強盗の暴行脅迫の程度に関する最高裁昭和23年判決

刑事事実認定重要判決50選3版41

強盗窃盗住居侵入被告事件

最高裁判所第1小法廷判決/昭和23年(れ)第795号

昭和23年11月18日

【判示事項】      1、少年法第71条第1項の趣旨

            2、強盗罪の成立に必要な暴行脅迫の程度

【判決要旨】      1、少年法第71条第1項は、少年に対し同法第4条の処分をするかどうかを事実審裁判所の自由裁量に委ねた趣旨である。

            2、強盗罪が成立するには、社会通念上相手方の反抗を抑圧するに足る暴行又は脅迫を加え、それによつて相手方から財物を強取した事実が存すれば足り、その暴行脅迫によつて相手方が精神及び身体の自由を完全に制圧されることは必要でない。

【参照条文】      少年法4

            少年法71-1

            刑法236

【掲載誌】       最高裁判所刑事判例集2巻12号1614頁

            最高裁判所裁判集刑事5号393頁

【評釈論文】      ジュリスト307の2号196頁

            別冊ジュリスト27号226頁

            別冊ジュリスト58号154頁

            別冊ジュリスト83号72頁

            別冊ジュリスト117号68頁

 

       主   文

 

 本件各上告を棄却する。

 

       理   由

 

 被告人両名弁護人高橋正義上告趣意について。

 しかし少年法第七一条第一項には「第一審裁判所又ハ控訴裁判所審理ノ結果ニ因リ被告人ニ対シ第四条ノ処分ヲ為スヲ相当ト認メタルトキハ少年審判所ニ送致スル旨ノ決定ヲ為スヘシ」と規定している。その趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に対して所論のごとく保護処分をなすのを相当と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に対して保護処分をするのが相当であるか否かは、事実審たる原裁判所が諸般の具体的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量権にのみ属するところである。それ故所論は原審の自由裁量に属する事項の非難に帰着するから上告適法の理由とならない。

 被告人A弁護人小田垣常夫上告趣意について。

 しかし、強盗罪の成立には被告人が社会通念上被害者の反抗を抑圧するに足る暴行又は脅迫を加え、それに因つて被害者から財物を強取した事実が存すれば足りるのであつて所論のごとく被害者が被告人の暴行脅迫に因つてその精神及び身体の自由を完全に制圧されることを必要としない。そして原審は論旨摘録のように被告人等が判示午前一時頃屋内に侵入し被告人A及び右Bはそれぞれ草刈鎌を被告人Cはナイフを被害者D等に突付け交々「静にしろ」「金を出せ」等言つて脅迫し同人を畏怖させその所有の現金三千百七十円、腕時計、懐中時計、ライター等四十数点を強奪しと判示して被告人等が社会通念上被害者の反抗を抑圧するに足る脅迫を加え、これに因つて被害者が畏怖した事実をも明に説示して手段たる脅迫と財物の強取との間に因果関係の存することをも認定しているから、これに対し刑法第二四九条を適用せずに同法第二三六条第一項を適用したのは正当であつて、原判決には所論のように法律の適用を誤つた違反はない。論旨は理由がない。

 被告人Cの上告趣意について。

 所論は被告人の犯行の経過、共犯者との関係、被告人の生立ち、殊に肉親の愛に恵まれなかつたこと等を縷述し結局被告人に対して原審がした事実の認定と刑の量定とを非難するに帰着する、しかし事実の認定と刑の量定とは事実審たる原裁判所の裁量権にのみ属するところであるから所論は上告適法の理由とならぬ。

 よつて刑訴第四四六条に則り主文の通り判決する。

 この判決は裁判官全員の一致した意見である。

 検察官 安平政吉関与

  昭和二三年一一月一八日

     最高裁判所第一小法廷

         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎

            裁判官    真   野       毅

            裁判官    斎   藤   悠   輔

            裁判官    岩   松   三   郎