事発令の内々示を受けた。原告は,マネジメント職からはずれグレードの降格に当たることに納得がいかないとして,面談したH部長やGチームの直属の上司であった薬事部長に抗議したが,決定済みのことであるから受け入れるか辞めるかしか選択肢がないなどと説明された。原告は,その後も薬事部長に説明を求めたところ,薬事部長はH部長が原告の受入れを拒否したなどと説明した。他方,それまで医薬情報部で医薬職の地位にあり,原告が同部にチームリーダーとして在籍していた当時原告の部下であったJ(以下「J」という。)が,本件人事発令と同じ平成25年7月1日付けで同部チームリーダーに昇格させる旨の人事発令を受けた。(〈証拠略〉)
2 本件人事発令によるグレードの格下げの効力について
(1) グレードの格下げの効力を判断する場合の基準
 ア 使用者は,労働契約上の根拠を有する場合には,業務上の必要に応じて,人事権の行使としてその裁量により勤務場所や担当業務を決定することができるというべきであるが,これを濫用することは許されない。原告の担当職務の変更を内容とする本件人事発令については,これに伴うグレード及び給与等の労働条件の変更を含め,就業規則50条及び給与規則Ⅰ・Ⅱの諸規定にその根拠を求めることができるところ,業務上の必要性がない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,それが他の不当な動機・目的を持ってされたものであるとき若しくは原告に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情がある場合には,人事権の濫用として無効になると解するのが相当である(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決・裁判集民事148号281頁〈東亜ペイント事件・労判477号6頁-編注〉参照)。
 イ 原告は,被告が採用する人事給与制度の下では,職務と職種・グレードとの間の対応関係が不明確であり,担当職務の決定には被告の裁量が認められるとしても,その決定とグレードの変更・格下げとは不可分一体の関係にないから,グレードの格下げの当否が独立して審査されなければならず,具体的には,就業規則63条の掲げる降職の要件(前記前提事実(3)ア(イ))が満たされていなければグレードの格下げは無効であるとする。しかし,給与規則Ⅰ・Ⅱの内容,新制度導入時に社員に配布されたガイドブックの記載内容からすれば,新制度の下では,社員を管理職に相当するマネジメント職と,エキスパート群とディベロップメント群から成るそれ以外の一般職とに分けた上で,それぞれの職務の種類・内容,所掌の範囲やその重要性・責任の大小,要求される専門性の高さ等に応じて細分化したグレードを設定し,個々のグレードに対応する基本給の基準額とその範囲を定め,これを基礎にして支払給与及び賞与その他の処遇を定めているのであり,担当職務に変更が加わればこれに対応してグレード・基本給にも変更が生じることも当然に予定され,これらの点が就業規則・給与規則において具体的に明らかにされ,社員に対する周知の措置が講じられることにより,被告と社員との労働契約の内容を成していたものと認めることができる。
 確かに,原告の指摘するとおり,給与規則Ⅰにおける「職種別グレード基準書」にある各グレードの業務内容等の記載は抽象的・概括的なものにとどまっており,例えば,医薬職中の各グレードを対比しても,共通の内容を類似の用語で言い換えたり,修飾語を付したりして,仕事やその責任の大小に差異があるかのように表現を工夫しているものの,実質的な差異がどこにあるのかは上記記載のみからは判明し難いし,各グレードの職務の内容も一部が重なり合っており,一定の境界線があって互いに排斥し合うようなものとして定義されていないことを指摘できる。これらのことからすれば,被告社内の全ての職務について,グレードとの間の一義的な対応関係が確保されているとすることには疑問も残る。
 もっとも,マネジメント職と他の一般職との関係に限れば,前者は旧制度の管理職に相当するものであって,一般職とは異なる給与規則を定めて基本給の基準も全般に高額に定めるなど賃金体系を別枠のものとしており,管理職の地位にある者に対しその対価として一定の手当を給付する制度と大きな差異はないものと捉えることができる。また,原告が本件人事発令前に就いていたチームリーダーという職務・地位についても,被告社内の職制上マネジメント職の役職名として扱われていたというのであるから(前記認定事実(1)オ),就業規則50条に基づき原告の職務の変更が行われ,チームリーダーの地位を失って新たにマネジメント職に相当する職務・地位が割り当てられなかったときには,一般職のグレードに位置付けられ,より低額の基本給等を支払われることが就業規則,給与規則上も予定されていたものとみることができる。
 ウ そうすると,本件人事発令にあっては,マネジメント職からそれ以外の一般職というべきディベロップメント群に属する医療職への担当業務の変更が命じられたものであり,これに伴う給与規則所定のグレードの変更についても,担当職務の変更と一体のものとして,業務上の必要性の有無,不当な動機・目的の有無,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無等について検討し,人事権の濫用となるかどうかという観点からその効力を検討するのが相当である。
 エ なお,原告は,新制度導入時に被告から組合に対し,担当職務に期待される貢献を継続的に実現できない場合等に降格を行うものと説明していること(〈証拠略〉)を指摘して,降格を行う根拠は就業規則63条であり,そこに列挙された事由がない限りグレードの降格は行えないとも主張する。しかし,そこでの説明は降格を行う場合の例示にとどまる一方,使用者の裁量に委ねられた人事配置の結果,特段の帰責事由がない労働者においても管理職の地位からはずれるという事態は,被告の新制度の下に限らず一般に起こり得るものであるし,前記認定事実(1)イのガイドブックの記載からすれば,そうした場合に一般職扱いとなって担当業務も変更され,これに伴いグレードが変更され,基本給等の減額が生じ得ることも説明されているとみることができる。したがって,グレードの変更・降格を行える場合が就業規則63条に掲げられている場合に限定されていると解することはできず,原告の上記主張は採用できない。