なれあい訴訟は国税通則法23条の更正の判決ではないとして広島高裁平成14年判決

 

なれ合い訴訟との認定はちょっと恣意的ではなかろうかという印象を受けます。

下司裁判長は国を負かしたことあるのかなあ。

 

通知処分取消等請求控訴事件

【事件番号】 広島高等裁判所判決/平成14年(行コ)第3号

【判決日付】 平成14年10月23日

【判示事項】 (1) 納税申告行為の無効確認を求める訴えの利益(原審判決引用)

       (2) 納税者らの亡父がした贈与税の申告は、贈与の事実がなかったにもかかわらず、父が課税庁係官の強い指導の下に、任意性を欠く状態で、かつ錯誤に基づいて申告書を提出させられたものであるとの納税者らの主張が、父としては、本来自己の所有である土地の返還を受けるとの認識であったとしても、その土地を無償で返還を受けることを贈与と評価されても仕方がないと認識していたものと推認するのが相当であり、かつ、この認識は何ら本件の実態に反するものではなく、むしろ実態に即したものであると考えられ、この認識に従って、自ら贈与税を受けたことを前提にして納税申告行為をやり直すことを決定したとみることができるから、この点につき、父には錯誤は認められないというべきであり、また、父は、不服申立ての機会が何度もあったのにこれをせず、贈与税等を自己の意思で支払っていたというべきであり、課税庁係官に強要された任意性のないものとは認められないとして排斥された事例(原審判決引用)

 

       (3) 納税者らの亡父において、贈与税の申告につき、贈与の存在に関し錯誤があったとしても、申告書の記載内容の過誤是正については、その過誤が客観的に明白かつ重大であって、国税通則法23条(更正の請求)1項所定の更正請求以外にその是正を許さないならば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情のある場合でなければ、上記方法によらないで申告書記載の過誤を主張することはできないというべきであるところ(最高裁昭和39年10月22日判決参照)、本件において贈与自体が不存在であること自体が客観的に明白であるとは到底認めがたいから、申告書の過誤が客観的に明白であるとはいえず、よって、納税者らは、同法23条1項所定の更正の請求によらず申告書の過誤を主張することはできないとされた事例(原審判決引用)

 

       (4) 国税通則法23条(更正の請求)2項1号の趣旨(原審判決引用)

 

       (5) 国税通則法23条(更正の請求)2項1号が適用される場合と同号に規定する「判決」の意義(原審判決引用)

 

       (6) 納税者らの亡父は、贈与税の期限後申告を提出する時点で、贈与を受けたものではないと主張して、課税庁との間で適切に争い確定することができたというべきであり、それを妨げるような事情は認められず、また、別件判決は、国税通則法23条(更正の請求)2項1号の「判決」を作出する目的をもって納税者らが訴外甲と意を通じて得たものと認められるのが相当であるから、別件判決は、同法23条2項1号の「判決」には該当しないとされた事例(原審判決引用)

 

       (7) 行政事件訴訟法10条(取消しの理由の制限)2項は、審査請求を棄却した裁決の取消しを求める訴えにおいては、原処分が実体的に見て違法なものであるか否かの点については専ら原処分の取消しを求める訴訟において審理、判断されるものとするため、原処分の違法を理由として裁決の取消しを求めることができないとしているが、本件における国税不服審判所長による裁決は、原処分を維持して審査請求を棄却したものであり、納税者らの国税不服審判所長に対する請求は、原処分庁による通知処分の違法性を理由とするもので、裁決に固有の手続上の違法事由を理由とするものではないから、国税不服審判所長に対する請求は理由がないとされた事例(原審判決引用)

 

【判決要旨】 (1) 納税申告行為は、納税義務の存否及びその内容を確定させ、当該申告に係る納税債務の実現を図るためのものではあるが、申告行為自体は、納税義務者と課税権者との間の具体的租税債権債務関係を発生させるための前提要件の一つに過ぎず、それによって当然に租税債務の存否が決定されるものではないから、その無効確認を求める訴えは、法律関係そのものの存否の確認を求めるものとはいえず、確認の利益を欠くというべきである。

 

        また、本件において納税者らは、納税者らの父による贈与税の申告行為の無効確認を求めるとともに、同申告に基づき発生した贈与税の更正請求に理由がない旨の通知処分の取消しや同贈与税の納税義務の不存在確認及び既払納税額相当の不当利益の返還を併せて請求しており、当該申告行為から発生する法律関係そのものの存否についての判断を求めている以上、これに加えてその前提となる納税申告行為自体の無効を確認する利益はないというべきである。

 

        なお、納税申告は、いわゆる私人の公法行為であるが、これが行政庁による公権力の行使といえないことはもちろん、これと同視しうる場合にあたるともいえないから、その申告無効の確認を求める訴えが行政事件訴訟法3条(抗告訴訟)4項に規定する「無効確認の訴え」にあたらないことは明らかである。

 

       (2)・(3) 省略

 

       (4) 課税計算の前提となる事実は多種に及び、中には課税当事者間では確定しがたい事実もあることから、このような事実については、相当な手続等により事実を確定した上で課税の是正を図るのが妥当であり、納税者が課税当時もしくは国税通則法23条(更正の請求)1項の期間内に適切な権利主張ができなかった理由により当初の課税が実体的に不当となった場合に、法定期限の経過を理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に納税者からその是正を請求できる途を認め、納税者の保護を拡充したものと解すべきである。

 

       (5) 国税通則法23条(更正の請求)2項1号が適用されるのは、課税計算の基礎事実が後に判決等で異なる内容として確定した場合で、しかも課税当時及び確定までの間に、納税者において、課税庁との間でその事実を適切に争い、かつ確定することができないような場合に限られるというべきであり、また、当該判決が、当事者が専ら納税を免れる目的で馴れ合いによってこれを得たなど、確定判決としての効力は有するものの、その事実において客観的合理的根拠を欠くものであるときは、同号にいう「判決」にはあたらないと解するのが相当である。

 

       (6)・(7) 省略

 

【掲載誌】  税務訴訟資料252号順号9215

 

       主   文

 

  1 本件控訴を棄却する。

  2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 

        事実及び理由

 

 第1 当事者の求めた裁判

   1 控訴の趣旨

     (1) 原判決主文第2項中、被控訴人国及び同西条税務署長に関する部分を取り消す。

     (2) 被控訴人西条税務署長が控訴人らに対して平成10年4月30日付けでなした丁にかかる平成2年分の贈与税の更正請求に対する更正をなすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

     (3) 丁が被控訴人西条税務署長に対して平成4年4月22日付けでなした平成2年分の申告に基づく控訴人らの被控訴人国に対する贈与税の納税義務が存在しないことを確認する。

     (4) 被控訴人国は、控訴人らに対し、各102万6893円及びこれに対する平成12年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

     (5) 訴訟費用は、第1、2審を通じ、被控訴人らの負担とする。

   2 控訴の趣旨に対する答弁

     主文と同旨

 第2 事案の概要

   1 次項に原判決を補正し、第3項に控訴人らの当審における主張を付加するほか、原判決「第2事案の概要」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

   2 原判決の補正

     (1) 原判決3頁13行目の後に行を改め次のとおり加える。

        「 原判決は、控訴人らの被控訴人西条税務署長に対する、丁がした贈与税申告の無効確認を求める訴えを却下し、その余の請求を棄却した。控訴人らは、被控訴人国及び同西条税務署長に対し、控訴の趣旨記載のとおりの判決を求めて控訴を提起した。」

     (2) 原判決5頁24行目から7頁10行目までを削除する。

     (3) 原判決7頁11行目の「(2)」を「(1)」と改める。

     (4) 原判決15頁26行目の「所部」を削除する。

     (5) 原判決18頁19行目の「(3)」を「(2)」と改める。

     (6) 原判決20頁11行目から20行目までを削除する。

     (7) 原判決20頁21行目の「(5)」を「(3)」と改める。

   3 控訴人らの主張

     (1) 次のとおり、AがCから購入したのは西側部分のみである。したがって、丁は、平成2年分の贈与税の申告をした当時、東側部分の所有権を有していたと認識していたのであり、これが戊に移転していたとする上記申告は錯誤に基づくものである。

      ア Aの母EはCの妻Mの子であり、AとCとは親密な関係にあったから、CがAに本件土地の一部を売却したとしても分筆登記等の煩雑な手続をする筈がない。

      イ 東側部分と西側部分との境界線については、両部分の間に元々畦が存在していたこともあり、Aへの売買がなされた当時の状況を容易に復元でき、測量及び分筆登記手続も円滑になし得た。このことは、航空写真(乙26ないし28、甲17の1~4)からも明らかである。

      ウ 東側部分にはE所有建物が建つだけの面積があったのであるから、Cが東側部分のみを自己所有地として残したことは不自然ではない。

     (2) 丁は、租税や法律に関する知識が十分でなく、税務署係官から調査・事情聴取を受けた結果、仕方なく贈与を前提とした納税申告をしたのであるから、その申告行為は任意になされたものとはいえず、不服申立てをしていないことも任意性を基礎付けるものではない。

     (3) 別件判決は控訴人らとAが意を通じて作出したものではないから、国税通則法23条2項1号の判決に該当する。真実に基づく請求に反論の余地がなかったため、Aは争わなかったのである。

 第3 証拠

   原審及び当審記録中の証拠関係目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

 第4 争点に対する判断

   1 次項に原判決を補正し、第3項に控訴人らの当審における主張に対する判断を付加するほか、原判決22頁20行目から35頁22行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

   2 原判決の補正

     (1) 原判決22頁20行目の「2」を「1」と、21行目の「甲1ないし5、7ないし9」を「甲1ないし9」と各改める。

     (2) 原判決23頁3行目の「昭和42年」を「昭和43年」と、4行目の「その地上」を「西側部分」と各改める。

     (3) 原判決27頁21行目の「31日」を「末日」と改める。

     (4) 原判決28頁11行目を「2争点(1)について」と改める。

     (5) 原判決28頁13行目の「乙」の次に「14、」を加え、14行目の「28」の後に「、原審証人戊、同B、同A、同F」を加える。

     (6) 原判決29頁4行目の「聞いたこと」から7行目末尾までを「聞いて初めて知ったに過ぎず、丁もCからその旨聞いたと述べていたに止まることが認められ、Cの話がどの程度具体的で確実なものであったかは明らかでない。」と改める。

     (7) 原判決29頁末行の「後記4」を「後記3」と改める。

     (8) 原判決30頁19行目の後に行を改め次のとおり加える。

      「(エ) Bらは、離婚後間もなく、東側部分は丁家のものであると戊に告げているが、この話は丁の認識のみに基づく根拠に乏しいものに過ぎず(原審証人B)、その後Cらに事情を確認したことも証拠上窺えないから、上記認定を左右するに足りない。」

     (9) 原判決34頁5行目を「3争点(2)について」と改める。

     (10) 原判決35頁12行目の「その請求原因」から18行目の「認められ、」までを「仮に丁が東側部分の所有権を有していたとしても、上記移転登記の事実から当然に贈与税額相当の損害が発生する筈もなく、贈与税を負担するに至った最大の原因は丁自身の申告にあることは明らかであるから、Aが損害賠償責任を認めて争わないことはおよそ想定し難いものであり、Aは、控訴人らから贈与税の更正を求めるために判決を得る必要があるから損害賠償請求訴訟を提起するが実際に賠償を求めるつもりはないと説明を受け、控訴人らに協力する趣旨で口頭弁論期日に欠席し、その結果上記判決に至ったものに過ぎず、」と改める。

   3 控訴人らの主張に対する判断

     (1) ア(ア) 親族間で不動産の売買契約が締結された場合、煩雑な登記手続等を行わないことは必ずしも不自然とはいえない。しかし、本件の場合、西側部分のみを売却したのであれば、真実と適合しない登記をするよりも、所有権移転登記自体をしない方が親族間の契約としてはより自然であるとも考えられ、親族間の契約であることは、分筆登記をせずに土地全体について所有権移転登記をした理由として十分なものではない。また、離婚により戊がAやCらとは疎遠になることが予想されるのに、AがCらとの間で土地の範囲等を確認することなく本件土地全体について戊に所有権移転登記をしたこと、Cら丁家の者において分筆登記等権利関係を明確にするための行動を何らとっていないことは不自然である。

       (イ) 平成2年の分筆当時、東側部分と西側部分とを明確に区分できたと認められないことは前記(引用の原判決)認定説示のとおりである。昭和22年10月撮影の航空写真(甲17の1~4)によれば、撮影当時、東側部分と西側部分を分筆した境界線の近辺に畦道もしくは段差があったことが窺えなくはないが、それがAの建物の完成後も残っていたことを認めるに足りる証拠はなく、分筆のための測量の際に何を基準として境界を定めたかも証拠上明らかではないから、上記航空写真も上記認定を左右するに足りない。

       (ウ) 東側部分が比較的狭小であること、地上建物の所有者であるEがAの実母であり、Aが西側部分を買い受けた後同地上に新築した建物に同居する等Aと親密な関係にあったこと、E所有の建物があるためCは東側部分を使用できないことを考慮すれば、CがAに土地を売却する際、あえて東側部分の所有権を留保する必要性は乏しいというべきである。

       (エ) 以上によれば、前記(引用の原判決)認定説示のとおり、Aは、東側部分も含めて本件土地全体をCから購入した蓋然性が高く、これに反する控訴人らの主張はいずれも採用できない。

      イ 仮に、東側部分の所有権がAに移転していなかったとしても、前記(引用の原判決)認定のとおり、丁は、東側部分が自己所有であるとの確信はなかったため、同土地部分を無償で返還するとの戊からの申出に応じ、贈与税の課税を避けるために戊との間で不実の売買契約書を作成しており、これらの事実関係を認識したうえで、東側部分を丁が所有していたことの根拠が薄弱であるとのFの説明に最終的に納得して平成2年分の贈与税の申告をしたのであるから、その申告の内容、縁由のいずれにも錯誤があったとはいえない。

     (2) 上記のとおり、丁は、最終的にはFの説明に納得して贈与税の申告をしたのであり、申告に至る過程において、Fら西条税務署係官に上記申告を強要する言動があったことを認めるに足りる証拠はない。したがって、上記申告が任意にされたものではないという控訴人らの主張は採用できない。

     (3) 別件判決が国税通則法23条2項1号の判決に該当するとの控訴人らの主張に対する判断は、既に引用した原判決34頁6行目から35頁22行目まで(ただし、本判決により一部補正した。)に記載のとおりである。

   4 よって、控訴人らの本訴請求はその余の点について判断するまでもなくいずれも理由がなく、これを棄却した原判決は相当であり本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法67条1項、61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。

     広島高等裁判所第3部

         裁判長裁判官  下司正明

            裁判官  檜皮高弘

            裁判官  齋藤憲次