滞納管理費の仕入れ税額控除を認めなかった名古屋高裁平成25年判決

最高裁も平成26年4月22日に不受理ということで確定しています。

憲法29条違反をちゃんと主張しておいてほしかった。

 

消費税更正処分等取消請求控訴事件

名古屋高等裁判所判決

平成25年3月28日

【掲載誌】  税務訴訟資料263号順号12188

【評釈論文】 税務事例45巻8号18頁

       税務事例46巻10号21頁

 

       主   文

  1 本件控訴を棄却する。

  2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

        事実及び理由

 

 第1 当事者の求めた裁判

  1 控訴の趣旨

   (1) 原判決を取り消す。

   (2) 処分行政庁が平成21年12月24日付けでした、控訴人の平成17年12月1日から平成18年11月30日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、消費税について、修正申告書に記載した還付金の額に相当する税額107万8893円と更正処分における還付金の額に相当する税額71万7325円との差額36万1568円に相当する部分、及び地方消費税について、修正申告書に記載した還付金の額に相当する税額26万9723円と更正処分における還付金の額に相当する税額17万9331円との差額9万0392円に相当する部分、並びに過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

   (3) 処分行政庁が平成21年12月24日付けでした、控訴人の平成18年12月1日から平成19年11月30日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、納付すべき消費税額52万9800円を超える部分、及び納付すべき地方消費税額13万2400円を超える部分、並びに過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

   (4) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

  2 控訴の趣旨に対する答弁

    主文同旨

 第2 事案の概要(以下、略称は原則として原判決の表記に従う。)

  1(1) 不動産業者である控訴人は、裁判所が実施する不動産競売(原判決2頁18行目)により取得した区分所有建物合計29戸(同4頁13行目の「本件各マンション」)に関して、それぞれ前区分所有者が滞納していた管理費等(同4頁18行目の「本件各滞納管理費等」。同9頁5行目から7行目までのとおり、管理費のほか、修繕積立金、駐車場使用料、上下水道料金及び組合加入金をいう。)を本件各管理組合(同4頁15、16行目)に支払った上で、本件各課税期間(同4頁22行目。①平成17年12月1日から平成18年11月30日まで。②平成18年12月1日から平成19年11月30日まで。)における消費税等(同4頁23行目)の確定申告に当たり、本件各滞納管理費等を消費税法30条1項の「課税仕入れに係る支払対価の額」に算入し、これに対する消費税額相当分(上記①の課税期間につき43万3104円、同②の課税期間につき34万2409円)を控除した残額をもって納付すべき消費税額とする確定申告を法定申告期限内にした。その後、控訴人は、平成21年7月30日、本件各課税期間に係る消費税等について修正申告をした。

     これに対して、昭和税務署長(処分行政庁)は、同年12月24日、本件各滞納管理費等を消費税法30条1項の「課税仕入れに係る支払対価の額」に算入することはできず、上記消費税等の申告が過小申告に当たるとして、消費税等の更正処分(原判決5頁13行目の「本件各更正処分」)及び過少申告加算税の賦課決定処分(同頁14行目の「本件各賦課決定処分」)をした。

     本件は、控訴人が、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は、消費税法の解釈を誤ったものであると主張して、その取消しを求める事案である。

   (2) 原審は、控訴人が支払った本件各滞納管理費等は「課税仕入れに係る支払対価」に該当せず、これに対する消費税相当額を「課税仕入れに係る消費税額」として控除することは認められないから、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は適法であると判断して、請求をいずれも棄却したところ、控訴人(1審原告)が、これを不服として控訴した。

  2 消費税法の定め、前提事実、被控訴人が主張する消費税等の額、争点及び当事者の主張は、原判決4頁14行目の「代金を納付して」の後に「敷地利用権と共に」を加え、後記3において当審における控訴人の主張(原審での主張を敷衍する部分を含む。)を、同4において当審における被控訴人の主張(同)をそれぞれ付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」2ないし5に記載のとおりであるから、これを引用する。

  3 当審における控訴人の主張

    原審における被控訴人の主張は、以下のとおり誤りであるところ、原判決は、被控訴人の主張を鵜呑みにしており、独自の判断理由は見当たらないから、その判断が誤りであることは明らかである。

   (1) 本件各滞納管理費等の支払対価性について

   ア 被控訴人は、消費税法28条1項の「課税標準」の定義中の「対価として収受し、又は収益すべき」の意味について、その文理上、その譲渡に係る当事者間で授受し、又は授受することとした対価の額を指すものと解すべきと主張する。

    イ しかし、我が国の不動産競売においては、前区分所有者の滞納管理費等を物件明細書に明示したり、売却基準価額の決定に際してそれを控除したりするものの、競売代金に含めることはせず、区分所有法(原判決6頁18行目)7条、8条により、買受人は、裁判所書記官に納付する競売代金以外に、事実上、これを負担せざるを得ない上、その金額は明らかであるから、買受人が支払う対価の一部であることは明白である。

      不動産競売で物件を買い受ける場合の「課税仕入れに係る支払対価」とは、裁判所書記官に納付した競売代金に限られるとの被控訴人の解釈は、そもそも、不動産競売では売買当事者間で直接に代金を授受することはないので、その根拠が薄弱であり、被控訴人の主張する文理解釈では「支払対価」についての正解を導くことはできない。

    ウ 一般的な不動産売買であれば、通常、売主の滞納管理費等は、売買代金に組み込まれて買主が支払い、それが買主にとって「課税仕入れに係る支払対価」に該当することに争いはない。

      消費税の課税に関しては、不動産競売も一般の不動産売買と同様の取扱いをすべきであり、前区分所有者の滞納管理費等は売買代金の一部とみるべきである。

    エ 消費税課税の運用においても、前所有者が負担した固定資産税等のうち、新所有者が売買代金とは別に清算した未経過期間に対応する金額については、建物等の課税資産の譲渡の対価に含まれるとされていること(消費税法基本通達10-1-6)からも明らかなように、「課税仕入れに係る支払対価」とは名目上の売買代金に限らない。

   (2) マンション管理費等の性格について

   ア 被控訴人は、管理組合が区分所有者との間でなす管理費等の授受は、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」(消費税法2条1項8号)に該当しないから、そもそも消費税の課税対象ではない旨主張する。

    イ なるほど、管理組合と区分所有者との関係では、管理費等のほとんどが「課税仕入れに係る支払対価」に当たらないとしても、このうち「上下水道使用料」については、「課税仕入れ」(同項12号)に該当する。

    ウ また、不動産競売の買受人と管理組合との関係では事情が異なる。

      すなわち、区分所有法8条は、競売買受人に対しても、前区分所有者が滞納した管理費等の支払を強制しているから、競売買受人にとって、前区分所有者が滞納した管理費等の支払は先取特権の負担のない完全な所有権を確保するための必要経費であって、前区分所有者に対する売買代金の追加支払と同視し得る。

   (3) 支払先と支払対価性について

   ア 被控訴人は、本件各滞納管理費等の支払先は、前区分所有者ではなく、本件各管理組合であるから、本件各滞納管理費等は譲渡当事者間で授受されたとはいえず、「課税仕入れに係る支払対価」に該当しない旨主張する。

    イ しかし、不動産競売においては、買受代金ですら、前所有者との間で直接授受するものではないから、支払相手が異なることを理由に「課税仕入れに係る支払対価」に該当しないとするのは、悪しき形式主義の現われである。

      不動産競売での買受人は、前区分所有者に対して滞納管理費等の求償権を取得するとしても、それを実際に行使し得ることはほとんどなく、前区分所有者はその利益を得たことになるから、実質的には売買代金の追加払として、売買当事者間で滞納管理費等相当額が授受されることに変わりがない。

    ウ 法人税の分野においては、本件各滞納管理費等が「棚卸資産の取得価額」(法人税法施行令32条1項)に該当することは異論がないところ、それは、滞納管理費等を支払った新所有者が、前区分所有者に対して、形式的には求償権を取得するとしても、事実上回収が困難であり、実質的には不動産競売代金の追加支払であることを税務当局も認めているからである。消費税の分野においても、本件各滞納管理費等を「課税仕入れに係る支払対価」に当たると解するのが整合的である。

    エ なお、不動産競売により区分所有権を買い受けた者が、前区分所有者の滞納管理費等を支払わずに転売する場合、転売先との間で滞納管理費等を転売先の負担とする旨合意して、滞納管理費等を値引いた額を売買代金と定めれば、結果的に買受人が納付すべき消費税額は、前区分所有者の滞納管理費等を「課税仕入れに係る支払対価」に加えた場合と同様になる。競売による買受け後に滞納管理費等を支払った場合と、先送りした場合とでこのような差異が生じるのは不合理である。

  4 当審における被控訴人の主張

    前記3の控訴人の主張は、原審における主張の繰り返しであるか、あるいは原判決を正解することなく、控訴人の独自の見解を述べるものであって、いずれも理由がないことは明らかである。具体的な反論は以下のとおりである。

   (1) 前記3(1)の控訴人の主張について

   ア 控訴人は、前記3(1)イのとおり、消費税法の趣旨・目的から合理的に解釈すれば、不動産競売で物件を買い受ける場合の「課税仕入れに係る支払対価」とは、「競売で落札した際に裁判所書記官に納付した買受代金の額」に、「前区分所有者の滞納管理費」を加えたものとみる方が合理的であると主張するが、そのような解釈結果が何故消費税法の趣旨・目的に沿ったものといえるのかの説明がなく、全く説得力を持たない。

      不動産競売における売却は売買の性質を有するものであり、私法上の売買における売買代金に相当するのは買受代金であるから、消費税の課税標準となるのは買受人が納付した買受代金である。

    イ 控訴人は、前記3(1)ウのとおり、一般的な不動産売買との均衡を主張する。

      しかし、一般的な不動産売買において、売主と買主の協議により、売主の滞納管理費等相当額を売買代金に含ませることなく売買が行われ、その後、買主が管理組合の請求に基づいて売主の滞納管理費等相当額を支払う場合には、その滞納管理費等は上記不動産売買における「当事者間で授受することとした対価」ではない。

      不動産競売は、上記のような不動産売買の事例と同様であり、不動産取得後に買受人が支払った前区分所有者の滞納管理費等が「当事者間で授受することとした対価」ではないという点も同様である。

    ウ 消費税法基本通達10-1-6の趣旨は、固定資産税等の未経過期間に対応する金額は、仮に売買契約書上の売買代金とは別に支払われても、買主がその分の税負担なく建物を取得できる対価として売買当事者間で授受されるから、課税資産の譲渡の対価の額に含まれるということができるというものである。これに対して、前区分所有者の滞納管理費等は、買受人から管理組合に対して支払われるものであるから、名目においても実質においても「譲渡等に係る当事者間で授受することとした対価の額」ではない。

      このように、固定資産税等の未経過期間に対応する部分と前区分所有者の滞納管理費等は、同列に比較できるものではないから、前記3(1)エの控訴人の主張は失当である。