面会交流と相手方同席 名古屋家裁一之宮支部平成28年

平田厚『子の利益に適う離婚協議』第一法規・2021年 177頁

面会交流申立事件

名古屋家庭裁判所一宮支部審判/平成27年(家)第341号

平成28年9月16日

【掲載誌】         判例時報2367号62頁

 

       主   文

 

 一 当事者間の名古屋家庭裁判所一宮支部平成二六年(家)第一三八号面会交流申立事件に係る平成二六年九月二四日付け審判の主文一項(4)及び(5)を、次のとおり変更する。

  (1) 平成三〇年八月以降、相手方は、申立人に対し、あらかじめ具体的な面会交流の場所を知らせるものとする。申立人は、当該場所に異議がある場合、相手方に対し、その旨及び希望する場所を伝えることができる。

  (2) 相手方は、平成三〇年七月末日までは、申立人の同席を認めなければならない。

 二 手続費用は各自の負担とする。

 

       理   由

 

第一 事案の概要等

 一 本件は、未成年者を単独親権者として監護する申立人が、相手対に対し、民法七六六条三項に基づき、当事者間の平成二六年(家)第一三八号面会交流審判事件(摘示する事件番号は、いずれも名古屋家庭裁判所一宮支部のもの。以下同じ。)に係る平成二六年九月二四日付け審判(以下「前件審判」という。)の定める面会を、新たな協議が成立等するまでの間、禁止することを求めた事案である(申立書記載の申立の趣旨には、前件審判の取消しを求める旨の記載もあるが、上記の趣旨と認める。)。

 前件審判の主文は別紙《略》記載のとおりであり、年三回(三月、七月、一二月)の面会を定めた間接強制決定可能な債務名義である。

第二 当裁判所の判断

 一 一件記録(後記(2)、(3)の面会交流に関する①平成一八年(家イ)第六二二号、②平成一九年(家イ)第七四号、③平成一九年(家イ)第三五四号及び平成一九年(家)第四一九号、④平成二一年(家イ)第三五四号及び平成二三年(家)第二九三号、⑤平成二四年(家イ)第一九九号並びに⑥平成二五年(家イ)第二六〇号及び平成二六年(家)第一三八号に係る各記録を含む。)によれば、次の事実が認められる。

 (1) 当事者等

 申立人と相手方は、平成一七年三月××日に婚姻し、平成一八年××月××日、両者の間に未成年者が出生したが、平成一九年六月××日、申立人を未成年者の親権者と定めて調停離婚した。

 (2) 前件審判に至る経緯

 ア 申立人は、平成一八年九月以降、産前休暇を取って申立人の実家で生活するようになり、同年××月××日に未成年者を出産した後も、そのまま実家で生活していた。

 相手方は、未成年者の出産に立ち会い、その後、週末などに申立人の実家に赴いて未成年者と面会するなどしていた。そうしたところ、申立人は、同年一二月二日の面会時に、相手方が、申立人の手をつかんで振り払い、申立人の頭や顔、肩を叩き、さらに、平成一九年二月一〇日の面会時に口論となって、相手方が授乳中であった申立人の頭を叩いたとして、以後、相手方による未成年者との面会の求めに応じなくなった。

 イ 相手方は、平成一九年二月一九日、面接交渉調停事件(平成一九年(家イ)第七四号)を申し立てたが、同年六月一四日、夫婦関係調整調停事件(平成一八年(家イ)第六二二号)において調停離婚が成立すると同時に、上記面接交渉調停事件を取り下げた。

 ウ 相手方は、同年七月九日、面接交渉調停事件(平成一九年(家イ)第三五四号)を申し立てたが、同事件は、同年八月二七日に審判移行した(平成一九年(家)第四一九号)。

 審判移行後、裁判所内及び公園で試行面会が計四回行われたが、いずれも未成年者が相手方に触れられると泣き出す状況であった。相手方は、子が泣くのは仕方がないとして直接的な接触による面会交流をやめるべきではない旨を主張し、他方で、申立人は、裁判所等の援助なしに円滑な面会交流が実現できるとは思えない旨を主張した。

 当庁裁判官は、平成二〇年七月三一日、相手方の申立てを却下する旨の審判をし、同審判は、抗告棄却によって確定した。同審判は、一歳九か月の未成年者にとって相手方が「不快」の対象となっているのは明らかであり、面会交流の回数を重ねることで未成年者の認識を変えていくことは容易ではない上、相手方において面会の困難さについての具体的な認識が乏しく、現実的な面会の困難性を克服できない可能性が高いとして、現時点では、相手方が未成年者と直接面会することは未成年者の福祉の観点から相当ではなく、未成年者が相当程度成長し、ある程度の自我を確立し、心理的な母子分離が完了する満三歳頃には、改めて面会交流を行うことによって、適切な父子関係が確立される可能性があるが、それまでは、直接的な面会交渉を行うべきではないと説示している。

 エ 相手方は、平成二一年六月一二日、面接交渉調停事件(平成二一年(家イ)第三五四号)を申し立てた。

 同調停事件において、平成二二年一月一八日に当庁内で実施された一回目の試行面会は、相手方から未成年者に話し掛けたり近付いたりしないとの約束で行われた。未成年者には、相手方の存在を意識している様子が見られたものの、相手方に笑顔があまりなかったことにいっそう不安を募らせる態度も見られ、母親である申立人に寄り添っていた。

 同年二月二二日にも試行面会を行う予定であったが、申立人が未成年者の体調が良くないと説明して中止になり、未成年者が同年四月に入園する幼稚園に慣れた後の夏以降に、段階的な試行面会が目指されることとなった。

 同年九月に二回目の試行面会(未成年者と申立人がショッピングセンターで過ごす様子を、相手方が、未成年者に気付かれないようにして、遠方から観察するというもの)を経て、同年一一月二六日に調査官による未成年者の調査が実施された。同調査において、未成年者は、相手方に会いたくないと繰り返し述べ、その理由については「お父さん恐いから」と答えたが、そのうち会ってもいいかとの問いに対しては、年長さんになったら会ってもよいなどと答えた。

 さらに、平成二三年二月一四日、三回目の試行面会がショッピングセンター内で行われ、未成年者は、申立人と相手方と三人で過ごした。未成年者は、双方から話し掛けられて表情が多少ほぐれ、アイスクリーム購入後には笑顔を見せたが、相手方が、反対側の席から未成年者の横の席に移動して話し掛け始めると、自分の椅子を大きくずらして申立人にもたれるなど、次第に相手方を避ける態度を見せるようになり、相手方が絵本を出して一緒に見ようとしても顔を背けたりして明らかに相手方を避けるようになった。しかし、相手方は、未成年者の態度に反応せず、面会を切り上げようとしなかった。

 上記試行面会の結果を受け、相手方は、試行面会の続行を希望したが、申立人は、試行面会に起因する未成年者の心身の不安定や申立人への心理的な負担の大きさから面会交流を当面認めるべきではないと主張したため、上記調停事件は、同年五月一二日に審判移行した(平成二三年(家)第二九三号)。

 当庁裁判官は、同年一〇月三一日、申立てを却下する旨の審判をし、同審判は抗告棄却によって確定した。同審判は、未成年者は言葉のみならず態度でも相手方との面会交流を拒絶する姿勢を示しており、相手方と直接会う形での面会交流は未成年者にとって心理的な負担になっているとして、このような状態で面会交流を続けても相手方に対する悪印象が増幅しかねず、かえって未成年者と相手方との関係の修復を困難にする可能性が高い上、面会の実施中及びその前後の申立人の負担が過大でかえって未成年者の監護状況に悪影響を与えかねないこと、相手方が、未成年者の拒絶的な姿勢を受けても、直接会い続けることによって慣れさせる必要がある旨述べるなど、未成年者に与える心理的負担等に対する相手方の理解が不十分であることから、円滑な面会交流を実施することは困難であるなどと説示している。

 オ 相手方は、平成二四年三月二九日、再び面会交流調停事件(平成二四年(家イ)第一九九号)を申し立てた。相手方は、同年五月一一日、申立ての趣旨を[未成年者と間接的な交流をする方法等を定める調停を求める」と変更したため、以降、間接交流についての話合いが続けられ、相手方が未成年者に対して手紙やプレゼントを贈るなどしていた。

 しかし、相手方が、同年一〇月一二日、申立ての趣旨の上記変更を破棄して直接的な面会交流を求めるようになったため、同月一八日、調停をしない措置が採られた。

 (3) 前件審判の状況

 ア 相手方は、平成二五年五月七日、面会交流調停事件(平成二五年(家イ)第二六〇号)を申し立てた。

 イ 平成二五年七月三一日、調査官が未成年者と単独面接したところ、未成年者は、終始言葉を発することなく、首を振るかうなずくという反応で意思表示をしていた。調査官が相手方に会えるか質問しても、その都度首を横に振っていた。未成年者は、このほか、相手方のことが怖い訳ではない、相手方には嫌な思い出があること、今日は最初から嫌と言おうと思ってきたのではないこと、申立人が会っては駄目というから会わないのではないとの意思表示をした。

 ウ 平成二五年八月八日、児童室で一回目の試行面会(約四〇分間)が行われた。申立人と未成年者は、予定時間より二〇分遅れて到着した。同日は、調査官が未成年者に話し掛けても、前記イの調査時同様、言葉は出ず、首を振ったり、うなずいたり、首をかしげるのみであった。

 試行面会開始前に申立人が児童室から退室しようとすると、未成年者は嫌がって離れず、鼻血を出してしまった。

 相手方が入室して「Aちゃん、久しぶり。」と話し掛けると、未成年者は、口をきかなかったが、少し照れた様子で笑みを見せた。申立人は退室しようとしたが、未成年者が申立人の足にしがみついて嫌がる様子を見せたため、調査官は、申立人に対し、しばらく在室するよう促した。

 その後、相手方、未成年者及び申立人、調査官の三チームでババ抜き等のトランプゲームをしたところ、未成年者は、笑顔を見せるようになり、相手方と組むよう促された際、恥ずかしそうな表情を見せたものの拒否することはなかった。また、相手方からの話し掛けに対して言葉で答えることはなかったが、申立人に促されてうなずいたりしていた。

 その後、申立人が退室したが、未成年者は、調査官と相手方とともに折り紙等で遊び続け自ら話し掛けることはなかったものの、相手方からの話し掛けに対し、うなずくなどして反応していた。相手方は、終始穏やかに対応しており、未成年者に話し掛ける際には、子の生活状況に応じた話題を選んでいた。

 面会終了後、相手方は、「おかげさまでいい時間が過ごせました。折紙も一緒にできたし。」と述べ、申立人がいなくなっても泣いたりせずに過ごせた点が進歩した点であるとの感想を述べた。ただし、未成年者の様子は、ショッピングセンターでの試行(平成二三年二月。前記(2)エ)の方がにこにこしていて、機嫌は良かったかと思うと述べた。調停委員からは、未成年者は今日の試行に緊張しながらも頑張って出て来たのであるから、終了時には「会えてすごく嬉しかったよ。来てくれてありがとう。」という気持ちを直接相手方から伝えた方が良かったのではとの助言がなされたが、相手方はその助言を素直に受け止めている様子であった。

 申立人からは、試行を観察しての感想はあまり出ず、未成年者が相手方の働き掛けに対して反応はしてたかなと思うという程度であった。また、面会交流前の未成年者の様子については、前記イの調査時に今回の試行面会があると分かってから、ずっと未成年者の様子が落ち着かなかったこと、当日は、未成年者に下痢と吐き気があったため、遅刻したことの説明もあった。

 エ 平成二五年八月二九日、児童室で二回目の試行面会(約四〇分間)が行われた。未成年者は、申立人と来庁したものの、「きょうはぜったいあいません。」と記載した手紙を調査官に見せるなどして試行面会を拒否したが、調査官による三〇分余りの説得を経て、ようやく申立人と同席で短時間という条件での試行面会を承諾した。

 相手方は、入室すると、未成年者に渡すために持参した暑中見舞いカードと絵本(実物大動物図鑑)を差し出した。未成年者は、興味を示したものの、申立人の方を見るばかりで相手方と目を合わせず、申立人から促されてもお礼の言葉を発することはなかった。ただし、カードを出して、相手方の書いた文章も読み、カードを立てて机に置いていた。未成年者は、相手方と一緒に絵本を見始め、その際、相手方の方を見ることはほとんどなかったが、相手方に促されて動物の名前を言ったり、指をさされて絵本を見るなどし、相手方に腕を掴まれても嫌がる素振りを見せることはなかった。絵本を読み終わり、調査官から絵本をもらっていくかと尋ねられると、未成年者は、申立人を見ながらうなずいた。一回目の試行面会のようにはしゃいだり、楽しむような様子は見られなかったが、特別不機嫌な様子もなく、少し声が出るようになった面もあった。

 終了後、相手方は、「一進一退という感じです。」と述べ、本を見てじっとしているのは難しかったが、声が出たのはよかったとの感想を述べ、今後、会話ができるようになると良い、そのためにはなるべく時間を置かずに試行したいとの希望が述べられた。

 申立人からは、一回目の試行の際、未成年者の様子は落ち着かなかった様子であり、そのような様子を考えると、学校のある期間の試行面会は難しいとの意向が示された。

 試行後の調停には、未成年者も同席した。その席上で、次の試行面会日が調整されたが、未成年者は「三時一五分には帰れるときもあるよ」などと口をはさんでいた。

 二回目の試行後の状況として、申立人は、審問期日において、①面会終了後、未成年者が、「その場で相手方と会うことを断ろうと思ったが断れず『うん』と言ってしまっちゃった。失敗した。」、次は自分で断って帰ってくると言っていた、②未成年者に、チックの症状が出たり、やんちゃになったりしたと述べた。

 オ 平成二五年一〇月一〇日、児童室で三回目の試行面会(約三五分間)が行われた。未成年者は、来庁時、相手方に会いたくないと一階に留まっていたため、調査官が迎えに行って児童室まで案内し、前回よりも短い時間で終わらせると約束して、試行面会が開始された。

 相手方は、一回目の試行で使用したが渡せなかったという布絵本とひらがなカードセットを持参していた。また、二回目の試行で子がオセロで遊んでいると話していたことから、電子版のオセロも持参しており、いずれかで遊びたいと述べた。

 相手方が入室し、申立人が退室しようとすると、未成年者が申立人に抱きつくなどして激しくぐずったため、申立人、相手方、調査官及び未成年者の四人でトランプゲームやカードゲームをして遊んだ。未成年者は、相手方とあまり目を合わせることはなく、落ち着かない様子も見られたが、ゲームの中で嬉しそうな表情を見せることもあった。申立人が退室した後、未成年者と相手方は、上記電子版オセロで対戦したが、途中で調査官が制止したにもかかわらず、相手方が角を次々と取得して圧勝し、未成年者は、相手方からもう一度やるか問われても、首を横に振った。

 調査官が終了の声掛けをしたところ、相手方は未成年者に「Aちゃん、またね。」と声を掛けたが、未成年者は目を合わせず、返事もしなかった。

 試行終了後、申立人は、オセロの場面では未成年者の顔が引きつっており限界と感じたと述べた。他方、相手方は、オセロで真剣勝負できたのはとても嬉しいことで熱中できて良かったと思う旨述べた。調停委員が、相手方に対し、未成年者が悲しそうな表情になったことを伝えた上、未成年者の年齢を考えると対等に真剣勝負をするのではなく、未成年者を勝たせてあげるような工夫や配慮が必要だったのではなどと指摘すると、相手方は、勝ったら駄目なのかとやや腑に落ちない表情を見せた。なお、後に、相手方は、この点について、未成年者が強いと聞いていたので、わざと負けるよりもハンディをつけたり教えたりすることが親子の交流になると考えるし、未成年者もそれを理解してもう一度オセロをやりたがっていたが、調査官に時間だからと止められたなどと主張した。

 カ 平成二五年一一月一八日、児童室において四回目の試行面会が実施される予定であったが、申立人が未成年者を連れて来なかったため実施できなかった。申立人は、審問期日において、未成年者が「行かないに決まっている」と言っており、連れて来ることができなかったと述べた。

 キ 申立人は、平成二六年二月二四日、年三回(春夏冬の長期休暇中の各一日)、一回につき一~二時間程の面会交流を行うこと、相手方が申立人代理人(石塚徹弁護士を指す。以下同じ。)に連絡して日程や場所等の面会交流の方法を協議して定めることを提案したが、相手方がこれに応じず、月に二、三回、一回につき六時間などの面会交流を要求したため、本件調停事件は、同年三月三日に不成立となり、前件審判手続に移行した。

 ク 平成二六年五月九日、当庁において調査官による子の心情調査が実施された。未成年者は、来庁当初は面接を拒否していたが、後日調査官が自宅を訪問して面接することを知ると、今日話をすると言い出して、面接が実施されるに至った。

 調査面接において、未成年者は、これまでの面会試行でトランプやオセロをしたことについて、調査官から「楽しかった?」と聞かれると首を横に振り、「楽しくなかった?」と聞かれると首を縦に振った。また、相手方と会うことについて聞かれると、「嫌だ。」、「会いたくない。」と答え、その理由を様々な問いかけで聞かれると「お父さんが嫌いだから会いたくないから嫌だ。」、「嫌いだから嫌い。全部嫌い。」、「嫌いだから。会うのが嫌だから。」などと述べた。その間、未成年者の表情はやや沈んでいたが、未成年者の日常生活に話題が移ると、自ら次々と話をして表情も格段に明るくなった。

 なお、申立人は、申立人代理人に対し、メールで、同日の朝、未成年者が数年ぶりにおねしょをした、未成年者に調査面接のことを伝えたところ、同年四月二四日頃、未成年者の視力が一時的に低下し、医師からは「何か心の問題かな」と言われた、未成年者は「お父さんのことなんか頭の中に全くないことだ、気にもしていない」と言う一方で、「Aが頑張れないので、お母さんが困るね」と言って、調査面接のことを気にしている様子であったなどと報告している。

 ケ 相手方は、審問期日において、①幼稚園の頃行った施行面会(前記(2)エ)において未成年者がアイスクリームを食べて喜んだ表情をしていたことから、例えば、フードコードなどで未成年者が好きなものを飲食し、未成年者が好きなものや学校の話を聞いたり、アイスクリームやジュースなど短時間で飲食できる物を食べながら、絵本を読んだりおもちゃで遊ぶことを考えていること、②未成年者が好きなおもちゃや本は、幼稚園の頃は飛び出す絵本が好きだと申立人から聞いたが、小学校に上がってからは分からないこと、③未成年者が現在好きなものについて、申立人に協力を求めて確認する方法を取っても構わないが、以前、申立人が教えてくれたことが当たっていないこともあったこと、④未成年者とできるだけ楽しい時間を過ごしたいので場所はどこでも構わなく、事前に未成年者が行きたい場所を教えてくれば、そこに行くようにしたいと考えていること、⑤ただし、ゆったりとした時間を過ごしたいので、お茶だけ飲んでさっと帰ってしまうのは嫌であることなどを述べた。

 コ 当庁裁判官は、平成二六年九月二四日付けで、申立人に対し、別紙一《略》記載の主文のとおり、三月、七月及び一二月の年三回、未成年者を相手方に面会させることを命ずる審判をした。面会時間は、平成二九年三月までは一回二時間で、その後は一回四時間とされている。また、同月までは申立人が同席するものとされている。前件審判は、要旨次のとおり説示した。

  ① 一般的に、子と非親権者である親との面会交流は、子が親権者だけでなく非親権者からも愛されていることを知る機会となり、子は、その体験を通じて自尊心を持つことができ、また、親権者と価値観の違う非親権者との交流を通して、親権者だけの意見や感情に巻き込まれずに独自の人格形成をすることができるといわれ、子の健全な成長にとって重要な意義がある。したがって、子の福祉を害するなど面会交流を制限すべき特段の事由がない限り、面会交流を実施していくのが相当である。

  ② 未成年者が相手方と会うことを拒否する意思には強固なものがうかがわれる。また、未成年者にとって相手方との面会交流が心理的な負担になっていることが認められる。

 しかしながら、その心理的負担の程度は、面会交流を制限しなければならないほどの重篤なものとまでは言えず、申立人の調停時の提案も考慮すると、面会の実施方法について一定の配慮をすれば、満八歳に達しようとする未成年者のストレス耐性能力ないし環境適応力をもってして十分克服可能な問題というべきである。

 しかも、調査及び試行面会時の未成年者の様子や、本件手続に至るまでの経緯、未成年者の年齢等に鑑みれば、生後まもなくの頃から両親の紛争下に置かれていた未成年者が、申立人が言葉にせずともその気持ちを敏感に感じ取って、意識的ないし無意識的に相手方に拒否的な反応を見せている可能性も否定できない。

  ③ 前件審判における三回の試行面会を通して、相手方において未成年者の心身を害するような対応はなかったものといえること、相手方なりに未成年者と父子関係を築いていくための努力をしていく姿勢のあることが認められるから、本件において面会交流を制限すべき事由があるとはいえない。

  ④ 現時点で未成年者は申立人との面会に拒否反応を見せているものの、今後、相手方と円滑な面会交流を重ね、相手方と継続的にやり取りをすることで、上記拒否反応も徐々に和らいでいく可能性もないとはいえず、むしろ、面会交流が有する意義に照らせば、未成年者の中期的な発育にとって本件面会交流を認めることが必要かつ相当である。

  ⑤ 申立人は、相手方には、申立人との信頼関係・協力関係の形成が重要であることへの理解がないとして、未成年者の利益に適った面会交流の実現が不可能であると主張するが、面会交流を行う上で必要な範囲の信頼関係すら確保されていないとはいえない。

  ⑥ 相手方は、未成年者の年齢的な特性等を理解する必要があり、未成年者との父子関係の回復を望むのであれば、申立人への批判的言動は、相手方の意図に関係なく間接的に未成年者に影響していくことを避けられないことを念頭において、厳に慎むべきである。相手方には未成年者に心理的負担が生じている現状の受け止めやその背景への理解が乏しいといわなければならず、申立人の態度等と未成年者の現状に鑑みれば、頻繁な面会交流を行っても、かえって未成年者に負担となって父子関係の回復が遠のくことが想像される。面会交流を行うことによって生ずる未成年者の心理的負担というデメリットを最小限に抑えつつ、面会交流を行うメリットを得るには、無理のない回数、時間及び方法から始めて、未成年者に申立人との面会交流に慣れさせてから、未成年者の発達段階にも配慮して、未成年者が小学高学年となる平成二九年四月以降、面会交流の時間を段階的に増やしていく方法によるのが相当と考える。

 サ 申立人及び相手方は、前件審判に対して、それぞれ抗告したものの、名古屋高等裁判所は平成二六年一二月一七日付けでいずれも棄却する旨決定し、前件審判は確定した。

 (4) 前件審判後の状況

 ア 前件審判確定後最初の面会日は平成二六年一二月二一日(土)であったが、同日の面会は実施されておらず、それ以降現在まで、申立人は、前件審判の定める面会義務を履行していない。

 イ 相手方申立ての履行勧告手続(平成二六年(家ロ)第一〇三号)において、調査官は、平成二六年一二月二五日、申立人に対し、相手方から面会の実施と、連絡を取り合える携帯電話番号(SMSメール可能なもの)を教えて欲しいとの要望が出されたこと等を書面で連絡した。これに対し、申立人は、同月二六日、調査官に対し、直接に連絡を取ることが怖いため、連絡先電話番号を伝えることはできず、弁護士(申立人代理人)に委任する予定なので、実施の日時の調整などは同弁護士宛てにしてもらいたいこと等を、電話で回答した。

 ウ 相手方は、平成二六年一二月二六日、間接強制を申し立てたところ、当庁裁判官は、平成二七年二月一〇日付けで、申立人に対し、前件審判の定める面会に係る義務の履行を命ずるとともに、不履行一回ごとに一二万円の間接強制金を定める旨決定し(平成二六年(家ロ)第一〇四号)、同決定はその後確定した。

 その後、当庁裁判官は、相手方の申立てにより、平成二七年三月の不履行を踏まえて間接強制金を不履行一回ごとに二四万円に変更する旨決定し(同年四月三〇日付け。平成二七年(家ロ)第二三号)、さらに、同年七月の不履行を踏まえて同じく三六万円に変更する旨決定し(同年九月八日付け。平成二七年(家ロ)第六二号)、さらに、同年一二月の不履行を踏まえて同じく五〇万円に変更する旨決定した(平成二八年三月二日付け。平成二七年(家ロ)第一〇七号)。上記各変更決定はその後確定している。

 さらに、相手方は、平成二八年三月の不履行を踏まえて、間接強制金の再増額を求める申立てをしたが、当庁裁判官は、申立人が面会を拒む理由はなく、間接強制により履行を強制されてもやむを得ないとしつつ、間接強制金をさらに増額することは否定して、同申立てを却下する旨決定した(同年五月二五日付け。平成二八年(家ロ)第二八号)。

 エ 相手方は、平成二七年三月六日頃、申立人代理人について、不当に面会を妨げた等違法行為の助長、偽証のそそのかしがあるとして、愛知県弁護士会に、懲戒請求をした。

 オ 申立人は、平成二七年三月一二日、申立人代理人に対し、メールで、申立人は相手方が怖いので直接の連絡は取れないとして、面会に関する調整を依頼した。

 (5) 本件の審理状況

 ア 申立人は、平成二七年七月二二日付けで、本件を申し立てるとともに、同趣旨の仮処分を求める審判前の保全処分を申し立てた(平成二七年(家ロ)第一〇〇四号)。

 イ 平成二七年九月二八日、申立人は、調査官の面接において、①未成年者に対し、平成二六年一〇月には前件審判の内容を伝え、同年一二月には複数回にわたり面会交流を勧める声掛けをしたが、未成年者は面会を拒んでいたこと、②その後は未成年者の体調不良もあって面会交流を勧めるのを控えていたこと、③同年三月には、未成年者が混乱し過敏に反応している様子であったことから、面会交流は大切であるが、未成年者にとっては逆方向に向いていると思われたこと、④同年七月については面会を無理に勧めることはしなかったこと、⑤申立人は未成年者が幼稚園児の頃、未成年者の父親イメージが良くないと心配し、「お父さんはあなたのことが大事」、「お父さんは怖い人ではない。」等としこりを除く目的で声を掛けるようになり、この頃から、面会交流についても良いものである、子どもの成長を願うものであるという意味の声掛けを未成年者に対して行ってきたこと、⑥申立人は、色々な思いで相手方と離婚したが、それを未成年者に背負わせたくないと思っており、未成年者にとって父親は一人しか居ないので、マイナスイメージがとれるよう気に掛けてきたことなどを述べている。

 ウ 臨床心理学を研究分野とする大学教授であって調査官の経歴を有するP1(以下「P1氏」という。)は、申立人からの依頼を受け、平成二七年一一月一日に未成年者と面接し、さらに過去の記録を検討するなどして、同年一二月二〇日付けで意見書(以下「P1意見書」という。)を作成した。P1意見書は、本件の面会は、子の福祉には叶わないものであり、未成年者の強い希望である「面会交流を止めて」という願いを実現することが、子の利益のためには最優先されるべきであり、また、このままの状態で面会を実施すれば、未成年者と相手方との親子関係を将来にわたって修復不可能な状態にまで悪化させて、相手方のためにもならないと言えるとの意見を述べている。

 また、乳幼児精神医学を研究分野とするP2教授は、P1氏から提供を受けた資料を検討し、同月二一日付けで診断書を作成した(以下「P2診断書」という。)。同教授は、未成年者の診察はしていない。

 P2診断書は、未成年者をじんましんなど身体によるストレス反応を起こしており、いじめなどで見られる身体反応と同じ状態であって、未成年者の思いに反して同じことが繰り返されれば、抑うつ反応などの精神症状に移行することが多く認められ、さらに悪化すれば自傷行為、自殺などへ進む可能性もあるとして、現時点での治療は環境の調整で面会の強要を止めることであり、それができなければ進行する可能性が大きいと考えざるを得ないとの意見を述べている。

 エ 前記ウのP1氏による面接等において、P1氏が未成年者および申立人から聴取した結果は次のとおりである。未成年者からの聴取は申立人同席でなされ、申立人からの聴取は単独でなされた(なお、P1氏が、申立人からの依頼を受けて作成したという経緯を踏まえても、聴取結果を記録した部分について、信用性を疑うべき事情は見当たらない。)。

  (ア) 未成年者は、相手方が会いたいと言ったら、という問いに、「拒否する」と答えた。その理由は「ママがいいから」と「(相手方が)怖い」からだとし、怖い理由は「普段一緒に居ない」ことと「ママしか信用しない」、「大人は信用できない」と述べた。怖いと思ったのは「(面会交流で)会ったとき、会ってみて分かった」と言葉をかみしめるように話した。続けて「嫌いなこと。信用できないから」と述べた。嫌いなところは、「(相手方の)大人げなさ」で、それは試行面会の際に実父がオセロを「本気でやった」ことだと述べた。「ママはオセロで譲ってくれたけど、(相手方の)ああいうことは良くないよ。」とも述べた。最後に、「(相手方に次の)五つを伝えて欲しい」といい、「①ママがいい、②ママに優しくして欲しい」、「③(相手方は)自分のことばかり言わないで、④裁判所の先生のお話を聴きなさい、⑤いろんな人のお話を聞いて、もうこのこと(面会交流)は終わりにして」と話した。

  (イ) 申立人は、P1氏に対し、相手方には、相手が子どもでも自分のやり方や理屈を押し通すところがあり、自己中心的な態度は子どものようで、それを未成年者は分かってしまっている、「心から会いたいとか可愛いとは思っていない」と感じ、嫌っているのだと思う、と述べた。

  (ウ) 平成二七年一一月一二日頃、申立人は、申立人代理人を通じて、P1氏に対し、昨日また、未成年者の方から背中に掛けてじんましんが出てかゆがっている、足の土踏まずにじんましんが出た日は、のたうちまわっている、かきむしりすぎて傷が酷くなっても、未成年者が病院に行こうとしないので申立人は困っている旨報告した。

 オ 平成二七年一一月一七日、申立人は、調査官の面接において、申立人が相手方についてどのような説明をしているか等を確認されたのに対し、①未成年者は申立人と相手方がお見合い結婚であることと、年齢が七歳違うことを知っている、②未成年者の相手方に対する拒否が激しく見せたら破ると思い、申立人と相手方の結婚式の写真や、申立人と相手方が揃って写っている写真を見せたことはない、③未成年者から、何で結婚したのか聞かれたのに対しては、相手方が違う仕事をしていて面白いなという話が聞けたり、美術館に行って色んな話を聞けて面白かった、お話ししていて面白かった等と話した、④離婚の経緯については、相手方は相手方で考えていることがあると思うが、申立人としては、妊娠中具合が悪くなったため、周りの話を聞いて実家に居ることにしたが、仕事に行かなくなった申立人に対して相手方が要望することが増え、申立人が本当に動けなくなったため相手方の要望を聞けず、うまく行かなくなって、赤ちゃんの顔を見たら話し合えると思ったけれど話合いがつかず、離婚することになったとの内容を少しずつ話してきたと、説明した。

 カ 平成二七年一一月二四日、調査官が、未成年者に単独面接した。未成年者は、単独面接中、ボールやブロックで遊ぶ様子や、調査官の質問に答えなかったり、別の言葉をかぶせて質問を遮る様子があり、面会交流を話題にすることに抵抗がうかがえた。また、未成年者は、「うんち」と繰り返したり、はいはいしたり床に寝転がったりするなど、幼児的で退行した態度を示したことがあり、特に申立人が同席する場面で幼児的態度が多くみられた(なお、申立人は、未成年者が腹部を床につける形ではいはいしていたと主張している。)。面接終了後、調査官は、申立人に対し、未成年者が思っていることを言えなかった可能性があると伝えた。これに対し、申立人は、後日、調査官に対し、未成年者はきちんと気持ちを言えなかったようであるが、未成年者に負担が大きいので未成年者の再調査は求めないと連絡した。なお、未成年者は本件調査が午後四時すぎに終了した後、絵画教室の習い事に行っており、午後五時頃から午後七時三〇分頃まで同教室にいた。

 キ 前記カの面接調査の様子は次のとおりである。

  (ア) 単独面接開始後しばらくは日常生活について会話をし、一五分が経過したところで、調査官が、「お父さんのこと教えて。」というと、未成年者は父がいることや面会したことを拒否する発言をした。その後、調査官が、前件審判に係る面会を話題にすると、未成年者は調査官の言葉が終わらないうちに、「無理無理ー。年に〇回にしてー。」と語尾を延ばして述べた。調査官が「大事なお話だからね。きちんと話そう。」と言って理由等を聞いたが、未成年者は無理という結論を述べるのみであった。未成年者は「何で会わないとあかんかはママから聞いたけどね。」と述べたことから、調査官が内容を聞くと、「一つ目は、他の人にもAをかわいがってもらうため」と言って、他は忘れたとのことであった。調査官が、申立人にそう言われてどう思ったかを尋ねると、未成年者は「そんなことしなくていい。」と述べた。

  (イ) その後、調査官が、相手方と会ってみてもいいんじゃないかなと言うと、未成年者は横を向いて「だめ。よくない。」と述べ、つぶやくように「かゆくなる、かゆくなる、絶対に嫌。」と述べた。調査官が、相手方は未成年者に嫌なことはしないよねと尋ねると、未成年者は、小さいとき、無理矢理申立人から離そうとしたり、思い切り未成年者の手を掴んできたと述べ、申立人から聞いたからそう思うとのことであった。

  (ウ) 調査官が、申立人が未成年者のこと大事に思ってくれてるねと言うと、未成年者はうなずいたが、調査官が、相手方も大事に思ってくれていると思うよと言うと、未成年者は「そんなことない。」と述べて、さらに、調査官が「会いたいっていうことは、大事だよって言う気持ちで一緒に過ごしたり、かわいがってあげたいということじゃないかなあ。」と尋ねると、未成年者は、「絶対に違う。」、「ただの嫌がらせ。」と述べた。調査官が「嫌がらせは、嫌いな相手にするんじゃないのかなあ。」と言うと、「そうじゃない。絶対、嫌がらせ。」と述べた。調査官が、「もし、パパがAちゃんのことが大好きだって分かったら、会っても良いの。」と尋ねると、未成年者は「会わない。」と述べた。調査官が「パパに会うことに馴れていないから嫌なのかなあ。」と尋ねると「違う。」と述べた。

  (エ) 調査官が「ママは、Aちゃんとパパが会った方が良いよって言っているかな。」と尋ねると、未成年者は「分かんない。」と述べた。調査官が「ママは、Aちゃんとパパが会った方がいいと思っているかなあ。」と尋ねると、未成年者は「それは、分からん。」と答えた。調査官が「Aちゃんとパパが会うことについてママの気持ちは分からないけれど、Aちゃんは嫌なんだね。」と尋ねると、未成年者は「うん。」と述べた。「ママがパパのお話をしてくれたのはいつかな。」と尋ねると、未成年者は「昨日。」と述べた。「Aちゃんがパパに会いたくないって言った時、ママは?」と尋ねると、未成年者は「そんなの覚えていない。」と述べた。

  (オ) 単独面接開始後四〇分経過した時点で、未成年者が、申立人を呼んでこようと言って児童室を出て申立人の居る待合室に移動したため、単独面接は一時中断された。その後、単独面接が再開され、面会交流を題材とした絵本を未成年者に渡して話がされたものの、一〇分後に未成年者が再度児童室を出たことから、単独面接を打ち切った。

 ク 調査官が、平成二七年一一月二六日、未成年者の通学先小学校を訪問調査した結果、①未成年者が年齢相当の理解力と自己表現力を有していること、②未成年者は、同年四月から調査日まで欠席、遅刻、早退はないこと、学習面・生活面のいずれも問題はなく、安定した学校生活を送っており、学校が把握する限り、前件審判確定後も含めて、未成年者が学校で精神的に不安定になったり身体症状を示したことはないこと、③前記カの調査直後である同月二五日及び二六日の未成年者の様子は、授業内外を含めて普段と変わらなかったことが確認された。

 ケ 臨床心理士のP3は、相手方との調査面接のほか、P1意見書(P1氏が検討した過去の記録も含む。)及びP2診断書を検討した上で、平成二八年三月八日付けで意見書を作成した(以下「P3意見書」という。)。

 P3意見書は、P1意見書、P2診断書のいずれについても否定的な意見を述べている。

 コ 申立人は、P1意見書及びP2診断書を引用し、①面会交流の強要によって、未成年者が強い心理的負荷を受け、ストレス反応状態にあり、さらに同じことが繰り返されれば、未成年者について抑うつ反応などの精神症状へ移行し、さらに悪化することで自傷行為、自殺などへ進む可能性があること、②未成年者の面会拒否のために申立人が困っていることが未成年者の苦痛に通じるとともに、未成年者はそのために申立人の愛情も失ってしまうのではないかという強い恐怖も感じていることや、未成年者が自分を悪者にして理解せざるを得ない過酷な状況に陥っており、健康な自己肯定感の醸成を阻害する状態であること、③未成年者には、面会交流に関わるできごとを逐一チェックしようとする態度や、退行、駄々こね、身体症状がみられるため、申立人は未成年者を受け止めるのに多大なエネルギーを要するものになっており、就労に具体的な影響が生じ始めるなど、未成年者の生活基盤が脅かされる状態であることから、未成年者の面会交流を拒否する意向に照らせば前件審判の定める面会を禁止すべきと主張する。

 サ 当裁判所は、平成二八年九月一六日付けで、本案同旨の仮処分を求める旨の審判前の保全処分の申立てを却下した。

 二 検討

 (1) 前記認定によれば、現時点でも、未成年者の面会を拒否する感情は強固であるものと認められる。

 そして、未成年者は、①平成二二年一月一八日の試行面会(未成年者三歳)では相手方に笑顔があまりなかったことに未成年者がいっそう不安を募らせる態度も見られたところ、同年一一月二六日実施の調査面接において相手方が怖いと述べていること、②前件審判手続における試行面会に先立って行われた調査面接においても相手方に嫌な思い出があるとの意思表示をし、さらに、平成二五年一〇月一〇日の試行面会(未成年者七歳)では、相手方が未成年者にオセロで圧勝した直後、未成年者に悲しそうな表情が見られ、面会終了時に相手方が未成年者にまたねと声を掛けても返事もせず、目も合わせず、その後は、相手方は未成年者を当裁判所に連れて来ることができず、試行面会は実施されていないこと、③未成年者は、P1氏に対し、相手方がオセロで本気を出したことが、未成年者に譲ってくれる申立人と異なり大人げない態度であると述べている。以上によれば、未成年者が、相手方に対して消極的な印象を強める一因として、過去の面会において未成年者が感じた本件相手方への印象があることは否定し難い。

 他方で、未成年者は、P1氏との面接においても、面会を拒否する理由や相手方に対する消極的な感情の理由を聞かれたのに対し、上記③以外は具体的に述べておらず、その代わりに申立人に対する積極的な感情を繰り返しており、オセロに係る発言も申立人と対比して批評するような表現であったり、大人は申立人以外信用できないとも述べるなど、由立人を強く意識した発言がみられる。調査官による単独面接において調査官が面会を拒否する理由や相手方に対する消極的な感情の理由を繰り返し確認しても具体的に述べていないこと、加えて、前件審判の指摘した事情(前件審判における試行において、オセロで悲しそうな表情をした場面を除けば、未成年者が相手方に対して拒否的な態度を示したことはなく、むしろ、笑顔を見せる場面があったり、相手方と一緒に絵本を読んだり、相手方からの話し掛けに対しても拒否することなく反応していたことが認められること、未成年者が相手方から絵本をもらい受ける際に相手方の反応をうかがう様子があったこと、前件審判に至るまでの経過、未成年者が同性の監護親である申立人からの影響を受けやすい年齢にあること)に鑑みれば、未成年者が、本件面会のことを考える時は、申立人の相手方に対する恐怖心(前記一(4)イ、オ)等や前件審判に基づく面会に対する消極的な感情の影響により、意識的ないし無意識的に相手方に拒否的な反応を見せていることもうかがえる。

 (2) また、未成年者が調査官に対し、相手方は嫌がらせで面会を求めていると述べていること、申立人がP1氏に対し、未成年者は心から会いたいとか可愛いとは思っていないと感じて嫌っていると思う旨述べていること、未成年者がP1氏に対し、相手方に、申立人が良く、申立人に優しくして欲しいと伝えて欲しいと述べていることに鑑みれば、未成年者は、相手方が申立人を攻撃するため面会交流を請求していると認識しており、そのために面会への拒否的感情を強めているものと認められる。

 しかし、前件審判に係る試行面会において、相手方は、未成年者が喜ぶのではないかと考えて絵本、ゲーム等を用意しており、審問期日においても今後の交流態様を相手方なりに考えつつ、それに関して申立人からの提案があれば受け入れる旨の姿勢を示す発言をしていたものと認められ、しかも、一件記録をみても、相手方に未成年者に対する愛情が欠けることを示すような事情は見当たらない。本手続等において、相手方が申立人及び申立人代理人(前記一(4)エ参照)を非難するのも面会に関するものに限られていることに鑑みれば、相手方が申立人に対して批判的な主張をしたり、間接強制手続(同手続は、金銭的制裁の告知によって、債務者に心理的、経済的に圧力を加えるものであるとの性質上、申立人に対する攻撃的側面を有すること自体は否定できない。)を取っているのも、それが未成年者との面会の実現、ひいては未成年者との父子関係の改善につながると考えているからであって、申立人に対する攻撃自体が目的であるとは認め難い(ただし、前件審判が指摘したとおり、未成年者の年齢的な特性等からは、相手方の、申立人への拙判的言動が間接的に未成年者に影響していくこと自体はやむを得ない。相手方も、申立人に対する批判的言動等が、実際に未成年者との父子関係の改善につながっているのかどうか、再度慎重に考慮すべきである。)。

 また、申立人は、調査官に対し、申立人は未成年者の父親に対するイメージが良くないと心配して声掛けをしてきた旨述べているものの、未成年者に対し、相手方や相手方との婚姻生活について、婚姻していた時の写真を見せたり肯定的な印象を与える具体的な話題を伝えるなどはしておらず(前記一(5)イ、オ)、未成年者の相手方に対する印象を改善しようとするにあたって、未成年者が具体的な状況や物事を離れた思考をすることが難しい発達段階であることを踏まえた関わり方が十分できているとは言い難い。未成年者は、相手方との面会交流が限られていた状況の中で、相手方について消極的な捉え方をする傾向を変える機会がないままに、否定的な印象が固着したものとみるべきである。しかし、面会交流の意義(前記一(3)コ①)に鑑みれば、未成年者の、相手方について消極的な捉え方をする傾向を放置するのではなく、かかる傾向が変化するような働き掛けを行いながら、相手方との面会が実現するようにできる限り環境を整えることで、父である相手方なりに未成年者のことを考えていることを、未成年者が経験的に感じられる機会を確保することを目指すのが望ましい。

 (3) そして、以上に説示した点に照らせば、申立人において、相手方の態度に申立人と異なる面があるとしても、相手方なりに父子関係を築こうとしているのであって、嫌がらせ目的で面会を求めているとの受取り方は好ましくないことや、申立人も相手方との面会に賛成していることを伝えるなど、相手方を未成年者の父親として尊重する態度を十分示せば、未成年者の相手方に対する消極的感情を和らげることは期待できるというべきである。

 しかるところ、未成年者は、調査官に対し、相手方との面会について申立人の気持ちは分からないが未成年者としては嫌であると述べていることに照らすと、申立人が未成年者に対して面会に前向きな発言をしていたとしても、未成年者は本心からのものと受け取ることができていないことがうかがえる。申立人の、本件面会に係る未成年者に対する働き掛けは、不十分なものにとどまっているとみざるを得ない。

 (4) 以上を踏まえて、申立人の主張について検討するに、前件審判の認定説示した点(試行面会や調査面接の前後には、未成年者に体調不良やおねしょなど普段とは違う様子が見られたという申立人の陳述内容に加え、調査面接時や試行面会開始前における未成年者の態度、調査面接において話題が面会交流から日常生活に移った途端、未成年者が饒舌になりその表情も格段に明るくなるなど未成年者の様子に明らかな変化が見られたこと)や、本件における調査官面接において面会交流を話題にすることを避け、年齢や学校調査から認められる未成年者の発達状況にそぐわない退行した態度を示したことに照らせば、未成年者にとって相手方との面会交流が心理的な負担になっているものと認められる。

 しかし、前件審判後現在までの間において、前件審判の定める各面会時期や本件手続における調査官面接直後も含めて、未成年者が学校生活において精神的不安定や身体症状を生じたことは確認されていないこと等に照らせば、未成年者の心理的な負担やそれによる身体的不調等が、日常生活に影響を及ぼすほど重大なものになっているとは考え難い(申立人は、学校や習い事が面会交流を巡る苦悩から解放されて過ごせる場であるとみるべきであると指摘するが、上記評価と矛盾するものではない。)。しかも、申立人が、未成年者に対し、相手方を未成年者の父親として尊重する態度を示して働き掛けることで、未成年者の相手方に対する拒否的感情が和らげば、未成年者の心理的な負担は現状よりある程度軽減され、それに伴い、未成年者を監護する申立人の負担もある程度軽減されることが期待できる。

 したがって、申立人の主張やP1意見書、P2診断書を踏まえても、前件審判の定めたとおり、面会日を長期休み中に限って申立人同席の下で短時間の面会から始めるようにすれば、未成年者が面会について感じる心理的な負担はなお、未成年者のストレス耐性能力ないし環境適応能力によって十分克服可能な程度にとどまると評価するのが相当である。

 (5) 次に、面会条件について検討する。

 ア 相手方は、本件手続においても、申立人が面会交流への環境調整を怠っていたと繰り返し非難していること、面会に対する未成年者の心理的な負担の程度等に鑑みれば、前件審判の認定説示したとおり、頻繁な面会交流を行っても、未成年者が心理的余裕なく相手方と接することになって、父子関係の回復が遠のくことが懸念される。一件記録によれば、相手方提出のP3意見書も、本来ならば月一回以上の面会は当面確保されるべきであるし、宿泊面会なども当然実施されるべきであると述べつつも、現状からすれば困難に思えるとの意見を付記していることが認められることも踏まえると、直接の面会は、当面の間は、年三回の長期休みに限るのが相当であり、前件審判は基本的に変更の要を認めない。相手方は、生後間もなくから母親に絶縁された父子関係の回復には、前件審判より頻繁な面会が心理学的にも必要として、具体的には導入面会としては別紙二《略》、最終的には別紙三《略》をベースにした内容に面会条件を変更するよう求めているが、採用できない。

 イ もっとも、前件審判は、平成二九年三月までは面会時間を二時間とした上で申立人の立会いを認め、他方、未成年者が高学年になる同年四月以降については、面会時間を四時間に延長するとともに、申立人の立会いは条件から外しているところ、上記判断は、未成年者の成長に加え、前件審判の確定後はそれに従った面会が実施されることを前提にしたものとみるのが相当である。しかるところ、前件審判確定後約一年八月(審理終結時点)が経過した現時点においても前件審判に基づく面会が実現していないものであるから、未成年者の心理的な負担を軽減するため申立人の立会いを認める期間は、平成三〇年七月までに変更するのが相当である(なお、面会時間については、本審判によってあらかじめ変更する必要性までは認められない。)。

 ウ 相手方は、学校行事への参加を認める旨の変更審判を求める旨主張している。しかし、未成年者が相手方との面会について心理的負担を感じている現状では、相手方の学校行事への参加が、未成年者の学校生活にまで影響を及ぼすことが懸念され、現時点では相手方の学校行事への参加が父子関係の改善を遠ざけるおそれが強い。したがって、相手方の主張は採用できない。

 エ 相手方は、面会交流違反に対する制裁として、親権者ないし監護者の変更を実施条件に加えることが必要であるとも主張する。しかし、親権者等の変更の要否は、面会交流への姿勢のみならず、親権者等による監護状況、非親権者等の監護態勢、各自の子との親和性、親権と監護権を分離して定めた場合に予想される弊害の程度等を、その時点の状況に即して検討した上で判断されるべきものである。面会条件の中で、親権者等の変更に係る枠組みまで定めるのは困難かつ不相当であって、かかる主張は採用できない。

 (6) 以上によれば、前件審判の定める面会について、申立人の立会いを認める期間については平成三〇年七月までに変更するが、その余の点については、前件審判を変更すべき理由は認められないから、民法七六六条三項に基づき、前件審判主文のうち、必要な部分を変更することとし、主文のとおり審判する。

  (裁判官 五十部 隆)

 

 別紙一~三 《略》