岡本法律事務所のブログ

岡山市北区にある岡本法律事務所のブログです。 1965年創立、現在2代めの岡本哲弁護士が所長をしています。 電話086-225-5881 月~金 0930~1700 電話が話中のときには3分くらいしてかけなおしください。

カテゴリ: 民法

金銭の占有と所有 最高裁昭和39年

民法判例百選Ⅰ 第6版 77事件 第8版 77事件 第9版 73事件 潮見民法全第3版補訂版41頁 ダットサン1 4版 物28(1)ア

仮差押に対する第三者異議事件

最高裁判所第2小法廷判決/昭和38年(オ)第146号

昭和39年1月24日

【判示事項】      金銭の占有と所有

【判決要旨】      金銭の直接占有者は、特段の事情のないかぎり、金銭の所有者とみるべきものである。

【参照条文】      民法188

            民法192

【掲載誌】       最高裁判所裁判集民事71号331頁

            判例タイムズ160号66頁

            判例時報365号26頁

【評釈論文】      法経論集(静岡大)19号31頁

 

       主   文

 

   本件上告を棄却する。

   上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告人らの上告理由(上告状記載のものを含む)について。

 金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである(昭和二九年一一月五日最高裁判所第二小法廷判決、刑集八巻一一号一六七五頁参照)。

 本件において原判決の認定した事実によると、訴外藤野太一は上告人丹部忠男をだまして一一万円余の交付をうけ、自己が上告人らから依頼されて経営に従事していた判示店舖の売上金六万余円を加えた金一七二、三〇〇円を、自己の銀行預金を払戻した自己の金であるといつて執行吏に提出したというのであるから、一一万円余い上告人丹部忠男から交付をうけたとき、六万余円は着服横領したとき、それぞれ訴外藤野太一の所有に帰し上告人らはその所有権を喪失したものというべきである。これと同趣旨の原判決の判断は正当であつて、これを誤なりとする論旨は理由なく、違憲の主張も前提を欠き採用しえない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

(上告理由省略)

法律行為の取消と登記について登記必要とした大審院昭和17年

民法判例百選Ⅰ 8版55事件 9版51事件

大審院昭和17年9月30日 民集21巻911頁

 

破棄差戻し

 

判旨(漢数字はアラビア数字になおした)

凡ソ民法第96条第3項二於イテ詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対向スルコトヲ得ザル旨規定セルハ、取消ニ因リ其ノ行為ガ初ヨリ無効ナリシモノト看做サルル効果即チ取消ノ遡及効ヲ阻止スル趣旨ナレバ、茲ニ所謂第三者トハ取消ノ遡及効ニヨリ影響ヲ受クベキ第三者、即チ取消前ヨリ既ニ其ノ行為ノ効力ニ付キ利害関係ヲ有セル第三者ニ限定シテ解スベク、取消以後ニ於テ始メテ利害関係ヲ有スルニ至リタル者ハ、仮令其ノ利害関係発生当時詐欺取消ノ事実ヲ知ラザリシトスルモ右条項ノ適用ヲ受ケザルコト、洵にニ原判示ノ如くナリト雖、右条項ノ適用ナキノ故ヲ以テ直ニ斯カル第三者に対シテハ無条件ニ対向シ得ルモノト為スヲ得ズ。

……斯ノ物権変動ハ民法第177条ニ依リ登記ヲ為スニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対向セザルヲ得ザルヲ本問ト為ス…

 

 

法律行為に基づき甲が乙に不動産を譲渡し、登記も移転したところ、何らかの理由が甲の意思表示が取り消され、他方で同不動産につき乙から権利の移転ないしは設定を受けた第三者丙が登場した場合に甲乙丙間の法的関係に関わる。

 

 判例は以下のとおり。

甲の取消前に登場した丙については民法96条3項などの第三者保護規定のない限り甲に劣後する。

 取消後の登場した丙については詐欺取消の場合であっても、96条3項は問題にならずん」取消の根拠に関係なく民法177条によるとする。

 

学説は取消前後を問わす96条3項、取消前は96条3項、土地後は177条、あるいは94条2項類推などに分かれている。

 

取消をうんと後にすれば登記の前後によらないことになる。

詐欺取消の内容証明を出すと同時に登記について仮処分を申し立てるのが実務の通例ではある。

 

応用問題として錯誤との関係や、歌詞短報に基づく解除との関係がある。平成29年改正で要件効果のすりあわせがあって、ある程度は立法的に解決された。

 

補助金と不動産所得 東京地裁平成26年

渕圭吾『租税法講義』有斐閣。・2024年・129頁以下

所得税更正請求に対する通知処分取消請求事件

東京地方裁判所判決/平成25年(行ウ)第672号

平成26年9月30日

【判示事項】      東京都住宅供給公社が借り上げている建物の建設資金に係る住宅金融公庫からの融資金につき東京都の利子補給助成制度に基づき都から上記借上げの貸主に半年ごとに交付される利子補給金について,これを一括交付するものとして都民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて都から上記貸主に交付された一括交付金が,不動産所得に係る収入金額に該当するとされた事例

【掲載誌】       税務訴訟資料264号順号12536

            LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 

 1 原告の請求を棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   東村山税務署長が原告の平成22年分所得税の更正の請求に対して平成24年7月31日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分(平成24年10月30日付けでした減額更正処分後のもの)を取り消す。

   なお,訴状記載の請求の趣旨は上記括弧内の記載がないが,訴状記載の訴訟物の価額が上記減額分を前提としたものとなっていることから,請求の内容を上記のとおり理解する。

第2 事案の概要

   本件は,不動産貸付業を営む原告が,賃貸の用に供している建物の建設資金に係る住宅金融公庫(現在の名称は,独立行政法人住宅金融支援機構。以下「金融公庫」という。)からの融資金について,東京都が実施する東京都優良民間賃貸住宅制度(現在の名称は,東京都優良民間賃貸住宅等利子補給助成制度。以下「本件利子補給制度」という。)に基づく利子補給金の交付を受けていたところ,平成22年4月30日,東京都が実施する都民住宅経営安定化促進助成制度(以下「本件助成制度」という。)に基づき,交付予定の利子補給金の一括交付を受け,この一括交付金(以下「本件一括交付金」という。)を雑所得に係る総収入金額に算入して平成22年分の所得税の確定申告をした後,本件一括交付金は一時所得の総収入金額に算入されるべきであるとして更正の請求(以下「本件更正請求」という。)を行ったところ,処分行政庁が,更正をすべき理由がない旨の通知処分を行い,更にその後,本件一括交付金は不動産所得に該当するとして減額更正処分(以下「本件減額更正処分」といい,本件減額更正処分後の上記通知処分を「本件通知処分」という。)を行ったことから,原告が,本件一括交付金は不動産所得に該当せず,一時所得に該当するとして,処分行政庁が所属する被告に対し,本件通知処分の取消しを求める事案である。

 1 関係法令の定め

  (1) 不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利,船舶又は航空機の貸付けによる所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう(所得税法26条1項)。

  (2) 不動産所得の金額は,その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする(所得税法26条2項)。

  (3) 総収入金額に算入すべき金額は,その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には,その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする(所得税法36条1項)。

  (4) 不動産所得の金額等の計算上必要経費に算入すべき金額は,不動産所得の総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年におけるこれらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする(所得税法37条1項)。

  (5) 不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので,その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に係る収入金額とする(所得税法施行令94条1項)。

   ア 当該業務に係るたな卸資産,山林,工業所有権その他の技術に関する権利,特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの又は著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)につき損失を受けたことにより取得する保険金,損害賠償金,見舞金その他これらに類するもの(1号)

   イ 当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの(2号)

  (6) 事業所得とは,農業,漁業,製造業,卸売業,小売業,サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう(所得税法27条1項)。

  (7) 一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう(所得税法34条1項)。

  (8) 雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう(所得税法35条1項)。

 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認められる事実)

  (1) 制度の概要

    本件一括交付金の交付に関わる制度としては,①「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(平成5年法律第52号。以下「特定優良住宅促進法」という。)等に基づいて東京都が実施している東京都都民住宅制度(以下「本件都民住宅制度」という。),②本件利子補給制度及び③本件助成制度(以下,上記①~③の各制度を併せて「本件各制度」という。)がある。主として本件に関係する部分を中心に本件各制度を見ると,その概要は次のとおりである。

   ア 本件都民住宅制度の概要

    (ア) 本件都民住宅制度は,中堅勤労者を対象とする都民住宅の供給を目的として東京都が定める制度である。都民住宅とは,中堅勤労者を対象に,その住居費負担を適切な水準にするため,地価を顕在化させない等の工夫を加えた供給方式及び家賃制度を活用して,東京都が自ら供給し,又はその関与若しくは財政上の援助により供給される住宅をいう。(乙3の1)

    (イ) 都民住宅の供給方式の一つとして,民間の土地所有者等が住宅を建設し,東京都住宅供給公社(以下「住宅公社」という。)がこれを借り上げて入居者に賃借する方式がある。都民住宅を供給しようとする者は,都民住宅の供給に関する計画(以下「供給計画」という。)を作成して東京都知事(以下「都知事」という。)の認定を受けるところ,上記借上げの方式による場合,供給計画の認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)と都民住宅の管理を行う管理者(住宅公社)との間で,上記認定を受けた供給計画の趣旨に沿って賃貸借契約を締結する。家賃は都知事の承認を得て認定され,東京都は,管理者(住宅公社)が都民住宅の家賃を減額する場合,当該認定事業者に対し,20年間を限度として,減額に要する費用を補充するなどとされている。(乙3の1)

   イ 本件利子補給制度の概要

    (ア) 本件利子補給制度は,土地の所有者等がその土地を活用して優良な賃貸住宅を建設する場合に,東京都がその建設資金について利子補給等を行うことにより,優良民間賃貸住宅(土地の所有者等が東京都の利子補給等を受けて建設した賃貸住宅)の供給を誘導するとともに,当該住宅を住宅公社等が都民住宅として借上げ等をすることにより,公共賃貸住宅の供給を促進し,もって都民の居住水準の向上を図ることを目的として東京都が定める制度である(乙4の1)。

    (イ) 東京都は,所定の建設基準,認定基準及び申込資格等に適合する賃貸住宅を,優良民間賃貸住宅と認定・登録し,そのうち,金融公庫の農地転用賃貸住宅融資を受けて建設された都民住宅で,民間の土地の所有者等が建設し,住宅公社が借り上げて管理する住宅(以下「公庫利用借上型都民住宅」という。)などにつき,金融公庫の融資金を対象として,その建設者に対して利子補給することとされている(乙4の1,2)。

    (ウ) 公庫利用借上型都民住宅の場合,利子補給金の月額は,金融公庫で定める利率の35年元利均等月賦償還相当額から利子補給対象額及び利用者負担率を基に算出した30年元利均等月賦償還相当額を控除した金額である。利子補給期間は30年であり,半年ごとに6か月分の合計額がまとめて交付される。ただし,利子補給対象の公庫融資金を一括繰上償還した場合,利子補給期間は,繰上償還の実行をした日までとなり,その後の利子補給は打ち切られる。(乙4の2,3)

    (エ) 利子補給を受けるための手続等については,東京都が定める要綱や要領で定められている。また,公庫利用借上型都民住宅の家賃は,都民住宅建設者が,上記要領で定める家賃の限度の額の範囲内で,かつ,近隣の民間の賃貸住宅の家賃水準等を考慮し,適正な額になるよう東京都と協議して定めなければならないなどとされ,都知事は,都民住宅建設者が上記要領の規定に違反したときなどには,利子補給交付決定を取り消すことができるとされる。(乙4の1~4)

   ウ 本件助成制度の概要

    (ア) 本件助成制度は,都民住宅建設当時の高い建設費借入金の返済のために住宅経営に苦慮している都民住宅の認定事業者に対し,交付予定の利子補給金を一括交付して,当該借入金より低利の民間金融機関融資への借換え又は金融公庫融資等の一部繰上償還を促し,都民住宅建設時の借入金に係る返済の負担(金利負担)を軽減させ,認定事業者の都民住宅の経営の安定化を図ることにより,適切な維持管理の下優良な住宅ストックとして長く使用できるよう維持保全を図ることを目的とする制度である(乙5の1,3)。

    (イ) 一括交付の対象者は,本件利子補給制度に係る要綱により建設された都民住宅の所有者(認定事業者)で,平成9年度以前に同要綱による利子補給の交付決定を受けており,金融公庫の融資等を受け,申込日現在,利子補給期間が満了していないという要件を満たす者であり,かつ,一括交付を受けるためには,民間金融機関の借換融資を受けて金融公庫の融資を全額繰上償還すること,又は当該融資を一部繰上償還することが要件とされている。都知事は,交付対象者に対して,上記要綱により交付決定を行った利子補給交付予定額のうち未交付の利子補給金相当額を一括交付することができる。(乙5の1~3)

    (ウ) 交付対象者は,上記交付額を金融公庫の融資の繰上償還に要した費用やこれに係る手数料等の諸費用等に充てることができる。また,一括交付を受けた都民住宅については,一括交付を受ける前の利子補給期間満了日まで利子補給期間中であるものとみなし,一括交付を受けた者は,上記要綱に規定する賃貸条件等を遵守する義務を負うこととされている。(乙5の1,2)

    (エ) 都知事は,交付対象者が一括交付金を都知事が承認した目的以外に使用したことが判明したとき又は一括交付を受けた者が(ウ)の規定に違反したときは,一括交付の決定を取り消すことができる(乙5の1,2)。

  (2) 本件の経緯

   ア 原告は,農業を営む傍ら,不動産賃貸業を営む青色申告者である。原告及び原告の母A(原告と併せて「原告ら」という。)は,原告の所有する土地に,共有予定の建物1棟(以下「本件建設予定建物」といい,本件建設予定建物のうち,店舗・事務所として使用される部分を除いた住宅部分を「本件賃貸予定住宅」という。)を新規に建設するため,平成5年12月1日,金融公庫に対し,連帯保証人を本件賃貸予定住宅の賃貸予定先である住宅公社とした上,融資種類を農地転用賃貸住宅融資として,その建設資金の借入れを申し込んだ(乙6)。

   イ 母Aは,平成5年12月2日,都知事に対し,本件賃貸予定住宅につき,本件利子補給制度に基づいて,優良民間賃貸住宅の認定及び金融公庫の融資金を対象とした利子補給を申し込み(乙7),利子補給の予定者となった旨の通知を受けた(乙8)。

   ウ また,都知事は,上記イの申込に先立ってされていた,本件賃貸予定住宅に係る原告らからの都民住宅(特定優良賃貸住宅)の供給計画の認定申請に対し,平成5年12月8日付けでこれを認定し(乙9),これにより,原告らは,特定優良住宅促進法5条1項及び本件都民住宅制度における認定事業者となった。

   エ 都知事は,上記イの申込みについて,平成6年3月31日付けで,母Aに対し,本件賃貸予定住宅につき,利子補給対象額を7億0390万円(金融公庫一般貸付6億0840万円,金融公庫特別貸付9550万円),利用者負担利率を金融公庫一般貸付1.0パーセント,金融公庫特別貸付3.0パーセント,利子補給期間を30年として,利子補給を決定した旨通知した(乙10)。

   オ 本件建設予定建物は,平成7年10月16日に新築され,原告らは,平成7年12月1日,住宅公社との間において,賃貸人を原告ら,賃借人を住宅公社とする賃貸借契約を締結し,同日から,本件賃貸予定住宅を借上型都民住宅として,住宅公社に対し,一括して貸し付けた(以下,当該貸付け後の本件賃貸予定住宅を「本件賃貸住宅」といい,当該賃貸借契約を「本件賃貸住宅一括借上契約」という。)。原告らは,住宅公社が借上型都民住宅として転貸することを承諾の上,本件賃貸住宅を住宅公社に賃貸し,住宅公社は入居者の有無にかかわらず,原告らに対して借上料を保証することとされ,住宅公社が原告らに対し支払う本件賃貸住宅の借上料は,住宅公社と入居者との間の本件賃貸住宅の賃貸借に係る家賃の総額(月額529万2000円)とされた。(乙12の1,2)

   カ 原告ら及び住宅公社は,平成7年12月18日,金融公庫との間において,本件賃貸住宅の建設資金の借入金総額8億0250万円(以下「本件融資金」という。)につき,金銭消費貸借契約等を締結した(乙13)。

   キ その後,所定の手続を経て,本件賃貸住宅は,優良民間賃貸住宅として認定及び登録された(乙14,15)。なお,当該手続における審査の結果,前記エの利子補給対象額は,総額に変更はないものの,公庫一般貸付が6億4200万円,公庫特別貸付が6190万円にそれぞれ変更された(乙14)。

   ク 都知事は,母Aからの申請に対して,平成8年7月8日付け「利子補給額確定通知書」により,以下のとおり,利子補給金の交付額を確定した旨通知した(乙18)。

    (ア) 利子補給対象期間

      平成8年1月12日から平成38年1月11日まで

    (イ) 利子補給金(交付総額)

      2億4463万0440円(以下「本件利子補給金」という。)

       内訳 金融公庫一般貸付 2億3867万9280円

          金融公庫特別貸付    595万1160円

    (ウ) 交付回数 60回(1回につき6か月分を交付)

    (エ) 各回の交付額(以下「本件各利子補給金」という。)

      407万7174円

      なお,この金額は,金融公庫一般貸付に係る利子補給金月額66万2998円及び金融公庫特別貸付に係る利子補給金月額1万6531円の合計月額67万9529円の6か月分である。

    (オ) 本件各利子補給金の交付日

      第1回交付日は平成8年12月22日,以後6か月ごとに交付

   ケ 原告は,母Aが平成20年2月8日に死去したことに伴い,母Aの本件賃貸住宅の持分を単独で相続し,また,本件利子補給制度における母Aの認定事業者としての地位を継承した上で,同年10月1日,住宅公社との間で,本件賃貸住宅一括借上契約における賃貸人を,「原告ら(原告及び母A)」から「原告」とする旨の変更契約を締結した(乙11,12の1及び3)。

   コ 原告は,平成22年2月24日,都知事に対し,本件助成制度に基づいて,一括交付予定額を1億3127万3604円として,本件利子補給金のうち未交付分の利子補給金相当額の一括交付の申込みを行い(乙20),都知事は,同申込みについて,同年3月8日付けで,原告に対し,交付対象者を原告,一括交付の額(交付金額)を1億3127万3604円と決定した旨通知した(甲4,乙21)。

   サ 原告は,平成22年3月25日,株式会社B銀行C支店からの借換融資により,本件融資金の残債務を全額繰上償還し,同月26日,都知事に対し,繰上償還が完了した旨を報告するとともに,一括交付の額の確定を申請した(乙22)。都知事は,同申請について,同月31日付けで,原告に対し,原告を交付対象者として,交付金額1億3127万3604円として,一括交付の額を確定した旨通知し(乙23),原告は,同年4月30日,東京都から同金額の交付を受けた(甲4,乙24の1,2)。

   シ 原告は,本件一括交付金の交付を受ける前の少なくとも平成13年から平成21年の各年に交付を受けた本件各利子補給金について,本件賃貸住宅の自己の持分割合に応じて,当該各年分の不動産所得の金額の計算上,各年分の総収入金額に算入して確定申告をしていた(乙19の1ないし9)。

   ス 原告は,平成23年2月22日,東村山税務署長に対し,別表本件通知処分等の経緯記載のとおり,平成22年分所得税につき,本件一括交付金1億3163万6373円を公的年金等以外の雑所得に算入して確定申告をしたが(甲1),平成24年3月14日,東村山税務署長に対し,別表本件通知処分等の経緯記載のとおり,本件一括交付金に係る所得は一時所得に該当するとして本件更正請求を行った(乙1)。しかし,東村山税務署長は,平成24年7月31日,原告に対し,更正をすべき理由がない旨の本件通知処分を行い(甲3),原告は,同年9月27日,これを不服として国税不服審判所長に対し審査請求をしたが(甲4),国税不服審判所長は,平成25年5月9日,同審査請求を棄却する旨の決定をした(甲4)。なお,東村山税務署長は,平成24年10月30日,別表本件通知処分等の経緯記載のとおり,本件一括交付金は不動産所得に該当し,地震保険料控除の金額の計算に誤りがある等として本件減額更正処分を行った(甲4)。

     原告は,平成25年10月21日,本件通知処分の取消しを求めて本件訴えを提起した(顕著な事実)。

 3 税額等に関する当事者の主張

   被告が本件訴訟において主張する本件通知処分の根拠及び計算は別紙課税の根拠及び計算記載のとおりであるところ,原告は,後記4の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。

 4 争点

   本件一括交付金の所得区分は,不動産所得か一時所得か。

 5 争点に関する当事者の主張の要旨

  (1) 被告の主張の要旨

   ア(ア) 不動産所得とは,不動産等の貸付けによる所得(所得税法26条1項)をいうところ,「貸付けによる」とは,「貸付けに基づいて」又は「貸付けを原因として」を意味するものと解されるから,貸付けによる所得とは,その典型である賃貸料に限らず,不動産所得を生ずべき業務の遂行に付随して発生した本来企図した収入以外の収入(以下「付随収入」という。)や付随収入とされるべき収入金額に代わる性質を有するものも含まれると解すべきである。

    (イ) 所得税法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は,その年において収入すべき金額とする旨規定している。ここにいう「収入金額」と「総収入金額」に関して,所得税法は,各種所得の金額のうち,不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額,譲渡所得の金額,一時所得の金額及び雑所得の金額について「総収入金額」という語を使用しているところ(同法26条2項,27条2項,32条3項,33条3項,34条2項,35条2項2号),これは,これらの所得については,副収入や付随収入等も加わってその収益の内容は複雑な場合が多いところから「総収入金額」という語を使用することによって,その所得に係る収入金額の総額を計算し,これに総体として対応する必要経費をそれから控除して,それらの所得の金額を計算するという所得税法の所得計算の態度を示したものと解されている。したがって,所得税法26条2項が「総収入金額」という語を使用していることは,同条1項の不動産等の貸付けによる所得には,その典型である賃貸料に限らず,付随収入が当然に含まれるというべきである。

    (ウ) 所得税法26条1項は,不動産の貸付けによる所得であっても,事業所得に該当するものを除く旨規定し,他方,同法27条(事業所得)の規定を受けた同法施行令63条(事業の範囲)は,事業所得の基因となる「事業」の範囲から「不動産の貸付業」を除く旨規定している。そして,「不動産の貸付業」の業務の性質・内容が,不動産の貸付けによる利益の獲得を目的とした経済活動の総体であることからすれば,当該業務の遂行に伴って付随収入が生じる場合もあり得るのであり,また,「不動産の貸付業」から生じた所得は本来的には事業所得の範囲に含まれるものであるから,付随収入も,所得税法上,利子所得,配当所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得のいずれかに分類されないものについては,不動産所得に該当すると解すべきである。

    (エ) 本件都民住宅制度,本件利子補給制度及び本件助成制度の枠組みや,東京都,原告及び住宅公社の三者間の関係等に照らせば,東京都は,本件賃貸住宅の直接の借主(賃貸先)ではないが,原告が本件賃貸住宅を都民住宅として供給(賃貸)する事業,すなわち,本件賃貸住宅の貸付け業務に関して密接に関わる者である。よって,原告は,正に当事者の一人である東京都から本件一括交付金の交付を受けたといえる。それゆえ,本件における事実関係等に照らせば,本件一括交付金は,本件賃貸住宅の賃貸料ではないものの,本件賃貸住宅の建設資金に充てた本件融資金の返済負担(金利負担)を軽減させるために企図した収入であって,本件賃貸住宅の貸付け業務の遂行に伴って発生した付随収入であることは明らかである。

   イ(ア) 所得税法施行令94条1項は,事業所得に関して,事業を営む者がそのたな卸資産について受ける保険金,損害賠償金,見舞金や事業の休止,転換,廃止等により受ける休業補償,収益補償等は,一時に受けるものではあるが,事業の遂行により得べかりし利益に代わるものであるので事業所得の収入金額とし,不動産所得に関しても,不動産所得を生ずべき業務の休廃止等によってその収益の補償として受ける補償金等は,本来の不動産の賃貸による所得に代わるものとして不動産所得に含まれる旨規定したものと解されている。したがって,不動産所得には,不動産所得を生ずべき業務に関し,当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもので,当該業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものも含まれる。そして,この「当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」で,「収入金額に代わる性質を有するもの」には,不動産所得に係る収入金額を補償する補償金その他これに類するものに限らず,不動産所得に係る必要経費に算入される金額を補填するための補償金その他これに類するものも含まれると解される。

    (イ) 本件一括交付金は,本件助成制度の都民住宅建設時の借入金に係る返済の負担(金利負担)を軽減させ,都民住宅の経営の安定化を図るという目的に照らせば,正に原告の「都民住宅の経営の安定化」,すなわち,本件賃貸住宅の貸付業務の安定化を図るための交付金であるから,その性質は,所得税法施行令94条1項2号の「当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」に当たり,同項柱書きの「収入金額に代わる性質を有するもの」そのものであるといえる。

      また,原告は,金利負担の軽減という目的に沿って本件一括交付金の交付を受けるために行った借換融資により,本件賃貸住宅の建設資金に係る借入金の金利負担,すなわち,原告の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき支払利息を減少させたのであるから,本件一括交付金は,原告の本件賃貸住宅の貸付業務に係る必要経費を補填するものである。

      さらに,原告は,その用途目的に沿って,本件一括交付金を当該繰上償還のための借換融資の一部繰上償還に充てることにより,当該借換融資の残債務は減少し,その結果,原告のそれ以後に支払うべき当該借換融資に係る支払利息も減少することになるから,この点においても,本件一括交付金は,原告の本件賃貸住宅の貸付業務に係る必要経費を補填するものである。

  (2) 原告の主張の要旨

   ア 不動産所得とは,不動産等の貸付けによる所得(所得税法26条1項)をいうところ,「貸付けによる所得」とは,借主から貸主に移転される経済的利益のうち,目的物を使用収益する対価としての性質を有するものを指すというべきである。したがって,不動産所得は,貸主が借主に対して一定の期間,不動産等を使用又は収益させる対価としての性質を有する経済的利益,若しくはこれに代わる性質を有するものに限定される。

   イ 利子補給金は,建物を賃貸する前段階の賃貸予定建物の建設に係る融資金の支払利息に充当することを目的として,賃貸借契約の当事者でない第三者の東京都から交付されるものである。不動産所得は,上記アのとおり,貸主が借主に対して一定の期間,不動産等を使用又は収益させる対価としての性質を有する経済的利益,若しくはこれに代わる性質を有するものに限定されるところ,利子補給金は,第三者である東京都から支給されるものであって,借主から貸主に移転するものではない。しかも,利子補給金は,あくまでも不動産の貸付けを行う以前に借り入れた融資金の支払利息を補給するものであり,建物を使用収益させる前段階の費用を補っているにすぎず,建物を使用収益させる対価としての性質やこれに代わる性質を有していない。したがって,利子補給金は,不動産所得には該当しない。

   ウ 仮に利子補給金が不動産所得に該当するとしても,一括交付金は,その性質が変化するため,別途検討が必要である。一括交付金は,第三者である東京都から交付されるものであって,借主から貸主に交付されるものではないし,不動産の貸付けを行う以前に借り入れた融資金の繰上償還のために交付されるものであり,いわば借金の返済そのものに使用されるにすぎず,建物を使用収益させたことの対価やこれに代わる性質を有するものではない。したがって,一括交付金も不動産所得には該当しない。

   エ 本件一括交付金は,利子所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で,労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないから,一時所得となる。

   オ 租税法律主義及び所得税法がその所得を10種類に分けて厳格に課税している趣旨に照らすと,どのようなものが不動産所得に含まれ又は含まれないかの解釈においては,関係法令等の文言を厳格に解釈して判断する必要がある。

     実際に,行政側の解釈である所得税基本通達(昭和45年7月1日付直審(所)第30(例規))でも,不動産所得に該当するか否かについて厳格に判断している。例えば,所得税法26条1項に規定する船舶には,船舶法20条(小型船舶及びろかい船に対する適用除外)に規定する船舶及び船は含まれないとし,総トン数20トン未満の船舶及び端船その他ろかいのみで運転し,又は主としてろかいで運転する船の貸付けによる所得は,事業所得又は雑所得に該当するとしており(同通達26-1),法律の文言を厳格に解釈している。また,用船契約による所得として,船主が船舶のみを用船主に貸与するいわゆる裸用船契約に係る所得は,所得税法26条1項に規定する船舶の貸付けに該当するが,他方,船舶を船員と共に用船者に利用させるいわゆる定期用船契約又は航海用船契約に係る所得は,事業所得又は雑所得に該当するとし,航空機の貸付けに係る所得についても,これに準ずるとしており(同通達26-3),これらの場合には,船舶の貸付けに付随した用船契約であっても「不動産所得」に当たらないことを明確にしている。さらに,アパート,下宿等の所得の区分として,アパート,貸間等のように食事を供さない場合の所得は不動産所得としているが,下宿等のように食事を供する場合の所得は,事業所得又は雑所得としており(同通達26-4),この場合には,不動産の貸付けに付随したものであっても,「不動産所得」ではないことを明確にしている。

     裁判例においても,「所得税法が,所得を10種類に分類し,担税力に応じた課税を行うために,その所得の性質によって,回帰的に生ずるものとそうでないものとに分け,とりわけ回帰的に生ずる所得の中でも不労所得性の強い資産所得の性質を有する不動産所得については,給与所得に認められる給与所得控除(28条),臨時的所得に講ぜられる累進負担の緩和措置(22条2項)等の定めを設けず,役務の対価の要素を有する事業所得に認められる資産損失の必要経費算入についても,不動産事業に該当しない場合には無条件には認められず(51条4項),必要経費を控除して所得額に応じた累進課税を課することとしていることに照らすと,不動産所得の概念につき,合理的な根拠なくして拡大解釈を行うことは,租税法律主義の観点から,認めることができないというべきである。」(名古屋地判平成17年3月3日)とされている。

   カ 所得税法施行令94条1項2号は,「当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」という文言の前に「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により」と規定している。そして,ここでいう「その他の事由」については,その前に列挙された「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止」という文言を受けて記載されている以上,「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止」と同様の事由を要件としていると解すべきである。すなわち,所得税法施行令94条1項2号は,あくまで不動産所得を生ずべき業務の休廃止等によって失われた収益の補償として受け取った補償金等で,当該業務の遂行によって生ずる収入金額に代わるものについては,不動産業務の付随収入として不動産所得の収入金額に算入するというものであって,その対象は不動産所得を生ずべき業務の休廃止等,不動産業務を一時的にでも止めることを前提としていることは明らかである。したがって,金銭が交付されたとしても,そもそも当該業務を休廃止等する代わりの補償という性質がなければ,交付された金銭は,「当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」に該当しない。

     これを本件において見ると,原告は不動産業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止しておらず,現在も継続して不動産業を行っているから,本件一括交付金は,原告が不動産業務を休止等する代わりの補償として支払われたものでない。それにもかかわらず本件一括交付金を「当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」に該当すると解釈することは,不動産所得の概念について,合理的な根拠なく拡大解釈を行うものであり,租税法律主義の観点から認めることはできない。よって,本件一括交付金は,不動産所得に該当しない。

第3 当裁判所の判断

 1 争点(本件一括交付金の所得区分は,不動産所得か一時所得か。)について

  (1) 不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利等の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得のうち,事業所得又は譲渡所得に該当するものを除いたものをいうところ(所得税法26条1項),ここにいう不動産等の貸付けとは,これによって貸主に一定の経済的利益をもたらすものをいい,有償契約である賃貸借契約がその中心となるものと解される。そして,賃貸借契約は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって成立する契約(民法601条)であるから,不動産等の貸付けによる所得とは,使用収益期間に対応して定期的かつ継続的に支払われる賃料がその典型である。もっとも,所得税法26条1項は,不動産所得を不動産の貸付けによる所得としているが,当該所得の発生原因を不動産賃貸借契約に限定しているわけではないし,所得税法が,所得金額の計算に関して,配当所得(24条2項)や給与所得(28条2項)等では「収入金額」という語を用いる一方で,不動産所得(26条2項)や事業所得(27条2項)等では「総収入金額」という語を用いているのは,後者については副収入や付随収入等も加わってその収益の内容が複雑な場合が多いことを踏まえたものと解されるところである。そうすると,不動産所得該当性を判断するに当たっては,上記典型の場合に限られず,当該所得発生に係る諸事情を考慮の上,当該所得が不動産の貸付けにより発生したと評価できるかどうかを検討すべきである。

  (2) まず,本件一括交付金が不動産所得に係る収入金額に該当するかどうかを検討するに先立ち,本件各利子補給金が所得税法上いかなる所得に属するかについて検討することとする。

    前提事実において見たとおり,本件賃貸住宅一括借上契約は,本件都民住宅制度の定める都民住宅供給の仕組みの下において,認定事業者である原告らが本件賃貸住宅を建設した上で,管理者である住宅公社にこれを賃貸し,更に住宅公社がこれを入居者に転貸する形で入居者に対して都民住宅を供給するものである。かかる住宅供給を促進するため,当該都民住宅の建設資金借入金の利子補給を行うべく,本件利子補給制度が設けられているところ,建設資金借入金の利子は不動産所得に係る必要経費であるから,上記利子補給がされることによって当該必要経費の負担が長期間にわたって軽減される結果となる。本件賃貸住宅一括借上契約は,以上のような一体としての制度を利用した上で締結されたものであって,本件利子補給金は,本件賃貸住宅の借上げに係る収益構造の中に不可分一体のものとして組み込まれているということができるし,逆にいえば,原告らが所定の基準等を満たして本件賃貸住宅一括借上契約を締結しなければ本件利子補給金の支給もあり得なかったものである。このような事情を総合考慮すると,本件利子補給金は,本件賃貸住宅の貸付けによる所得に係る収入ということができるのであり,不動産所得に係る総収入金額に算入されるべきである。実際にも原告らは,確定申告において,本件利子補給金を不動産所得に係る総収入金額に算入していたものである。

  (3) 以上の検討を踏まえ,本件一括交付金が不動産所得に係る収入金額に該当するかどうかについて検討する。

    前提事実において見たとおり,本件助成制度は,都民住宅建設当時の高い建設費借入金の返済のために住宅経営に苦慮している都民住宅の認定事業者に対し,交付予定の利子補給金を一括交付して,当該借入金より低利の民間金融機関への借換え等を促すものである。本件助成制度が利用されて金融公庫の融資金が一括繰上償還された場合,本件利子補給制度に基づく利子補給は打ち切られることになる。

    ところで,所得税法施行令94条1項2号は,不動産所得を生ずべき業務について,当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもので,その業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,不動産所得に係る収入金額とする旨定める。先に見たとおり,本件利子補給制度に基づく利子補給は,本件賃貸住宅の借上げに係る収益構造の中に不可分一体のものとして組み込まれているものであって,不動産所得を生ずべき業務の一部分をなすものといえるのであり,本件一括交付金は,本件利子補給制度に基づく利子補給が打ち切られることと引替えとなる形で交付されるのであるから,所得税法施行令の上記規定にいう収益の補償として取得する補償金その他これに類するものに当たるということができる。そして,先に見たとおり,利子補給金は不動産所得に係る収入と評価されるべきものであるから,これを一括交付するものとして交付される本件一括交付金は,利子補給金に代わる性格を持つものであって,不動産所得に係る収入ということができる。

  (4) この点,原告は,利子補給金は,第三者である東京都から支給されるものであって借主から貸主に移転するものではないし,あくまでも不動産の貸付けを行う以前に借り入れた融資金の支払利息を補給するものであり,建物を使用収益させる前段階の費用を補っているにすぎず,建物を使用収益させる対価としての性質やこれに代わる性質を有していない旨主張する。しかしながら,所得税法26条1項が,文理上,不動産所得に係る収入を不動産の借主から得られたものに限っているとまではいえず,前記(2)のような事情の下においては,本件利子補給金が不動産の貸付けによる所得に係る収入とするに十分というべきである。

    また,原告は,所得税基本通達が,所得税法26条1項に規定する船舶には,船舶法20条に規定する船舶及び船を含まないなどとするなど,法律の文言を厳格に解釈していることから,本件においても不動産所得の範囲を厳格に解すべきである旨主張する。しかし,船舶は,登記の対象となる点で(船舶法5条1項)不動産に類似しているのに対して,そのうち小型の船舶については,登記の対象とならず(同法20条),不動産と同様の取扱いを受けないことから,上記のような取扱いがされていると解されるのであって,本件とは所得税法の解釈の局面が異なるものというべきである。

    さらに,原告は,所得税基本通達において,用船契約による所得として,船主が船舶のみを用船主に貸与するいわゆる裸用船契約に係る所得は,所得税法26条1項に規定する船舶の貸付けに該当するが,船舶を船員と共に用船者に利用させるいわゆる定期用船契約又は航海用船契約に係る所得は,事業所得又は雑所得に該当するとしていたり(同通達26-3),アパート,貸間等のように食事を供さない場合の所得は不動産所得としているが,下宿等のように食事を供する場合の所得は,事業所得又は雑所得としていたりする(同通達26-4)ことなどからすれば,一括交付金は,不動産の貸付けに付随したものであっても,不動産所得に該当しない旨主張する。しかしながら,不動産所得は資産所得であり,他方,事業所得はいわば資産,勤労共同の所得であることから,所得がほとんど又は専ら不動産等を利用に供することにより生ずるものである場合には不動産所得,不動産等の使用の他に役務の提供が加わり,これらが一体となった給付の対価という性格をもつ場合には事業所得又は雑所得と解するのが相当であり,上記用船契約及びアパート,下宿等の所得の区分の振り分けもこの基準に基づくものである。そして,本件一括交付金は,前記(2)認定のとおり,専ら本件賃貸住宅一括借上契約の締結という不動産等を利用に供することにより生ずるものであり,役務の提供の対価という性格は存在しないから,原告が挙げる事例とは事情が異なるというべきである。

    その他の原告の主張も,既に説示したところに照らし,採用できない。

  (5) 以上によれば,本件一括交付金は,不動産所得に係る収入金額に算入されるべきであり,本件通知処分において,本件一括交付金を不動産所得に係る収入金額に算入したことに違法性はない。

 2 本件通知処分の適法性について

   以上を前提として,原告の平成22年分所得税についてみると,被告が本訴において主張する別紙課税の根拠及び計算記載の根拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて算定した原告の同年分の納付すべき税額は,同別紙の記載のとおりであると認められ,別表記載の本件通知処分における納付すべき税額と一致するから,本件通知処分は,適法というべきである。

第4 結論

   よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

    東京地方裁判所民事第51部

        裁判長裁判官  小林宏司

           裁判官  桃崎 剛

           裁判官  中村仁子

 

 (別紙)

       課税の根拠及び計算

 1 本件通知処分の根拠

   被告が本訴において主張する原告の平成22年分の所得税の納付すべき税額等は,次のとおりである。

  (1) 総所得金額 1億0036万3788円

    上記金額は,次のアないしエの各金額の合計金額である。

   ア 事業所得の金額 △55万3911円

     上記金額は,原告が提出した平成22年分の所得税の確定申告書(以下「本件申告書」という。)に記載した事業(農業)所得の金額と同額である。

     なお,事業所得の金額の「△」は,損失の金額を表す。

   イ 不動産所得の金額 9773万4930円

     上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した後の金額から,(ウ)の金額を控除した金額である。

    (ア) 総収入金額 2億5393万9314円

      上記金額は,次のa及びbの各金額の合計額である。

     a 本件一括交付金に係る総収入金額 1億3127万3604円

      上記金額は,本件一括交付金の金額である。

     b 上記以外の不動産所得に係る総収入金額

                       1億2266万5710円

      上記金額は,原告が本件申告書に添付した平成22年分所得税青色申告決算書(不動産所得用)の「収入金額」欄の「計」欄に記載した金額と同額である。

    (イ) 必要経費の合計額 1億5610万4384円

      上記金額は,原告が本件決算書の「必要経費」欄の「計」欄に記載した金額と同額である。

    (ウ) 青色申告特別控除額 10万円

      上記金額は,租税特別措置法25条の2第1項1号に規定する金額である。

   ウ 給与所得の金額 282万円

     上記金額は,原告が本件申告書に記載した給与所得の金額と同額である。

   エ 雑所得の金額 36万2769円

     上記金額は,原告が本件申告書に記載した雑所得の金額1億3163万6373円から,不動産所得に該当する(上記イ(ア)a)本件一括交付金1億3127万3604円を控除した後の金額である。

  (2) 株式等に係る譲渡所得の金額 21万8075円

    上記金額は,原告が本件申告書に記載した株式等の譲渡所得(上場分)の金額と同額である。

  (3) 上場株式等に係る配当所得の金額 207万3081円

    上記金額は,原告が本件申告書に記載した上場株式等の配当所得の金額と同額である。

  (4) 所得控除の金額の合計額 269万6480円

    上記金額は,次のア及びイの各金額の合計額である。

   ア 医療費控除,社会保険料控除,小規模企業共済等掛金控除,生命保険料控除,扶養控除及び基礎控除の各金額の合計額

                268万1480円

     上記金額は,原告が本件申告書に記載した医療費控除8万9180円,社会保険料控除94万2300円,小規模企業共済等掛金控除84万円,生命保険料控除5万円,扶養控除38万円及び基礎控除38万円の各金額の合計額と同額である。

   イ 地震保険料控除の金額 1万5000円

     上記金額は,原告が本件申告書において地震保険料控除の対象とした損害保険料が,平成18年法律第10号(所得税法等の一部を改正する等の法律)附則10条(地震保険料控除に関する経過措置)2項1号に規定する旧長期損害保険料に該当することから,当該損害保険料の額24万円につき,同項2号ハの規定により算出した金額である。

  (5) 課税される所得金額

   ア 課税総所得金額 9766万7000円

     上記金額は,前記(1)の総所得金額1億0036万3788円から前記(4)の所得控除の金額の合計額269万6480円を控除した後の金額(ただし,国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

   イ 株式等に係る課税譲渡所得等の金額 21万8000円

     上記金額は,前記(2)の株式等に係る譲渡所得の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

   ウ 上場株式等に係る課税配当所得の金額 207万3000円

     上記金額は,前記(3)の上場株式等に係る配当所得の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

  (6) 申告納税額 3615万8200円

    上記金額は,次のアないしウの各金額の合計額から,エの源泉徴収税額を控除した後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

   ア 課税総所得金額に対する税額 3627万0800円

     上記金額は,前記(5)アの課税総所得金額9766万7000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。

   イ 株式等に係る課税譲渡所得等の金額に対する税額 1万5260円

     上記金額は,前記(5)イの株式等に係る課税譲渡所得等の金額21万8000円に,平成20年法律第23号附則43条2項に規定する税率(7パーセント)を乗じて算出した金額である。

   ウ 上場株式等に係る課税配当所得の金額に対する税額

                           14万5110円

     上記金額は,前記(5)ウの上場株式等に係る課税配当所得の金額207万3000円に,平成20年法律第23号附則32条1項に規定する税率(7パーセント)を乗じて算出した金額である。

   エ 源泉徴収税額 27万2871円

     上記金額は,原告が本件申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。

  (7) 納付すべき税額 2933万5600円

    上記金額は,前記(6)の申告納税額3615万8200円から,原告が本件申告書に記載した予定納税額682万2600円を控除した後の金額である。

 2 本件通知処分の適法性

   被告が本訴において主張する原告の平成22年分の所得税の納付すべき税額は,前記1(7)で述べたとおり2933万5600円であるところ,当該金額は,本件減額更正処分に係る納付すべき税額と同額であるから,本件通知処分は適法である。

 

丹野達裁判長不当判決 法人への遺贈と遺留分 東京高裁平成3年

有限会社柿木荘事件 ケースブクク租税法6版404頁             法人税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】        東京高等裁判所判決/平成2年(行コ)第30号

【判決日付】        平成3年2月5日

【判示事項】        1、遺贈による法人の土地の取得は、法人税法22条2項所定の「無償による資産の譲受け」に当たるものとして当該事業年度の収益となるところ、遺贈の効果の発生と遺留分減殺の具体的効果の発生との間に時間の経過が常に存するから、課税処分の効力の安定と客観的に明確な基準によるべき課税事務の円滑な遂行のためには、価額弁償に要した額は、その支払が確定した時点の事業年度の損金に算入するのが相当であるとした事例

              2、遺贈による法人の土地の取得価額の算定は、法人税法22条4項に従い一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に照らし、減価償却資産の取得価額の評価に関する法人税法施行令(昭和40年政令第97号)54条1項7号イを類推適用して、「その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額」によるべきであり、右の「通常要する価額」を通常の取引がされた場合に成立すると認められる客観的価額と解して、当該土地の公示価格を基準に算出された取得価額を相当とした事例

【判決要旨】        (1) 法人の遺贈による土地の取得は法人税法二二条(各事業年度の所得の金額の計算)の二項所定の「無償による資産の譲受け」に当たり、その取得価額の算定は、同条四項に従い一般に公正妥当な会計処理の基準に照らし、減価償却資産の取得価額の評価に関する法人税法施行令五四条一項七号イを類推適用して「その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額」によるべきであるところ、右の「通常要する価額」とは通常の取引がされた場合に成立すると認められる客観的価額と解される。

              (2) 省略

              (3) 相続税法二二条(評価の原則)は、確かに相続により取得した財産の価額は当該財産の取得のときにおける時価によるとしているものの、相続税の財産評価における基本通達において市街地の宅地の評価の際の基準とされている路線価は、取引によらない偶発的な課税原因から生じる相続税の性格等に照らし、公示価格の七〇パーセント程度の評価を目標として算定されているものであることは公知の事実であるから、経済的に合理性に基礎を置く法人税における本件土地の通常の取得価額の算定に当たり右の路線価を用いるので適当ではない。

              (4) 借地権の設定された土地の評価において、借地権価額を控除するのは、借地法により借地人の地位が厚く保護される結果、経済的には、借地人は相当の価値を有する借地権を取得することになる反面、当該借地の価額はいわゆる底地価額にまで下落するといった、地主から借地人に対し当該土地のうち借地権部分に相当する経済的価値の移転があったと見るべき経済的実態が存在するからである。

              (5) 借地権を設定する場合には、借地権部分に相当する経済的価値の移転の対価というべき権利金その他の金銭を授受する慣行が存在するにもかかわらず、法人が権利金等の授受なくして借地権を取得した際には、法人税法二二条(各事業年度の所得の金額の計算)二項に基づき権利金相当額につき認定課税を行うのが原則である。

              (6) 当事者間の借地契約により、権利金等の授受に代えて、権利金の授受を伴う場合の地代よりも高額な、当該土地の自用地(更地)としての経済的価値との比較において相当な地代を支払うものとされているとすれば、経済的には、当該地代の資本還元額が当該土地の自用地としての価額と同等となるから、地主の許に当該土地の自用地としての価額がそのまま残されていて、借地人に対する借地権部分に相当する経済的価値の移転はなかったものと見ることができる。したがって、このような場合には、税務上、当該土地の借地契約は、権利金等の授受がなくとも、正常な取引条件でされたものというべきであり、借地人が法人である場合においても資産計上すべき借地権の取得はなかったものとして、権利金相当額の認定課税を行うべきではない。

              (7) 法人税法施行令一三七条(土地の使用に伴う対価についての所得計算)は、法人が他人に借地権等を設定して土地を使用させる場合についての規定であり、逆に法人が借地権の設定を受ける場合については、格別の規定は存在しないが、法人税法上、法人が借地権の設定を受ける場合についてもその扱いを異にすべき理由はなく、同様に右の理が妥当するものと解すべきである。

              (8) 省略

              (9) 昭和四三年一〇月二八日直資三-一三(相当の地代を収受している貸宅地の評価について)の個別通達は、第三者による利用制限を減価事由として考慮したものであって、本件遺贈のような、借地契約の当事者間での当該土地の譲渡には妥当しないものである。

              (10) 相続税財産評価に関する基本通達二六(貸宅地の評価)は、借家人による敷地の利用制限を減価事由として考慮したもので、借家人の敷地利用権は建物所有者の敷地利用権に従属したものであるところ、本件においては、借地契約の当事者間では本件借地権の経済的価値はないものとされたのであるから、本件共同住宅の賃借人の敷地利用権の経済的価値も、借地契約の当事者間においてはないものとして取り扱うべきであり、また、本件共同住宅は、控訴人会社がその譲受以前から譲渡人から貸借して借家人に転貸していたものであるから、本件共同住宅の借家人の存在による本件土地の利用に対する何らかの制約は控訴人会社自身の選択によったものというべきであり、減価要素として斟酌すべきではない。

              (11) 省略

              (12) 相続税財産評価に関する基本通達二六(貸宅地の評価)は、宅地の所有者が建物を賃貸している場合の当該建物の敷地の価額の評価に関するものであるところ、本件共同住宅は、本件土地の遺贈前から、受贈者である控訴人会社の所有であり、控訴人会社が第三者に賃貸していたものであるから、本件は右通達の予定する場合ではない。

              (13) 土地の遺贈を受けた法人が当該遺贈にかかる遺留分減殺請求に対して価額弁償金を支払った場合の税務処理については、受贈益をいったん相続開始の事業年度における収益として処理するとともに、遺留分減殺請求がされ、これに伴う具体的な受贈益の変動、すなわち具体的に価額弁償の額が決定され、受贈益の減少があった場合に、その時点の事業年度において損金として処理することとしても、受贈者の利益を甚だしく害するものではなく、したがって、右のような処理は、法律的効果の変動とも符合し、具体的な利益の実現状況にも即応するものであって、相当というべきである。

【参照条文】        法人税法22-2

              民法964

              民法1031

              民法1041-1

              法人税法22-4

              法人税法施行令54-1

【掲載誌】         行政事件裁判例集42巻2号199頁

              判例時報1397号6頁

              税務訴訟資料182号276頁

【評釈論文】        シュトイエル366号1頁

              税理35巻5号273頁

 

       主   文

 

 本件控訴を棄却する。

 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事   実

 

 (申立)

 控訴代理人らは「原判決を取り消す。被控訴人が昭和六〇年二月二七日付でした控訴人の昭和五八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を取り消す。被控訴人が同日付でした控訴人の本件事業年度の法人税についての更正(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)を取り消す、訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人らは主文第一項と同旨の判決を求めた。

(主張及び証拠関係)

 次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

 1 原判決二枚目裏二行目の「被告」から四行目の「決定」までを「本件通知処分、本件更正及び本件賦課決定」と、同三枚目表六行目の「あて」を「ずつ」とそれぞれ改め、同二枚目裏六行目の「通知処分」の前に「本件」を加え、同四枚目表三行目の「同表」から五行目の「という。)」までを「本件通知処分」と、同裏六行目を「3 本件更正及び本件賦課決定について」と、七行目冒頭から「という。)」までを「本件更正」と、九行目の「同表」から一〇行目の末尾までを「本件賦課決定」とそれぞれ改める。

 2 同五枚目表五行目の「通知処分」の前に「本件」を加え、同裏八行目の括弧書を「本件更正及び本件賦課決定について」と、同七枚目表四行目の「当額」を「当該」と、同八枚目表八行目の「平屋」を「平家」と、同裏八行目及び同九枚目表二行目の各「なくして」を「なしに」と、同一一枚目表六行目から七行目にかけての「と分筆されて」を「とは分筆の結果別筆となって」と、同裏二行目の「乙土地」を「乙土地部分」と、六行目から七行目にかけての「(三)の本訴での被告主張額」を「(三)で被控訴人の主張した控訴人の本件事業年度の所得金額」とそれぞれ改め、同表九行目の「同様」の前に「一体としてそれと」を加える。

 3 同一五枚目裏九行目を「5 本件土地の評価において考慮すべきその他の要素」と、一〇行目の「原告は、本件申告において」を「本件土地の評価については」と、同一六枚目表八行目の「算出した」を「算出すべきである」と、同一九枚目裏三行目の括弧書を「本件土地の評価において考慮すべきその他の要素」とそれぞれ改め、同一七枚目裏八行目の「存在」の次の[、」を削り、同一八枚目裏八行目の「所有で」の次に「、」を、同一九枚目裏一〇行目の「北側」の前に「右」をそれぞれ加え、同三八枚目中の各「一号」を「一」と、「八号」を「八」とそれぞれ改める。

 

       理   由

 

一 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり附加、訂正するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

 1 原判決二一枚目裏九行目の「ところ」から同二三枚目表一行目の末尾までを「。そして遺留分減殺請求があれば、遺留分を侵害する限度において遺贈はその効力を失うが、受遺者は、現物の返還をするか価額弁償をするかの選択権があり、相当価額の弁償をすることにより、現物返還義務を免れることができる。しかも遺留分減殺請求権を行使するかどうかも遺留分権者の任意である上、行使の時期も時効によって消滅するまで確定的ではない。のみならず、受遺者が価額弁償を選択した場合、弁償を条件として目的物の所有権が確保できる半面、弁償額は観念的には遺留分相当額であっても、現実に弁償すべき額は当事者双方の合意ないしは訴訟等により定まるのであるから、遺贈の効果の発生と遺留分減殺の具体的効果の発生との間に時間の経過が常に存するところ、後者の効果の発生が、相続を原因としてされた課税処分に相続開始時に遡及して影響するものとすると、課税処分の効力を不安定なものとし、客観的に明確な基準に従って迅速に処理することが要請されている課税事務の円滑な遂行を著しく阻害することになる。これに対して、受贈益をいしたん相続開始の事業年度における収益として処理するとともに、遺留分減殺請求がされ、これに伴う具体的な受贈益の変動、すなわち具体的に価額弁償の額が決定され、受贈益の減少があった場合に、その時点の事業年度、において損金として処理することとしても、受贈者の利益を甚しく害するものではない。したがって、右のような処理は、法律的効果の変動とも符合し、具体的な利益の実現状況にも即応するものであって、相当というべきである。」と、三行目から四行目にかけての「いなかったと解される」を「いなかったのである」と、七行目の「とは認められず」を「ということはできず」とそれぞれ改める。

 2 同二四枚目表三行目の「乗じて」を「乗じ、」と、七行目の「取得」から九行目の「同条」までを「取得価額の算定は法人税法二二条」とそれぞれ改め、同二五枚目表七行目の「一応の」を削り、八行目の「価額は」の次に「、」を加え、同裏八行目の「原告は」から同二六枚目表一行目の「前提として」までを「本件は、法人が贈与を受けた場合であって、たまたま贈与者の相続人が遺留分減殺請求をしたからといって、贈与が相続に変わる理はないから、本件土地の評価について」と、九行目の「とき」を「時」とそれぞれ改め、同行の「相続税」の前に「法人について相続税法が適用される根拠はないのみならず、」を加え、同裏五行目から六行目にかけての「用いるのは適当ではない」を「類推適用すべき理由も見当たらない」と、一〇行目の「検討するに、」を「検討する。」と、同二七枚目表末行の「授受なくして」を「授受なしに」と、同裏九行目の「甲土地」を「甲土地部分」と、同二八枚目表七行目の「見る」を「みる」と、同裏二行目の「授受なくして」を「授受なしに」と、四行目の「相当額につき認定課税」を「相当額の利益を得たものとしてその利益につき課税」と、同三〇枚目表一行目の冒頭から二行目の「土地」までを「収益力において自用地と異なるところがないとされた賃貸土地」とそれぞれ改め、同二九枚目裏九行目の「相当な地代」の前に「前記の意味での」を、同三〇枚目裏八行目の「しかし、」の次に「相続税における課税対象の評価については前記のような特殊性が存するのみならず、」をそれぞれ加え、同三〇枚目表三行目を、同三一枚目裏六行目の「また、」から同三二枚目表二行目の「ではない。」までをそれぞれ削る。

 3 同三二枚目裏一行目の末尾に「なお、右のように借地権による減額をする以上、更に貸家建付地としての減額をする必要はない。」を加え、九行目から同三三枚目表六行目までを削り、同裏四行目の「本件土地」から七行目のの「すぎない」までを「本件土地上の建物の居住者及び丙土地部分の西側隣地上の控訴人所有の貸家の居住者等であり、本件土地の最有効利用のためには丙土地部分を通路とすることが適切である」と改める。

 4 同三三枚目裏末行の「本件申告において」を削り、同三四枚目表一行目の「評価した」を「評価すべき」と、一〇行目の「自用地」を「更地」と、同裏三行目及び一〇行目の各「した」を「すべき」と、八行目の「評価」を「評価方法」とそれぞれ改め、同表六行目の「であるから、」の次に「対象地全体を均質なものと把握して評価した公示価格を基準としている」を加え、同裏二行目及び九行目の各「本件申告において、」を削る。

 5 同三五枚目表七行目の「失効して」を「失効し、」と、八行目の「取得し」を「取得するから」と、九行目の「だけになったもので」を「だけとなり」とそれぞれ改め、七行目の「遺贈」の前に[その限度で」を、末行の「受贈益は」の次に「、」をそれぞれ加え、同裏七行目の「自用地としての」を[更地」と改める。

 二 以上の次第により、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 丹野 達 裁判官 加茂紀久男 新城雅夫)

第2823話 民法 〔第3問〕 解答 - 十代で弁護士になる!(@madi) - カクヨム (kakuyomu.jp)

↑このページのトップヘ