朝鮮国籍の相続人・特別縁故者への財産分与の準拠法に日本法を適用 名古屋家平成6年国際私法判例百選第2版 81事件

特別縁故者への相続財産分与申立事件

名古屋家庭裁判所審判/平成3年(家)第1776号

平成6年3月25日

【判示事項】       1被相続人(朝鮮国籍)の内縁の妻からの特別縁故者への相続財産分与申立事件において、準拠法として相続財産の所在地法である日本法を適用し、申立人に相続財産を分与した事例

【参照条文】       民法958の3

             家事審判法9-1

【掲載誌】        家庭裁判月報47巻3号79頁

【評釈論文】       法律時報別冊私法判例リマークス12号144頁

 

       主   文

 

被相続人甲太白の相続財産である別紙物件目録記載の財産全部を申立人に分与する。

 

       理   由

 

1 申立の要旨

 主文同旨

2 一件記録によれば,次の事実を認めることができる。

1(1)被相続人甲太白(以下「甲太白」という)は1965年1月14日死亡した。甲太白は,朝鮮国籍であるが,戦前から日本国内に居住しており,朝鮮における本人一人のみの戸籍の存在が判明している以外,親族関係は不明である。そこで当庁において相続財産管理人に弁護士Aが選任され,相続債権等申出の公告,相続権主張の催告などの手続がとられたが,催告期間内に相続人の申出はなかった。

(2)申立人は甲太白の内縁の妻である。すなわち,甲太白と申立人は,昭和15年頃に同棲を始め,昭和16年6月27日に婚姻届を作成して提出すベく準備をしたが,受理されるまでには至らなかった。しかし,甲太白と申立人とは事実上の婚姻状態を継続し,生計を共にして,一男五女を儲けた。そして,子供達はみな申立人の非嫡出子として戸籍に登載されたが,甲太白による認知はなされていない。

(3)甲太印ま○○○○株式会社で婚姻当初から稼働していたものであるが,戦後になってそれまで甲太白と申立人とで耕作していた同社社長丙川一郎所有の○○区○○○○にあった農地約1反8畝を,昭和22年10月2日,自作農創設特別措置法の規定により売渡を受けた。ところが,丙川一郎から,○○○○株式会社の工場を拡張するために取得した土地の代替用地として甲太白所有の土地1反を譲って欲しい旨頼まれ,その代わりに別紙物件目録2, 3記載の土地(以下「本件2, 3の土地.の要領で記載する)とその上に家屋を建築して譲渡する旨の申出を受けた。もしこれが受け入れられなければ,会社は辞めてもらうといわれ,甲太白はこれを承諾することとなり,かくして,昭和33年11月28日,丙川一郎との間に土地交換契約が締結された。なお,現在,相続財産管理人であるAは,本件2,3の土地について,亡甲太白の相続財産であることの確認と交換を原因とする所有権移転登記手続を求めて訴を提起している。

(4)甲太白と申立人ら家族は,昭和34年に本件4の家屋に入居し,維持管理をしてきた。甲太白は,昭和40年1月12日,職場である○○○○株式会社において,脳出血で倒れ,○○○の○○病院に入院し,意識が戻ることなく,同月14日死亡した。葬儀は自宅で甲太白と申立人との間の子である乙川太郎が喪主となって行われ,以後供養は申立人が子供達の協力を得ながら行っている。

(5)生存している子供達は全貝,申立人が本件各不動産を取得することに異存がない。

3 国際裁判管轄権

 この点についての明文はないので,条理により解釈するほかないが,本件の場合,被相続人の最後の住所地及び相続財産の所在地は日本国内にあるから,わが国に国際裁判管轄権があると認められる。なお,上記のとおり,相続財産管理人もわが国において選任されている。

4 準拠法等について

 本件の準拠法について検討するに,特別縁故者への財産分与については,相続財産の処分の問題であるから,条理に基づき,相続財産の所在地法である日本法を適用すべきものと考える。

 そして,上記事実によると,申立人は,甲太白の内縁の妻として,法律上の夫婦同様の生活をしてきたものであるから,民法958条の3所定の「特別の縁故があった者」と認めることができる。そして,本件各不動産はすべて甲太白と申立人が協力して形成したものであるから,全部を申立人に分与するのが相当である。

 よって,相続財産管理人Aの意見を聴いたうえ,主文のとおり審判する。(家事審判官 大津卓也)

〔編注〕事件関係人の人名は仮名にし,別紙物件目録は省略した。