昭和63年の司法試験・商法論文式試験問題から現在の企業法務をみる
初出2017年
弁護士 岡本 哲
構成
はじめに
第1問のついて
第2問について
はじめに
昭和のおわりには、司法試験の論文式の論点予想で過去30年くらいまでさかのぼる意味はあった。司法試験委員はそのころの試験を受けて合格していることがおおいので、立法や判例の動きがあまりない時代は問題意識が共通していたわけである。平成も二けたになると利害状況や判例の進展、試験傾向の年々の変化で、過去問にしても過去10年くらいで足りているようには思われる。
筆者の合格した年、昭和63年だと商法の論文式試験問題はいまでは企業法務での実務的意義が2問ともなくなってしまった。頭の体操くらいにちょっと考えてみたいただきた。
昭和63年商法
第1問
甲株式会社の資産総額は200億円であり、甲会社の内規によれば、10億円以上の借入れには取締役会の決議が必要である。甲会社の代表取締役Aが、甲会社の名において乙銀行と次の取引をしたとき、それぞれの取引の効力はどうなるか。
(一) Aは、取締役会の決議を経ることなく、20億円を借り入れた。
(二) Aは、自己の住宅購入資金にあてるため、2億円を借り入れた。
第2問
個人営業を営む甲が、A株式会社代表取締役甲名義で約束手形を振り出した場合、甲の手形法上の責任はどうなるか。A会社が実在する場合と実在しない場合とに分けて論ぜよ。
これを2時間でそれぞれ1000~2000字くらいの答案を作成して回答する。そんなに苦戦せずに解答したものと思われる。
第1問について
昭和63年だと定期預金の金利が1割をこえていたわけで、民事の5パーセント、商事6ポーセントの遅延損害金は利息としては安いことになる。マイナス金利や住宅ローン金利が2パーセントの平成23年現在とは異なる。不法行為責任のほうが利息が高いとなると。表見法理の意味が薄れrわけであr。
第2問は手形実務で銀行発行以外の手形用紙での手形取引がなくなったので事態が生じなくなった。