結納金の返還義務を否定した最高裁昭和39年

物品等返還結納金請求事件

窪田充実『家族法 第4版』有斐閣・2019年26頁

【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/昭和38年(オ)第1124号

【判決日付】    昭和39年9月4日

【判示事項】    結納の返還義務がないとされた事例

【判決要旨】    挙式後8カ月余も夫婦生活を続け、その間婚姻の届出も完了し、法律上の婚姻が成立した場合においては、たといその後結納の受領者たる妻の申出により協議離婚をするに至つたとしても、妻には右結納を返還すべき義務はない。

【参照条文】    民法4編第2章

          民法703

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集18巻7号1394頁

          家庭裁判月報16巻10号83頁

          最高裁判所裁判集民事75号169頁

          判例タイムズ168号88頁

          判例時報388号31頁

【評釈論文】    別冊ジュリスト12号12頁

          別冊ジュリスト40号14頁

          別冊ジュリスト66号10頁

          判例評論77号8頁

          法曹時報16巻11号112頁

          民事研修622号21頁

          民商法雑誌52巻4号99頁

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人馬渕分也の上告理由第一点について。

 論旨摘録の原判示は、被上告人の所有権に基づく本訴請求に関するものであつて、上告人の反訴請求に関するものでないことは、原判文上明らかである。従つて、論旨は、原判示を正解せず、前提を欠くものであるから採用することができない。

 同第二点について。

 原判決によれば、原審は、上告人の結納金返還請求につき、所論の如き判示をしたのではなく、結納は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与であるから、本件の如く挙式後八ヵ月余も夫婦生活を続け、その間婚姻の届出も完了し、法律上の婚姻が成立した場合においては、すでに結納授受の目的を達はたのであつて、たとい、その後結納の受領者たる被上告人からの申出により協議離婚をするに至つたとしても、被上告人には右結納を返還すべき義務はないと解すべきであり、これと異なる慣習の存在することを認むべき資料もないから、上告人の結納金返還の請求は失当であると判断したのであつて、原審の右判断は正当である。また、元来、離婚は婚姻の効果を将来に向かつて消滅させることを目的とする行為であつて、本件の如く被上告人の申出による協議離婚の場合といえども所論の如き遡及的な原状回復ということはあり得ないから、民法五四五条に関する論旨は、独自の見解であつて採用の限りではない。原判決(その引用する第一審判決を含む。)には何ら所論の如き違法のかどは見出せない。論旨はすべて理由がない。

 同第三点について。

 論旨は、憲法一四条違背をいうが、その実質は単なる法令違背の主張にすぎず、しかしてその理由のないことは、上告理由第一点及び第二点に対する前叙説示によつて明らかである。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷

        裁判長裁判官  奥野健一

           裁判官  山田作之助

           裁判官  草鹿浅之介

           裁判官  城戸芳彦

           裁判官  石田和外