パラツィーナ事件最高裁判決 谷口・一高・野一色・木山『基礎から学べる租税法 第2版』49頁

藤田裁判長 中里ほか編 4版 70頁 金子17版掲載 渕圭吾『租税法講義』有斐閣・2024年・91頁410頁

法人税更正処分取消等請求事件 

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【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成12年(行ヒ)第133号

 

【判決日付】 平成18年1月24日

 

【判示事項】 映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が購入したとされる映画が同組合の組合員である法人の法人税の計算において法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項所定の減価償却資産に当たらないとされた事例

 

【判決要旨】 外国の映画制作会社が制作した映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が,外国銀行からの借入金及び組合員の出資金を原資として,当該映画の所有権等を取得する旨の契約を締結すると同時に,当該映画の配給権を配給会社に付与する旨の配給契約を締結した場合において,当該配給契約により当該映画に関する権利のほとんどが配給会社に移転され,当該組合は実質的には当該映画についての使用収益権限及び処分権限を失っていること,当該組合は当該映画の購入資金の約4分の3を占める借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあることなど判示の事情の下においては,当該映画は,当該組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず,当該組合の組合員である法人の法人税の計算において法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項所定の減価償却資産に当たらない。

 

【参照条文】 法人税法(平13法6号改正前)2

 

       法人税法(平13法6号改正前)31-1

 

       法人税法施行令(平12政令145号改正前)13

 

【掲載誌】  最高裁判所民事判例集60巻1号252頁

 

       訟務月報52巻12号3656頁

 

       裁判所時報1404号84頁

 

       判例タイムズ1208号82頁

 

       判例時報1929号19頁

 

       税務訴訟資料256号順号10278

 

       LLI/DB 判例秘書登載

 

【評釈論文】 ジュリスト1333号146頁

 

       税務弘報54巻5号161頁

 

       税理49巻10号29頁

 

       判例時報1959号191頁

 

       法学協会雑誌125巻10号2363頁

 

       法曹時報60巻8号2529頁

 

       主   文

 

  1 本件上告のうち,平成4年11月1日から同5年10月31日までの事業年度の法人税の更正に関する部分を却下し,その余の部分を棄却する。

  2 上告費用は上告人の負担とする。

 

        理   由

 

  上告代理人堀井昌弘の上告受理申立て理由について

 1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである(以下,外国法人等の名称の表記については原判決の略称による。)。

  (1)上告人は,平成元年,A社から,次のとおり説明を受けて,取引への参加を勧誘された。

  ア 日本の投資家を集めて,Bと称する民法上の組合(以下「本件組合」という。)を結成する。本件組合は,組合員の自己資金及び銀行からの借入金を原資として,C社から映画を購入し,D社との間で映画の配給契約を締結し,D社が配給会社を使って全世界に配給する(以下,この取引を「本件取引」という。)。

  イ 組合員が投資によって得る利益は,D社との間の配給契約に基づき本件組合が受け取る金員と,組合員における税務処理,すなわち,映画の減価償却費を損金処理することによる法人税の負担軽減から成る。

  (2)平成元年5月19日付けで,上告人ら投資家を組合員とする本件組合の結成に係る契約書が作成された。また,同日付けで,いずれも本件組合を一方当事者として,E銀行からの借入れに係る契約書,F社が制作した2本の映画(以下「本件映画」という。)のC社からの購入に係る契約書,D社に対する本件映画の配給権付与に係る契約書,同契約書に基づきD社が本件組合に対して負担する金員の支払債務についてのG銀行の保証に係る契約書等が作成された(以下,上記の各契約書による契約を,それぞれ「本件借入契約」,「本件売買契約」,「本件配給契約」,「本件保証契約」という。)。

  (3)上告人は,本件取引に参加することとし,本件組合に1億3795万円を出資した。本件組合は,E銀行から63億7463万円余(以下「本件借入金」という。)を借り入れ,これに各組合員からの出資金合計26億2105万円を加えた金員(総額89億9568万円余)をもって,C社に対し本件映画の代金85億6159万円余を支払い,その余はA社及びE銀行に対する手数料の支払に充てた。

  他方,F社は,C社を通じて,本件組合が支払った本件映画の代金を受領した。また,F社は,D社との間で,本件映画に関する第二次配給契約を締結し,同契約に基づき,F社は本件借入金相当額である6000万ドルをD社に対して支払い,D社は本件組合から許諾された本件映画の配給権をF社に与えた。

  (4)上告人は,昭和63年11月1日から平成4年10月31日までの4事業年度の法人税等の各確定申告に当たり,本件映画のうち,自己の出資持分相当額(19分の1)に応じた金額を器具備品勘定に計上し,耐用年数を2年として減価償却費を損金に算入した。所轄税務署長は,上告人が計上した上記の減価償却費の損金算入を認めず,上記各事業年度の法人税等について,更正及び過少申告加算税賦課決定をした。

  2 本件は,上告人が,本件映画の減価償却費の損金算入は認められないことを理由としてされた上記の各処分は違法であると主張して,これを争っている事案である。

  3 原審は,以下のとおり判断して,上記各処分を適法であるとした。

  本件取引において,F社や本件組合が前記各契約を締結した私法上の真の意思は,F社においては本件映画に関する権利の根幹部分を保有したままで資金調達を図ることにあり,本件組合においては専ら租税負担の回避を図ることにあったものと認められる。したがって,組合員たる上告人の出資金は,その実質において,本件組合を通じてF社による本件映画の興行に対する融資を行ったものであって,本件組合ないしその組合員である上告人は,本件取引により本件映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではなく,単に上告人ら組合員の租税負担を回避する目的の下に,本件取引に関する契約書上,本件組合が本件映画の所有権を取得するという形式や文言が用いられたにすぎない。そうであるとすれば,上告人が本件映画を本件組合の減価償却資産に当たるとしてその減価償却費を損金の額に算入したことは相当ではない。

  4 論旨は,本件組合は本件売買契約により本件映画の所有権を取得し,これをリース事業に供しているのであるから,本件映画は減価償却資産に当たるというべきであり,本件組合は本件映画の興行に対する融資を行ったものであるとして減価償却費の損金算入を否認した原審の判断には,法令の解釈適用の誤りがあるという。

  しかしながら,前記事実関係に加えて,原審の適法に確定した事実関係によれば,① 本件組合は,本件売買契約と同時に,D社との間で本件配給契約を締結し,これにより,D社に対し,本件映画につき,題名を選択し又は変更すること,編集すること,全世界で封切りをすること,ビデオテープ等を作成すること,広告宣伝をすること,著作権侵害に対する措置を執ることなどの権利を与えており,このようなD社の本件映画に関する権利は,本件配給契約の解除,終了等により影響を受けず,D社は,この契約上の地位等を譲渡することができ,また,本件映画に関する権利を取得することができる購入選択権を有するとされ,② 他方,本件組合は,D社が本件配給契約上の義務に違反したとしても,D社が有する上記の権利を制限したり,本件配給契約を解除することはできず,また,本件映画に関する権利をD社の権利に悪影響を与えるように第三者に譲渡することはできないとされ,③ 本件組合が本件借入契約に基づいてE銀行に返済すべき金額は,D社が本件配給契約に基づいて購入選択権を行使した場合に本件映画の興行収入の大小を問わず本件組合に対して最低限支払うべきものとされる金額と合致し,また,D社による同金額の支払債務の大部分については,本件保証契約により,G銀行が保証しており,④ さらに,上告人は,不動産業を営む会社であり,従来,映画の制作,配給等の事業に関与したことがなく,上告人が本件取引についてA社から受けた説明の中には,本件映画の題名を始め,本件映画の興行に関する具体的な情報はなかったというのである。

  そうすると,本件組合は,本件売買契約により本件映画に関する所有権その他の権利を取得したとしても,本件映画に関する権利のほとんどは,本件売買契約と同じ日付で締結された本件配給契約によりD社に移転しているのであって,実質的には,本件映画についての使用収益権限及び処分権限を失っているというべきである。このことに,本件組合は本件映画の購入資金の約4分の3を占める本件借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあり,本件組合に出資した組合員は本件映画の配給事業自体がもたらす収益についてその出資額に相応する関心を抱いていたとはうかがわれないことをも併せて考慮すれば,本件映画は,本件組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず,本件組合の事業の用に供しているものということはできないから,法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項にいう減価償却資産に当たるとは認められない。

  したがって,本件映画の減価償却費を損金に算入すべきではないとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。

  なお,上告人は,平成4年11月1日から同5年10月31日までの事業年度の法人税の更正に関する部分について,上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないから,これを却下することとする。

  よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

  (裁判長裁判官・藤田宙靖,裁判官・濱田邦夫,裁判官・上田豊三,裁判官・堀籠幸男)