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カテゴリ:憲法 > 弁護士

損害保険の弁護士費用特約を使う要件 実際の出損必要とした東京高裁平成29年

保険判例百選第2版A5

弁護士への過剰請求への警戒月世継ぎるように弁護士としては感じてしまいます。

 

弁護士費用等請求控訴事件

東京高等裁判所判決/平成28年(ネ)第5242号

【判決日付】      平成29年4月27日

【判示事項】      損保会社である被控訴人との間で弁護士費用特約が付帯された自動車保険契約を締結した原告が,交通事故で負傷し,交渉を弁護士に委任して解決したのに,被控訴人が支払わないとし,弁護士報酬等を請求し,原審が請求を棄却したのに対し,控訴した事案。控訴審も,本件特約には,被控訴人に対する保険金請求権は,保険金請求権者が弁護士費用等を支出した時から発生・行使できると明記されており,被保険者の費用支出が保険金請求権の要件と解すべきであり,本件はその要件を欠くとし,控訴を棄却した事例

【掲載誌】       LLI/DB 判例秘書 自保ジャーナル2001号

【評釈論文】      損害保険研究80巻3号177頁

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 被控訴人は,控訴人に対し,48万0490円及びこれに対する平成27年11月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事実関係

 1 事案の概要

   本件は,控訴人が,損害保険会社である被控訴人との間で弁護士費用特約が付帯された自動車保険契約を締結していたところ,交通事故で負傷し,これに関する交渉を控訴人訴訟代理人に委任し,同代理人が解決したにもかかわらず,被控訴人は弁護士報酬及び実費の支払をしないとして,控訴人が,被控訴人に対し,上記保険契約に基づき,上記弁護士報酬等48万0490円及びこれに対する催告後の日である平成27年11月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求した事案である。

   原審が控訴人の請求を棄却したため,これを不服とした控訴人が控訴を提起した。

 2 前提事実

   前提事実は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1(原判決2頁15行目から4頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

  (1) 原判決3頁24行目の「1万8000円」を「1万0800円」に改める。

  (2) 同3頁26行目の「通じて,」の次に「交通事故の加害者と保険契約を締結していた」を加える。

 3 争点及び当事者の主張

   争点及びこれについての当事者の主張は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2(原判決4頁6行目から5頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

  (1) 原判決4頁11行目の「仮払金」の次に「(損害賠償額が確定する前に暫定的に支払われる金員であり,後に精算される可能性がある。)であって,既払金とは異なるもの」を加え,14行目から15行目の「被告との間で明示の合意」を「被控訴人の明示の同意」に,同行目の「黙示の合意」を「黙示の同意」に,18行目の「このこと」を「控訴人訴訟代理人は控訴人との間で委任契約を締結する時点でLAC基準の存在を知らなかったから,被控訴人の上記主張」にそれぞれ改める。

  (2) 同4頁26行目の「被告が」を「被控訴人において控訴人が請求する」に改め,5頁9行目の「明示されている」の次に「ところ,控訴人が主張する92万1374円は,仮払金ではなく,既払金に当たり,上記経済的利益に含まれないものである」を加える。

第3 当裁判所の判断

   当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。

   その理由は,次のとおり補正し,後記2のとおり控訴人の当審における主張についての判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1及び2(原判決5頁12行目から8頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

 1 原判決の補正

  (1) 原判決5頁19行目の「超える」の次に「報酬契約をすることは差し支えないが,この基準により算定される保険金を超える」を加え,22行目の「実費」を「実費等」に改める。

  (2) 同6頁11行目,12行目及び14行目の各「被告」をいずれも「A」に改める。

  (3) 同6頁20行目の「平成27年12月2日」の次に「,控訴人訴訟代理人が請求している報酬金額には応じられず,保険金の金額について」を加え,23行目の「の保険金を支払う」を「とする」に改める。

  (4) 同7頁6行目の「296万2950円の」を「296万2950円とした上その」に改め,11行目の「保険金」の次に「請求権の」を加え,13行目の「承諾」を「同意」に,14行目から15行目の「被告が承諾」を「被控訴人において同意」に,19行目の「被告」を「A」にそれぞれ改め,21行目末尾に次のとおり加える。

    「なお,控訴人は,Aが控訴人に支払った92万1374円は,既払金ではなく,仮払金である旨主張するが,証拠(乙7,8)によれば,上記金員は,既払金であると認められ,控訴人訴訟代理人の委任事務処理によって控訴人が得た経済的利益には当たらないから,控訴人の上記主張は採用できない。」

  (5) 同7頁24行目の「当を得ない」の次に次のとおり加える。

    「(なお,控訴人は,この点に関し,控訴人訴訟代理人は控訴人との間で委任契約を締結する時点でLAC基準の存在を知らなかった旨主張するが,このことが上記合理性を左右するものではない。)」

 2 控訴人の当審における主張についての判断

   控訴人は,保険金請求権の要件は,文言上は,①保険者の同意,および②被保険者が実際に費用を支出したこととされているが,被保険者の賠償資力を保障するのが保険契約の本質的機能であり,被保険者に代わって保険者が支払うことを認めることによって責任保険による弁護士費用填補の機能が十分に発揮されることになるし,実務上も,被保険者が実際に支出していない場合にも,保険金の支払は行われているのであるから,上記②は不要であると解すべきであり,本件では上記①を満たしているから,控訴人の保険金請求権は発生する旨主張する。

   しかしながら,本件特約には,被控訴人に対する保険金請求権は,保険金請求権者が弁護士費用等を支出した時から発生し,これを行使することができるものと明記されているから,上記②は保険金請求権の要件であると解すべきである。

   確かに,実務上,被保険者が実際に支出していない場合にも,保険金の支払が行われることはあるが,これは保険者と被保険者との合意によるものと解されるから,上記の解釈を左右するものではなく,本件においてはそのような合意もない。

   なお,控訴人は,仮に,92万1374円を既払金として控除するとしても,控訴人が得られた経済的利益は204万1576円を下ることはないから,被控訴人は,少なくとも,これにLAC基準である16%を乗じた35万3276円の支払義務がある旨主張するが,上記の保険金請求権の要件を欠き,被保険者が実際に支出をしていない場合にも保険金を支払う旨の合意もないから,その請求に理由がないことに変わりはない。

   控訴人の主張は採用することができない。

 3 まとめ

   以上によれば,控訴人の請求は理由がない。

第4 結論

   よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

    東京高等裁判所第8民事部

        裁判長裁判官  阿部 潤

           裁判官  品田幸男

  裁判官中園浩一郎は,転補のため,署名押印することができない。

        裁判長裁判官  阿部 潤

弁護側の伝聞証拠について刑訴法328条により許容される証拠 最高裁平成18年判決

 

刑集判決であり、百選定番です。長期実刑みえみえのときは、争う材料をつくっておくのは弁護側にとってはよくあることです。

 刑事訴訟法判例百選 第9版 90事件 第10版 2017年 87事件 11版 85事件
太田52,67,169頁

現住建造物等放火,殺人,詐欺未遂被告事件

【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成17年(あ)第378号

【判決日付】 平成18年11月7日

【判示事項】 刑訴法328条により許容される証拠

【判決要旨】 刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。

【参照条文】 刑事訴訟法328

【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集60巻9号561頁

       裁判所時報1423号467頁

       判例タイムズ1228号137頁

       判例時報1957号167頁

       LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】 ジュリスト1368号123頁

       ジュリスト1380号136頁

       法学セミナー52巻2号122頁

       法曹時報60巻11号3694頁

       法律時報79巻11号105頁

       北大法学論集58巻4号2012頁

       刑事法ジャーナル13号98頁

 

       主   文

  本件上告を棄却する。

  当審における未決勾留日数中300日を本刑に算入する。

        理   由

  1 弁護人乘井弥生ほかの上告趣意のうち,刑訴法328条に関する判例違反をいう点について

 記録によれば,(1)第1審において,証人Aの証言の後,弁護人が,消防司令補B作成に係る「聞込み状況書」(以下「本件書証」という。)を証拠請求し,検察官の不同意意見を受けて,刑訴法328条による証拠採用を求めたが,第1審裁判所が,提示命令によりその内容を確認した後,同条の書面には当たらないとして請求を却下したこと,(2)本件書証には,上記Bが,上記Aから火災発見時の状況について聞き取ったとされる内容が記載されており,その内容には上記証言の内容とは異なる点が含まれていたこと,(3)本件書証は,聞き取りの相手に記載内容を読み聞かせ,署名・押印を求める形式になっておらず,実際上もそのような手続は取られていないことが認められる。

  原判決は,第1審裁判所がした上記証拠請求却下に関する訴訟手続の法令違反の主張に対して,刑訴法328条により許容される証拠は,現に証明力を争おうとする供述をした者の当該供述とは矛盾する供述又はこれを記載した書面に限られると解されるところ,本件書証は,上記Bの供述を記載した書面であるから,同条の許容する証拠には当たらないとして,第1審の証拠請求却下を是認する判断をした。

  所論は,原判決は,供述の証明力を争う証拠としてであれば刑訴法328条によりすべての伝聞証拠が許容される旨の判断を示した福岡高等裁判所昭和24年(つ)第908号同24年11月18日判決(高刑判決特報1号295頁)と相反する判断をしたものである旨主張する。

  確かに,所論引用の判例は,刑訴法328条が許容する証拠には特に限定がない旨の判断をしたものと解され,これに限定があるとして本件書証は同条で許容する証拠に当たらないとした原判決は,所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。

  しかしながら,刑訴法328条は,公判準備又は公判期日における被告人,証人その他の者の供述が,別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に,矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより,公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり,別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については,刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。

  そうすると,刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られるというべきである。

  本件書証は,前記Aの供述を録取した書面であるが,同書面には同人の署名押印がないから上記の供述を録取した書面に当たらず,これと同視し得る事情もないから,刑訴法328条が許容する証拠には当たらないというべきであり,原判決の結論は正当として是認することができる。

  したがって,刑訴法410条2項により,所論引用の判例を変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。

  2 同上告趣意のその余の主張について

 所論は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,再審事由の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。なお,所論にかんがみ調査しても,同法411条を適用すべきものとは認められない。

  よって,同法408条,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

  (裁判長裁判官・上田豊三,裁判官・藤田宙靖,裁判官・堀籠幸男,裁判官・那須弘平)

 

【「賛助金」名目で紹介料受け取り 「モームリ」運営会社社長ら逮捕(毎日新聞) - Yahoo!ニュース】
弁護士法違反容疑ですね。

弁護士懲戒処分の執行停止を認めた最高裁平成19年

行政法判例百選 第6版 206事件 第7版 199事件 50!2版 42事件

執行停止決定に対する許可抗告事件

最高裁判所第3小法廷決定/平成19年(行フ)第5号

平成19年12月18日

【判示事項】       弁護士に対する業務停止3月の懲戒処分によって生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が,行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」に当たるとされた事例

【判決要旨】       弁護士が業務停止3月の懲戒処分を受けた場合において,当該弁護士が当該業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任していたなどの事実関係の下では,上記処分によって当該弁護士に生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害は,行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」に当たる。

             (補足意見がある。)

【参照条文】       行政事件訴訟法25-2

             行政事件訴訟法25-3

             弁護士法56

             弁護士法57-1

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事226号603頁

             裁判所時報1450号26頁

             判例タイムズ1261号138頁

             判例時報1994号21頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】       別冊ジュリスト212号424頁

             法学セミナー53巻4号134頁

             民商法雑誌138巻6号798頁

 

       主   文

 

 本件抗告を棄却する。

 抗告費用は抗告人の負担とする。

 

       理   由

 

 抗告代理人上妻英一郎,同葭原敬の抗告理由(ただし,排除された部分を除く。)について

 相手方は,その所属する弁護士会から業務停止3月の懲戒処分を受けたが,当該業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任していたなど本件事実関係の下においては,行政事件訴訟法25条3項所定の事由を考慮し勘案して,上記懲戒処分によって相手方に生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が同条2項に規定する「重大な損害」に当たるものと認めた原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官田原睦夫の補足意見がある。

 裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。

 私は,法廷意見に賛同するものであるが,事案にかんがみ,下記のとおり補足意見を述べる。

 本件の基本事件は,相手方の所属弁護士会が相手方に対してした業務停止3月の懲戒処分に対して,相手方が申し立てた審査請求を棄却する裁決に対する取消請求訴訟であるところ,本件執行停止決定がされない場合には,同訴訟が通常の進行速度で審理されるときには,上記業務停止期間内に審理を終結することは著しく困難であり,同訴訟係属中に上記業務停止期間が経過し,相手方は上記懲戒処分の効力のすべてを受けることになる。

 このように懲戒処分の効力のすべてを受けてしまった後に,なお,訴えの利益が認められて(最高裁判所昭和56年(行ツ)第171号同58年4月5日第三小法廷判決・裁判集民事138号493頁参照),裁決取消しの判決がされても,相手方は,その取消判決それ自体により業務停止を免れるという利益を得ることはできず,別途損害賠償訴訟を提起して,その損害の回復を図らざるを得なくなる。

 ところで,弁護士業務は,その性質上,高い信用の保持と業務の継続性が求められるところ,多数の訴訟案件,交渉案件を受任している弁護士が数か月間にわたる業務停止処分を受けた場合,その間,法廷活動,交渉活動,弁護活動はもちろんのこと,顧問先に係る業務を始めとして一切の法律相談活動はできず,業務停止処分により,従前の依頼者は他の弁護士に法律業務を依頼せざるを得なくなるが,進行中の事件の引継ぎは容易ではない。また,懲戒を受けた弁護士の信用は大きく失墜する。そして,業務停止期間が終了しても,いったん他の弁護士に依頼した元の依頼者が再度依頼するとは限らず,また,失墜した信用の回復は容易ではない。

 業務停止処分を受けた弁護士が受ける上記の状況によって生ずる有形無形の損害は,後にその処分が取り消された場合に,金銭賠償によっては容易に回復し得ないものである。

 原決定によれば,相手方は業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任しているというのであるから,その点だけからしても,業務停止処分により,重大な影響を受けるものと認められ,それに加えて,弁護士としての業務活動のすべての停止をしなければならないことを考慮すると,本件業務停止処分は,相手方にとって,行政事件訴訟法25条2項に定める「処分の執行により生ずる重大な損害」に当たることは明らかであり,また,本件業務停止処分の性質上それを避けるための緊急の必要があるものといえる。

 抗告人は,本件懲戒処分の効力の停止を認めた原決定に対して,平成16年法律第84号による改正前の行政事件訴訟法25条2項に関する高等裁判所の裁判例を引用して原決定を非難するが,同項の執行停止の要件は,上記改正前は,「回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」とされていたのを,同法の改正検討作業の過程における,同要件の緩和を強く求める日本弁護士連合会(抗告人)の意見等を踏まえて,同改正により「重大な損害」と規定されるに至ったのであって,抗告人の主張は,同条の改正経緯等からして到底採り得ないものである。

 (裁判長裁判官・近藤崇晴,裁判官・藤田宙靖,裁判官・堀籠幸男,裁判官・那須弘平,裁判官・田原睦夫)

 

       抗告許可申立理由書

第1 重大な損害を避けるための緊急の必要性の要件について

 1 行政事件訴訟法第25条第2項は,重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは行政処分の執行を停止することができると定め,同条第3項は,重大な損害を生ずるか否かを判断するにあたり,損害の回復の困難の程度を考慮するものとし,損害の性質及び程度「並びに処分の内容及び性質」をも勘案するものとすると定めている。

 上記の点については「執行停止の制度は,ある行政処分につき取消訴訟が提起されても,処分の効力等はこれにより妨げられず処分の所期の目的を実現し得ることを前提として(同条1項),限定された要件の下に例外的にこれを停止しようとする制度であるから,前記「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっても,その執行等により維持される行政目的達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない程度に重大な損害を避ける緊急の必要性があるか否かが勘案されるべきであり,行訴法25条3項において考慮すべき事項とされている「処分の内容及び性質」も,このような見地からの検討をもその考慮事項の1つとする趣旨の規定であると解するのが相当である。」とする裁判例があり(東京地方裁判所平成17年(行ク)第67号執行停止申立事件に対する同裁判所平成17年4月26日決定(却下)),この判断は東京高等裁判所においても維持されている(東京高等裁判所平成17年(行ス)第47号事件に対する同裁判所平成17年7月15日決定(抗告棄却))。

 上記の裁判例は,いわゆる富士見産婦人科事件に関わった医師らの医師免許取消処分についてされたものであるところ,処分の内容及び性質について,具体的に検討し,「本件処分の効力を停止するということは,申立人に医師としての活動を許容するということを意味するところ,医師の業務は,国民の健康や安全に直結するものであって,適格性を欠く者がこのような業務に従事することは,本来許されない事柄なのであるから,執行停止の可否を判断するに当たっても,このような処分の内容及び性質を踏まえた考慮をする必要があり,執行停止の要件該当性については,相当程度の疎明が必要になるものと解すべきである。」とした上,「相手方は,申立人が,患者3名に対し,手術適応となるような病態がないにもかかわらず子宮及び両側付属器の摘出手術等を行なったこと,及び不妊症との確定診断を経ていない患者1名に対し,不妊症の治療である両側卵巣楔状切除術及び円靭帯短縮術を行なったことを非違行為(本件非違行為)として,本件処分を行なったものであるところ,これらの行為は,それが事実であるとすれば,いずれも医師としての適格性に重大な疑問を投げかけるものであるといわざるを得ない。」としている(上記の東京地方裁判所の決定。なお,この部分も上記の東京高等裁判所の決定で維持されている。)。

 ところが,原決定は,本件処分の内容及び性質を全く勘案していないので,法律上要求されている考慮事項を考慮していない点で違法であるし,抗告裁判所である高等裁判所の判例に相反する判断をしているということになる(民事訴訟法第337条第2項)。本件処分の内容及び性質について具体的に検討するならば次のとおりである。すなわち,本件処分は弁護士としての業務を3か月間停止するものであるが,もとより,この弁護士の業務を一定期間停止する処分は,弁護士法57条1項2号により予定されたものであり,また,懲戒処分の効力発生はその告知のときに生ずるものである(最大判昭42.9.27。民集21・7・1955)。従って,この懲戒処分が選択されるときは,弁護士としての業務が行い得ないことは当然法の予定するところであり,また,業務が行えない以上,それによって当該弁護士に一定の損害が生ずることも当然に法の予定するところである。従って,業務停止により弁護士の業務が行えないことから当然に生ずる損害を,重大な損害と解してその執行を停止することを法は予定していないというべきである。したがって,本件の場合,相手方(本案訴訟の原告,執行停止の申立人)は本件処分によって自己に発生するそれ以上の特別の損害について,その回復困難の程度,損害の性質及び程度も併せて相当程度に疎明し,「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当することを相当程度に疎明しなければならない。

 2 この点について,相手方は,業務を停止されることで経済的に困窮することなどを主張しているが,上述のとおり,弁護士の業務を停止することそのものを目的とする弁護士の業務停止の懲戒処分においては,そのような事実のみをもってしては重大な損害を避けるため緊急の必要があるということはできない。

 また,損害の回復困難の程度については,行政事件訴訟法第25条第2項改正前の裁判例であるが,東京高等裁判所昭和55年2月5日決定(同裁判所昭和54年(行タ)第20号。行政事件裁判例集31巻2号113頁)が,「申立人は右処分によりその告知を受けた時から4か月間業務を停止されるため,この間,新規の事件の受任はもとより,右各受任事件についても弁護士としての業務執行を禁じられたというべきであるが,しかし右処分の目的,性質,内容及び依頼者の利益を併せ考えれば,この間であっても,申立人はその依頼者本人が右期日の変更申請をなすのを補助し,或は右事件の代理人又は弁護人を辞任して依頼者に他の弁護士を紹介し,この者に右訴訟に関する法律事務を引きつがせ,更に処分告知前に行った仕事について報酬を受領することは差支えないと解されるのみならず,申立人は右4か月の業務停止期間満了後,右各事件の依頼者から再び委任を受けて右各訴訟につき法律事務を行うこともできるのである。従って,申立人がその職業とする弁護士業務を4か月間とはいえ停止されることにより,相当の不利益を受けることは明らかであるけれども,これが回復困難な程度にまで達しているとは到底いえない。」と判断しており,東京高等裁判所昭和60年1月25日決定(東京高等裁判所昭和59年(行タ)第58号。行政事件裁判例集36巻1号26頁)も「申立人は,前記業務停止期間(引用者注:6か月である。)中といえども,現受任事件の依頼者本人が訴訟事件の指定期日の変更申請をするのを補助すること,あるいは現受任事件の代理人を辞任して依頼者に他の弁護士を紹介し,その者に法律事務を引き継がせること,並びに,現受任事件に関し本件裁決告知前に行った法律事務及び現受任事件以外の処理済み事件(以下「処理済み事件」という。)について報酬を受領することは差し支えないと解されるばかりか,現受任事件を辞任した場合においても,前記業務停止期間満了後,その依頼者から再び委任を受けて法律事務を行なうことができるのである。……してみれば,本件裁決により申立人は困窮した経済状態に陥ることが予想されるが,いまだ,これをもって,回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとまでいうことはできない。」と判断しているところである。

 3 ところで前項で紹介した2つの東京高等裁判所決定においては,現在の受任事件について辞任の手続をすることについての言及がみられる。弁護士が事件を受任し,事件処理に着手しておきながら後に辞任する場合は,その事情を依頼者に説明しなければならないのは当然であるから,上記の2つの東京高等裁判所決定においても,自己が業務停止の懲戒処分を受けた事実を依頼者に告げることが当然想定されているものである。したがって,上記の2つの東京高等裁判所決定は,明示していないものの,自己が懲戒処分を受けたことを依頼者に告げることによって,依頼者との業務上の信頼関係に一定の影響が生じることがあるが,それだけでは回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるということはできないと判断したものと解される。回復困難な損害とは,本案に後日勝訴しても回復されないということであり,このような不利益は,本案に勝訴すれば回復可能なのであるから,上記高裁決定は当を得たものというべきであり,また,現行法の下でも,弁護士の業務停止の懲戒処分においては,それを依頼者に告げて辞任等の措置を取ることも当然に法の予定するところであるから,これを重大な損害であると解することも法の予定するところではないのである。

 ところが原決定は,業務停止の懲戒処分を受けたことを依頼者に告げることによって相手方の弁護士としての社会的信用,依頼者との業務上の信頼関係が損なわれ,その回復は困難であるから,重大な損害を避けるため緊急の必要があるとした。このような判断は法の予定することではなく,また,上記の2つの東京高等裁判所決定とも矛盾している。上記の2つの東京高等裁判所決定が存在するにもかかわらず,弁護士としての社会的信用の低下等をもって,現行の行政事件訴訟法第25条第2項の「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するものと判断してよいのか。要するに,本件は,法令の解釈に関する重要な事項を含むということができる(民事訴訟法第337条第2項)。

 4 さらにいえば,相手方は,業務停止処分を受けたことを依頼者等に告げることによって弁護士としての社会的信用が低下し,業務上の信頼関係が損なわれると主張するが,この点も弁護士の業務停止の懲戒処分においては,当然法の予定するところであり,特別の損害とは解し得ないところ,懲戒処分は間違っているので不服を申し立てているなどの事情説明も当然できるのであるから,社会的信用が低下するとか業務上の信頼関係が損なわれるものであるのかどうか,それが回復困難なものであるのかどうか疎明があるともいえない。それにも関わらず,原決定は,この点についての疎明があるとしたが,第1項で指摘した富士見産婦人科事件に関する東京高等裁判所の決定が相当程度の疎明を要求していることと矛盾している。よって,原決定は,この点でも抗告裁判所である高等裁判所の判例に相反する判断をしていることになる(民事訴訟法第337条第2項)。

 5 以上を整理すれば,次のとおりである。

 第1に,原決定には,本件処分の内容,性質という法律が要求する考慮事項を考慮していない違法があるし,弁護士の業務停止の懲戒処分は,その弁護士の業務を行い得なくすることを目的とするものであるから,業務停止に当然に伴う損害を特別な損害とは解し得ないものであるところ,原決定は,「「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっても,その執行等により維持される行政目的達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない程度に重大な損害を避ける緊急の必要性があるか否かが勘案されるべきであり,行訴法第25条第3項において考慮すべき事項とされている「処分の内容及び性質」も,このような見地からの検討をもその考慮事項の1つとする趣旨」であるとする抗告裁判所としての東京高等裁判所の決定に反する判断をしている。

 第2に,上述のとおり弁護士の業務停止の懲戒処分においては,業務停止に当然に伴う損害は,行政事件訴訟法第25条第2項の特別な損害とは解し得ないものであるところ,自己が懲戒処分を受けたことを依頼者に告げることによって,依頼者との業務上の信頼関係に一定の影響が生じることがあるが,それだけでは回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるということはできないと判断した2つの東京高等裁判所の決定があるのに,懲戒処分を受けたことを依頼者に告知すれば弁護士としての社会的信用の低下等を招くので「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法第25条第2項)に該当すると判断できるのかという点で,本件は,法令の解釈に関する重要な事項を含むものである。

 第3に,原決定は,弁護士としての社会的信用の低下や依頼者との業務上の信頼関係の喪失,それが回復困難であることなどを,極めて安易に疎明ありと判断しており,「執行停止の可否を判断するに当たっても,このような処分の内容及び性質を踏まえた考慮をする必要があり,執行停止の要件該当性については,相当程度の疎明が必要になるものと解すべきである。」とする抗告裁判所としての東京高等裁判所の決定に反する判断をしている。

第2 本案について理由がないとみえるときの要件について〈省略〉

第3 結語〈省略〉

弁護人の同意だけでは刑訴法326条1項の適用ができない場合についての大阪高裁平成8年判決

 

原審判決の証拠の標目のひとつでも違法があれば破棄がねらえ、控訴審での未決勾留日数の法定算入がねらえますから控訴のときにしっておかねばならないテクニックです。

 

刑訴法百選の8版には採用されています。現行のものではどうでしょうか。

刑事訴訟法判例百選 第9版 89事件 第10版 2017年 86事件 11版A41

 

 

覚せい剤取締法違反被告事件

【事件番号】 大阪高等裁判所判決/平成8年(う)第653号

【判決日付】 平成8年11月27日

【判示事項】 被告人が公訴事実を否認している場合には、検察官請求証拠につき弁護人が関係証拠に同意しても、被告人の否認の陳述の趣旨を無意味に帰せしむるような内容の証拠については、弁護人の同意の意見のみにより被告人がこれら証拠に同意したことになるものではないと解されるとして、刑訴法326条1項の適用を誤った違法があることを理由に原判決を破棄した事例

【参照条文】 刑事訴訟法326

       刑事訴訟法379

       刑事訴訟法397

【掲載誌】  判例時報1603号151頁

【評釈論文】 ジュリスト臨時増刊1135号190頁

 

       主   文

 

  原判決を破棄する。

  被告人を懲役一年四月に処する。

  原審における未決勾留日数中二〇日を右刑に算入する。

  押収してある覚せい剤白色結晶一袋(当庁平成八年押第一二七号の1)を没収する。

 

        理   由

  本件控訴の趣意は、弁護人永野彰作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用するが、論旨は、事実誤認及び量刑不当の主張である。

  論旨に対する判断に先立ち職権をもって案ずるに、記録によると、本件公訴事実は、「第一 法定の除外事由がないのに、平成八年二月二四日ころから同年三月四日ころまでの間、大阪府下若しくはその周辺において、フェニルメチルアミノプロパン又はその塩類を含有する覚せい剤若干量を自己の身体に摂取し、もって、覚せい剤を使用し、第二 みだりに、同月四日午後一〇時八分頃、大阪市西成区萩之茶屋一丁目七番七号路上において、フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶約〇・三一一グラムを所持したものである。」との覚せい剤取締法違反の事実であるところ、

(1)被告人は、原審一回公判期日における被告事件に対する陳述において、公訴事実第一につき、覚せい剤を使用した事実はない、公訴事実第二記つき、覚せい剤を所持していたことは間違いないが、それが覚せい剤であるとの認識はなかった旨陳述し、弁護人は、被告人の述べたところと同じであると述べた。(3)次いで検察官は、冒頭陳述において、公訴事実第二に関する被告人の弁明内容につき、大要、「被告人は、警察官から職務質問され所持品の提示を求められた際、本件覚せい剤が在中するポリ袋を足元に投棄するのを警察官らに現認され、覚せい剤所持で現行犯人逮捕された。被告人は逮捕後の弁解録取や勾留質問の際には本件覚せい剤所持の事実を認めていたが、勾留された後は、付近の公衆電話台の上にあった千円札数枚を拾い上着ポケットに入れていたが、本件覚せい剤はその二つ折れになっていた千円札に挟まっていたもので、警察官に職務質問を受けた際に始めて気付いたと弁解し、覚せい剤所持の犯意を否認している」ものであることを明らかにした。(3)弁護人は各公訴事実についての検察官請求証拠に全部同意し、原審裁判所は検察官請求の全証拠を採用して取調べ、弁護人及び検察官双方から被告人質問がなされ、そして、原判決は、これら証拠に基づいて各公訴事実を認定し、被告人を有罪としたことが明らかである。

ところで、被告人が公訴事実を否認している場合には、検察官請求証拠につき弁護人が関係証拠に同意しても、被告人の否認の陳述の趣旨を無意味に帰せしめるような内容の証拠については、弁護人の同意の意見のみにより被告人がこれら証拠に同意したことになるものではないと解される。

 本件の場合、被告人は原判示第二の覚せい剤所持の事実につき、覚せい剤であることの認識はなかった旨具体的に争っており、前記の弁解内容に照らし、被告人の否認の陳述の趣旨を無意味に帰せしめるような内容の証拠、すなわち、公訴事実第二の覚せい剤所持の事実に関する証拠の中、被告人に覚せい剤であるとの認識があった旨の立証に資する司法巡査作成の現行犯人逮捕手続書(原審検察官請求証拠番号1)、被告人を現行犯逮捕した警察官であるA及びBの各検察官調書(同番号8、9、10)については、右弁護人の同意の意見によって被告人の同意があったとすることはできず、従って、被告人の意思に沿うものか否か確認することなく、直ちにこれら証拠を同意証書として取調べ事実認定の資料とした原判決には、刑訴法三二六条一項の適用を誤った違法があるものと言うべきである。そして、これら証拠を除いては原判示第二事実は認定することができず、且つ、原判決は原判示第一及び第二の各事実を併合罪の関係にあるものとして一個の刑を科しているから、原判決は全部破棄を免れない(なお、被告人は原判示第一の覚せい剤自己使用の事実についても、前記のように否認しているが、具体的主張のないその否認態様等にかんがみ、弁護人が、同意した被告人の尿に関する鑑定書(同番号18)を含む関係証拠は、右否認の陳述の趣旨を無意味に帰せしめるような内容の証拠ではないから、弁護人の同意の意見のみで、被告人の同意があったものとしたことに違法・不当はない。)。

 よって、刑訴法三九七条一項、三七九条により原判決を破棄し、当審における事実取調べの結果をも総合して同法四〇〇条但書により更に次のとおり判決する。

 一 (罪となるべき事実)

  第一の事実は、原判決が認定した第一の事実と同一であるから、これを引用し、第二として、

  みだりに、同月四日午後一〇時過ぎ頃、大阪市西成区萩之茶屋一丁目七番七号先路上において、フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶約〇・三一一グラム(当庁平成八年押第一二七号の1はその鑑定残量)を所持したものである。

 二 (証拠の標目)《略》

 三 (弁護人の主張について)

  弁護人の控訴趣意にかんがみ、当裁判所の事実認定について、若干の補足説明をする。

  被告人は、判示第一の覚せい剤自己使用の事実につき、覚せい剤を使用したことはないというが、関係証拠によると、原判決が補足説明一において説示するところと同一の理由により、右事実はこれを認定するに十分である。

  更に、被告人は、判示第二の覚せい剤所持の事実につき、前記のように、覚せい剤所持の事実は認めながら、その所持の認識がなかった旨弁解する。しかし、右覚せい剤所持の事実は、西成警察署の警察官である当審証人A及び同Bの各証言など関係証拠により認められる、被告人が本件覚せい剤所持の事実により現行犯逮捕されるに至った経過・状況など、ことに、被告人がAら警察官らにより職務質問され所持品の提示を求められた際、それまで被告人の上着右ポケットに入れて所持していた本件覚せい剤(ポリ袋に在中のもの)を密かに取り出して足元に投棄し、これを警察官らにより現認されている事実などに照らし、明らかであるというべきである。被告人は、前記のように、本件覚せい剤は付近の公衆電話台で数枚の千円札などと共に拾ったが、職務質問を受けるまで知らなかったというが、右弁解は、右電話の設置状況などとも矛盾し、それ自体不自然、不合理であり、信用できない。

  右のとおりであって、前掲各証拠によれば、判示各事実を認めるに十分である。

 四 (法令の適用)

  被告人の判示第一の所為は覚せい剤取締法四一条の三第一項一号、一九条に、判示第二の所為は同法四一条の二第一項にそれぞれ該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役一年四月に処し、同法二一条を適用して原審の未決勾留日数中二〇日を右刑に算入し、押収してあるポリ袋入り覚せい剤白色結晶一袋(当庁平成八年押第一二七号の1)は、判示第二の罪にかかる覚せい剤で犯人の所持するものであるから、覚せい剤取締法四一条の八第一項本文によりこれを没収し、原審及び当審の訴訟費用については、刑訴法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととし、主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官 田崎文夫 裁判官 久米喜三郎)

  裁判官小倉正三は、長期出張のため、署名押印できない。

 (裁判長裁判官 田崎文夫)

 

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