詐欺行為と商取引に関する最高裁昭和43年

刑事事実認定重要判決50選3版42

有価証券偽造、同行使、詐欺被告事件

最高裁判所第2小法廷決定/昭和42年(あ)第1939号

昭和43年6月6日

【判示事項】      商品買受の注文と作為による欺罔行為

【判決要旨】      代金を支払える見込もその意思もないのに商品買受の注文をしたときは、その注文の行為自体を作為による欺罔行為と解すべきであつて、不作為による欺罔行為に必要な告知義務の有無を論ずる必要はない。

【参照条文】      刑法246

【掲載誌】       最高裁判所刑事判例集22巻6号434頁

            最高裁判所裁判集刑事167号507頁

            判例タイムズ225号156頁

            判例時報527号81頁

【評釈論文】      警察研究40巻8号153頁

            刑事資料20巻1号40頁

            法曹時報20巻9号167頁

 

       主   文

 

 本件各上告を棄却する。

 

       理   由

 

 被告人Aの弁護人林田崇の上告趣意第一点は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、上告適法の理由に当たらない。原判決が、その判示にかかる事実関係のもとで、被告人らのBほか一六名に対する欺岡行為を、作為によるものとし、不作為による欺罔行為に必要な告知義務の有無を論ずる必要がない旨判示したのは相当である。けだし、商品買受の注文をする場合においては、特に反対の事情がある場合のほかは、その注文に代金を支払う旨の意思表示を包含しているものと解するのが通例であるから、注文者が、代金を支払える見込もその意思もないのに、単純に商品買受の注文をしたときは、その注文の行為自体を欺罔行為と解するのが相当であるからである。

 同第二点は、事実誤認の主張であつて、上告適法の理由に当たらない。

 同第三点のうち、弁護人の従来の主張を援用するとの部分は、上告趣意書自体にその趣意内容を示していないものであるから、適法な上告理由とならず、その余については、相被告人の弁護人の上告趣意について判示したとおりである。

 被告人Cの弁護人植垣幸雄の上告趣意第一点のうち、判例違反をいう点は、引用の判例は、いずれも事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二点は、判例違反をいうが、引用の判例は、いずれも事案を異にし本件に適切でなく、同第三点は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、すべて上告適法の理由に当たらない。

 同第四点については、相被告人の弁護人の上告趣意について判示したとおりである。

 被告人Dの弁護人小松正次郎の上告趣意(その一、その二)のうち、判例違反をいう点は、引用の判例は、事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当たらない。

 同被告人の弁護人木村楢太郎の上告趣意第一のうち、判例違反をいう点は、引用の判例(大判昭和二七年六月一五日とあるのは、大判昭和七年六月一五日の誤記と認める。)は、事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二のうち、昭和三三年五月二八日大法廷判決の判例違反をいう点は、原判決は、所論の点についてなんらの判断も示していないものであるから、前提を欠き、同年六月一三日第二小法廷判決の判例違反をいう点は、右判決は、所論の点についてなんらの判断も示していないものであるから、前提を欠き、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第三は、量刑不当の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当たらない。

 また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

 よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

  昭和四三年六月六日

     最高裁判所第二小法廷

         裁判長裁判官    奥   野   健   一

            裁判官    草   鹿   浅 之 介

            裁判官    城   戸   芳   彦

            裁判官    石   田   和   外

            裁判官    色   川   幸 太 郎