婚約の成立を認めた最高裁昭和38年判決

民法判例百選Ⅲ 第2版 22事件 窪田『家族法 第4版』15頁

慰藉料請求事件

最高裁判所第1小法廷判決/昭和37年(オ)第1200号

昭和38年9月5日

【判示事項】      婚姻予約の不当破棄による慰籍料の請求がみとめられた事例

【判決要旨】      当事者が真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約し長期にわたり肉体関係を継続するなど原審判決認定の事情(原審判決理由参照)のもとにおいて、一方の当事者が正当の理由がなくこれを破棄したときは、たとえ当事者がその関係を両親兄弟に打ち明けず世上の習慣に従つて結納をかわしもしくは同棲していなくても、相手方は、慰藉料の請求をすることができる。

【参照条文】      民法4編第2章第1節

【掲載誌】       最高裁判所民事判例集17巻8号942頁

            家庭裁判月報15巻12号135頁

            最高裁判所裁判集民事67号481頁

            判例タイムズ155号84頁

            判例タイムズ161号188頁

            判例時報354号27頁

【評釈論文】      経済理論(和歌山大)80号53頁

            別冊ジュリスト12号10頁

            別冊ジュリスト66号8頁

            専修法学論集1号102頁

            判例評論66号18頁

            法曹時報15巻11号121頁

            法律時報37巻11号100頁

            民事研修621号16頁

            民商法雑誌50巻4号70頁

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人樋渡道一の上告理由第一点について。

 論旨は判例違反をいうけれども、原判決は、原審竝びにその引用する第一審判決挙示の各証拠を綜合考かくして、被上告人が上告人の求婚に対し、真実夫婦として共同生活を営む意思でこれに応じて婚姻を約した上、長期間にわたり肉体関係を継続したものであり、当事者双方の婚姻の意思は明確であつて、単なる野合私通の関係でないことを認定しているのであつて、その認定は首肯し得ないことはない。右認定のもとにおいては、たとえ、その間、当事者がその関係を両親兄弟に打ち明けず、世上の習慣に従つて結納を取かわし或は同棲しなかつたとしても、婚姻予約の成立を認めた原判決の判断は肯認しうるところであり、所論引用の判例に牴触することはなく、所論は結局、原審の専権に属する事実認定を非難するに帰するから採用し難い。

 同第二点について。

 論旨は原判決に理由不備、判断遺脱の違法があるというけれども、原判決は、所論第一点について説示したように、上告人、被上告人間には婚姻予約が成立したことを認定しているのであるから、不当にその予約を破棄した者に慰藉料の支払義務のあることは当然であつて、被上告人の社会的名誉を害し、物質的損害を与えなかつたからといつて、その責任を免れうるものではない。又被上告人が第三者と情を通じ、被上告人みずから上告人との関係を破たんせしめたとの主張は、原判決の認定しない事実を前提として原判決を非難するものであるから、原判決には所論のような理由不備、判断遺脱の違法はなく、論旨は採用しえない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

        裁判長裁判官  長部謹吾

           裁判官  入江俊郎

           裁判官  斎藤朔郎