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総合格闘家の男性が,約1年半の間に合計6回,スポーツジムでの練習時に負傷したとして,共済組合に対し,共済契約に基づく共済金を請求したのに対し,いずれも負傷事故の発生が認められず,又は「激しい運動中の過度の肉体の行使」に該当し「不慮の事故」に当たらないとして,請求を棄却した事例

 

 これしかスパーリング中の事故に関する判例はないようです。

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保険金請求事件(第1事件)、共済金等請求事件(第2事件)

【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成27年(ワ)第36573号、平成28年(ワ)第17122号

【判決日付】 平成29年4月24日

【判示事項】 1 総合格闘家の男性が,約1年半の間に合計6回,スポーツジムでの練習時に負傷したとして,共済組合に対し,共済契約に基づく共済金を請求したのに対し,いずれも負傷事故の発生が認められず,又は「激しい運動中の過度の肉体の行使」に該当し「不慮の事故」に当たらないとして,請求を棄却した事例

2 同男性が,自身の共済金請求に対して,共済組合が不正請求を疑い,著しく不当かつ過度な調査を強要したことについて,共済契約上の債務不履行または不法行為(注意義務違反)に基づき慰謝料を請求したのに対して,同組合にかかる違反はないとして請求を棄却した事例

 

【参照条文】 保険法2

       保険法5-1

       民法415

       民法709

【掲載誌】  判例タイムズ1455号217頁

       主   文

  1 原告の請求をいずれも棄却する。

  2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

        事実及び理由

 

  第1 請求

  1 第1事件

  第1事件被告は,原告に対し,218万2000円及びこれに対する平成28年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  2 第2事件

  第2事件被告は,原告に対し,218万2000円及びこれに対する平成28年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  第2 事案の概要等

  1 事案の概要

  本件は,被告らそれぞれとの間で,共済契約を締結した原告が,被告らそれぞれに対し,①自宅やトレーニングジムにおいて,事故により負傷したとして,各共済契約に基づき,共済金合計118万2000円と,②共済金請求時の被告らによる調査が原告のプライバシーを侵害するものであり,精神的苦痛を被ったとして,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として慰謝料100万円の合計218万2000円及びこれらに対する各訴状送達の日の翌日である第1事件被告については平成28年2月4日から,第2事件被告については同年6月8日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

  2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠(特に明記しない限り,枝番の表記は省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

  (1) 当事者(甲1,弁論の全趣旨)

  ア 原告は,昭和57年*月*日生まれの男性で,総合格闘家である。

  イ 第1事件被告は組合員の生活の共済を図る事業等を目的とする法人であり,第2事件被告は会員である生活協同組合の構成員たる組合員の生活の共済を図る事業等を目的とする法人である。

  (2) 本件各共済契約の締結(甲6,7)

  ア 第1事件被告との間の共済契約の締結等

  原告は,平成8年11月1日,第1事件被告との間で,以下のとおりの共済契約を締結し,平成16年6月1日に,月掛4000円の加入コースに変更し,その後,契約は,毎年自動更新された(以下「本件共済契約1」という。)。

  共済種類  生命共済

  加入者   原告

  加入者番号 〈省略〉

  保障期間  平成8年11月1日から平成9年7月31日まで(その後,特に申出や掛金滞納による失効がない場合,毎年自動更新され,更新後は,事業年度に合わせ毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間とする。)

  イ 第2事件被告との間の共済契約の締結等

  原告は,平成16年7月1日,第2事件被告との間で,以下のとおりの共済契約を締結し,その後,毎年自動更新された(以下,本件共済契約1と合わせて「本件各共済契約」という。)。

  共済種類  生命共済(生命共済プラス型)

  加入者   原告

  加入者番号 〈省略〉

  加入コース 月掛4000円

  保障期間 平成16年7月1日から平成17年3月31日まで(その後,特に申出や掛金滞納による失効がない場合,毎年自動更新され,更新後は,事業年度に合わせ毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間とする。)

  (3) 本件各共済契約の内容(甲6,7)

  本件各共済契約には,支払事由を通院,支払原因を不慮の事故(交通事故を除く。)とする場合の共済金の支払基準として,概要,以下のとおりの定めがあった。

  ア 対象

  保障期間内に発生した事故を直接の原因とした病院,診療所等での治療のための入・通院(通院は事故のみ)が対象となる。

  事故の場合の通院に関する共済金支払対象は,事故の日からその日を含めて180日以内の実通院であり,1回につき14日以上実通院した場合に,通院の初日から対象となる。通院の共済金額は,90日までの実通院(90日分)について,通院の初日から,1日当たり3000円である。

  イ 「事故」

  「事故」とは,下記ウの「不慮の事故」をいう。

  ウ 「不慮の事故」

  「不慮の事故」とは,急激かつ偶発的な外来の事故(ただし,疾病又は体質的な要因を有する者が軽微な外因により発症し又はその症状が増悪したときは,その軽微な外因は急激かつ偶発的な外来の事故とみなさない。)で,かつ,昭和53年12月15日行政管理庁告示第73号に定められた分類項目中下記のものとし,分類項目の内容については「厚生省大臣官房統計情報部編,疾病,傷害および死因統計分類提要,昭和54年度版」によるものとする。

  そして,本件に関係のある分類項目は,16.「その他の不慮の事故」であり,「努力過度および激しい運動(かっこ内略)中の過度の肉体行使,レクリエーション,その他の活動における過度の運動」(中略)は除外する旨定められている。

  エ 「病院,診療所等」

  「病院,診療所等」とは,次に掲げるものをいう。

 (ア)医療法に定める日本国内にある病院または診療所(以下略)

 (イ)柔道整復師法に定める日本国内にある施術所

 (ウ)(略)

  オ 「通院」「通院」とは,医師(柔道整復師法に定める柔道整復師を含む。以下同じ)による治療(柔道整復師による施術を含む,以下同じ)が必要であり,かつ,自宅等での治療が困難なため病院,診療所等において医師による治療を入院によらないで受けることをいう。なお,平常の生活もしくは業務に支障がない程度に回復した時以降の通院,または医師が通院しなくても差し支えないと認定した時以降の通院は,「通院」に当たらない。

  (4) 原告の被告らに対する共済金の請求(甲8ないし23,弁論の全趣旨)

  原告は,被告らに対し,下記のとおりの不慮の事故が発生し,通院したとして,共済金の支払をそれぞれ請求した(なお,請求時期は,下記本件事故1ないし4につき平成26年12月頃,本件事故5,6につき平成27年3月頃である。)。

          記

  ① 平成25年5月8日の事故(以下「本件事故1」という。)

  原告の自宅において,椅子から立ち上がろうとした際に,右大腿部に痛みが生じ,右大腿部挫傷の傷害を負った。平成25年5月8日から同年8月13日まで,C整骨院(以下「本件整骨院」という。)に通院した(実通院日数47日)。

  ② 平成25年9月17日の事故(以下「本件事故2」という。)

  原告が,格闘技の練習を行っている「D東京店」(以下「本件ジム」という。)において,練習中,足を踏み込んだ際に左股関節に痛みが生じ,左股関節捻挫の傷害を負った。平成25年9月17日から平成26年3月13日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数80日)。

  ③ 平成26年4月7日の事故

  本件ジムにおいて,走っていた際につまずき,右足関節捻挫の傷害を負った。平成26年4月7日から同年6月30日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数61日)。

  なお,原告は,本件訴訟において,原告が作成して第1事件被告宛てに提出した事故状況報告書(甲12)の記載は誤りであったとして,真実は,同日,練習中,サンドバッグを右足で蹴った際に,右足関節捻挫の傷害を負ったと主張している(以下「本件事故3」という。)。

  ④ 平成26年7月1日の事故(以下「本件事故4」という。)

  本件ジムにおいて,ランニング中,汗で滑って転倒し,右手を床についた際,右手関節捻挫の傷害を負った。平成26年7月1日から同年10月28日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数90日)。

  ⑤ 平成26年9月24日の事故(以下「本件事故5」という。)

  本件ジムにおいて,格闘技の投げの練習中,転倒し,右肩鎖関節脱臼の傷害を負った。平成26年9月24日から同年11月29日まで,E整形外科(以下「本件整形外科」という。)(実通院日数1日)及び本件整骨院(実通院日数26日。なお,本件事故4の通院期間との重複通院日は算入していない。)に通院した。

  ⑥ 平成26年12月1日の事故(以下「本件事故6」といい,本件事故1ないし6を合わせて「本件各事故」という。)

  本件ジムにおいて,格闘技の練習中,左膝を捻り,左膝内側側副靱帯損傷の傷害を負った。平成26年12月1日から平成27年3月26日まで,本件整形外科(実通院日数2日)及び本件整骨院(実通院日数89日。なお,2日間は本件整形外科への通院日と重なっている。)に通院した。

  (5) 原告による説明確認書の提出(乙2)

  原告は,平成27年1月8日,被告らが調査を委託した調査員による面談調査の際,当該調査員に対し,本件事故1ないし4に係る共済金請求について,「私の周りにいる方々に迷惑をかけたくないので,上記事故4件全ての共済金請求を取り下げ致します。」と記載した説明確認書を提出した。

  (6) 共済金支払請求に対する原告と第1事件被告とのやりとり

 本件各事故に関する共済金支払請求について,原告と第1事件被告との間で,以下のような書面のやりとりがされた(甲26ないし38)。

  ア 平成27年5月25日付け「受任通知書兼共済調査現状のご説明」と題する書面(甲26)

  第1事件被告は,被告ら代理人弁護士を通じ,平成27年5月25日頃,原告に対し,本件事故5及び6に係る共済金支払請求について,原告が,従前,本件事故1ないし4の共済金支払請求を取り下げたという経緯や,事故発生の頻度等に照らし,本件事故5及び6の偶発性及び通院の必要性等に疑問があるとして,共済金の支払に応じることはできないことを通知した。

  イ 平成27年5月29日付け「受任通知」と題する書面(甲27)

  上記アの書面に対し,原告は,原告代理人弁護士を通じ,本件事故1ないし4についても共済金支払請求をしている旨指摘した。

  ウ 平成27年6月9日付け「ご通知」と題する書面(甲28)

  第1事件被告は,被告ら代理人弁護士を通じ,平成27年6月9日頃,原告代理人弁護士に対し,本件事故5について1か月間の通院(実通院治療日数22日分),本件事故6について2日分の通院を認定し共済金を支払うことを提案するとともに,本件事故1ないし4について共済金請求の意思があるか再度確認した。

  エ 平成27年7月31日付け「通知書」と題する書面(甲30)

  原告は,原告代理人弁護士を通じ,本件事故5及び6についての提案に同意せず,本件事故1ないし4についても共済金を請求することを前提に,本件各事故について審査の上認定するよう求めた。

  オ 平成27年8月25日付け「ご通知(3)」と題する書面(甲33)

  第1事件被告は,被告ら代理人弁護士を通じ,平成27年8月25日頃,本件事故5及び6について,事故発生現場である本件ジム,本件整骨院,本件整形外科,本件ジムで一緒に練習を行っていた者,原告の就学先,原告の両親等に対し,再調査を実施するとして,原告に対し調査の同意を求めた。

  カ 平成27年8月25日付け「通知書」と題する書面(甲34)

  原告は,その後,原告代理人弁護士を通じ,原告の就学先や両親に対する調査等は必要性がなく,不当に広範にわたる調査に応じることを強いるのは,事実上,共済金請求の断念を迫るに等しく,極めて不当なものであるなどとして,同意を拒絶した。

  (7) 原告の被告ら以外の保険会社に対する保険金の支払請求及び受領(乙8)

  原告は,F株式会社に対し,原告を被保険者とする傷害保険契約(カード付帯・掛捨団体契約)に基づき,以下のとおり不慮の事故が発生し,通院したとして,保険金の支払をそれぞれ請求し,保険金の支払を受けた。

  ア 平成24年11月7日の事故

  本件ジムにおいて,ランニングマシンで走っていた際に,肉離れを起こした。平成25年5月7日に6万3000円の支払を受けた。

  イ 平成25年5月1日の事故

  出先において,トレーニング中に痛み,左の腿を痛めた。転倒したとかひねったではない。事故性がないので保険を使用せずに事案完了。

  ウ 平成25年5月8日の事故

  本件ジムにおいて,ランニングマシンを使用中,スピードについて行けず転倒,右脛打撲。平成25年11月12日に3万8000円の支払を受けた。

  エ 平成25年7月31日の事故

  出先において,トレーニング中足が痛み,右のふくらはぎを痛めた。転倒したとかではない。事故性がないので保険を使用せずに事案完了。

  オ 平成25年8月8日の事故

  本件ジムにおいて,マットの上で走っていた時,段差につまずき転倒。左ヒザ打撲。平成25年11月12日に4万5000円の支払を受けた。

  カ 平成25年11月5日の事故

  G区のスポーツジムにおいて,マット上でサーキットをしていた。ジャンプした時にふくらはぎに痛みを感じた。平成26年5月14日に1万2600円の支払を受けた。

  キ 平成26年1月7日の事故

  G区のスポーツジムにおいて,マット上でサーキットをしていた。走って切り返すときに痛めた。平成26年5月14日に2万1600円の支払を受けた。

  ク 平成26年3月17日の事故

  G区のスポーツジムにおいて,マット上でサーキットをしていた。別の人と組んだ時にその人のヒザが足にぶつかった。平成26年5月14日に1万0800円の支払を受けた。

  ケ 平成26年4月6日の事故

  スポーツジムにおいて,ランニング中につまずいてしまって足をくじいてしまった。平成26年7月16日に3万1800円の支払を受けた。

  コ 平成26年7月1日の事故

  G区のスポーツセンターにおいて,走っており,転んでしまった際に突いた右手首を痛める。平成26年11月12日に5万4000円の支払を受けた。

  3 争点及びそれに関する当事者の主張

  (1) 本件事故1に係る共済金支払請求の可否(争点1)

  【原告の主張】

  ア 原告のようなプロの格闘家は,トレーニングを日々繰り返しており,いつも身体が疲弊している状態にあるから,椅子から立ち上がろうとしたときに右大腿部挫傷,いわゆる肉離れを起こしたとしても不自然ではなく,本件事故1は「不慮の事故」に当たる。

  イ 原告は,平成25年5月8日から同年8月13日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数47日)。

  ウ よって,被告らに対し,共済金14万1000円の各支払を求める。

  【被告らの反論】

  原告は,プロの格闘家であるから,椅子から立ち上がろうとしただけで,何も身体に異常のない状態から47日もの実通院を要する傷害を負ったとは到底信用できない。

  原告は,本件事故1発生日のわずか5日前に、キックボクシングの試合に出場し,3ラウンドの試合時間一杯戦い抜き,その結果判定負けしており,その試合中に右大腿部を痛めたと考えるのが自然である。

  したがって,本件事故1の負傷原因は,原告が申告する原因ではないため,「不慮の事故」は存在せず,共済金支払請求権は発生しない。

  (2) 本件事故2に係る共済金支払請求の可否(争点2)

  【原告の主張】

  ア トレーニングジムでのランニングが,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たらないことは明らかであって,本件事故2は「不慮の事故」に当たる。

  イ 原告は,平成25年9月17日から平成26年3月13日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数80日)。

  原告のようなプロの格闘家は,まさに試合への出場によりファイトマネーを得て生計を立てており,一旦出場を約束した試合を欠場することとなれば大会の主催者からの信用を失い,プロとして仕事を継続していくことが困難となる。そのため,原告は,無理を押して,試合に出場したのであり,それをもって,平常の生活若しくは業務に支障がなかった,とするのは早計である。

  ウ よって,被告らに対し,共済金24万円の各支払を求める。

  【被告らの反論】

  ア 本件事故2が「不慮の事故」に該当するとの主張は争う。本件事故2は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たり,「不慮の事故」に当たらない。

  イ 原告は,本件事故2の発生からわずか12日後及びその約2か月半後に,総合格闘技の試合に出場している。

  仮に,本件事故2による左股関節の負傷があったとしても,原告の平常の生活若しくは業務に支障がなかったことは明らかであるから,左股関節の治療のための通院は,「通院」に該当しない。原告は,本件事故2のわずか12日後の試合に出場して,左股関節に高度の負荷をかけ,さらに痛めたことは明らかであって,当該試合前までの通院のみが共済金支払の対象となるところ,事故からの通院は5日であるから,14日以上の実通院がなく,共済金支払基準を満たさない。

  ウ したがって,本件事故2に係る共済金支払請求権は発生しない。

  (3) 本件事故3に係る共済金支払請求の可否(争点3)

  【原告の主張】

  ア サンドバッグを蹴る動作は,さして危険を伴うものではない。また,本件事故3発生当時,原告は,試合の2週間前をきっており,怪我を防止する必要があり,激しく蹴るようなことはしていないから,本件事故3は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たらないから,「不慮の事故」に当たる。

  それでも,原告は,試合前の調整に入る前の追い込みの練習時期の疲労がたまっていたため,サンドバッグを蹴るという負荷の軽い練習で怪我をしてしまったものと考えられる。

  イ 原告は,平成26年4月7日から同年6月30日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数61日)。

  ウ よって,被告らに対し,共済金18万3000円の各支払を求める。

  【被告らの反論】

  ア 本件事故3が「不慮の事故」に該当するとの主張は争う。本件事故3は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たり,「不慮の事故」に当たらない。

  イ 原告は,本件事故3の発生からわずか12日後に,総合格闘技の試合に出場している。

  仮に,本件事故3による右足の負傷があったとしても,原告の平常の生活若しくは業務に支障がなかったことは明らかであるから,右足の治療のための通院は,「通院」に該当しない。原告は,本件事故3のわずか12日後の試合に出場して,右足関節に高度の負荷をかけ,さらに痛めたことは明らかであって,当該試合前までの通院のみが共済金支払の対象となるところ,事故からの通院は8日であるから,14日以上の実通院がなく,共済金支払基準を満たさない。

  ウ したがって,本件事故3に係る共済金支払請求権は発生しない。

  (4) 本件事故4に係る共済金支払請求の可否(争点4)

  【原告の主張】

  ア 本件事故4は,「不慮の事故」に当たる。

  イ 原告は,平成26年7月1日から同年10月28日まで,本件整骨院に通院した(実通院日数90日)。

  原告は,プロの格闘家として,負傷した場合でも,負傷部位に支障がないトレーニングを早期に再開し,練習を継続するのは当然のことである。また,負傷部位が完治していない段階においても,多少の無理は押しつつ,当該部位をかばいながら当該部位に関係する練習を再開するのが常である。

  したがって,本件事故4発生後にトレーニングをしていたことをもって,直ちに,平常の生活若しくは業務に支障がない程度に回復していたとはいえない。

  ウ よって,被告らに対し,共済金27万円の各支払を求める。

  【被告らの反論】

  ア 本件事故4が「不慮の事故」に該当するとの主張は争う。本件事故4は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たり,「不慮の事故」に当たらない。

  イ 原告は,本件事故4発生から約3か月後の平成26年9月24日に,本件ジムにおいて投げの練習をしており,格闘技のトレーニングをすることが可能な状況であったことから,少なくとも同日においては,原告の平常の生活若しくは業務に支障がなかったことは明らかであるし,それ以前においても,原告は,本件ジムにてトレーニングをしていたのであるから,平常の生活若しくは業務に支障がなかったといえる。そのため,右手関節の治療のための通院は,「通院」に該当しない。

  ウ したがって,本件事故4に係る共済金支払請求権は発生しない。

  (5) 本件事故5に係る共済金支払請求の可否(争点5)

  【原告の主張】

  ア 投げの練習は,総合格闘技における基本動作の練習であるから,怪我をするようなものではない。ただ,原告は,受け身を取り損ねて怪我をしてしまったものであり,「激しい運動中の過度の肉体の行使」には当たらないから,「不慮の事故」に当たる。

  イ 原告は,平成26年9月24日から同年11月29日まで,本件整形外科(実通院日数1日)及び本件整骨院(実通院日数26日)に通院した。

  上記(4)【原告の主張】イと同様,本件事故5発生後にトレーニングをしていたことをもって,直ちに,平常の生活若しくは業務に支障がない程度に回復していたとはいえない。

  ウ よって,被告らに対し,共済金8万1000円の各支払を求める。

  【被告らの反論】

  ア 本件事故5が「不慮の事故」に該当するとの主張は争う。本件事故5は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たり,「不慮の事故」に当たらない。

  イ 原告は,本件事故5発生以降も,本件ジムにおいて,従前と変わらずトレーニングをしており,また,本件事故発生から約2か月後の平成26年12月1日には,本件ジムにおいて投げの練習をしており,本件事故5発生後間もなく,原告の平常の生活若しくは業務に支障がない程度に回復していたといえるから,右肩の治療のための通院は,「通院」に該当しない。

  ウ したがって,本件事故5に係る共済金支払請求権は発生しない。

  (6) 本件事故6に係る共済金支払請求の可否(争点6)

  【原告の主張】

  ア 投げの練習の一種であるタックルの練習は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たらないから,本件事故6は「不慮の事故」に当たる。

  イ 原告は,平成26年12月1日から平成27年3月26日まで,本件整形外科(実通院日数2日)及び本件整骨院(実通院日数89日)に通院した。

  上記(4)【原告の主張】イと同様,本件事故6発生後にトレーニングをしていたことをもって,直ちに,平常の生活若しくは業務に支障がない程度に回復していたとはいえない。

  ウ よって,被告らに対し,共済金26万7000円の各支払を求める。

  【被告らの反論】

  ア 本件事故6が「不慮の事故」に該当するとの主張は争う。本件事故6は,「激しい運動中の過度の肉体の行使」に当たり,「不慮の事故」に当たらない。

  イ 原告は,本件事故6発生以降も,本件ジムにおいて,従前と変わらずトレーニングをしており,本件事故6発生後間もなく,原告の平常の生活若しくは業務に支障がない程度に回復していたといえるから,左膝の治療のための通院は,「通院」に該当しない。

  ウ したがって,本件事故6に係る共済金支払請求権は発生しない。

  (7) 被告らの債務不履行責任又は不法行為責任の有無(争点7)

  【原告の主張】

  ア 原告は,本件事故5について相談した第1事件被告の担当者から,過去の分も含めて請求してみるようアドバイスを受けたことから,本件各事故について共済金の支払を請求したにすぎない。

  ところが,被告らは,原告の共済金請求に対し,合理的な根拠なく不正請求を疑い,医療調査及び経済調査と称して著しく不当,過度な調査協力を原告に強要し,応じなければ共済金を支払わないという態度を取った。

  また,被告らは,原告を共済金の不当請求者と決めつけて,本件各共済契約の合意解約書面を送り付けており,20年以上も被告らに対して掛金を支払い続けてきた契約者に対する態度とはおよそ信じられず,不誠実である。

  そもそも,原告は,本件各事故の共済金請求に当たり,被告ら担当者に架電して問い合せ,「格闘技の怪我でもおります。」,「整骨院の通院でもおります。」などと説明されたため,請求に至ったものであり,原告の請求が不正請求であるはずがない。

  上記のような被告らの対応は,本件各共済契約上の債務不履行又は不法行為に当たる。

  イ 原告は,上記のような被告らの対応により,精神的苦痛を被った,これを慰謝するための慰謝料は,被告らそれぞれに対し100万円を下らない。

  【被告らの反論】

  被告らには,本件各共済契約上の債務不履行又は不法行為による責任はない。

  第1事件被告は,以下のとおり,原告の対応を踏まえて交渉,調査しており,原告に対し,不当,過度な調査を要求していない。

  ア 原告は,平成26年12月15日,第1事件被告に対して,本件事故1ないし4に関する共済金を請求してきたところ,約1年2か月の期間内において間断なく発生した複数事故による請求という稀有な事例であった。しかも,各事故がその前の事故の治療終了時と近接した時期に発生しており,事故内容も類似し,捻挫や挫傷という一般的に長期かつ頻回の治療になるケースが少ない傷病名であるのに,通院期間が長期にわたり,通院回数が頻回となっているなど,事故の偶発性や通院の必要性等に疑義が生じた。そこで,第1事件被告は,損害状況等の確認調査を入れることとし,調査会社に調査を依頼した。

  以下略

法律上のスポーツ 弁護士 岡本 哲 法律雑学 スポーツ法

質問 スポーツ基本法ではスポーツはどのように定義されていますか。

回答 スポーツ基本法前文で、スポーツは心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神劇な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動、としています。

 この定義からはゆるスポーツ、囲碁・将棋・チェス、eスポーツがはずれるのではないかという問題が生じます。世界チェス連盟はIOCの認証団体ですし、2022年のアジア大会ではeスポーツが競技として正式採用されます。国際的な定義とのずれについて解消すべきか、あえて残すべきかが問われることになります。

スポーツ基本法前文

スポーツは、世界共通の人類の文化である。

 スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動であり、今日、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠のものとなっている。スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利であり、全ての国民がその自発性の下に、各々の関心、適性等に応じて、安全かつ公正な環境の下で日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならない。

 スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、他者を尊重しこれと協同する精神、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培い、実践的な思考力や判断力を育む等人格の形成に大きな影響を及ぼすものである。

 また、スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、地域の一体感や活力を醸成するものであり、人間関係の希薄化等の問題を抱える地域社会の再生に寄与するものである。さらに、スポーツは、心身の健康の保持増進にも重要な役割を果たすものであり、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠である。

 スポーツ選手の不断の努力は、人間の可能性の極限を追求する有意義な営みであり、こうした努力に基づく国際競技大会における日本人選手の活躍は、国民に誇りと喜び、夢と感動を与え、国民のスポーツへの関心を高めるものである。これらを通じて、スポーツは、我が国社会に活力を生み出し、国民経済の発展に広く寄与するものである。また、スポーツの国際的な交流や貢献が、国際相互理解を促進し、国際平和に大きく貢献するなど、スポーツは、我が国の国際的地位の向上にも極めて重要な役割を果たすものである。

 そして、地域におけるスポーツを推進する中から優れたスポーツ選手が育まれ、そのスポーツ選手が地域におけるスポーツの推進に寄与することは、スポーツに係る多様な主体の連携と協働による我が国のスポーツの発展を支える好循環をもたらすものである。

  このような国民生活における多面にわたるスポーツの果たす役割の重要性に鑑み、スポーツ立国を実現することは、二十一世紀の我が国の発展のために不可欠な重要課題である。

 ここに、スポーツ立国の実現を目指し、国家戦略として、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。


アマリカンフットボールの日本大学対関西学院大学の試合のさいのラフプレーについていろいろ報道がされていますが、スポーツでも法律問題はおこります。

大阪弁護士会では5月19日にスポーツの相談企画をやっていますね。岡山でもやってほしいものです。


http://soudan.osakaben.or.jp/?p=309

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