吉田町覚せい剤事件最高裁決定 昭和56年 刑事訴訟法判例百選第9版 45事件 10版43事件
訴因の特定ありとしたもの 覚せい剤取締法違反被告事件
最高裁判所第1小法廷決定/昭和55年(あ)第1593号
昭和56年4月25日
【判示事項】 覚せい剤使用罪における訴因の特定
【判決要旨】 覚せい剤使用の日時を「昭和54年9月26日ころから同年10月3日までの間」、その場所を「広島県高田郡吉田町内及びその周辺」、その使用量、使用方法を「若干量を自己の身体に注射又は服用して施用し」との程度に表示してある公訴事実の記載は、検察官において基礎当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるところはない。
【参照条文】 刑事訴訟法256-3
覚せい剤取締法19
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集35巻3号116頁
最高裁判所裁判集刑事221号509頁
裁判所時報815号1頁
判例タイムズ441号110頁
判例時報1000号128頁
刑事裁判資料260号343頁
【評釈論文】 警察学論集35巻7号145頁
警察研究62巻6号31頁
研修406号39頁
ジュリスト臨時増刊768号195頁
別冊ジュリスト89号82頁
別冊ジュリスト119号84頁
同志社法学34巻4号156頁
判例評論275号207頁
法曹時報34巻3号226頁
法律時報53巻8号137頁
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人平川実の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
なお、職権により判断すると、「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和五四年九月二六日ころから同年一〇月三日までの間、広島県高田郡a町内及びその周辺において、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩類を含有するもの若干量を自己の身体に注射又は服用して施用し、もつて覚せい剤を使用したものである。」との本件公訴事実の記載は、日時、場所の表示にある程度の幅があり、かつ、使用量、使用方法の表示にも明確を欠くところがあるとしても、検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるところはないというべきである。
よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和五六年四月二五日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 本山 亨
裁判官 団藤重光
裁判官 藤崎萬里
裁判官 中村治朗
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