森島昭夫先生の『不法行為法講義』有斐閣・1987年の共同不法行為のところ、主観的関連共同を要求する説のところで、刑法の過失犯の共同正犯の問題をおもいだしました。前田達明先生だと主観的違法論なので刑法的には行為共同説に分類されそうではあります。

過失犯の共同正犯について論ぜよ。
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刑法60条二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

刑法611.人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

2.教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。

(幇助)

刑法621.正犯を幇助した者は、従犯とする。

2.従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

 

1 問題の所在 条文上肯定否定の明文はない

狭義の共犯である教唆犯・幇助犯は、条文上過失処罰の規定がなく過失犯を処罰しない趣旨とされる。広義の共犯である共同正犯については、刑法60条に含まれるとして共同正犯は成立しうるのであろうか。

 共同正犯になると一部実行の全部責任が認められるので因果関係について共同の範囲で責任が問われることになる。たとえば、株式会社の取締役会で危険物質の販売について全員一致で販売を決定し、それによって消費者に傷害が生じた場合に、1人が反対にまわっても販売は継続されたのであり、共同正犯としないと因果関係は否定され、結果犯たる過失致傷罪(刑法209条)が適用されなくなる。そこで同時犯ではなく共同正犯の成立を論じる実益がある。

2 判例は大審院時代は否定していたが、最高裁になって肯定となった。いわゆるメタノール事件である。

 60条の共同正犯がなにを共同しているかについて、行為を共同するものとする行為共同説と実行行為を共同するという犯罪共同説が大きく対立する。古くは行為共同説からは過失犯の共同正犯は肯定されるが、犯罪共同説からは過失行為の共同は考えられないとして否定されていた。これは過失犯については定型が緩く構成要件的行為がないというところからきていた。

 刑法60条に「実行」という文言があり、これは43条の「実行」と同じ文言であること、犯罪共同説をとる。しかし、共同の態様はさまざまで構成要件の完全な一致までは要求しない部分的犯罪共同説をとる。

構成要件的な行為として共同の注意義務を負う共同行為は観念しうる。例えばビルの屋上から数人で落とすことなく看板をとりはずす行為である。

相互の利用補充関係が故意犯の場合と同様に過失犯の共同正犯にも要求される。

 

参考文献 佐伯仁志 『刑法総論の考え方・楽しみ方』有斐閣・2013年423頁以下