春日通良裁判長名判決 弁護士交際費事件 東京高裁平成24年

更正処分取消等請求控訴事件

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東京高等裁判所判決/平成23年(行コ)第298号

平成24年9月19日

 

【判示事項】 弁護士が弁護士会等の役員としての活動に伴い支出した懇親会費等の一部が,その事業所得の計算上必要経費に算入することができ,また,消費税等の額の計算上課税仕入れに該当するとされた事例

 

【参照条文】 所得税法37-1

       消費税法2-1

【掲載誌】  判例タイムズ1387号190頁

       判例時報2170号20頁

       税務訴訟資料262号順号12040

 

【評釈論文】 税研175号69頁

       税研178号73頁

       税経通信69巻4号175頁

       税法学571号233頁

       税務事例45巻2号1頁

       税務事例46巻3号30頁

       税理57巻6号48頁

       法律のひろば67巻4号74頁

 

       主   文

 

  一 原判決を次のように変更する。

   (1) 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一六年分の所得税の更正処分(ただし、平成二一年三月二四日付け審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち、総所得金額一三七七万五七六三円及び納付すべき税額マイナス五一二万四四一二円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、上記裁決により一部取り消された後のもの)のうち、過少申告加算税額一万七〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

   (2) 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年分の所得税の更正処分のうち、総所得金額三一九五万二五四三円及び納付すべき税額三九二万八三〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税額五万八〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

   (3) 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年一月一日から同年一二月三一日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、納付すべき消費税の額二〇四万八一〇〇円及び納付すべき地方消費税の額五一万二〇〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税額七〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

   (4) 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

  二 訴訟費用は第一、二審を通じて四分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

 

        事実及び理由

 

 第一 控訴の趣旨

  一 原判決を取り消す。

  二 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一六年分の所得税の更正処分(ただし、平成二一年三月二四日付け審査裁決により一部取り消された後のもの、以下「本件平成一六年分所得税更正処分」という。)のうち、総所得金額一三二一万五六八一円及び納付すべき税額マイナス五二九万二四一二円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、上記裁決により一部取り消された後のもの、以下「本件平成一六年分所得税賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。

  三 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年分の所得税の更正処分(以下「本件平成一七年分所得税更正処分」という。)のうち、総所得金額三〇七三万四六六一円及び納付すべき税額三四七万七六〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件平成一七年分所得税賦課決定処分」という。)のうち、過少申告加算税額一万三〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

  四 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年一月一日から同年一二月三一日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、納付すべき消費税の額二〇〇万二一〇〇円及び納付すべき地方消費税の額五〇万〇五〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

 第二 事案の概要

   〈編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します〉

  次のように付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由の第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

  一 原判決二頁二一行目〈編注・本誌二一四五号一八頁三段二九行目〉の次に行を改めて次のように加える。

  「 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。これに対し、控訴人が控訴した。」

  二 原判決六頁五行目〈同一九頁四段五行目〉の「本件所得税賦課決定処分」を「本件所得税各賦課決定処分」に改める。

  三 原判決六頁一五行目から一七行目〈同一九頁四段二二~二五行目〉までを次のように改める。

  「 三 税額等に関する当事者の主張

  被控訴人の主張する本件課税処分等の根拠及び適法性は、原判決別紙八記載のとおりであり、本件所得税各更正処分における必要経費の合計額(後記四の争点(1))及び本件消費税等更正処分における課税仕入れに係る消費税額(後記四の争点(2))を除き、税額等の計算の根拠となる金額及び計算方法については、当事者間に争いがない。」

  四 原判決八頁一九行目〈同二〇頁三段一七行目〉の次に行を改めて次のように加える。

  「 また、酒食を伴う懇親会は、その性格上、個人的な知己との交際や旧交を温めるといった側面を含むことから、そのために支出した懇親会費は、一般的には、家事費としての性質を有するものである。したがって、仮に業務遂行上の費用が含まれていたとしても、その区分が明確でない家事関連費に相当し、控訴人の弁護士としての事業の遂行上必要な部分を明らかにすることができない以上、控訴人の弁護士としての事業所得の必要経費には該当しない。」

  五 原判決八頁二〇行目〈同二〇頁三段一八行目〉の「したがって、」の次に次のように加える。

  「弁護士会及び日弁連の会員としての資格を維持するための弁護士会費の支出が事業所得の必要経費に該当することはあっても、」

  六 原判決一五頁二一行目の「事業所得」から二四行目〈同二二頁四段二三~二八行目〉末尾までを次のように改める。

  「弁護士が顧問会社から得た顧問料収入が事業所得と給与所得のいずれに該当するかを判断する基準として述べられたものであり、「事業所得の必要経費」の判断基準を示したものではない。「事業所得の必要経費」の判断基準を示した判例は、大阪高裁昭和五四年一一月七日判決であり、これを認容した最高裁昭和六〇年三月二七日判決である。上記大阪高裁判決は、「収入を終局の目的として直接あるいは間接に支出を余儀なくされたもの」を必要経費とすべきであると判断しており、必要経費と収入との個別対応が必ずしも必要でないことを明示している。

  また、処分行政庁は、控訴人が弁護士会の会員として行った会務活動に伴う支出は必要経費であると認めている。弁護士が行う会務活動は、弁護士会等の会員としてであれ、役員としてであれ、その効果が弁護士会等ないし弁護士を含む弁護士全体に帰属することに変わりはない。そして、弁護士会等の制度上、弁護士会等の役員として活動することは、すべての弁護士に課せられた義務というべきものである。したがって、会務活動に伴う支出について、会員としてした場合と役員としてした場合とで必要経費に該当するか否かを区別する合理的な理由はない。」

 第三 当裁判所の判断

  一 争点(1)(本件各支出を所得税法三七条一項に規定する必要経費に算入することができるか否か。)について

 (1) 所得税法三七条一項の解釈、本件各支出の内容等について

 次のように補正するほかは、原判決の事実及び理由の第三の一の(1)から(3)まで(原判決一九頁一九行目から三三頁二三行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

  ア 原判決二〇頁一八行目から一九行目〈同二四頁三段八~一〇行目〉にかけての「所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であること」を「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であること」に改める。

  イ 原判決二〇頁二二行目〈同二四頁三段一四行目〉の次に行を改めて次のように加える。

  「 これに対し、被控訴人は、一般対応の必要経費の該当性は、当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ、専ら業務の遂行上必要といえるかによって判断すべきであると主張する。しかし、所得税法施行令九六条一号が、家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて、経費の主たる部分が「事業所得を…生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定している上、ある支出が業務の遂行上必要なものであれば、その業務と関連するものでもあるというべきである。それにもかかわらず、これに加えて、事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず、「直接」という文言の意味も必ずしも明らかではないことからすれば、被控訴人の上記主張は採用することができない。」