1978年の国際ロータリー東京大会記念切手
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田中芳樹裁判長不当判決 ロータリークラブ事件 長野地裁平成30年
ケースブック租税法 第6版 277頁 所得税更正処分等取消請求事件
長野地方裁判所判決/平成29年(行ウ)第1号
平成30年9月7日
【判示事項】 弁護士である原告が,奉仕活動,懇親を目的とするクラブの年会費を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して,確定申告及び修正申告をしたところ,税務署長が,必要経費とは認められないとして,更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたことから,原告が,被告に対し,各処分のうち,原告が修正申告の際に申告した納付すべき税額を超える部分及び各賦課決定の取消しを求めた事案。裁判所は,会費は,会員がクラブで奉仕活動などをするために納入されるもので,会費の支出は,法律事務を行う弁護士としての経済活動と直接の関連を有し,客観的にみて当該経済活動の遂行上必要なものということはできないとして,原告の請求を棄却した事例
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 長野税務署長が,平成27年10月21日付けで原告に対してした,原告の平成24年分所得税更正処分のうち,納付すべき税額53万2500円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
2 長野税務署長が,平成27年10月21日付けで原告に対してした,原告の平成25年分所得税及び復興特別所得税更正処分のうち,納付すべき税額102万4400円を超える部分を取り消す。
3 長野税務署長が,平成27年10月21日付けで原告に対してした,原告の平成26年分所得税及び復興特別所得税更正処分のうち,納付すべき税額235万5900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,弁護士である原告が,□□クラブ(以下「本件クラブ」という。)の年会費(以下「本件会費」という。)を諸会費又は接待交際費として,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入して,平成24年分ないし平成26年分(以下,これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税又は所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告及び修正申告をしたところ,長野税務署長が,本件会費は,原告の事業所得の金額の計算上必要経費とは認められないとして,平成27年10月21日付けで,平成24年分の所得税について更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を,平成25年分の所得税等について更正処分を,平成26年分の所得税等について更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をそれぞれした(以下,平成24年分の所得税についての更正処分並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等についての更正処分を併せて「本件各更正処分」といい,平成24年分及び平成26年分の過少申告加算税賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定」という。)ことから,原告が,被告に対し,本件各更正処分のうち,原告が修正申告の際に申告した納付すべき税額を超える部分及び本件各賦課決定の取消しを求める事案である。
2 関係法令の定め
本件に関係する主な法令の定めは,別紙1「関係法令の定め」記載のとおりである(なお,別紙1における略称は,本文においても用いることとする。)。
3 前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,括弧内掲記の証拠(以下,書証の枝番号は,特に記載のない限り,省略する。)又は弁論の全趣旨により,容易に認めることができる。
(1)原告は,長野市内で法律事務所を経営している弁護士であり,本件クラブの会員である。
(2)原告は,長野税務署長に対し,別紙2のとおり,法定申告期限内に,平成24年分の所得税並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等の確定申告書をそれぞれ提出した(甲1の1,甲2の1,甲3の1,乙6~8)。
(3)原告は,長野税務署の職員の税務調査を受け,平成27年9月7日,長野税務署長に対し,別紙2のとおり,平成24年分の所得税並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等の修正申告書をそれぞれ提出した(甲1の2,甲2の2,甲3の2,乙9~11)。
(4)原告は,本件会費を,平成24年分の所得税の確定申告及び修正申告においては,諸会費又は接待交際費として36万円を,平成25年分の所得税等の確定申告及び修正申告においては,諸会費として12万円を,平成26年分の所得税等の確定申告及び修正申告においては,諸会費又は接待交際費として24万円をそれぞれ各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入した(甲4~6)。
(5)長野税務署長は,原告に対し,別紙2のとおり,平成27年9月25日付けで,原告からの本件各修正申告書の提出に基づき,本件各修正申告書に係る平成24年分及び平成26年分の所得税の過少申告加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定)を行い,さらに,平成27年10月21日付けで,本件会費は,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されないとして,本件各更正処分を行った(甲4~6,乙12,13)。
(6)原告は,平成27年12月17日,国税不服審判所長に対し,本件各更正処分及び本件各賦課決定を不服として,審査請求をしたが,同所長は,平成28年7月19日付けで,本件各更正処分及び本件各賦課決定はいずれも適法であるとして,原告の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲7,8)。
(7)原告は,平成29年1月11日,本件各更正処分及び本件各賦課決定の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
4 税額等に関する当事者の主張
被告が本件訴訟において主張する本件各更正処分及び本件各賦課決定の根拠及び適法性は,別紙3「本件各更正処分及び本件各賦課決定の根拠及び適法性」記載のとおりであるところ,原告は,後記5の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法について争うことを明らかにしない。
5 争点
本件の争点は,本件会費を原告の事業所得の計算上必要経費に算入できるか否かである。
6 争点に関する当事者の主張
〔被告〕
(1)法37条1項は,課税の対象となる所得の計算上,必要経費の控除を認めているが,ある支出が,事業所得の計算上必要経費に算入されるためには,当該支出が,当該事業に係る収入を生み出す業務に直接関連して支出されたものであり(業務との直接関連性),かつ,当該支出が,当該業務の遂行上客観的にみて必要な支出であること(業務遂行上の必要性)を要するものと解すべきである。
(2)ア 弁護士は,法律事務を行うことを職務とし(弁護士法3条1項),その対価として報酬を得ることで事業所得を得ているのであるから,弁護士について,ある支出が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには,当該支出が法律事務を行う経済活動と直接関連し,かつ,当該経済活動の遂行上客観的にみて必要であることが求められる。
イ 本件会費は,本件クラブにおける活動を行うために納入されるものであるところ,本件クラブの会員としての原告の活動の主なものは,例会への出席,親睦会への出席,奉仕活動への参加,講演会への出席及び所属した委員会での活動であり,その活動内容は,いずれも,本件クラブが掲げる奉仕の理念に従い,奉仕活動を行うことや,懇親を深めることなどにその主眼があるものであり,法律事務により報酬を得るという弁護士の業務との関連性は,全くうかがえない。したがって,本件クラブの会員としての原告の活動は,事業所得を生ずべき弁護士の活動には当たらず,本件支出が,法律事務を行う経済活動と直接関連するものとは認められない。
ウ 原告の本件クラブでの活動は,その活動内容や入会目的などからして原告の事業所得を生ずべき弁護士の業務には当たらないこと,本件クラブへは,弁護士の中でも極めて限られたものにしか入会の機会が与えられておらず,弁護士にとって特異な支出であることからすれば,本件会費の支出が,弁護士の業務を遂行する上で客観的にみて必要であるとは認められない。
(3)本件クラブの活動は,奉仕活動や懇親を深めることなどであるから,本件会費は,家事上の経費としての性質を有するところ,家事関連費として必要経費に算入されるためには,施行令96条1号又は2号のいずれかに該当する必要があるが,同条1号及び2号のいずれも,家事関連費のうち業務の遂行上必要な部分を明確に区分できることが求められている。
仮に,本件会費に原告の業務の遂行上必要なものが一部含まれており,本件会費が家事関連費に該当するとしても,本件会費のうち原告の弁護士としての業務の遂行上必要な部分を明確に区別することはできない。
したがって,本件会費は,仮に,家事関連費に該当するとしても,事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
〔原告〕
(1)ア 法37条1項は,必要経費を「その年分の事業所得…を生ずべき業務について生じた費用」と規定しており,ここでいう「業務について生じた費用」とは,「…経費の主たる部分が…所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分できる場合における当該部分に相当する額」(法45条1号,施行令96条1号)である。上記に加えて,業務と直接関連して支出されたものであるとの要件を加重するのは,上記法令の文言の解釈を逸脱している。
イ 被告は,家事費と必要経費とを峻別する必要があることから,必要経費については事業との関連性を緩やかに解するのは相当ではないとして,事業所得の計算上,算入することのできる必要経費は,当該事業に係る収入を生み出す業務に直接関連して支出されたものであり,かつ,当該支出が,当該業務の遂行上客観的にみて必要な支出であることを要すると主張する。
(ア)法45条1項1号が家事費を必要経費に算入しないこととしているのは,個人の場合には,事業主体が同時に消費主体でもあることから,家事費と観念される支出は,事業所得の計算上必要経費に算入しないといういわば当然の事理を定めているにすぎず,家事費と必要経費とを峻別する必要があることを所得税法が明確に示したりしているものではなく,被告が主張するような家事費と必要経費との峻別の必要性を殊更に強調するような法令上の根拠はない。
したがって,法令上の根拠のない家事費と必要経費との峻別の必要性から,必要経費について,業務に直接関連して支出されたものであるとの要件を加重するのは租税法律主義の見地からして違法である。
(イ)譲渡所得における「譲渡に要した費用」(以下「譲渡費用」という。法33条3項)の解釈について,最高裁平成18年4月20日第1小法廷判決・裁判集民事220号141頁は,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったか否かによって判断すべきである旨判示し,譲渡費用について原審が採用した「直接必要な支出として実質的関連性があること」という基準を廃している。本件では,事業所得の金額の計算上算入される必要経費の解釈が問題となっているが,譲渡費用も必要経費も所得からの控除の可否という点では共通することから,上記判例に照らせば,必要経費の解釈においても,業務との直接関連性の要件は不要である。
(2)ア 弁護士が本件クラブの会員として加入しているのは,本件クラブの資格要件を満たし,職業人・社会人として高い水準にある信頼に値する人物であると地域社会から認められたことを意味している。また,本件クラブでは,同一職業分類に属する会員は5名を超えることができないとされているため,本件クラブ内での弁護士職の希少性が確保されている。
弁護士も職業人である以上,その業務を行うには顧客を獲得することが必須であり,顧客獲得のためには営業を欠かすことができない。本件クラブの会員である弁護士は,本件クラブの会員としての資格が認められた信頼できる弁護士として,他の会員との交流を通じて,他の会員が顧客を紹介する又は他の会員が直接顧客となって事件処理の依頼を受ける。そして,弁護士である会員が,本件クラブの他の会員の企業と法律顧問契約を締結し,これが長年維持され,顧問契約に伴い新たな事件依頼がされる。このように本件クラブの会員であることは,弁護士業務の遂行の上で,必要かつ極めて有益な要因となっている。特に昨今,弁護士数の急増と弁護士広告の自由化等に伴い,弁護士も顧客獲得のための積極的な営業・広報活動等を広く展開すべきことが事業上重要になってきている。しかし,急増している広告等は,弁護士としての品位を損ないかねないばかりか高額な費用も必要となるし,これ以外には効果的な営業・広報活動は容易には実現し難い。そうであるとすると,顧客獲得の決め手ともいうべき弁護士の信頼性の判断要素として,会員資格に関し上記の実質を有する本件クラブの会員であることの弁護士にとっての業務上の必要性は極めて高い。
したがって,本件会費は,弁護士業務を遂行するに必要な経費であることが明らかである。
イ 法人税に関しては,法人税基本通達9-7-15の2において,本件会費の経費性が認められており,実態において相違するところがない個人の事業所得に関してもそのまま当てはめられるべきである。また,弁護士については,弁護士法人であれば,上記法人税基本通達によることになるのであるから,実態として全く変わりのない弁護士法人と個人の弁護士との間で,経費に関する取扱いが異なるべき合理的理由はなく,個人の弁護士についても,本件会費の経費性が肯定されなければならない。
(3)仮に,本件会費が家事関連費に該当するとしても,本件クラブにおいては,本件会費全額を支払うことが本件クラブ会員であることの必須の要件であり,会費未納会員は理事会の決定により会員資格を剥奪されることになるから,会費の全額が業務の遂行上必要な経費である。
第3 当裁判所の判断
1 前記第2の3の前提事実のほか,本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件クラブの定款及び本件クラブの細則には,本件クラブの目的,会員身分等について,以下の内容の規定がある(甲9,乙1)。
ア 目的(定款4条)
Aの目的は,意義ある事業の基礎として奉仕の理念を奨励し,これを育成し,特に次の事項を鼓吹,育成することにある。
(ア)奉仕の機会として知り合いを広めること。
(イ)事業及び専門職務の道徳的水準を高めること。あらゆる有用な業務は尊重されるべきであるという認識を深めること。そして△△各自が業務を通じて社会に奉仕するために,その業務を品位あらしめること。
(ウ)△△全てが,その個人生活,事業生活及び社会生活に常に奉仕の理想を適用すること。
(エ)奉仕の理想に結ばれた,事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって,国際間の理解と親善と平和を推進すること。
イ 五大奉仕部門(定款5条)
本件クラブは,クラブ奉仕,職業奉仕,社会奉仕,国際奉仕及び青少年奉仕からなる五大奉仕部門を活動の哲学的及び実際的な規準としている。
ウ 会員身分(定款7条,8条,12条)
本件クラブは,善良な成人であって,職業上,及び(又は)地域社会において良い世評を受けている者によって構成されるものとする。また,本件クラブは,5名又はそれ以上の正会員がいる職業分類からは,原則として,正会員を選出してはならない。
本件クラブの会員は,本件会費を納入しない場合には,本件クラブの会員としての地位を失う。
エ 管理主体,常任委員会(定款10条,細則2条,7条)
本件クラブの管理主体は,理事会とし,理事会の承認の下に,常任委員会として,クラブ奉仕委員会,職業奉仕委員会,社会奉仕委員会,国際奉仕委員会及び青少年奉仕委員会を設置する。
オ 本件会費(定款11条,細則5条)
本件クラブ会員は,本件会費(年額24万円)を毎年2回7月1日及び1月1日に納入すべきものとする。
(2)本件クラブの会計年度は,7月1日から翌年6月30日までとされており,本件各年分に係る本件クラブの会計年度は,平成23年7月1日から平成24年6月30日まで(以下「平成23会計年度」という。),平成24年7月1日から平成25年6月30日まで(以下「平成24会計年度」という。),平成25年7月1日から平成26年6月30日まで(以下「平成25会計年度」という。)及び平成26年7月1日から平成27年6月30日まで(以下「平成26会計年度」といい,平成23会計年度から平成26会計年度を併せて「本件各会計年度」という。)の各期間である。
本件各会計年度の本件クラブの収入のうち,会員から徴収する年会費(本件会費)及び新入会員から徴収する入会金による収入は,前年度繰越金を除くと本件クラブの収入の9割程度を,本件各会計年度の本件クラブの支出のうち,例会費や会議費等を含むクラブ運営費及び親睦活動費等を含む委員会運営費としての支出は,次年度繰越金を除くと本件クラブの支出の8割程度を占めていた(乙1~5)。
(3)本件クラブの会員は,例会と呼ばれる定期の会合に出席する義務があり,例会は,毎週火曜日午後0時30分から開催されていた。例会では,食事が出されるとともに,映画の上映,会員による卓話又は会員以外の者による講演等が行われていた。また,本件クラブは,年に5回程度,夜間例会と呼ばれる親睦会を開催していたほか,会員同士の親睦を深めるため,レクリエーション活動,各種行事を開催していた(甲9,乙1~5)。
(4)原告は,本件クラブにおいて,平成23会計年度は国際奉仕委員会に,平成24会計年度はA・ボランティア委員会に,平成25会計年度は職業分類委員会に,平成26会計年度は環境保全・保健委員会にそれぞれ所属していた。原告が上記各委員会に所属していた各会計年度における当該委員会の事業計画は,以下のような内容である(乙2~5)。
ア 国際奉仕委員会
国際奉仕は,他国の人々を助けることを目的とし,会員はそれに関連したあらゆる活動や,プロジェクトに協力することを通して各国の人々の文化や習慣,功績,希望,問題等の認識を培い,国際理解,親善,平和の促進のために活動する。そのために,例会に国際奉仕分野のプラグラムを提出する,A財団国際奨学生の選考と推薦をするなどの事業を行う。
イ A・ボランティア委員会
本件クラブの会員にA・ボランティア・プログラムに対する理解を深めてもらい,A・ボランティアの奉仕の活用と,A・ボランティアを活用できるプロジェクトの開発を高めるための活動を推進する。
ウ 職業分類委員会
本件クラブ地区内の現在の職業分類を精査し,より均衡のとれた会員組織として発展させるため,会員増強委員会及び会員選考委員会と連携をとりながら未充填職業の補充に努める。
エ 環境保全・保健委員会
△△として地球環境に対する理解を深め,会員・地域住民と共に環境保全の向上を目指した活動を実践する。
(5)原告は,本件クラブの他の会員が所属する複数の企業との間で法律顧問契約を締結している(甲10)。
2 必要経費の意義,範囲について
(1)法37条1項は,その年分の事業所得の計算上必要経費に算入すべき金額は,所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るために直接要した費用の額及び「その年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」(以下,上記括弧内の費用を「一般対応の必要経費」という。)とする旨規定している。法37条1項が,事業所得の金額の計算上必要経費の算入を認めている趣旨は,総収入金額のうち,課税対象を所得に限定し,投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避けるためであると解される。この点,個人は,日常生活において事業による所得の稼得活動のみならず,所得の処分としての私的な消費活動も行っているところ,所得の処分としての私的な消費活動は,投下資本の回収とは無関係であるから,所得に対して適切に課税をするためには,事業所得の金額の計算に当たり,投下資本の回収部分である必要経費と所得の処分である家事費とを明確に区別する必要がある。そこで,法37条1項は,一般対応の必要経費について,所得を生ずべき業務について生じた費用であるとし,法45条1項は,家事費及び家事関連費で政令に定めるものは必要経費に算入しない旨規定し,同条項を受けた施行令96条は,必要経費として算入される家事関連費について,経費の主たる部分が事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分できるもの(同条1号)または事業所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされるもの(同条2号)であることを要する旨規定している。上記各規定に照らせば,個人の支出のうち,事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,支出が事業に係る収入を生み出す業務に直接関連して支出されたものであり,当該業務の遂行上必要なものに限られるというべきである。そして,上記関連性及び必要性の判断は,関係者の主観的判断を基準とするのではなく,客観的に判断されるべきである。
(2)原告の主張について
ア 原告は,法37条1項の「業務について生じた費用」とは,「…経費の主たる部分が…所得を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分できる場合における当該部分に相当する額」(法45条1号,施行令96条1号)であれば足り,被告が主張するような家事費と必要経費との厳格な区別を行う法令上の根拠はなく,必要経費の判断に当たって,業務との直接関連性を要件とすることは租税法律主義の見地からして違法である旨主張する。
しかしながら,前記(1)のとおり,事業所得の金額の計算上必要経費が算入される趣旨や法及び施行令の各規定に照らせば,法37条1項の「業務について生じた費用」とは,当該事業にかかわる収入を生み出す業務に直接関連して支出された費用と解するのが相当であり,かかる解釈は合理性を有するものとして租税法律主義に反するものということはできない。
イ 原告は,最高裁平成18年4月20日第1小法廷判決・裁判集民事220号141頁が,譲渡所得における譲渡費用とは,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったか否かによって判断すべきである旨判示しており,事業所得における必要経費の判断に当たっても,支出が業務に直接関連していることを要件とする必要はない旨主張する。
しかし,法は,所得がその性質や発生態様によって担税力が異なることから,所得を10種類に分類し,当該分類ごとにそれぞれ所得金額の計算方法を定めている(法23条ないし38条)。そのため,譲渡所得における譲渡費用(法33条)と事業所得における必要経費(法37条1項)とは,規定の文言も異なる上,前者と後者の意義を同一に解さなければならないとする根拠もない。
ウ したがって,原告の前記ア及びイの主張はいずれも採用することができない。
3 本件会費が必要経費に該当するか否かについて
(1)前記第2の3(1)のとおり,原告は長野市内で弁護士業を営む者であり,弁護士は,当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって,訴訟事件,非訟事件及び審査請求,再調査の請求,再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とし(弁護士法3条1項),その対価として報酬を得ているのであるから,原告の事業所得を生ずべき業務とは,上記法律事務を行う経済活動である。そして,本件会費が,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるためには,上記法律事務を行う弁護士としての経済活動と直接に関連し,かつ,客観的にみて当該経済活動の遂行上必要であることを要する。
前記1(1)ウ及びオのとおり,本件クラブの会員は本件会費を納入する義務を負っており,本件会費を納入しなければ,本件クラブの会員としての地位を失うこと,前記1(2)のとおり,本件会費の大半が,本件クラブの運営費及び委員会運営費として用いられていたことからすれば,本件会費は,本件クラブの会員が本件クラブで活動するために納入されるものということができる。そして,前記1(1)アのとおり,本件クラブの会員は,奉仕の理念の奨励という目的に従って,各種の奉仕活動を行うとともに,会員に義務付けられている例会への出席,所属する委員会での活動,会員同士の親睦を深めるためのレクリエーション活動,各種行事に参加しており,原告も,本件クラブの会員として,上記例会等へ参加し,また,前記1(4)のとおり,本件各会計年度において,本件クラブの委員会に所属し,各委員会の事業計画にあるような活動を行っていたと認められる。したがって,原告が支出した本件会費は,原告が本件クラブにおいて,上記のような活動をするために納入されたものであり,上記の原告の本件クラブでの活動の目的及び内容に照らせば,本件会費の支出は,法律事務を行う弁護士としての原告の経済活動と直接の関連を有し,客観的にみて当該経済活動の遂行上必要なものということはできない。
そして,上記の原告の本件クラブでの活動の目的及び内容に照らせば,本件会費は,弁護士の経済活動の一環として支出されるものではなく,消費経済の主体である一個人として行われる消費支出として,家事費に該当するというべきである。
また,本件クラブにおいて原告が活動することによって,本件クラブの他の会員が所属する企業との法律顧問契約を締結する契機となり得ることから,仮に本件クラブにおける原告の活動の一部が,原告の弁護士としての経済活動と直接の関連性を有するものと解した上で(ただし,直接関連性を有すると解すべきでないことは後記(2)アのとおりである。),本件会費が,必要経費と家事費の性質を併有しており,本件会費に原告の業務の遂行上必要なものが一部含まれていて,家事関連費に該当するとしても,本件クラブの会員としての活動は,本件クラブの掲げる奉仕の理念に従い,奉仕活動を行うことや懇親を深めることに主眼が置かれるものであるから,本件会費はその主たる部分が原告の弁護士としての事業所得を生ずべき業務の遂行上必要なものということはできない。さらに,本件会費のうち原告の弁護士としての業務の遂行上必要である部分を明らかに区別することはできず,他にかかる区分を可能ならしめるに足りる証拠もない。したがって,仮に,本件会費が,その中に原告の業務の遂行上必要なものが一部含まれていて,家事関連費に該当すると解したとしても,これを事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
(2)原告の主張について
ア 原告は,本件クラブの会員としての資格が認められた信頼できる弁護士として,本件クラブの会員との交流を通じて,他の会員等から事件処理の依頼を受け,さらに,本件クラブの会員が所属する企業と法律顧問契約を締結し,これに伴い新たな事件処理の依頼を受けるなど原告が弁護士としての営業活動を行う上で,必要かつ極めて有益な要因となっていることから,本件会費は,必要経費に該当する旨主張する。
確かに,前記1(5)のとおり,原告は,本件クラブの他の会員が所属する企業と法律顧問契約を締結しており,本件クラブに加入することによって,原告の弁護士としての業務の経済的利益の獲得に一定の成果を上げていると認められる。しかし,それは,原告が本件会費を支払ったことにより生じるべき直接の効果ではない。当該成果は,原告が本件会費を支払って,本件クラブの掲げる奉仕の理念に基づき,本件クラブの例会等に参加したり,委員会活動や奉仕活動をしたりするなどして本件クラブにおいて活動する中で,本件クラブの会員と親睦を深めたことを契機として間接的・副次的に生じたものにすぎない。そのため,本件会費の支出が,顧客の獲得・維持や事件の受任を目的として行われる弁護士としての経済活動との間に直接の関連性を有するものということはできない。
イ 原告は,法人税に関して,法人税基本通達9-7-15の2により,本件会費に経費性が認められており,実態において相違するところがない個人の事業所得に関してもそのまま当てはめられるべきであり,弁護士については,弁護士法人であれば,上記法人税基本通達によることができるのであるから,実態において相違することがない個人の弁護士との間で,経費に関する取扱いが異なるべき合理的理由はない旨主張する。
しかし,上記法人税基本通達は,法人がAクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合,その負担した金額については,その支出をした日の属する事業年度の交際費とする旨を定めているにすぎない。そして,法人が支出した交際費は,原則として,その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しないこととされており(租税特別措置法61条の4),法人税法においては,法人が本件会費を負担したとしても,当然に本件会費に経費性が認められるものではない。
この点を措いても,法人は,事業遂行又は所得獲得を目的として設立されるものであり,その活動は全て事業遂行又は所得獲得のために行われる結果,法人の活動により生じた支出を損金として益金から控除することが認められている。これに対して,前記2(1)のとおり,個人は,事業遂行又は所得獲得の主体であると同時に私的な消費活動の主体でもあり,その支出には,所得獲得のための必要経費としての性質を有するものがある一方で,家事費ないし家事関連費として消費支出の性質を有するものもある。そのため,法45条1項及び施行令96条1号においては,家事費及び必要経費と明らかに区分できない家事関連費については,必要経費に算入しない旨定められている。したがって,私的な消費活動の主体としての側面を有しないために家事費及び家事関連費の概念がない法人と,かかる側面を有する個人とが法人税及び所得税において,本件会費の経費性についてそれぞれ異なる取扱いを受けるとしても,それが合理的でないということはできない。
ウ 原告は,本件クラブにおいては,本件会費全額を納入することが本件クラブ会員であることの必須の要件であり,会費未納会員は理事会の決定により会員資格を剥奪されることになるから,会費の全額が業務の遂行上必要な経費である旨主張する。
しかし,前記(1)のとおり,本件会費は,必要経費に該当するものではなく,本件クラブにおける原告の活動の目的及び内容に照らせば,家事費としての性質を有するもの,又は,仮に原告の業務の遂行上必要なものが一部含まれるとして家事関連費に該当すると解したとしても,その主たる部分が原告の事業所得を生ずべき業務の遂行上必要なものとはいえない上,当該必要である部分を明らかに区分することができないものである。
エ したがって,原告のアないしウの主張はいずれも採用することができない。
3 本件各更正処分及び本件各賦課決定の適法性について
以上を前提として,原告の平成24年分の所得税並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等の納付すべき税額についてみると,別紙3に記載の被告の主張のとおり,平成24年分が67万6500円,平成25年分が107万3400円,平成26年分が245万3900円となるところ(前記第2の4),上記各金額は,いずれも本件各更正処分における納付すべき税額と同額であるから,本件各更正処分は適法である。
また,原告が本件各更正処分によって新たに納付すべき税額の基礎となった事実のうちに本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」は認められない。そして,本件各更正処分に伴い賦課される過少申告加算税の額は,平成24年分につき1万4000円,平成26年分につき9000円であるところ(前記第2の4),上記各金額は,いずれも本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額であるから,本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
第4 結論
以上のとおり,本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
長野地方裁判所民事部
裁判長裁判官 田中芳樹
裁判官 足立拓人
裁判官 加納紅実
別紙3
本件各更正処分及び本件各賦課決定の根拠及び適法性
第1 本件各更正処分の根拠
被告が本件訴訟において主張する原告の平成24年分の所得税並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等に係る総所得金額等及び納付すべき税額等は,次のとおりである。
1 平成24年分
(1)総所得金額 2777万7891円
上記金額は,次のアないしエの各金額の合計額である。
ア 事業所得の金額 1968万0319円
上記金額は,次の(ア)及び(ウ)の各金額の合計額から(イ)及び(エ)の各金額の合計額を差し引いた後の金額である。
(ア)総収入金額 7017万0852円
上記金額は,原告の平成24年分の所得税の修正申告書(以下「平成24年分修正申告書」という。)における営業等所得の収入金額欄の金額と同額である。
(イ)必要経費 4989万4433円
上記金額は,原告の平成24年分修正申告書における営業等所得の必要経費欄の金額5025万4433円から,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されない本件会費を諸会費及び接待交際費として必要経費に算入していた額36万円を控除した金額である。
(ウ)貸倒引当金の繰戻額 5万3900円
上記金額は,原告の平成24年分の所得税の確定申告書(以下「平成24年分確定申告書」という。)における貸倒引当金欄の金額と同額である。
(エ)青色申告特別控除額 65万円
上記金額は,租税特別措置法(平成23年12月法律第114号による改正のもの。以下「措置法」という。)25条の2第3項の規定を適用して算出した金額である。
イ 不動産所得の金額 △5万8528円
上記金額(金額の前の△は,損失の金額を表す。)は,平成24年分修正申告書の不動産所得の金額と同額である。
ウ 給与所得の金額 620万7720円
上記金額は,平成24年分確定申告書及び平成24年分修正申告書の給与所得の金額と同額である。
エ 雑所得の金額 194万8380円
上記金額は,平成24年分確定申告書及び平成24年分修正申告書の雑所得の金額と同額である。
(2)上場株式等の分離譲渡所得の金額 0円
上記金額は,平成24年分確定申告書及び平成24年分修正申告書の上場株式等の分離譲渡所得金額から,本年分の上場株式等の分離譲渡所得の金額から差し引く繰越損失額を控除した金額である。
(3)上場株式等の分離配当所得の金額 0円
上記金額は,平成24年分確定申告書及び平成24年分修正申告書の上場株式等の分離配当所得の金額から,本年分の上場株式等の分離配当所得の金額から差し引く繰越損失額を控除した金額である。
(4)所得控除の合計額 133万6387円
上記金額は,社会保険料控除(法74条),生命保険料控除(法76条),地震保険料控除(法77条),寄附金控除(法78条),基礎控除(法86条)の金額の合計額であり,平成24年分確定申告書及び平成24年分修正申告書に記載された金額と同額である。
(5)課税総所得金額 2644万1000円
上記金額は,法89条2項の規定に基づき,前記(1)の金額から,前記(4)の金額を控除した金額(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。
(6)申告納税額 112万4500円
上記金額は,次のアの金額からイの金額を差し引いた後の金額(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。
ア 課税総所得金額に対する税額 778万0400円
上記金額は,前記(5)の課税総所得金額に法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。
イ 源泉徴収税額 665万5891円
上記金額は,平成24年分修正申告書の金額と同額である。
(7)納付すべき税額 67万6500円
上記金額は,法128条の規定により,上記(6)の申告納税額から,平成24年分確定申告書及び平成24年分修正申告書に記載された予定納税額を控除した後の金額である。
2 平成25年分
(1)総所得金額 2657万7520円
上記金額は,次のアないしエの各金額の合計額である。
ア 事業所得の金額 1748万8774円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)及び(ウ)の各金額の合計額を差し引いた後の金額である。
(ア)総収入金額 6589万0374円
上記金額は,原告の平成25年分の所得税等の修正申告書(以下「平成25年分修正申告書」という。)における営業等所得の収入金額欄の金額と同額である。
(イ)必要経費 4787万0603円
上記金額は,原告の平成25年分修正申告書における営業等所得の必要経費欄の金額4799万0603円から,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されない本件会費を諸会費として必要経費に算入していた額12万円を控除した金額である。
(ウ)青色申告特別控除額 53万0997円
上記金額は,措置法25条の2第3項及び4項の規定を適用して算出した金額である。
イ 不動産所得の金額 0円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)及び(ウ)の各金額の合計額を差し引いた後の金額である。
(ア)総収入金額 41万2390円
上記金額は,原告の平成25年分修正申告書における不動産所得の収入金額欄の金額と同額である。
(イ)必要経費 29万3387円
上記金額は,原告の平成25年分修正申告書における不動産所得の必要経費欄の金額と同額である。
(ウ)青色申告特別控除額 11万9003円
上記金額は,措置法25条の2第3項の規定を適用して算出した金額である。
ウ 給与所得の金額 722万4252円
上記金額は,原告の平成25年分の所得税等の確定申告書(以下「平成25年分確定申告書」という。)及び平成25年分修正申告書の給与所得の金額と同額である。
エ 雑所得の金額 186万4494円
上記金額は,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書の雑所得の金額と同額である。
(2)上場株式等の分離配当所得の金額 57万6629円
上記金額は,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書の上場株式等の分離配当所得の金額から,本年分の上場株式等の分離配当所得の金額から差し引く繰越損失額を控除した金額である。
(3)所得控除の合計額 143万5480円
上記金額は,社会保険料控除(法74条),生命保険料控除(法76条),寄附金控除(法78条),基礎控除(法86条)の金額の合計額であり,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書に記載された金額と同額である。
(4)課税総所得金額 2514万2000円
上記金額は,前記(1)の総所得金額から,前記(3)の所得控除の額の合計額を控除した後の金額(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。
(5)上場株式等の課税分離配当所得金額 57万6000円
上記金額は,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書の上場株式等の課税分離配当所得金額と同額である。
(6)申告納税額 122万3800円
上記金額は,次のアないしウの各金額の合計額からエの金額を差し引いた後の金額(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたあとのもの。)である。
ア 課税総所得金額に対する税額 726万0800円
上記金額は,前記(4)の課税総所得金額に法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。
イ 上場株式等の課税分離配当所得の金額に対する税額 4万0320円
上記金額は,前記(5)の上場株式等の課税分離配当所得金額に平成23年法律82号による改正後の平成20年法律23号附則43条2項による読み替え後の租税特別措置法37条の10第1項に規定する税率を乗じて算出した金額であり,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書の上場株式等の課税分離配当所得の税額と同額である。
ウ 復興特別所得税額 15万3323円
上記金額は,前記ア及びイの各金額の合計額に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条に規定する税率を乗じて計算した金額である。
エ 源泉徴収税額 623万0577円
上記金額は,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書の源泉徴収税額と同額である。
(7)納付すべき税額 107万3400円
上記金額は,法128条の規定により,前記(6)の申告納税額から,平成25年分確定申告書及び平成25年分修正申告書に記載された予定納税額を控除した後の金額である。
3 平成26年分
(1)総所得金額 3467万5305円
上記金額は,次のアないしオの各金額の合計額である。
ア 事業所得の金額 2526万2694円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)及び(ウ)の各金額の合計額を差し引いた後の金額である。
(ア)総収入金額 7679万3229円
上記金額は,原告の平成26年分の所得税等の修正申告書(以下「平成26年分修正申告書」という。)における営業等所得の収入金額欄の金額と同額である。
(イ)必要経費 5094万2482円
上記金額は,原告の平成26年分修正申告書における営業等所得の必要経費欄の金額5118万2482円から,原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されない本件会費を諸会費及び接待交際費として必要経費に算入していた額24万円を控除した金額である。
(ウ)青色申告特別控除額 58万8053円
上記金額は,措置法25条の2第3項及び4項の規定を適用して算出した金額である。
イ 不動産所得の金額 0円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)及び(ウ)の各金額の合計額を差し引いた後の金額である。
(ア)総収入金額 34万6167円
上記金額は,原告の平成26年分修正申告書における不動産所得の収入金額欄の金額と同額である。
(イ)必要経費 28万4220円
上記金額は,原告の平成26年分修正申告書における不動産所得の必要経費欄の金額と同額である。
(ウ)青色申告特別控除額 6万1947円
上記金額は,措置法25条の2第3項の規定を適用して算出した金額である。
ウ 配当所得の金額 13万8704円
上記金額は,原告の平成26年分の所得税等の確定申告書(以下「平成26年分確定申告書」という。)及び平成26年分修正申告書の配当所得の金額と同額である。
エ 給与所得の金額 726万9000円
上記金額は,平成26年分確定申告書及び平成26年分修正申告書の給与所得の金額と同額である。
オ 雑所得の金額 200万4907円
上記金額は,平成26年分確定申告書及び平成26年分修正申告書の雑所得の金額と同額である。
(2)所得控除の額の合計額 201万1600円
上記金額は,社会保険料控除(法74条),生命保険料控除(法76条),地震保険料控除(法77条),寄附金控除(法78条),基礎控除(法86条)の金額の合計額であり,平成26年分確定申告書及び平成26年分修正申告書に記載された金額と同額である。
(3)課税総所得金額 3266万3000円
上記金額は,前記(1)の総所得金額から,前記(2)の所得控除の合計額を控除した金額(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。
(4)申告納税額 277万2500円
上記金額は,次のア及びウの各金額の合計額からイ及びエの各金額を差し引いた後の金額(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。
ア 課税総所得金額に対する税額 1026万9200円
上記金額は,前記(3)の課税総所得金額に法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。
イ 配当控除の額 6936円
上記金額は,平成26年分確定申告書及び平成26年分修正申告書の配当控除の金額と同額である。
ウ 復興特別所得税額 21万5507円
上記金額は,前記アの課税総所得金額に対する税額から前記イの配当控除の額を控除した額に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条に規定する税率を乗じて計算した金額である。
エ 源泉徴収税額 770万5244円
上記金額は,平成26年分確定申告書及び平成26年分修正申告書の源泉徴収税額と同額である。
(5)納付すべき税額 245万3900円
上記金額は,法128条の規定により,前記(4)の申告納税額から,平成26年分確定申告書及び平成26年分修正申告書に記載された予定納税額を控除した後の金額である。
第2 本件各更正処分の適法性
被告が,本件訴訟において主張する原告の本件各年分の所得税の納付すべき税額は,前記第1の1(7)のとおり平成24年分が67万6500円,前記第1の2(7)のとおり平成25年分が107万3400円及び前記第1の3(5)のとおり平成26年分が245万3900円であるところ,上記各金額は,いずれも本件各更正処分における納付すべき税額と同額であるから,本件各更正処分はいずれも適法である。
第3 本件各賦課決定処分の根拠
前記第2のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,原告が本件各更正処分によって新たに納付すべき税額の基礎となった事実のうちに本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」は認められない。
したがって,本件各更正処分に伴い賦課される過少申告加算税の額は,次の1及び2のとおりである。
1 平成24年分 1万4000円
上記金額は,国税通則法65条1項の規定に基づき,平成24年分の所得税の更正処分によって新たに納付すべき税額14万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に,100分の10の割合を乗じて計算した金額である。
2 平成26年分 9000円
上記金額は,国税通則法65条1項の規定に基づき,平成26年分の所得税等の更正処分によって新たに納付すべき税額9万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に,100分の10の割合を乗じて計算した金額である。
第4 本件各賦課決定処分の適法性
前記第3の1及び2のとおり,本件各更正処分に伴い賦課される過少申告加算税の額は,平成24年分につき1万4000円,平成26年分につき9000円であるところ,この金額は,いずれも本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額であるから,本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
八木一洋裁判長不当判決 ロータリークラブ事件 東京高裁令和元年 所得税更正処分等取消請求控訴事件
ケースブック租税法 第6版 279頁
【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成30年(行コ)第295号
【判決日付】 令和元年5月22日
【判示事項】 弁護士である控訴人が,奉仕活動,懇親を目的とするクラブの会費を必要経費に算入して,確定申告及び修正申告をしたところ,税務署長が必要経費に該当するとは認められないとして更正処分をするとともに,更正に基づき過少申告加算税の賦課決定をしたため,控訴人が,各更正処分のうち修正申告の申告書に係る納付すべき税額を超える部分及び賦課決定について,各更正処分のうちの修正申告の申告書に係る納付すべき税額を超える部分及び各賦課決定の取消しを求め,原審が,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が不服として控訴を提起した事案。控訴審は,控訴人の,必要経費と家事費等とを明確に区別する法令上の根拠はないとの前提に立った補充主張に対して,必要経費の計算に関して定めている諸規定に従い家事費等と区別して判断することが必要であるとして,控訴を棄却した事例
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 ジュリスト1561号126頁
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 長野税務署長が平成27年10月21日付けで控訴人に対してした控訴人の平成24年分所得税更正処分のうち,納付すべき税額53万2500円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
3 長野税務署長が平成27年10月21日付けで控訴人に対してした控訴人の平成25年分所得税及び復興特別所得税更正処分のうち,納付すべき税額102万4400円を超える部分を取り消す。
4 長野税務署長が平成27年10月21日付けで控訴人に対してした控訴人の平成26年分所得税及び復興特別所得税更正処分のうち,納付すべき税額235万5900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
1 弁護士である控訴人は,□□クラブ(以下「本件クラブ」という。)の会員であり,その年会費(以下「本件会費」という。)の額について,控訴人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入して,平成24年分ないし平成26年分(以下これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税又は所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告及び修正申告をしたところ,長野税務署長は,本件会費については上記の必要経費に該当するとは認められないとして,平成27年10月21日付けで,平成24年分の所得税並びに平成25年分及び平成26年分の各所得税等の修正申告の申告書に係る課税標準である総所得金額及び納付すべき税額の各更正(以下これらを併せて「本件各更正処分」という。)をするとともに,平成24年分の所得税及び平成26年分の所得税等に係る上記の更正に基づき過少申告加算税の賦課決定(以下これらを併せて「本件各賦課決定」という。)をした。本件は,控訴人が,本件各更正処分のうち上記の修正申告の申告書に係る納付すべき税額を超える部分及び本件各賦課決定については,いずれも適法とはいえないと主張して,本件各更正処分のうち上記の修正申告の申告書に係る納付すべき税額を超える部分及び本件各賦課決定の取消しを求める事案である。
原審は,控訴人の各請求をいずれも棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴を提起した。
2 関係法令の定め,前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり補正し,後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の2ないし6に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
原判決3頁7行目の「原告は,」の次に「昭和46年4月に長野県弁護士会に入会し,」を加え,同9行目の「別紙2のとおり」を「別紙2における「確定申告」欄各記載のとおり」に,同13行目の「別紙2のとおり」を「別紙2における「修正申告」欄各記載のとおり」に,同21行目の「別紙2のとおり,」から同24行目の「行い,」までを「控訴人の(3)の各修正申告に基づき,平成27年9月25日付けで,平成24年分の所得税の過少申告加算税として8000円,平成26年分の所得税等の過少申告加算税として6000円をそれぞれ課し(甲8,乙12,13),」にそれぞれ改め,同25行目の「算入されないとして,」の次に「別紙2における「更正処分等」欄各記載のとおり,」を加える。
3 当審における控訴人の補充主張
(1)原判決は,被控訴人が,法上ある支出が必要経費として控除され得るためには,それが事業活動と直接の関連をもち,事業の遂行上必要な費用でなければならないと主張して,「直接の」関連という経費算入に対する制限的要件を付加している点につき,控訴人は,法令上はこのような制限的要件がないから,こうした制限的要件は租税法律主義に反し違法であると主張したのに対し,「個人は,日常生活において事業による所得の稼得活動のみならず,所得の処分としての私的な消費活動も行っているところ,所得の処分としての私的な消費活動は,投下資本の回収とは無関係であるから,所得に対して適切に課税をするためには,事業所得の金額の計算に当たり,投下資本の回収部分である必要経費と所得の処分である家事費とを明確に区別する必要がある」とした上で,法45条1項と施行令96条1号及び2号の規定を援用し,「上記各規定に照らせば…必要経費に算入すべき金額は…業務に直接関連して支出されたものであり,当該業務の遂行上必要なものに限られるというべきである」と結論するが,原判決が「直接関連性」要件を採用する根拠として示すのは「上記各規定に照らせば」という全く内容を伴わない文言であり,なぜ「各規定に照らせば」直接関連性要件が導き出されるのかという,控訴人の最も中心的な主張に全く対応していない。
また,原判決における「投下資本の回収部分である必要経費と所得の処分である家事費とを明確に区別する必要がある」との部分は,原審で被控訴人が「直接関連性」要件を導くために繰り返し述べる「経費と家事費の峻別の必要性」あるいは「区別を厳格に行う」等を別の表現でいい換えたにすぎないのであり,原判決の上記の論理からすると,この「経費と家事費の明確な区別の必要性」以外に「直接関連性」要件を導く実質的理由はなく,「明確な区別」が求められる法令上の根拠がない以上,それを持ち出して「直接」関連性要件を肯定するのは違法である。
控訴人は,原審において,この「直接関連性」による要件加重を否定する判例として最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決・裁判集民事220号141頁及び裁判例として東京高等裁判所平成24年9月19日判決・判例時報2170号20頁をそれぞれ引用したところ,原判決は,上記の最高裁判決については,譲渡所得における譲渡費用に関する問題であり,本件は事業所得における必要経費の問題であって,規定の文言も異なる上,両者の意義を同一に解さなければならないとする根拠もないとして控訴人の主張を排斥しているが,所得から控除すべきか否かという問題としては実質的に同一であるから,「同一に解さない」というならその根拠を示すべきであるのに,原判決は理由を示しておらず,誠に不当というほかはない。また,上記の東京高裁判決については,原判決はこれに全く触れるところがなく,重大な判断脱漏がある。
(2)原判決は,本件会費の経費性を否定するが,弁護士がAクラブの会員としてクラブに加入しているのは,クラブの資格要件を満たし,職業人・社会人として高い水準にある信頼に値する人物であると周囲の地域社会から認められたことを意味しており,このように弁護士がAクラブの会員であることは弁護士法2条で求められる「深い教養の保持と高い品性の陶や」が当該弁護士について満たされていることを象徴するものであり,また,同一職業分類に属する会員は5名を超えることができないとされている(本件クラブの定款8条)ため,クラブ内での弁護士職の希少性が確保されている。
さらには,弁護士も職業人である以上,その業務を行うには顧客を獲得することが必須であり,顧客獲得のためには広い意味での「営業」を欠かすことができないのであって,この点に関し,弁護士が上記のようなAクラブの会員であることは,事業者・職業人である会員との交流により,Aクラブ会員としての資格が認められた信頼できる弁護士として,他の会員が顧客を紹介する等,弁護士業務の遂行の上で,必要かつ極めて有益な要因となっている。
このような弁護士業務,特に近時の弁護士業務の実情からすると,Aクラブに所属することは弁護士にとってその信頼性を高めるために他では得難い貴重な契機となるから,その業務の遂行上必要であり,その重要性はますます高まりつつあるのであって,本件会費は,弁護士にとって「所得を生ずべき業務について生じた費用」(法37条1項)であることが明らかである。
(3)原判決は,法人税基本通達9-7-15の2において,弁護士法人のAクラブに対する入会金や会費が交際費とされているのに,個人である弁護士のそれが交際費(経費)として扱われないのは不当であるとの控訴人の主張に対し,個人は事業遂行または所得獲得の主体であると同時に私的な消費活動の主体でもあり,その支出には,所得獲得の必要経費としての性質がある一方,家事費ないし家事関連費として消費支出の性質を有するものもあるところ,本件会費は家事費であるから弁護士法人の場合と同列には扱えないと判示するが,同じく弁護士であるクラブ会員にとって,「弁護士としてのクラブ会員であることの必要性」が法人と個人とで異なることは全くあり得ず,また,クラブでの活動実態も全く同一であって,こうした事柄を前提にすれば,原判決がクラブ会費の支出を特に根拠も付さず家事費としての消費支出であるとするのは全く不当である。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,当審における控訴人の補充主張に対する判断を2のとおり加えるほかは,原判決の「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決12頁23行目の「定めている」を「定めているのであって」に,同24行目の「。そのため,」を「,譲渡所得と事業所得とは上記のようにその発生の態様等に差異がある以上,両所得からそれぞれ控除されるべき費用ないし経費についての範囲が異なることは当然といえ,」に,同25行目の「とは,規定の文言も異なる上,」を「とが,それぞれの所得の金額の計算におけるその取扱いの根拠とされる規定及びその文言を異にすることをも併せ考慮すると,」にそれぞれ改める。
(2)同14頁6行目の「なり得ることから,」から同11行目の「該当するとしても,」までを「なる可能性は否定できないものの,」に改める。
2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1)補充主張(1)について
控訴人は,事業所得の金額の計算に当たり必要経費と家事費等とを明確に区別する法令上の根拠はないとの前提に立った上で,事業所得の計算における一般対応の必要経費について原審が事業に係る収入を生み出す業務に直接関連してされた支出であるべきものと解したことを批判する。しかしながら,法(所得税法)は,所得税の課税標準である個人の総所得金額につき事業所得を含む各種所得の金額の合計額とするものとし(法22条1項及び2項),事業所得については,法律事務に係るものを含むサービス業等から生ずる所得とした上で(法27条1項),その金額については,特定の年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とするものとし(同条2項),必要経費の計算に関しては,原判決添付別紙1のような諸規定を定めているものであって,これらの規定に従って事業所得の金額を適切に計算しようとする際には,個人のした特定の支出の金額が事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に当たるか否かに関し,他の各種所得の金額の計算及び必要経費に算入しないものとされる家事費等と区別して判断することが必要である。そして,上記の区別に当たり,各種所得の金額のうち不動産所得の金額,事業所得の金額又は雑所得の金額の計算における必要経費につき定める同法37条1項の規定(同別紙の第1)の意味内容について解釈をすることが妨げられるというべき理由はなく,その解釈の内容に関しては,必要経費の範囲に関する他の規定である法45条1項1号の規定(同別紙の第1)及び同規定の委任に基づきその趣旨に添って定められた施行令96条の規定(同別紙の第2)の文理等を考慮することも許されることは明らかである。以上を前提とした上で,個人のした各種の支出のうち事業所得の金額の計算上事業所得に係る総収入金額から控除すべき必要経費に算入すべきものについては,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」第3の2(1)に述べたように解するのが相当であり,これと異なる控訴人の主張は採用することができない。
また,控訴人は,譲渡所得の金額の計算に関する最高裁判所の判例を指摘して,上記のように解することを批判するが,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」第3の2(2)イに述べたように,譲渡所得の金額は法33条等の規定に従って計算されるべきものであり,事業所得の金額の計算におけるのとは適用される規定が同一ではなく,控訴人の主張するように両者の計算につき実質的に同一であると解すべき根拠も見当たらないから,これと異なる控訴人の主張は採用することができない。
控訴人は,事業所得の金額の計算に関する高等裁判所の裁判例についても指摘するが,本件は,上記の裁判例とは事案を異にし,上記の裁判例を参照しても,以上に述べたところが左右されるものではなく,これと異なる控訴人の主張は採用することができない。
(2)補充主張(2)について
控訴人は,本件会費に係る事実関係に照らすとこれは法37条1項の一般対応の必要経費に該当する旨の主張をするが,上記の控訴人の主張を採用し難いことは,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」第3の3に述べたとおりである。
(3)補充主張(3)について
控訴人は,弁護士法人の法人税の課税標準である事業年度の所得の金額の計算においてこれに従うものとされる法人税基本通達9-7-15の定めとの均衡を指摘し,個人の所得税に係る事業所得の金額の計算について既に述べたところを批判するが,上記の控訴人の主張を採用し難いことは,補正の上で引用した原判決の「事実及び理由」第3の3(2)イに述べたとおりである。
3 結論
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第15民事部
裁判長裁判官 八木一洋
裁判官 柴崎哲夫
裁判官平田直人は,転補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官 八木一洋