薬事法違反の故意に関する東京高裁平成24年

薬事法違反被告事件

東京高等裁判所判決/平成24年(う)第334号

平成24年5月31日

【判示事項】       刑法38条3項ただし書の要件について判示した事例

【判決要旨】       本件は,薬事法違反事件であり,被告人は,違法性を認識していなかったが,違法性の意識を欠いたことには,斟酌又は宥恕すべき事情があり,刑法38条3項ただし書の適用を認めるべきであるとして,事実誤認,量刑不当を主張して控訴したが,同法38条3項ただし書の適用要件につき,一般論として,「怠惰な者の方が利益を享受する結果とならないよう,それが医薬品に該当するかどうか,及び,その販売規制等について,十分といえるだけの調査をすることが求められる。」と判示した上,本件では斟酌又は宥恕すべき事情があるとは認められないとして,控訴を棄却した。

【参照条文】       刑法38-3ただし書

             薬事法84

             薬事法24-1

【掲載誌】        高等裁判所刑事裁判速報集平成24年128頁

 

       理   由

 

 薬事法に違反する客観的事実関係を認識しつつ行ったものである以上,それにもかかわらず,医薬品とは思っていなかったことに何らかかの正当性なり斟酌すべき事情があるというためには,怠惰な者の方が利益を享受する結果とならないよう,それが医薬品に該当するかどうか,及び,その販売規制等について,十分といえるだけの調査をすることが求められるというべきである。そして,当審で取り調べた関係証拠からも明らかなとおり,東京都の薬務担当部署(福祉保険局健康安全部薬務課)その他の関係機関等に問い合わせるなどすれば,薬品としての効能効果を謳えば医薬品とみなされることなどの販売する場合の効能効果の表示に関する注意事項や成分分析の必要性等に関する指導等が適切になされることになっており,また,インターネットを使用して調査すれば,医薬品と健康食品の区別や販売に関する法規制等はもとより,本件当時から精力剤やサプリメントなどとして違法薬物が中国製品を中心に多数出回っていることや,本件薬品からクエン酸シルデナフィルが検出されたことについても容易に知り得たはずであると認められるのである。ところが,被告人は,本件薬品に関する説明書に表示されていた原料成分についてインターネットで副作用の有無等を簡単に調査した程度で,それ以上には本件薬品が医薬品に該当するかどうかの調査や検討を行っていなかったというのであるから,それを知らなかったことについて,斟酌又は宥恕すべき事情があるということはできない。

    【主文は出典に掲載されておりません。】