[労 法]

〔第1問〕

本問において,Xの代理人として請求するのは,平成18年3月分賃金27万円と退職金118万円(退職金規程(規程)により算出される )の支払いであることは明らかであろう。 これらの請求につき,Yの言い分から考えられる主な争点としては,①Xに対する懲戒解雇と規程第8条第2号該当性,②規程第9条第3号による退職金支給制限の効力と同号該当性,③誓約書における退職金債権全額放棄約束の効力,④Yによる賃金・退職金を受働債権とする相殺の可否が挙げられる これらの争点につき主として論ずべき事項としては ①についてはXの辞職の意思表示の効力発生時期と懲戒解雇の意思表示の時期との先後関係からみた規程第8条第2号該当性 ②については 退職金の賃金 労働基準法第11条 該当性及び法的性質退職金支給制限規定が同法第24条等に違反して無効となるか否か,退職後の競業行為を理由とする退職金支給制限の可否など,③については,規程第9条第3号との関係での同法第93条の適用,退職金債権放棄の可否など,④については,同法第24条第1項の全額払原則が使用者のなす相殺に及ぶかなどの点が挙げられ,それぞれにつき本問の事実関係を踏まえた検討が必要となる。

〔第2問〕

本問は,不当労働行為の成立要件及び法的救済手段に関する理解を問うものである。

成立要件に関しては,Y社が団体交渉を拒否した行為,及び,Y社の総務課長であるCの発言が,それぞれ不当労働行為を成立させるか否かが問題となる。この判断のためには,Y社が労働組合法第7条における「使用者」と言えるのか,要求された交渉事項のうちどの事項について団交拒否の不当労働行為が成立するのか(労働組合法第7条第2号 ,総務課長であるC )の発言がY社の不当労働行為と言えるのか,使用者側の発言がいかなる場合に不当労働行為を成立させるのか(労働組合法第7条第3号)等の問題を検討する必要がある。法的救済手段に関しては,労働委員会に対する不当労働行為救済申立て(労働組合法第27条第1項)と裁判所に対する訴えの提起等が考えられるが,労働組合が前者の申立てをするためには 労働組合法に定められた要件を満たしている必要がある (労働組合法第5条第1項)。また,裁判所での手続については,団交拒否に対してどのような訴訟や仮処分が考えられるのかという点や,不当労働行為に関する損害賠償請求の可能性とそのための要件等を検討する必要がある。