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訴訟後の和解で得た職務発明対価の所得区分 雑所得とした大阪高裁平成24年判決 弁護士 岡本 哲

職務発明の対価を訴訟後の和解でもらったものは、譲渡所得の金額がのちにかわったのであり、所得税の分類上譲渡所得だという納税者側主張は理屈に合っていると思いますが大阪高裁はとっていません。最高裁は平成26年4月4日で上告不受理となり確定しました。(佐藤孝一『最近の税務争訟ⅩⅤ』大蔵財務協会・2019年・122頁)

 税務事例で評釈されていますし、租税訴訟学会で扱われていた記憶はあるのですが、大きな判例集にはのらなかったようです。

 平成30年3月の企業会計原則を全面的にとりいれた通達とのバランスを考えると判例変更はなされるべきdすし、先例価値を早々認めるべきではないように思われます。みなさんはどう考えますか。

 

所得税更正請求に対する通知処分取消請求控訴事件

 大阪高等裁判所判決/平成23年(行コ)第152号

 平成24年4月26日

【判示事項】 職務発明について当時の使用者に対し特許法35条3項の「相当の対価」の支払を求める訴えを提起し和解金を受領した控訴人は,同収入を雑所得として申告した後,譲渡所得に当たるとして更正請求をしたが,税務署長から,更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたため,処分の取消しを求めた。裁判所は,当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転する時にその内容が確定して生じた所得が譲渡所得に該当するのであって,控訴人主張の「相当の対価請求権」を取得したことをもって,権利移転時の譲渡所得に当たるとはいえないとし,原判決同様,請求を棄却した。

【掲載誌】  税務訴訟資料262号順号11941

       LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】 ジュリスト1469号120頁

       税務事例46巻7号50頁

       主   文

  1 本件控訴を棄却する。

  2 控訴費用は控訴人の負担とする。

        事実及び理由

 第1 控訴人の控訴の趣旨

  1 原判決を取り消す。

  2 近江八幡税務署長が平成20年3月10日付けでした控訴人の平成18年分所得税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

  3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

 第2 事案の概要(略語は,特記しない限り,原判決の用法に従う。)

  1 本件の要旨及び訴訟の経過等

   (1) 要旨

 本件は,職務発明について当時の使用者に対し特許法(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下,特に明示しない限り「特許法」は同改正前のものをいう。)35条3項の「相当の対価」の支払を求める訴えを提起し和解金3000万円(本件和解金)を受領した控訴人が,同収入を最初雑所得として申告した後,譲渡所得に当たるとして更正請求(本件更正請求)をしたところ,近江八幡税務署長から,本件和解金は雑所得に該当し譲渡所得には該当しないとして更正すべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)を受けたため,本件和解金が譲渡所得に当たる旨を主張して,本件通知処分の取消しを求めた事案である。

(2) 訴訟の経過

 原審裁判所は,本件和解金は譲渡所得に該当せず雑所得に該当するから,本件通知処分は適法であるとして,控訴人の請求を棄却したので,控訴人は本件控訴を提起し,原判決の取消しを求めた。

  2 関係法令等の定め,前提となる事実,主たる争点及び当事者の主張は,後記3に当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3並びに第3の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。

  3 当審における控訴人の主張

   (1) 譲渡所得の要件について

 原判決は「資産の所有権そのほかの権利が相手方に移転する機会に一時に実現した所得であること」が譲渡所得の要件であるとするが,法令上そのような定めはない。同解釈は通達を無批判に前提とするものであって,法令の解釈として相当ではない。

 ア 譲渡所得課税の趣旨と譲渡所得の要件

  被控訴人及び原判決は,上記のように解する理由として,譲渡所得税が資産の増加益(キャピタルゲイン)に対して課税する趣旨であることをあげる。しかし,譲渡所得税が増加益に対する課税であることから,譲渡所得税に当たるためには資産の所有権等が相手方に移転する機会に一時に実現した所得であることを要することにはならない。ある資産を譲渡した際,その所得が段階的に実現する場合であっても,当該所得が資産の価値を実現したもの(対価)である限り,それらはすべて資産の値上がり益と評価されるのであって,これを譲渡所得とすることが,増加益課税の趣旨に合致する。

  所得税法33条は「譲渡所得とは,資産の譲渡……による所得をいう。」と定め,「譲渡の時の所得」,「譲渡に際し一時に取得した所得」とは定めていない。控訴人の本件特許を受ける権利が「資産」であり,控訴人がAに対しこれを「譲渡」し,その「相当の対価」として本件和解金を取得したのであって本件和解金は当然譲渡所得に区分される。増加益課税であることから,法が定めない「譲渡に際し一時に実現した所得」という要件を創出し,本件和解金が譲渡所得に当たることを否定するのは租税法律主義に反するものである。増加益課税は譲渡所得課税の趣旨であって,増加益でなければ譲渡所得に該当しないというものではない。この点につき,最高裁平成18年4月20日判例タイムズ1212号81頁も「所得税法上,抽象的に発生している資産の増加益そのものが課税の対象となっているわけではなく,原則として,資産の譲渡により実現した所得が課税の対象となっているものである。」と判断した。

  増加益課税という趣旨から,資産の譲渡であるのに譲渡所得に該当しないと判断することはできない。

    イ 課税の公平

  原判決は,複数年度にわたり資産の取得費を控除するのは二重控除になり課税の公平性を害することから「譲渡に際し一時に実現した所得」であることが必要であるとするが,職務発明においては,譲渡人が権利を取得しあるいは使用者に権利を承継させるために費用を支出することは考えられないから,結局,50万円の特別控除を複数回控除することが許されるかという問題になる。この程度の控除を複数回認めることが課税の公平を害することにはならない。

  まず,一つの資産の譲渡について譲渡所得を2回計上することはあり得る。すなわち,土地の所有者が他人に対し借地権を設定し,後日同借地人に対して土地の所有権を譲渡した場合,取得費は2回計上されることになる。この場合に,後に土地の所有権を譲渡した際の所得が雑所得になるという議論はない。法令上明らかに譲渡所得に当たるものについて,法令に明示されていない理由を挙げて,譲渡所得に当たらないと判断することが租税法律主義に反して許容されないからである。

  次に,譲渡所得から控除すべき費用に前年以前に控除された費用等を除く旨の規定がないからといって,譲渡所得の要件として「譲渡に際し一時に実現した所得」であることを求めるのは本末転倒である。明文がない以上,重複して再度特別控除額を控除すべきものとし,それが不都合であるのなら立法で解決すべきであって,規定がないことから資産の譲渡の対価の性質を有する所得について譲渡所得でないとすることはできない。

  所得税法は,対価が具体的に定まらないまま複数年にわたって所得計上する場合の具体的計算方法を定めていないが,本件は,譲渡に伴って生じる対価が後に確定する極めて例外的な所得区分の争いであり,これは「特許を受ける権利」の特殊性から生じたものである。所得税法がこのような資産を念頭においていなかったとしても,それを理由に譲渡の対価であるものを譲渡所得でないと扱うことはできない。

    ウ 収入金額の権利確定の時期について

 原判決は譲渡所得とされるためには,資産の所有権等が相手方に移転する機会に一時に実現した所得であることが必要であり,そう解することが譲渡所得についての収入金額の権利確定の時期が,当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転するときと合致すると判示した。

  一般に資産を承継する場合,承継の合意時にその対価を定めることが可能であり通常もそのようにして承継の対価を定めている。しかし,通常の資産と異なり,特許権若しくは特許を受ける権利は,性質上その承継時にそれに見合う相当の対価を終局的に決定することができない。そこで従業員が就業規則等に従って会社から報償金を受領した場合であっても,従業員は,後日,特許法35条に基づく「相当の対価支払請求権」を行使し,会社に対しその支払を求めることができるとされる。本件で控訴人が取得した金員は,権利の承継の対価として取得した「相当の対価支払請求権」を実現させたものであるので,権利確定主義によって,その金額が確定した年の所得として計算されるべきである。

  エ まとめ

 資産の所有権が相手方に移転する機会に一時に実現した所得であることを譲渡所得の要件とすることについては,法令に定めがあるものではなく,裁判例もない。原判決が理由としてあげるところは根拠として薄弱である。原判決は,本件和解金について「特許を受ける権利等の対価的性質を有するものではある」としながら「譲渡によって実現した所得とはいうことはできない」として譲渡所得には該当しないと結論付けた。この判断は,およそ所得税法が定める譲渡所得の定義からかけ離れたものであり,租税法律主義に反する。

   (2) 本件和解金は何の対価か。

    ア 「相当の対価」が貢献度に応じた独占実施利益の分配金ではないことについて

     原判決は,平成18年10月17日の最高裁判決の判示を引いて,特許法35条3項の「相当の対価」とは貢献度に応じた独占実施利益の分配金の実質を有する旨を説示した。しかし同最高裁判決は,特許法35条3項及び4項の趣旨に関し,「その処分時において,当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち,同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者等において確保できるようにして当該発明をした従業者等を保護し」た旨の規定であると判示した。したがって,将来の利益を見込んだ当該資産の客観的交換価値が当該売買価格となる。特許を受ける権利の譲渡の際,従業者が確保できるのは,その処分時において,権利を取得した使用者が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益の一部である。すなわち処分時において,将来特許を受ける権利が用いられることによってどの程度の利益が生み出されるかを勘案して従業員が確保すべき金額が決められるのである。この金額は特許を受ける権利の承継時における適正な金額である。

    イ 本件和解金と対価関係に立つもの

 控訴人が本件和解金以前に受け取った各種報償金は,相当の対価の不足額を算出するに当たって考慮要素となるが,「相当の対価」の一部を構成するわけではない。平成15年判決も各種報償金が「相当の対価の一部と解し得ることは格別…」というのみであり,報償金が相当の対価に該当するという判断をしてはいない。

 別件訴訟において,Aが当該権利を利用して得た利益の額は「相当の対価」の額を決定するに当たって考慮要素とはなったが,その一事情にすぎず,他の種々の要素も勘案され,「相当の対価」すなわち本件特許を受ける権利の承継時における価値が決定された。本件和解金は,承継時における本件特許を受ける権利の対価なのであって,ロイヤリティ報償金等の不足分を補うものではない。

      特許法35条4項は,「使用者が受けた利益の額」ではなく,「使用者が受けるべき利益の額」等を算定根拠としている。すなわち,将来使用者が受けると思われる利益の額を参考に,承継時における特許を受ける権利の対価を判断することとしている。相当の対価の請求の時期にかかわらず,その特許を受ける権利の適正な時価の算定を求めるのであってそれが「相当の対価」となるべき金額である。本件和解金は,承継時における本件特許を受ける権利の価値(相当の対価)を事後的に評価したものである。

      ロイヤリティ報償金は,就業規則等の規定に基づきその年度に会社が獲得した利益(実現した利益)を根拠に算定される点においてまさに貢献度に応じた独占利益の分配金である。しかし,相当の対価請求権は,将来の利益を予測した上で算定するものであって,ロイヤリティ報償金とは性質を全く異にする。またロイヤリティ報償金は就業規則がない限り支払を受けることができないが,相当の対価請求権は特許法の法定債権である。

    ウ 本件和解の対象とされた権利の内容

 控訴人は,別件訴訟において本件職務発明に係る特許を受ける権利の承継の相当の対価を請求したが,本件和解金は,本件職務発明のみに関するものではなく,控訴人がAにおいてした36の職務発明,考案に係る権利全ての譲渡の対価として支払われた。その内ロイヤリティ報償金が発生していたのは本件職務発明だけであった。控訴人及びAが,本件和解金をロイヤリティ報償金の追加分ではなく権利の承継の対価として認識していたことは,ロイヤリティの発生していない権利についても対価の対象としたことからも明らかである。

    エ まとめ

 本件和解金は,特許を受ける権利等の承継時における適正な代金額である。この点について最高裁判所平成15年4月22日判決も,特許法35条3項に基づいて支払われる金員が特許を受ける権利の承継の対価の不足分であることを明示している。

   (3) 控訴人の主張の総括

 本件特許を受ける権利の譲渡の時期の問題と本件特許を受ける権利の「相当の対価」の所得区分の問題を混同してはならない。

 控訴人は,Aに本件特許を受ける権利を譲渡し,対価として「1000円」と「相当の対価請求権」を取得した。その時点では後者の金額が未確定であったが,本件和解で確定した。そこでこれが譲渡所得に当たるというのが控訴人の主張である。対価を複数回に分けて受領する取引はよくあるが,受領が複数回にわたるという理由で譲渡所得に該当しないとされることはない。原判決は当初の1000円のみが譲渡の対価とみているが,そうすると,使用者が一方的に定めた価額が「適正な時価」ということになり,譲渡の対価として到底ふさわしいものということはできない。

  4 当審における被控訴人の主張

   (1) 譲渡所得の要件について

   ア 控訴人は,「当該所得が資産の価値を実現したものである限り……全て譲渡所得である」と主張するが,「資産の譲渡…による所得」(所得税法33条1項)の意義は一義的に明確でないから,譲渡所得に趣旨目的等に即して解釈しその意義を確定する必要がある。そしてこれらを踏まえて,譲渡所得を「資産の所有権そのほかの権利が相手方に移転する機会に一時に実現した所得である」と解釈することは何ら法に定めのない新たな課税要件を作出するものではないから,上記のように解した原判決の判断が租税法律主義に反するとの控訴人の主張は失当である。原判決は,譲渡所得課税の趣旨及び仕組み等から「資産の譲渡…による所得」の意義を解釈し,本件和解金はこれに当たらないと判断したのであって,控訴人は先に結論ありきとした上で原判決を論難するにすぎない。平成18年判決は,譲渡所得課税について「抽象的に」発生している資産の増加益そのものに課税する趣旨ではなく,資産の譲渡により「実現」した所得に課税するものを明らかにしたものであるが,同判決は「資産の価値が実現したものである限り譲渡所得に当たる」などと判断してはいない。

 イ 控訴人は,原判決が,譲渡所得の要件を前記のように解することが,「譲渡所得についての収入金額の権利確定時期が,当該資産の所有権そのほかの権利が相手方に移転する時であるとされていること(最高裁判所昭和40年9月24日第二小法廷判決・民集19巻6号1688頁)とも整合する」と判示したことに関し,特許を受ける権利が通常の資産と異なる特殊性を有していることを無視するものであると主張する。しかしながら,所得税法36条の権利確定主義によれば,収入すべき金額は「収入すべき権利ないし経済的利益が確定した金額」をいう(最高裁判所昭和53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁)。また,資産の譲渡によって発生する譲渡所得についての収入金額の権利確定の時期は,当該資産の所有権そのほかの権利が相手方に移転する時であると解されており,所得税法33条1項の「資産」には特許権等無体財産権が広く含まれると解されている。すなわち前掲最高裁昭和40年判決の射程が特許を受ける権利に及ばないと解する理由はない。「相当な対価」の額が確定しないからといって,譲渡所得についての収入金額の権利が確定しないということはできない。すなわち,原判決の判示したとおり,「相当の対価は,文字どおり特許を受ける権利等の対価的性質を有するものではあるが,権利の承継時に実現した部分を除いては,譲渡によって実現した所得ということはでき」ないのである。本件では,控訴人が特許を受ける権利をAに承継した際に受領した出願報償金こそが権利の承継の時点において実現した所得に当たるのである。

   (2) 相当の対価の性質

    ア 控訴人は,相当の対価が,特許を受ける権利等の承継時における適正な代金額であり,客観的な交換価値であると主張する。しかし,相当の対価支払請求権は,承継時における売買代金(客観的な交換価値)とは異なり,発明の奨励という目的を達成するために,承継後の収益の利益分配を制度的に認める趣旨に基づいて特許法が創設した法定債権であると解するのが前記平成18年の最高裁判決に沿う理解である。「相当の対価」の額は「その発明により使用者等が受ける利益の額」だけではなく,特許を受ける権利等の客観的交換価値とは直接関係のない「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」を考慮しなければならないと定められているのである(特許法35条4項)。従って価額形成の過程それ自体において,すでに使用者・従業員間の利益分配の実体を有しているといわざるをえない。

    イ 本件におけるロイヤリティ報償金は「相当の対価」の一部であり,本件和解金は,ロイヤリティ報償金によっても「相当の対価」に満たないことからその不足する額に相当する対価として支払われたものである。「相当の対価」が特許を受ける権利等の対価的性質を有することも否定できないが,そのことと「相当の対価」として支払われる本件和解金がロイヤリティ報償金等の不足分を補うものであることとは何ら矛盾しない。

    ウ 控訴人は,本件和解金は,本件職務発明のみならず,ロイヤリティ報償金の生じていないそれ以外の権利も対象としたことを根拠に,Aがロイヤリティ報償金の追加分ではなく権利承継の対価と認識していたと主張する。しかしながら,本件職務発明以外の職務発明が,本件和解金の対象となったことについては,和解の性質上,別件当事者間の終局的な紛争解決をはかるためこれらの職務発明に係る「相当の対価」も併せて本件和解金に含まれたものと解される。

   (3) 本件和解金は譲渡所得にも給与所得にも当たらない。

    ア 譲渡所得該当性について,控訴人は,前記のほか不動産の売買のように,対価を複数回分けて受け取る取引の場合をあげて,複数回に分けて受け取ったという理由で譲渡所得に該当しないという議論はないとして,本件和解金もこれに相当するように主張する。しかし,通常の不動産の売買の場合権利移転の際,具体的な代金額が確定していることを前提としており,本件のように相当の対価が譲渡後の実績に照らして決まるというようなものではない。被控訴人は,対価の受領が複数回にわたるという理由で譲渡所得に当たらないと主張しているのではない。

    イ 給与所得該当性について

     相当の対価の算定要素からすると,従業者の労務及びその成果に対する対価たる性質を有しているが,従業者等が提供した労務そのものに対する対価ではない。したがって,本件和解金は給与所得に該当するとはいえない。

 第3 当裁判所の判断

  1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。その理由は,次の2のように「当審における控訴人の主張に対する判断」を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第4の1から4までの説示のとおりであるから,これを引用する。

  2 当審における控訴人の主張に対する判断

   (1) 譲渡所得の要件について

   ア 控訴人は,原判決が譲渡所得に該当するといえるためには「譲渡に際し一時に実現した所得」であることを要すると説示したことについて,所得が資産の価値を実現したもの(対価)である限りこれを譲渡所得とすることが増加益課税の趣旨に合致すること,所得税法33条に規定のない要件を創出することは租税法律主義に反すること,50万円程度の控除を複数回認めることが課税の公平を害するものではないこと,控訴人が取得した本件和解金は,権利承継の対価として取得した「相当の対価支払請求権」を実現させたものであるから,その金額が確定した年の所得として計算されるべきであることなどを主張し,原判決のいうような要件を付加することは許されないと主張する(当審における控訴人の主張(1))。

    イ 所得税法33条1項は,譲渡所得について「資産の譲渡…による所得」と規定するが,その意味内容は,条文の文理のみならず,制度の趣旨,他の規定との整合性等を総合的に勘案して解釈によってこれを確定するのが相当である。

  しかるところ,譲渡所得課税は,資産の増加益に対し「その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のもの」と解されるものである(最高裁判所昭和43年10月31日第一小法廷判決・裁判集民事92号797頁)。そして,所得税法は,譲渡所得の計算上控除すべき費用が複数年度にわたる場合の規定を置いていないから,同一の原因に基づく譲渡所得が複数年度にわたって計上されることを想定していないと解され,また収入金額の権利確定の時期(所得税法36条)は,当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転する時であるとし,贈与等の場合には譲渡所得の金額の計算については,その事由が生じた時に,その時における価額に相当する金額により資産の譲渡があったものとみなす(所得税法59条1項)としている。以上の事情に照らすと,譲渡所得とは,「譲渡に基因して譲渡の機会に生じた所得」と解するのが相当である(原判決は,譲渡所得を「資産の所有権そのほかの権利が相手方に移転する機会に一時に実現した所得」とするが,当裁判所の見解と同趣旨のものと解される。)。

  なお,このような解釈は,法文の正当な解釈の方法に基づくものであるから,これが租税法律主義に反するものではない。

 ウ 控訴人は,取得費の控除に関し,1つの資産の譲渡について譲渡所得を2回計上することがあり得るとして,借地権を設定し,後日同借地人に対して底地を譲渡する場合を挙げている(当審における控訴人の主張(1)イの第2段)。しかし,借地権設定時に計算上控除する取得費は,土地の取得費のうち,その借地権に対応する部分の金額であり,その後底地を譲渡する場合に計算上控除される取得費は,土地の取得費から,借地権設定時の譲渡所得の計算上控除した取得費を差し引いた金額であるから,同じ費用を2回計上するというものではない(所得税法施行令174条1項,175条1項)。

      また,50万円の特別控除の点については,前判示のように,所得税法に譲渡所得の計算上控除すべき費用が複数年度にわたる場合の規定が置かれていないことは,実定法上の譲渡所得の意義を考える上で無視することができない点である。控訴人の主張は,法文の文理や他の規定との整合性等を度外視して,資産の譲渡の対価の性質を有する所得は譲渡所得に当たる旨を主張するものというべきであり,これを採用することはできない。

    エ 収入金額の権利確定の時期に関する控訴人の主張について検討するに,収入金額の計算について「収入すべき金額」によるとしている所得税法36条は,現実の収入がなくても,その収入の原因となる権利が確定した場合には,その時点で所得の実現があったものとして右権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前を採用しているものと解される(昭和40年法律第33号による改正前の所得税法〔昭和22年法律第27号〕10条に関する最高裁判所昭和53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁参照)。そして資産の譲渡によって発生する譲渡所得についての収入金額の権利確定の時期は,当該資産の所有権その他の権利が相手方に移転する時であるとされている(最高裁判所昭和40年9月24日第二小法廷判決・民集19巻6号1688頁参照)から,権利移転の機会に実現した所得が譲渡所得に該当し,移転時に確定していなかった「相当の対価」は譲渡所得に該当するということはできないというべきである。

      控訴人は,前段のように解すると,特許を受ける権利等の対価的性質を有する本件和解金を譲渡所得に該当しないとすることになり,この解釈は所得税法が定める譲渡所得の定義からかけ離れたものになると主張する。しかし,譲渡の機会に実現した所得こそが譲渡所得であると解することが所得税法33条の文理に適い,かつ,他の諸規定とも整合するものというべきである。控訴人の主張は採用できない。



1人でも公衆?――頭の悪い名古屋高裁平成16年月4日判決の一人歩き

            弁護士 岡本 哲

名古屋高裁平成16年3月4日判決は、あまり評釈もでていないようであるがJASRACに変なお墨付きをあたえた、どんでも判決であり、当該裁判官は後世までそしられるべきであると考えている。

 

 

 

著作権侵害差止等請求控訴事件

 名古屋高等裁判所判決/平成15年(ネ)第233号

 平成16年3月4日

【判示事項】 一 社交ダンス教室においてCD等に録音された音楽著作物を再生演奏するのは、著作権法二二条の規定する公の演奏に当たり、同法三八条の規定する非営利で料金を受けない演奏には当たらない

 二 訴訟の提起前に実施された著作権侵害に関する一回の実態調査の結果に基づき、訴訟の提起前三年間につき不法行為に基づく損害賠償請求が、それに先立つ七年間につき不当利得に基づく利得返還請求が認容された事例

 判例時報1870号123頁

 

       主   文

 1 一審原告の控訴に基づき,原判決主文第3項を,次のとおり変更する。

 (1) 一審被告株式会社ツゲは,一審原告に対し,193万5360円を支払え。

 (2) 一審被告Aは,一審原告に対し,302万4000円を支払え。

 (3) 一審被告亡H訴訟承継人Bは,一審原告に対し,362万8800円を支払え。

 (4) 一審被告Cは,一審原告に対し,201万6000円を支払え。

 (5) 一審被告D及び一審被告Eは,一審原告に対し,連帯して302万4000円を支払え。

 (6) 一審被告Fは,一審原告に対し,241万9200円を支払え。

 (7) 一審被告Gは,一審原告に対し,287万8848円を支払え。

 (8) 一審原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 2 一審原告のその余の控訴及び一審被告らの各控訴をいずれも棄却する。

 3 原判決主文第1項及び第2項中,一審被告Hに関する部分の「H」を「亡H訴訟承継人B」と変更し,一審被告Eに関する部分の「I」を「E」と,一審被告Fに関する部分の「J」を「F」とそれぞれ更正する。

 4 訴訟費用は, 1,2審を通じてこれを5分し,その1を一審原告の負担とし,その余を一審被告らの負担とする。

 5 この判決の主文第1項の(1)ないし(7)は,仮に執行することができる。ただし,一審被告株式会社ツゲが125万円の,一審被告Aが200万円の,一審被告亡H訴訟承継人Bが240万円の,一審被告Cが130万円の,一審被告D及び一審被告Eが各々100万円の,一審被告Fが160万円の,一審被告Gが190万円の各担保を供するときは,供託した者に対するこの判決主文第1項の(1)ないし(7)及び原判決主文第2項の(1)ないし(7)の仮執行を免れることができる。

 

        事実及び理由

 

 第1 控訴の趣旨

 (一審原告)

 1 原判決主文第2項及び第3項を,次のとおり変更する。

 2 一審被告ら(ただし,一審被告Kを除く。)は,原判決別紙差止請求一覧表記載の各自の社交ダンス教授所施設から,原判決別紙物件目録記載の録音物再生装置及び関連機器を撤去せよ。

 3(1) 一審被告株式会社ツゲ及び一審被告Kは,一審原告に対し,連帯して422万6707円及びうち344万3675円に対する平成14年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (2) 一審被告Aは,一審原告に対し,719万5957円及びうち594万8550円に対する平成14年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (3) 一審被告H訴訟承継人Bは,一審原告に対し,866万7765円及びうち713万8260円に対する平成14年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (4) 一審被告Cは,一審原告に対し,481万5403円及びうち396万5700円に対する平成14年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (5) 一審被告D及び一審被告Eは,一審原告に対し,連帯して660万4350円及びうち538万0752円に対する平成14年12月14日から各支払済みまでいずれも年5分の割合による金員を支払え。

 (6) 一審被告Fは,一審原告に対し,660万4350円及びうち538万0752円に対する平成14年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (7) 一審被告Gは,一審原告に対し,1322万1679円及びうち1214万5335円に対する平成14年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 4 訴訟費用は,1,2審とも,一審被告らの負担とする。

 5 仮執行宣言

 (一審被告ら)

 1 原判決中一審被告ら敗訴部分を取り消す。

 2 上記取り消しにかかる一審原告の請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は,1,2審とも,一審原告の負担とする。

 第2 事案の概要

 1 本件は,音楽著作物の管理等を業とする一審原告が,社交ダンス教授所(社交ダンス教室)を経営する一審被告ら(ただし,一審被告Kを除く。もっとも,以下においては,ダンス教授所の経営主体を示す場合,法人の取締役である一審被告Kを除くその余の一審被告らを単に「一審被告ら」ということもある。)に対し,著作物の無許諾使用行為を理由として,著作権法(以下「法」という。)112条に基づき,一審原告が管理する音楽著作物の使用差止め(同条1項)と録音物再生装置等の撤去(同条2項)を求めるとともに,一審被告ら(一審被告Kを含んでおり,同人に対する請求の根拠は,法人の責任に加え,商法266条の3第1項に基づくものである。)に対し,主位的には不法行為に基づき,①使用料相当損害金,②これに対する履行期後の日である各翌月1日から平成14年11月30日まで民法所定の年5分の割合による既経過遅延損害金及び③弁護士費用並びに①と③の合計額に対する同年12月14日から支払済みまで同割合による遅延損害金の各支払を,予備的には(主位的請求について時効の抗弁が認められることに備えて)不当利得に基づき,上記と同額の利得金及び悪意受益者の利息金の返還を求めた事案であるが,原審が一部認容の判決を言い渡したので,これに不服がある当事者双方が控訴したものである。

  なお,一審被告Hは,控訴後の平成15年2月17日に死亡し,同人の権利義務をBが承継した。

 2 前提事実は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2」の「1」に摘示のとおりであるから,これを引用する。

  原判決6頁12行目の末尾に,次のとおり加える。

 「また,同一覧表の施設番号3の施設は,一審被告Hが平成15年2月17日に死亡するまで経営し,その後は同人の訴訟承継人であるBが経営している。」

 3 本件の争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2」の「3」及び「4」に摘示のとおりであるから,これを引用する(ただし,同「3」を「2」に,同「4」を「3」と訂正する。)。

  原判決24頁18行目の末尾に,次のとおり加える。

 「例えば,一審被告Gの経営する原判決別紙差止請求一覧表の施設番号7は,平成10年6月開設後,レッスン数が徐々に増えていること,一審被告Fの経営する同施設番号6は,平成13年1月に長年勤務していたダンス教師が独立し,生徒の約8割がそちらに移ったため,生徒数が急減したが,その後生徒数は増加していったこと,一審被告Cが経営する同施設番号4は,2年前から専属スタッフが増えたことなどから,受講者数が増えたことなどの事情がある。」

 第3 当裁判所の判断

 1 当裁判所は,一審被告Kを除く一審被告らが,それぞれが経営する本件各施設において,営業時間中,本件物件を操作して,CD等に録音された管理著作物を再生する行為は,①法22条が規定する公衆に対する演奏に該当し,②法38条が規定する非営利の演奏には該当せず,③著作物の公正な使用(フェア・ユース)に該当することを理由とする一審被告らの権利濫用の主張は認めることができないから,一審被告らの行為は一審原告の演奏権を侵害するものであり,④一審被告らに対して,一審原告が使用料規程等に基づいて著作物の使用料を請求することも,権利濫用とはいえず,⑤平成14年3月31日まで演奏権を制限していた法規の下でも,法附則14条が適用されない例外に該当し,一審原告が演奏権を行使できるものと判断するが,その理由は,次のとおり削除訂正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「1」ないし「5」に説示のとおりであるから,これを引用する。

 (1)原判決30頁20行目の「甲5の1ないし7」を「甲5の1ないし7,乙43の1ないし7,44」と改める。

 (2)同頁21行目から22行目の「受講を希望する者は,」の後に「ある程度社交ダンスの経験を積んでいてさらに研鑽を積むために受講を申し込む者が多いという傾向が見られるものの,全くの初心者であっても」と改める。

 (3)同32頁1行目の「①」及び3行目の「こと,②」から8行目の「考えられる」までを,いずれも削除する。

 (4)同36頁12行目の「社会通念上許容されていると考えられる上」を「社会通念上許容されており,一審原告が一審被告らに対して,許諾契約締結にあたって,過去の無許諾利用分について精算を求めたとしても,正当な権利の行使であると考えられる上」と改める。

 (5)同39頁末行の「被告らの論法に従えば,」から40頁4行目の「事実が認められる。」までを,「甲12の4によれば,著作権問題を所管する文化庁は,昭和45年の法改正に伴う施行令の制定に当たって,ダンス教授所と同義であると考えられる「ダンス教習所」は法施行令附則3条2号に該当するものと解釈していたことが認められる。」と改める。

 2 一審被告らの上記著作権侵害行為に基づく損害について検討するに,

 不法行為に基づく損害については,①1曲1回当たりの使用料相当損害金,②本件各施設におけるダンス教授所の平均月間営業日数,③1日当たりの管理著作物の利用数については,いずれも,原判決の判断と同様に,以下のとおりであると認められ,その理由は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「6」の「(1)」の「ア」の「(ア)」及び「(イ)」に説示のとおりであるから,これを引用する。

   ① ② ③

(1)一審被告株式会社ツゲ 60円 12日 32曲

 (2)一審被告A      60円 24日 25曲

 (3)亡一審被告H     60円 24日 30曲

 (4)一審被告C      40円 24日 25曲

 (5)一審被告D,E    60円 20日 30曲

 (6)一審被告F      60円 20日 24曲

 (7)一審被告G      60円 24日 119曲

そして,以上の数値をもって一審原告の損害算定の基礎とし得る侵害期間は,後記のとおり,一審被告Gを除けば,10年間であるというべきであるが,不法行為に基づく損害賠償請求については,一審被告らが,本訴提起から3年前以前の不法行為に基づく損害賠償請求権は,3年の消滅時効(民法724条)にかかっていると主張して,消滅時効

を援用しており,証拠(甲5の1ないし7,16の1ないし3の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,昭和52年8月,名古屋市内の5か所のダンス教授所において,音楽著作物のCD等の再生について調査しており,その中には,原判決別紙差止請求一覧表の施設番号2ないし4のほか,同施設番号1の本校に当たる桜山本校の実態調査が行われたこと,同施設番号1については,上記のとおり,桜山本校があるほか,笠寺分校があるし,同施設番号5についても,四日市及び津に教室が,同施設番号6についても,丸の内及び本山に教室が,同施設番号7についても,大府及び熱田に教室がある上,同施設番号7については,教師の数が22名と,他のダンス教授所に比べて,相当多数であることが認められ,これらの事実を勘案すれば,著作権等管理事業者として普段から音楽著作権の侵害行為に注意を払っていた一審原告は,本件訴訟提起の3年以上前から,一審被告らがダンス教授所において音楽著作物を許諾なく使用するという不法行為を知っていたものと推認することができる。すると,一審被告らによる時効消滅の主張,すなわち,本訴提起から3年前以前の一審原告の一審被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権は,3年の消滅時効(民法724条)にかかっているから,一審被告らが,本訴において,同時効を援用することによって消滅したとする主張は理由があるというべきである。すると,不法行為に基づく損害賠償をなし得る期間は,本訴提起時から遡って3年前の時点である平成11年6月1日以降,一審原告が終期とした平成14年11月30日までの42か月となり,一審被告らが一審原告に支払うべき①使用料相当損害金,②確定遅延損害金,③弁護士費用の各金額は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「6」の「(1)」の「ア」の「(エ)」,「イ」及び「ウ」に説示のとおりであるから,これを引用するが,これらの内の①及び③の金額は,次のとおりである。

   ①       ③ 

 (1)一審被告株式会社ツゲ 101万6064円 10万円

 (2)一審被告A      158万7600円 15万円

 (3)亡一審被告H     190万5120円 19万円

 (4)一審被告C      105万8400円 10万円

 (5)一審被告D,E    158万7600円 15万円

 (6)一審被告F      127万0080円 12万円

 (7)一審被告G      755万6976円 75万円

   さらに,一審原告が予備的に請求している不当利得に基づく利得の返還請求について検討するに,前記認定・判断を前提とすれば,一審被告らは,一審原告の許諾を受けず,かつ,使用料を支払わずに管理著作物を使用したことによって,法律上の原因なく使用料相当額の利得を受け,これによって一審原告は同額の損失を被ったと認められる。そして,平成4年6月1日から平成11年5月31日までの7年間における使用料相当損害額は,証拠(甲5の1ないし7,13,14,16の1ないし3の1及び2,19)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,昭和52年8月,原判決別紙差止請求一覧表の施設番号2ないし4のダンス教授所において,音楽著作物のCD等の再生について調査しており,いずれも,平成13年9月若しくは10月における調査よりも,管理著作物の利用件数が多かったこと,ダンス教授所における受講者は,初心者から上級者まで,その実力は様々であり,その実力に応じた指導がなされるものの,その際にCD等によって再生された音楽の利用曲数は,受講者の実力の違いに基づいて,顕著な差が生じるものではないこと,同一フロアに複数の受講生がいても,一時に演奏することのできる楽曲は1曲であること,昭和59年にNHKが「レッツダンス」を放映したことを契機に一般人にも社交ダンスが浸透しはじめ,社交ダンスの人口は増加したものの,映画「Shall we ダンス?」が大ヒットした平成8年をピークに,バブル経済の崩壊に伴う経済状態の悪化もあって,社交ダンス教室の生徒数は漸次減少の傾向が見られること,財団法人自由時間デザイン協会が発行している「レジャー白書2001」によれば,「洋舞・社交ダンス」の余暇活動参加人口は,平成4年から平成12年までの各年において万人の単位で,200,260,190,230,260,250,240,180,200で推移していることなどが認められ,これらの事情を総合勘案すれば,一審被告Gを除く一審被告らは,毎月いずれも前記不法行為が成立した使用料相当額の利得を受けていたというべきである(なお,一審被告Fについては,平成13年1月に長年勤務していたダンス教師が独立し,生徒の約8割がそちらに移ったため,生徒数が急減したことを主張するが,平成13年11月若しくは12月にはある程度回復していたこと(乙39)を考慮に入れると,上記認定を左右するものではないし,一審被告Cについても,2年前から専属スタッフが増えたことなどから受講者数が増えたことを主張するが,これを裏付ける的確な証拠はなく,上記認定に影響を及ぼすものではない。)が,一審被告Gについては平成10年6月にダンス教授所を開設しており,同人が原判決差止請求一覧表の施設番号7において,ビルの2階と3階とを使用していることを考慮に入れても,開設当初から平成14年2月に調査した結果に基づいた利用回数を平成10年6月1日から平成11年5月31日までの2年間についても妥当するとは考えがたいので,本件に顕れた一切の事情を斟酌して,前記不法行為が成立した使用料相当額の7割をもって利得額と推認するのが相当である。

  以上によれば,一審被告らの不当利得の額は,次のとおりである。

 (1)一審被告株式会社ツゲ

60円×32×12×12×7=193万5360円

  (曲) (日) (月)(年)

 (2)一審被告A 

 60円×25×24×12×7=302万4000円

 (3)亡一審被告H 

 60円×30×24×12×7=362万8800円

 (4)一審被告C 

 40円×25×24×12×7=201万6000円

 (5)一審被告D,E

 60円×30×20×12×7=302万4000円

 (6)一審被告F 

 60円×24×20×12×7=241万9200円

 (7)一審被告G 

 60円×119×24×12×2×0.7=287万8848円

なお,一審原告は,上記一審被告らが悪意の受益者であるとして利息金の支払を請求するが,一審被告らが,ダンス教授所におけるCD等に録音された音楽著作物を再生する行為が著作権の侵害になると知っていたことを認めるに足る的確な証拠の提出はないので,利息金請求は棄却するほかない。また,不当利得については,不法行為に基づく損害賠償請求とは異なり,確定遅延損害金や弁護士費用を請求できる根拠を欠くので,これを請求することはできない。

 3 一審被告Kの責任については,一審被告株式会社ツゲの不法行為責任と同額の責任を,商法266条の3第1項に基づいて,負うべきであり,その理由は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「7」に説示のとおりであるから,これを引用する。

 4 本件物件を本件各施設から撤去することを求める請求については,本件物件が法112条2項が規定する「専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具」に該当するとは認められないので,同請求を認めることはできないが,その理由は,以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「8」に説示のとおりであるから,これを引用する。

  原判決48頁21行目の「趣旨」を「趣旨や一審原告が控訴審において提出した書証」と改める。

 5 以上によれば,一審原告の本件控訴については,不法行為に基づく損害賠償請求や本件物件の撤去請求は理由がないから棄却すべきであるが,不当利得の返還請求については上記限度で認容すべきであるから,この限度で原判決を変更し,一審被告らの本件各控訴はいずれも理由がないから棄却することとし,さらに,一審被告Hの死亡に伴う訴訟承継に基づいて,原判決の同人に関する部分の「H」を「亡H訴訟承継人B」と変更し,一審被告の内の2名につき,従来芸名を用いていたところを本名に更正(「I」を「E」,「J」を「F」)し,職権により仮執行免脱宣言を付することとし,主文のとおり判決する。

 名古屋高等裁判所民事第4部

    裁判長裁判官  小   川   克   介

       裁判官  鬼   頭   清   貴

       裁判官  濱   口       浩

特許庁の審査官を4000人体制に

もともとは2016年の7月に発表したものです。すこしは増員されましたが、まだまだです。


弁護士 岡本 (おかもと てつ)

1 弁護士資格と弁理士資格
筆者は弁護士なので弁理士・税理士の資格がついてくるが弁理士・税理士の試験をいまうけても合格しないと自信をもって言える。ただし、実務は単独でやる義務はなく、協力相手をもとめてチームをくんでやるものであるから、こなしていくことはできる。弁護士・弁理士・税理士は別の業界であまりのりいれがなかったのであるが、弁護士の人員過剰のせいかこの業界への進出もあるようである。

知的財産権は新司法試験の選択科目にはいったが全員がとるわけでもない。

ただ、弁護士就職難の一部解決と知的財産権強化戦略にやくだつ方策を考えてみた。

2 特許審査官の現状

特許庁審査官候補の国家試験1種の技術系合格者は平成2243名、平成2336名、平成2434名であり、エリートコースのようであるから、これの大幅増加は困難である。7年以上審査官をすれば弁理士資格をえることができる。

平成15年から5年間、毎年100名の5年任期で1回だけ再任可能である任期付審査官補の制度が導入された。500名いたのが徐々にへることになる。再任すれば7年をクリアーするので弁理士資格をえることができる。

こちらの技術系の採用しかないようであるが、ネット上の体験記などによると研修のなかみは弁理士試験に匹敵する法律試験がきびしいようである。


Sankei Biz
2013224日配信記事激減する日本の特許審査官 米中韓との格差広がる懸念 によると、
「日本、米国、欧州、韓国、中国の主要特許庁は、審査官を増員してきた。しかし日本は、今年末を境に減少に転じ、現在の1700人体制から、毎年減員され、2018年以降は1200人前後となる。審査待ち期間の短縮を目的に、04年度から臨時採用してきた審査官補の任期が順次切れるためだ。中国は現在、推定約6000人の審査官数を16年には1万2000人にするという。新興国であり審査官の経験値を考慮しても、日本の数倍の新規特許生成能力を保有することになる。毎年500人規模で増員中の米国も審査官は7831人と日本の4倍強。」となっている。日本の審査制度が世界でもっともすぐれているのであれば、あとは審査期間の問題である。
司法改革によって6年かかってあたりまえだった民事1審は現在2年かからなくなっている。そこで早期促進のノウハウがる司法修習をおえた人間活用である。3倍の人数で3分の1の期間にできないだろうか。


3 知的財産権立国にむけて弁護士の活用を
 知的財産権事件としても裁判官は技術に素人である。弁理士資格をもっていたり理系の出身者というのは知的財産権高裁関連でもきかない。
 資格だけの比較でいえば、弁護士は弁理士資格を含むので審査官7年めと資格としては同等ということになる。法律職としての任期つき審査官補を年間200名ほど採用するのはいかがであろうか。研修は技術系が中心となるので審査要求分野がかたよってきた場合の対処も可能である。
応募資格が弁護士資格が重すぎるのであれば法務博士資格でもいい。

4 将来像
 賄賂をとらない審査官というだけでも発展途上国からは魅力的なのである。スピーディで確実な審査、その魅力により世界中からの申請が日本に集中する。紛争は日本の法廷でおこなわれやすくなる。弁理士にとっても魅力的な制度ではなかろうか。

特許庁の審査を1万人体制に

 

弁護士 岡本 (おかもと てつ)

 

もともとは特許庁の審査官を4000人にと平成25年4月に本ブログに掲載していた。

5年たって1万人が必要になるように思った。

http://blog.livedoor.jp/ok_law/archives/26194314.html#comments

 

1 弁護士資格と弁理士資格

筆者は弁護士なので弁理士・税理士の資格がついてくるが(それぞれの団体に登録は必要、弁理士・税理士の試験をいまうけても合格しないと自信をもって言える。ただし、実務は単独でやる義務はなく、協力相手をもとめてチームをくんでやるものであるから、協力者とともにこなしていくことはできる。弁護士・弁理士・税理士は別の業界であまりのりいれがなかったのであるが、弁護士や会計士の人員過剰のせいかこの業界への進出もあるようである。

 

知的財産権は新司法試験の選択科目にはいったが全員がとるわけでもない。

 

ただ、弁護士就職難の一部解決と知的財産権強化戦略にやくだつ方策を考えてみた。

 

2 特許審査官の現状

 

特許庁審査官候補の国家試験1種の技術系合格者は平成2243名、平成2336名、平成2434名であり、エリートコースのようであるから、これの大幅増加は困難である。7年以上審査官をすれば弁理士資格をえることができる。

 

平成15年から5年間、毎年100名の5年任期で1回だけ再任可能である任期付審査官補の制度が導入された。500名いたのが徐々にへることになる。再任すれば7年をクリアーするので弁理士資格をえることができる。

こちらの技術系の採用しかないようであるが、ネット上の体験記などによると研修のなかみは弁理士試験に匹敵する法律試験がきびしいようである。

2004 - 2009年、2014 - 2016年の任期付職員(特許審査官補)の採用者データは次のとおりである[6]

入庁前最後の勤務先:知財部以外の民間 54.2%、民間の知財部 12.7%、大学等 11.4%、特許事務所 12.3%、公的研究所・公務員 8.6%、その他 1.6%

最終学歴:学士 32.9%、修士 42.8%、博士 24.2%

採用時年齢:30歳未満 16.5%30 - 34 26.1%35 - 39 17.7%40 - 49 25.4%50歳以上 14.2%

弁理士資格保有率:7.1%

性別:男性84.0%、女性16.0%

 

Sankei Biz2013224日配信記事激減する日本の特許審査官米中韓との格差広がる懸念によると、

「日本、米国、欧州、韓国、中国の主要特許庁は、審査官を増員してきた。しかし日本は、今年末を境に減少に転じ、現在の1700人体制から、毎年減員され、2018年以降は1200人前後となる。審査待ち期間の短縮を目的に、04年度から臨時採用してきた審査官補の任期が順次切れるためだ。中国は現在、推定約6000人の審査官数を16年には1万2000人にするという。新興国であり審査官の経験値を考慮しても、日本の数倍の新規特許生成能力を保有することになる。毎年500人規模で増員中の米国も審査官は7831人と日本の4倍強。」となっている。日本の審査制度が世界でもっともすぐれているのであれば、あとは審査期間の問題である。

司法改革によって6年かかってあたりまえだった民事1審は現在2年かからなくなっている。そこで早期促進のノウハウがる司法修習をおえた人間活用である。3倍の人数で3分の1の期間にできないだろうか。

 

 

3 知的財産権立国にむけて弁護士の活用を

 知的財産権事件としても裁判官は技術に素人である。弁理士資格をもっていたり、理系の出身者というのは知的財産権高裁関連でもきかない。

 資格だけの比較でいえば、弁護士は弁理士資格を含むので審査官7年めと資格としては同等ということになる。法律職としての任期つき審査官補を年間200名ほど採用するのはいかがであろうか。研修は技術系が中心となるので審査要求分野がかたよってきた場合の対処も可能である。

応募資格が弁護士資格が重すぎるのであれば法務博士資格でもいい。

 

4 将来像

 賄賂をとらない審査官というだけでも発展途上国からは魅力的なのである。スピーディで確実な審査、その魅力により世界中からの申請が日本に集中する。紛争は日本の法廷でおこなわれやすくなる。弁理士にとっても魅力的な制度ではなかろうか。

※中国と日本米国の知財関係の統計数字を見てみます。

  ①2011年、特許(発明)出願件数が、53万件で、

   米国(50万件)、日本(34万件)を抜いて世界一。

  ②2011年、商標出願件数142万件、世界一。

  ③2012年、特許(発明)出願件数、65万件。

         実用新案出願件数、 74万件。

         意匠出願件数、   66万件。

  ④中国知的財産訴訟件数(2011)、

         知財民事一審事件、  6万件。

         知財刑事一審事件、  6千件。

 中国よりは特許審査官をふやしておかなくてはいけませんね。

 以前提案した4000人ではたりないようです。

 中国特許の無効を日本で扱えるとなったら世界にとっても有益でしょう。収賄の危険のない裁判官がいるのですから。

なお、中国人裁判官とか特許弁護士を買収してこっち側にする手はちゃんとやっているのでしょうか。亡命希望した場合の日本への受け入れ要件に日本への貢献をいれると相当きくのでは。

 

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