『営利目的』が共犯に連帯しないとした最高裁昭和42年判決

刑法判例百選1第7版・有斐閣・2014年・91事件

昭和40年代から採用されつづけている超有名判例です。百選では65条2項つかう意味があるのかと疑問を呈せられています。

田中二郎判事がはいっていますね。行政追従がちがちかとおもっていましたが、ここでは行政についていませんね。

 

租税訴訟関係では逋脱犯は確定的故意のみが処罰されるべきという感覚がありますが、さて確定的故意については65条2項の対象となるのでしょうか。

 

麻薬取締法違反被告事件

【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和41年(あ)第1651号

【判決日付】 昭和42年3月7日

【判示事項】 麻薬取締法第64条の規定は刑法第65条第2項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」に当るか

【判決要旨】 麻薬取締法第64条の規定は、刑法第65条第2項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」に当る。

【参照条文】 麻薬取締法64

       刑法65

【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集21巻2号417頁

       最高裁判所裁判集刑事162号681頁

       裁判所時報469号1頁

       判例タイムズ204号144頁

       判例時報474号5頁

       刑事裁判資料222号180頁

 

【評釈論文】 警察研究39巻8号127頁

       研修227号79頁

       研修228号49頁

       研修410号35頁

       別冊ジュリスト57号194頁

       別冊ジュリスト82号178頁

       別冊ジュリスト111号184頁

       法学研究(慶応大)43巻5号109頁

       法曹時報19巻6号174頁

 

       主   文

  原判決および第一審判決中被告人に関する部分を破棄する。

  被告人を懲役八年に処する。

  第一審における未決勾留日数中二〇〇日および原審における未決勾留日数中五〇日を、本刑に算入する。

  押収してあるビニール袋入り麻薬二袋(原審昭和四一年押第一三四号の三)を没収する。

 

        理   由

  被告人本人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、上告適法の理由に当らない。

  弁護人大河内躬恒の上告趣意第一点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第二点は、量刑不当の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当らない。

 職権によつて調査するに、麻薬取締法六四条一項は、同法一二条一項の規定に違反して麻薬を輸入した者は一年以上の有期懲役に処する旨規定し、同法六四条二項は、営利の目的で前項の違反行為をした者は無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び五百万円以下の罰金に処する旨規定している。これによつてみると、同条は、同じように同法一二条一項の規定に違反して麻薬を輸入した者に対しても、犯人が営利の目的をもつていたか否かという犯人の特殊な状態の差異によつて、各犯人に科すべき刑に軽重の区別をしているものであつて、刑法六五条二項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」に当るものと解するのが相当である。そうすると、営利の目的をもつ者ともたない者とが、共同して麻薬取締法一二条一項の規定に違反して麻薬を輸入した場合には、刑法六五条二項により、営利の目的をもつ者に対しては麻薬取締法六四条二項の刑を、営利の目的をもたない者に対しては同条一項の刑を科すべきものといわなければならない。

 しかるに原判決およびその是認する第一審判決は、共犯者であるAか営利の目的をもつているものであることを知つていただけで、みずからは営利の目的をもつていなかつた被告人に対して、同条二項の罪の成立を認め、同条項の刑を科しているのであるから、右判決には同条および刑法六五条二項の解釈適用を誤つた違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすものであつて、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 よつて、刑訴法四一一条一号、四一三条但書により、原判決および第一審判決中被告人に関する部分を破棄し、当裁判所においてさらに判決することとする。

 第一審判決がその挙示の証拠によつて確定した被告人の所為(ただし、被告人に営利の目的があつたとの部分を除く。)は、麻薬取締法六四条一項、一二条一項、刑法六〇条に該当するので、所定刑期の範囲内で、被告人を懲役八年に処し、刑法二一条により、第一審における未決勾留日数中二〇〇日および原審こおける未決勾留日数中五〇日を本刑に算入し、麻薬取締法六八条本文により、押収してあるビニール袋入り麻薬二袋(原審昭和四一年押第一三四号の三)を没収し、訴訟費用は、刑訴法一八一条一項但書により負担させないこととする。

  よつて、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

  検察官 神谷尚男公判出席

   昭和四二年三月七日

      最高裁判所第三小法廷

          裁判長裁判官    下   村   三   郎

             裁判官    柏   原   語   六

             裁判官    田   中   二   郎

             裁判官    松   本   正   雄