岡本法律事務所のブログ

カテゴリ: サラ金」

2005年ごろのサラ金利用者
弁護士 岡本哲
岡山市 岡本法律事務所

2005年にかいたエッセイです。日垣隆著作の引用があります。

 サラリーマン金融の利用者像
                   弁護士 岡本 哲
1 ある強盗事件とサラ金の収益構造
 平成13年5月8日に青森県弘前市の武富士に押し入った強盗は、要求を拒まれたためガソリンをまいて火を放った。その結果5人の尊い生命が奪われた。銀行強盗をしなければならないほどおいつめられるひとが、サラ金が身近なひとのなかに出現したわけである。この事件直後の平成13年5月28日の週刊エコノミストの記事で日垣隆は小口不良債権(借金苦)の大出現を予言している(日垣隆「急がば疑え!」2005年に収録)。平成13年段階ではこの事件は驚きをもってむかえられていた。サラ金利用者が強盗をはたらくほどせっぱつまるようになる、とは考えられていなかったのであろう。
武富士は平成17年3月期で1兆6...000億円の無担保ローンを貸し出し、調達コストは231億円、貸付金の8割ちかくが年間25~27パーセントの金利で貸し付けられており、貸付金の利息収入は3475億円である。3割ちかい利息をとられたら家計はなりたちえず、ほかのサラ金等から借りてかえすことがまわらなくなれば即、不良債権となるものである。
平成10年くらいまでは、サラ金の利用者は本来は中堅サラリーマンや主婦層であり、ある程度余裕のある層であった。
なぜ、このような不良債権予備軍ができてしまうような構造になってしまったのであろうか。
2 従来のサラ金の利用者像
 平成初期までは下層のひとのやむをえない金融さきというイメージがつよかった。武富士は団地主婦などの層を開拓し、ある程度上の層をひきいれていった。その後は平成6年くらいまでに徐々に業界のイメージアップがはかられたようである。
 現在の武富士は500万円以上の年収のあるひとにはカネを課さないといわれている。年収400万円以下、とくに200万円~300万円が優良層とされる。なぜだろうか。年収がおおければおおいほど安心なのではないだろうか?
 収入があるにもかかわらず、サラ金を利用しようとする客は、現金でしか楽しめない享楽、具体的には呑む・打つ(バクチ)・買う(女性)の後二者か、のむにしても違法な薬物等にはまっている疑いがあるからである。ふつうに暮らしていればおこりえないことがおきているのだから、それは生活破綻のリスクがあるというわけである。この話は武富士従業員がジャーナリストに自慢していったということであるから(須田慎一郎「下流喰い」筑摩書房・22006年・84頁)、ほかのサラ金は高収入のひとによろこんで貸しているということなのであろう。
 さて、400万円以下だとふつうに暮らしていてもサラ金にいくのであろうか。
 20世紀くらいまでは年齢は40代後半・年収300万円程度で子供2~3人、家計的には住宅ローンの返済のほか養育費教育費のやりくり優先で亭主の小遣いはあとまわし、とされていた。恒常的な金欠状態だから長いおつきあいをしてくれる、というわけである
 ところが、21世紀になったとたんの、平成14年度のサラ金業界全体の新規顧客の構成は、30代以下の定収入の若い男性にかたよっていっている。慢性的金欠病でもなくても簡単に利用してしまうのである。
 これは平成9年のテレビのゴールデンタイムのサラ金CM解禁の影響がおおきかったのではないかと推測される。昭和56~58年ごろのサラ金地獄が社会問題になっていたころの記憶のあるひとにとっては、サラ金というのは最後の最後にいくところのイメージがあった。ところが、平成9年からアイドルやキャラクターをつかった(ラララむじんくん…や武富士ダンスをおぼえている読者はおおいのではなかろうか)インパクトのあるCMがヘビーローテーションで流れるようになった。このため30代以下の世代が簡単にサラ金を利用するようになったといわれている。
 そして、いったん利用してしまった場合、サラ金は優良顧客をはなさず融資残高を維持しようと、貸し出し枠をあげたという通知をしたりする。多重債務者予備軍がふえてしまうが、短期的には融資残高がふえ利益もあがるので貸付けてしまうわけである。
 平成18年の改正で総量規制を打ち出しているが、はたして実効性があるのだろうか。
3 現在の利用者像
 まとめると年収400万円以上の収入層だと現金でないとできない享楽にはまっているひと、年収400万円以下の収入層だとふつうのひと、ということになる。かなり下層のひとがやむなく利用している、というサラ金利用者像は昭和50年代までのものということになる。
 そして、ほとんどの利用者が、多重債務者となっており、不良債権予備軍といっていい。
 一刻もはやく弁護士に依頼して整理したほうがいい状態にある。

この段階で創業者は私有財産をあきらめ、過払利息を清算して解散すべきだったと今の眼ではみえます。

某債権回収会社が破産をしたニュースが11月14日にながれてきた。

2011年にかいた貸金業法改正について書いた記事を掲げておく。

質問
2010年施行の貸金業法改正でどのようなことがおきたのでしょうか。2010年のサラ金業界はどのような状態だったのでしょうか。

回答
 「改正貸金業法」は主として借金に苦しむ多重債務者を救済する目的で、消費者金融や事業者金融、信販・カード会社に対する規制を強化する改正が2006年12月に成立しました。段階的にルールを厳しくし、2010年6月18日に完全施行されました。
 完全施行以降、貸金業者は借り手にお金を貸し出す際の金利を、それまでの上限29.2%から20%に引き下げ、貸し出し総額にも規制がかかり、年収の3分の1以上は貸してはならないことになりました。

◆改正貸金業法のポイント

[1] 過剰貸し付けを抑制…総借入残高が年収の3分の1を超える貸し付けを禁止(総量規制の導入)
[2] 金利の適正化…上限金利を20%に引き下げ
[3] 貸金業への参入条件の厳格化…貸金業者として営業するためには純資産5000万円以上が必要に
[4] 資格制度の導入…貸金業務取扱主任者の資格試験を導入。合格者を営業所ごとに配置することを義務化

 改正のほか2006年の最高裁判決も消費者被害を救済し、サラ金の経営を圧迫させました。
 
  過払い金の返還請求です。消費者が過去に払い過ぎた金利を消費者に返還することについてほとんど例外なく認められるように最高裁判所が判断した結果、多くの被害者が消費者金融に利息の返還請求を始めるようになりました。大手に対する過払い金返還請求の累計額は、2009年12月段階で1.5兆円を超えました。

 プロミスは2009年3月末で、当社は総額約4400億円の利息返還請求にかかる引当金を積みました。2009年12月にはアイフルが事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請しました。武富士も2010年段階で資金繰りが常に噂されるようになりました。
メガバンクが出資するアコムやプロミスも、2010年から大規模なリストラによって、生き残りを図ろうとするようになりました。
 
 銀行のように面倒な審査もなく気軽に借りられることを売りに、顧客を開拓したのが消費者金融です。
 日本銀行によれば、1991年、約20兆円あった国内銀行の個人向け貸出金は、2002年には約9兆円まで減少しました。一方、消費者金融の個人向け貸付残高は、1999年3月末の約16兆円から2002年3月末に約20兆円を突破しました。銀行からクレジットやサラ金へ流れたのです。
 急成長過程で、消費者金融はそのビジネスモデルがよって立つ原点を見失いました。「対面与信」及び適正与信の原則がわすれられていくのです。
 その大きなきっかけとなったのが、1990年代前半に登場した自動契約機の登場だ。93年にアコムが「むじんくん」を開発。他社も開発し、一気に事業展開を加速させた。1996年のCMのゴールデンタイム解禁も追い風となりました。

 事業拡大を競い、債務者の返済能力など度外視した過剰な貸付をおこなって経営者一族だけが豊かになっていく。従業員はブラック企業レベルの扱いをされたうえで強引な回収をやらされます。決定的な問題がおきたのが、90年代後半の事業者金融の「商工ローン」問題でした。回答者も弁護団のひとりでした。社会問題化し、国会で議論となり、貸金業法が改正され、上限金利が40.004%から29.2%に引き下げられました。
 2006年、再び融資の強引な取立てと過剰融資が社会問題化します。「多重債務者」という言葉がようやく社会に普及しました。その結果改正貸金業法が成立したのです。

 貸金業者側はこんな改正があると健全な貸金業者がいなくなり闇金が跋扈する、といっていましたが現在にいたるも闇金は増加していません。 この改正をないものにしようという貸金業者側の巻き返しも現在なされています。

昭和63年の司法試験・商法論文式試験問題から現在の企業法務をみる

 

          弁護士 岡本 哲

構成

はじめに

第1問のついて

第2問について

 

はじめに

 

また、司法試験の論文式の論点予想で過去30年くらいまでさかのぼる意味はあった。司法試験委員はそのころの試験を受けて合格していることがおおいので、立法や判例の動きがあまりない時代は問題意識が共通していたわけである。平成も二けたになると利害状況や判例の進展、試験蛍光の年々の変化で、過去問にしても過去10年くらいで足りているようには思われる。

 

 筆者の合格した年、昭和63年だと商法はいまでは企業法務での実務的意義が2問ともなくなってしまった。頭の体操くらいにちょっと考えてみたいただきた。

昭和63年商法

第1問

甲株式会社の資産総額は200億円であり、甲会社の内規によれば、10億円以上の借入れには取締役会の決議が必要である。甲会社の代表取締役Aが、甲会社の名において乙銀行と次の取引をしたとき、それぞれの取引の効力はどうなるか。

(一) Aは、取締役会の決議を経ることなく、20億円を借り入れた。

(二) Aは、自己の住宅購入資金にあてるため、2億円を借り入れた。

第2問

個人営業を営む甲が、A株式会社代表取締役甲名義で約束手形を振り出した場合、甲の手形法上の責任はどうなるか。A会社が実在する場合と実在しない場合とに分けて論ぜよ。

これを2時間でそれぞれ1000~2000字くらいの答案を作成して回答する。そんなに苦戦せずに解答したものと思われる。

 

第1問について

 

昭和63年だと定期預金の金利が1割をこえていたわけで、民事の5パーセント、商事6ポーセントの遅延損害金は利息としては安いことになる。マイナス金利や住宅ローン金利が2パーセントの平成23年現在とは異なる。

質問
2010年施行の貸金業法改正でどのようなことがおきたのでしょうか。2010年のサラ金業界はどのような状態だったのでしょうか。

回答
 「改正貸金業法」は主として借金に苦しむ多重債務者を救済する目的で、消費者金融や事業者金融、信販・カード会社に対する規制を強化する改正が2006年12月に成立しました。段階的にルールを厳しくし、2010年6月18日に完全施行されました。
 完全施行以降、貸金業者は借り手にお金を貸し出す際の金利を、それまでの上限29.2%から20%に引き下げ、貸し出し総額にも規制がかかり、年収の3分の1以上は貸してはならないことになりました。

◆改正貸金業法のポイント

[1] 過剰貸し付けを抑制…総借入残高が年収の3分の1を超える貸し付けを禁止(総量規制の導入)
[2] 金利の適正化…上限金利を20%に引き下げ
[3] 貸金業への参入条件の厳格化…貸金業者として営業するためには純資産5000万円以上が必要に
[4] 資格制度の導入…貸金業務取扱主任者の資格試験を導入。合格者を営業所ごとに配置することを義務化

 改正のほか2006年の最高裁判決も消費者被害を救済し、サラ金の経営を圧迫させました。
 
  過払い金の返還請求です。消費者が過去に払い過ぎた金利を消費者に返還することについてほとんど例外なく認められるように最高裁判所が判断した結果、多くの被害者が消費者金融に利息の返還請求を始めるようになりました。大手に対する過払い金返還請求の累計額は、2009年12月段階で1.5兆円を超えました。

 プロミスは2009年3月末で、当社は総額約4400億円の利息返還請求にかかる引当金を積みました。2009年12月にはアイフルが事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請しました。武富士も2010年段階で資金繰りが常に噂されるようになりました。
メガバンクが出資するアコムやプロミスも、2010年から大規模なリストラによって、生き残りを図ろうとするようになりました。
 
 銀行のように面倒な審査もなく気軽に借りられることを売りに、顧客を開拓したのが消費者金融です。
 日本銀行によれば、1991年、約20兆円あった国内銀行の個人向け貸出金は、2002年には約9兆円まで減少しました。一方、消費者金融の個人向け貸付残高は、1999年3月末の約16兆円から2002年3月末に約20兆円を突破しました。銀行からクレジットやサラ金へ流れたのです。
 急成長過程で、消費者金融はそのビジネスモデルがよって立つ原点を見失いました。「対面与信」及び適正与信の原則がわすれられていくのです。
 その大きなきっかけとなったのが、1990年代前半に登場した自動契約機の登場だ。93年にアコムが「むじんくん」を開発。他社も開発し、一気に事業展開を加速させた。1996年のCMのゴールデンタイム解禁も追い風となりました。

 事業拡大を競い、債務者の返済能力など度外視した過剰な貸付をおこなって経営者一族だけが豊かになっていく。従業員はブラック企業レベルの扱いをされたうえで強引な回収をやらされます。決定的な問題がおきたのが、90年代後半の事業者金融の「商工ローン」問題でした。回答者も弁護団のひとりでした。社会問題化し、国会で議論となり、貸金業法が改正され、上限金利が40.004%から29.2%に引き下げられました。
 2006年、再び融資の強引な取立てと過剰融資が社会問題化します。「多重債務者」という言葉がようやく社会に普及しました。その結果改正貸金業法が成立したのです。

 貸金業者側はこんな改正があると健全な貸金業者がいなくなり闇金が跋扈する、といっていましたが現在にいたるも闇金は増加していません。 この改正をないものにしようという貸金業者側の巻き返しも現在なされています。

2005年ごろのサラ金利用者
弁護士 岡本哲
岡山市 岡本法律事務所

2005年にかいたエッセイです。日垣隆著作の引用があります。

 サラリーマン金融の利用者像
                   弁護士 岡本 哲
1 ある強盗事件とサラ金の収益構造
 平成13年5月8日に青森県弘前市の武富士に押し入った強盗は、要求を拒まれたためガソリンをまいて火を放った。その結果5人の尊い生命が奪われた。銀行強盗をしなければならないほどおいつめられるひとが、サラ金が身近なひとのなかに出現したわけである。この事件直後の平成13年5月28日の週刊エコノミストの記事で日垣隆は小口不良債権(借金苦)の大出現を予言している(日垣隆「急がば疑え!」2005年に収録)。平成13年段階ではこの事件は驚きをもってむかえられていた。サラ金利用者が強盗をはたらくほどせっぱつまるようになる、とは考えられていなかったのであろう。
武富士は平成17年3月期で1兆6...000億円の無担保ローンを貸し出し、調達コストは231億円、貸付金の8割ちかくが年間25~27パーセントの金利で貸し付けられており、貸付金の利息収入は3475億円である。3割ちかい利息をとられたら家計はなりたちえず、ほかのサラ金等から借りてかえすことがまわらなくなれば即、不良債権となるものである。
平成10年くらいまでは、サラ金の利用者は本来は中堅サラリーマンや主婦層であり、ある程度余裕のある層であった。
なぜ、このような不良債権予備軍ができてしまうような構造になってしまったのであろうか。
2 従来のサラ金の利用者像
 平成初期までは下層のひとのやむをえない金融さきというイメージがつよかった。武富士は団地主婦などの層を開拓し、ある程度上の層をひきいれていった。その後は平成6年くらいまでに徐々に業界のイメージアップがはかられたようである。
 現在の武富士は500万円以上の年収のあるひとにはカネを課さないといわれている。年収400万円以下、とくに200万円~300万円が優良層とされる。なぜだろうか。年収がおおければおおいほど安心なのではないだろうか?
 収入があるにもかかわらず、サラ金を利用しようとする客は、現金でしか楽しめない享楽、具体的には呑む・打つ(バクチ)・買う(女性)の後二者か、のむにしても違法な薬物等にはまっている疑いがあるからである。ふつうに暮らしていればおこりえないことがおきているのだから、それは生活破綻のリスクがあるというわけである。この話は武富士従業員がジャーナリストに自慢していったということであるから(須田慎一郎「下流喰い」筑摩書房・22006年・84頁)、ほかのサラ金は高収入のひとによろこんで貸しているということなのであろう。
 さて、400万円以下だとふつうに暮らしていてもサラ金にいくのであろうか。
 20世紀くらいまでは年齢は40代後半・年収300万円程度で子供2~3人、家計的には住宅ローンの返済のほか養育費教育費のやりくり優先で亭主の小遣いはあとまわし、とされていた。恒常的な金欠状態だから長いおつきあいをしてくれる、というわけである
 ところが、21世紀になったとたんの、平成14年度のサラ金業界全体の新規顧客の構成は、30代以下の定収入の若い男性にかたよっていっている。慢性的金欠病でもなくても簡単に利用してしまうのである。
 これは平成9年のテレビのゴールデンタイムのサラ金CM解禁の影響がおおきかったのではないかと推測される。昭和56~58年ごろのサラ金地獄が社会問題になっていたころの記憶のあるひとにとっては、サラ金というのは最後の最後にいくところのイメージがあった。ところが、平成9年からアイドルやキャラクターをつかった(ラララむじんくん…や武富士ダンスをおぼえている読者はおおいのではなかろうか)インパクトのあるCMがヘビーローテーションで流れるようになった。このため30代以下の世代が簡単にサラ金を利用するようになったといわれている。
 そして、いったん利用してしまった場合、サラ金は優良顧客をはなさず融資残高を維持しようと、貸し出し枠をあげたという通知をしたりする。多重債務者予備軍がふえてしまうが、短期的には融資残高がふえ利益もあがるので貸付けてしまうわけである。
 平成18年の改正で総量規制を打ち出しているが、はたして実効性があるのだろうか。
3 現在の利用者像
 まとめると年収400万円以上の収入層だと現金でないとできない享楽にはまっているひと、年収400万円以下の収入層だとふつうのひと、ということになる。かなり下層のひとがやむなく利用している、というサラ金利用者像は昭和50年代までのものということになる。
 そして、ほとんどの利用者が、多重債務者となっており、不良債権予備軍といっていい。
 一刻もはやく弁護士に依頼して整理したほうがいい状態にある。

この段階で創業者は私有財産をあきらめ、過払利息を清算して解散すべきだったと今の眼ではみえます。

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