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給与所得か一時所得か 錯誤無効はいつまで主張可能か

金子宏『租税法 23版』弘文堂・2019年・242頁では給与所得ではなく一時所得とみるべきではないかと指摘されています。金子先生の本は2018年11月段階の執筆ですので刑集にのったことまではフォローされていません。

 

錯誤無効はどうも更正期限までに主張しなければいけないことになりますが、これは納税者にとって過酷だし、本件に関してはほんとふんだりけったりのようにおもわれます。憲法29条違反のように思われますが特に主張はなされていないようです。

 

【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成29年(行ヒ)第209号

【判決日付】 平成30年9月25日

【判示事項】 給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限の経過後に当該源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことの可否

【判決要旨】 給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について、法定納期限が経過したという一事をもって、当該源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとはいえない。

【参照条文】 所得税法183-1

       国税通則法36-1

       民法95

【掲載誌】  最高裁判所民事判例集72巻4号317頁

       裁判所時報1709号1頁

       判例タイムズ1456号46頁

       判例時報2397号3頁

       金融法務事情2109号66頁

       LLI/DB 判例秘書登載

 

【評釈論文】 税経通信73巻14号170頁

       主   文

  本件上告を棄却する。

  上告費用は上告人の負担とする。

        理   由

  上告代理人近藤正昭ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

 1 本件は,上告人が,その理事長であったAに対し,同人の上告人に対する借入金債務の免除をしたところ,所轄税務署長から,上記の債務免除に係る経済的な利益がAに対する賞与に該当するとして,給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたため,被上告人を相手に,上記各処分(ただし,上記納税告知処分については審査請求に対する裁決による一部取消し後のもの)の取消しを求める事案である。

  2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

  (1) 上告人は,青果物その他の農産物及びその加工品の買付けを主たる事業とする権利能力のない社団である。

  Aは,昭和56年,上告人の専務理事に就任し,平成6年3月17日から同22年6月17日までの間,上告人の理事長の地位にあった。

  (2) Aは,昭和56年頃から,上告人及び金融機関から繰り返し金員を借り入れ,これを有価証券の取引に充てるなどしていたが,いわゆるバブル経済の崩壊に伴い,借入金の弁済が困難であるとして上告人に対し借入金債務の減免を求めた。これに対し,上告人は,平成2年12月以降,Aに対し度々その利息を減免したものの,その元本に係る債務の免除には応じなかった。

  (3)ア Aは,平成16年7月23日,株式会社Bとの間で,借入金のうち6500万円を分割弁済した場合にはその余の支払義務の免除を受ける旨を合意して,同社に対して6500万円を分割弁済し,同17年7月31日,同社から,借入金残元本4382万1143円等の債務の免除を受けたが(以下,この債務の免除による経済的な利益を「平成17年債務免除益」という。),その後は後記(4)の債務の免除を受けた同19年12月まで,Aの資産に増加はなかった。

  イ Aは,同人の平成17年分の所得税の更正処分等を不服として異議申立てをしたところ,所轄税務署長は,平成19年8月6日,上記異議申立てに対する決定をし,その理由中において,平成17年債務免除益について平成26年6月27日付け課個2-9ほかによる改正前の所得税基本通達36-17(以下「本件旧通達」という。)の適用がある旨の判断を示した。本件旧通達は,その本文において,債務免除益のうち,債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては,各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しないものとする旨を定めていた。

  (4) Aの上告人に対する借入金債務の額は,平成19年12月10日当時,55億6323万0934円であったところ,上告人は,A及び同人の元妻から,その所有し又は共有する不動産を総額7億2640万9699円で買い取り,その代金債務と上記借入金債務とを対当額で相殺するとともに,Aに対し,上記相殺後の上記借入金債務48億3682万1235円を免除した(以下,この債務の免除を「本件債務免除」といい,これによりAが得た経済的な利益を「本件債務免除益」という。)。

  (5) 所轄税務署長は,平成22年7月20日付けで,上告人に対し,本件債務免除益がAに対する賞与に該当するとして,本件債務免除等に係る平成19年12月分の源泉所得税につき,納付すべき税額を18億3550万6244円とする納税告知処分及び納付すべき加算税の額を1億8355万円とする不納付加算税の賦課決定処分をした。

  (6) 上告人は,前記(3)イの異議申立てに対する決定において,Aについて「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難と認められる場合」に当たるとして本件旧通達が適用されたため,本件債務免除益についても本件旧通達の適用により課税の対象とならないと考え,Aとその旨確認の上,本件債務免除をしたのであるから,本件債務免除益が納税告知処分の対象になるのであれば,上告人とAが確認した前提条件に錯誤があり,これは要素の錯誤であるから,本件債務免除は無効である旨主張している。

  3 原審は,上記事実関係等の下において,本件債務免除益は所得税法28条1項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与に該当するとした上で,Aの資産の状況に照らし,本件債務免除によりAが得た経済的な利益は12億8479万1053円であり,Aに係る平成19年12月分の源泉所得税の額は4億8573万4304円であるとし,上告人の上記2(6)の主張につき次のとおり判断して,同(5)の各処分(ただし,納税告知処分については審査請求に対する裁決による一部取消し後のもの)中,納税告知処分のうち上記源泉所得税の額を超えない部分及び不納付加算税の賦課決定処分のうち同部分に係る部分(以下「本件各部分」という。)は適法であるとした。

  申告納税方式の下では,同方式における納税義務の成立後に,安易に納税義務の発生の原因となる法律行為の錯誤無効を認めて納税義務を免れさせることは,納税者間の公平を害し,租税法律関係を不安定にすることからすれば,法定申告期限を経過した後に当該法律行為の錯誤無効を主張することは許されないと解される。源泉徴収制度の下においても,源泉徴収義務者が自主的に法定納期限までに源泉所得税を納付する点では申告納税方式と異なるところはなく,かえって,源泉徴収制度は他の租税債権債務関係よりも早期の安定が予定された制度であるといえることからすれば,法定納期限の経過後に源泉所得税の納付義務の発生原因たる法律行為につき錯誤無効の主張をすることは許されないと解すべきである。

  4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

  給与所得に係る源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為が無効であり,その行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたときは,税務署長は,その後に当該支払の存在を前提として納税の告知をすることはできないものと解される。そして,当該行為が錯誤により無効であることについて,一定の期間内に限り錯誤無効の主張をすることができる旨を定める法令の規定はなく,また,法定納期限の経過により源泉所得税の納付義務が確定するものでもない。したがって,給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限が経過したという一事をもって,当該行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとする理由はないというべきである。

  5 以上と異なる見解の下に,上告人が法定納期限の経過後に本件債務免除の錯誤無効を主張することは許されないとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。しかしながら,上告人は,本件債務免除が錯誤により無効である旨の主張をするものの,前記2(5)の納税告知処分が行われた時点までに,本件債務免除により生じた経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず,したがって,上告人の主張をもってしては,本件各部分が違法であるということはできない。そうすると,本件各部分が適法であるとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,結局,採用することができない。

  よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官山崎敏充の補足意見がある。

  裁判官山崎敏充の補足意見は,次のとおりである。

  私は法廷意見に賛成するものであり,本件における上告人の錯誤の主張は,本件債務免除益については本件旧通達が適用され給与等の収入金額に算入されるべきではないとして納税告知処分の適法性を争うかたわら,もしその主張が容れられないのであれば本件債務免除は錯誤により無効であるというにとどまり,上記納税告知処分が行われた時点までに本件債務免除による経済的成果がその錯誤無効に基因して失われたことについては何らの主張もしていないのであるから,同処分を違法ならしめる主張としてしんしゃくすることができないことも法廷意見の指摘するとおりと考えるが,そもそも上告人の主張に係る錯誤の成否自体について相当の疑問を感じるところであるので,この種の錯誤無効の主張があった場合における錯誤の成否の審理方法について,若干の意見を補足しておきたい。

  本件各部分が適法とされるのは,Aの資産の状況に照らし,本件債務免除により免除された債務の全額である48億3682万1235円のうち12億8479万1053円については,給与等の収入金額に算入することができることによるものである。上告人は,本件債務免除益の全部について,本件旧通達の適用により課税の対象とならないと考えていたとして,本件債務免除に錯誤があるというのであるが,これは,一般的には課税がされる可能性を認識しつつも,Aの資産の評価に関し,現実の評価額よりも低く認識していたため,本件債務免除益の全部について課税の対象とならないと考えていたというものにほかならず,結局のところ,Aの資産の状況やその評価について誤った認識を有していたというにすぎないものである。

  しかしながら,本件債務免除がされた時に,Aが上告人の理事長であったことからすると,Aが有していた資産の状況について,上告人において正しく認識することが困難であったということはできない道理であるし,その資産の評価方法について,自ら考える評価方法とは異なる評価方法が相当とされることもあり得ることは当然に認識し,また,認識すべきものであるから,そもそも本件債務免除に関し要素の錯誤があったといえるかについては種々疑問が提起され得るのであり,十分な検討に基づく慎重な判断が求められるところであろう。

  一般に課税処分等の適否を争う訴訟において,当該処分の原因となった法律行為の錯誤無効の主張がされ,その成否を審理判断するに際しては,事案に応じて,錯誤の対象,表意者の認識,重過失の有無等を認定された具体的事実に基づいて慎重に検討すべきものであることを指摘しておきたい。

  (裁判長裁判官 山崎敏充 裁判官 岡部喜代子 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一 裁判官 宮崎裕子)

各法人税法違反、消費税法違反、地方税法違反

【事件番号】 大阪地方裁判所/平成29年(わ)第4074号

【判決日付】 平成31年3月12日

【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

  被告人A株式会社を罰金2,000万円に,被告人Bを懲役2年及び罰金3,000万円に処する。

  被告人Bにおいてその罰金を完納することができないときは,金10万円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。

  被告人Bに対し,この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。

  訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

 

        理   由

 

 (罪となるべき事実)

  被告人A株式会社(以下「被告会社」という。)は,大阪市a区bc丁目d番e号に本店を置き,仏壇仏具の販売等を営む資本金の額1,000万円の株式会社,被告人B(以下,単に「被告人」という。)は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたもの,Cは被告会社の経理事務を担当していたものであるが,被告人は,

  第1 C及びD株式会社の代表取締役を務めていたEと共謀の上,被告会社の業務に関し,Dに対する架空の業務委託費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上,別表1記載のとおり,「事業年度」欄記載の平成22年9月1日から平成27年8月31日までの5事業年度における実際の①所得金額,②これに対する法人税額,③税額控除後の差引法人税額が,それぞれ「実際額」欄記載のとおりであったにもかかわらず,「確定申告書提出日」欄記載の各日に,いずれも大阪市浪速区難波中3丁目13番9号所在の所轄浪速税務署において,同税務署長に対し,④所得金額,⑤これに対する法人税額,⑥税額控除後の差引法人税額が,それぞれ「申告額」欄記載の金額である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,「ほ脱法人税額」欄記載のとおり,上記各事業年度における実際の差引法人税額(③)と上記申告に係る差引法人税額(⑥)との差額である法人税合計1億7,053万4,400円を免れ(別紙1ほ脱税額計算書,同2修正損益計算書参照(掲載省略)),

  第2 Cと共謀の上,被告会社の業務に関し,架空の課税仕入れを計上するなどの方法により,別表2記載のとおり,「課税期間」欄記載の平成22年9月1日から平成27年8月31日までの5課税期間における実際の①消費税の課税標準額,②これに対する消費税額,③これから控除されるべき消費税額,④納付すべき消費税額,⑤中間納付税額,④から⑤を差し引いた後の⑥納付消費税額,⑦地方消費税の課税標準額となる消費税額,⑧納付すべき地方消費税の譲渡割額,⑨中間納付譲渡割額及び⑧から⑨を差し引いた後の⑩納付譲渡割額が,それぞれ「実際額」欄記載のとおりであったにもかかわらず,「確定申告書提出日」欄記載の各日に,いずれも前記浪速税務署において,同税務署長に対し,⑪消費税の課税標準額,⑫これに対する消費税額,⑬これから控除されるべき消費税額,⑭納付すべき消費税額,⑮中間納付税額,⑭から⑮を差し引いた後の⑯納付消費税額(別表2番号4の課税期間については⑰中間納付還付税額),⑱地方消費税の課税標準額となる消費税額,⑲納付すべき地方消費税の譲渡割額,⑳中間納付譲渡割額及び⑲から⑳を差し引いた後の(21)納付譲渡割額(別表2番号4の課税期間については(22)中間納付還付譲渡割額)が,それぞれ「申告額」欄記載の金額である旨の虚偽の消費税及び地方消費税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,「ほ脱消費税額」欄及び「ほ脱地方消費税譲渡割額」欄記載のとおり,上記各課税期間における実際の納付消費税額(⑥)と上記申告に係る納付消費税額(⑯)との差額(別表2番号4の課税期間については実際の納付消費税額(⑥))である消費税合計3,170万0,600円及び上記各課税期間の実際の納付譲渡割額(⑩)と上記申告に係る納付譲渡割額((21))との差額(別表2番号4の課税期間については実際の納付譲渡割額(⑩))である地方消費税の譲渡割合計814万3,000円を免れるとともに,別表2番号4の課税期間については,上記虚偽の消費税及び地方消費税確定申告書を提出することにより,同税務署長をして,上記申告に係る消費税の中間納付還付税額81万5,300円(⑰)及び地方消費税の中間納付還付譲渡割額24万6,600円((22))を被告会社に還付することを決定させた上,平成26年11月25日,大阪市f区gh丁目i番j号所在の株式会社F銀行G支店に開設された被告会社名義の普通預金口座に還付加算金6,400円を加算した合計106万8,300円を振込入金させ,もって不正の行為により,上記申告に係る消費税の中間納付還付税額81万5,300円及び地方消費税の中間納付還付譲渡割額24万6,600円の還付を受けた(別紙3ほ脱税額計算書,同4修正控除対象仕入税額計算書参照(掲載省略))。

 (事実認定の補足説明)

 第1 本件の主要な争点

  被告会社が判示(別紙2及び別紙4(掲載省略))の架空業務委託費,架空販売手数料,架空販売促進費及び架空広告宣伝費を計上したことについては争いがないところ,本件の主要な争点は,平成25年8月期の有限会社Hに係る3,000万円の架空広告宣伝費の計上に関して,被告人がほ脱の故意を有していたか否かである(その他の架空業務委託費等を計上したことについて被告人が犯意を有していたことには争いがない。)。

  なお,D,有限会社I,株式会社Jに対する架空経費相当額の一部が被告人に還流されたか否か等についても検察官と弁護人の主張は対立しているが,還流の有無が納税義務者である被告会社やその代表者である被告人の刑事責任を特段左右するものとはいえないから,この点について判断する必要性は認められない。

 第2 弁護人の主張

  弁護人は,被告会社の営業部長であったKの証言やCの証言は信用できず,KとCが協力をすれば被告人に気付かれないままにHに対する支払いをすることが十分可能であるなどと主張して,Hに対する架空広告宣伝費の計上について被告人にほ脱の故意があったとすることには合理的な疑いが残ると主張する。

 第3 裁判所の判断

  1 振替伝票等について

 (1) Hに対し,「(略)『24時間TV』美術セット」「企画制作・運営管理費」名目で,3,150万円から振込手数料525円を控除した3,149万9,475円を振り込む旨の振替伝票(以下「本件振替伝票」という。)が存在しているところ,本件振替伝票の「承認印」欄には,被告会社代表者である被告人名義の銀行印(以下「本件銀行印」という。)による印影が顕出されている。本件銀行印が被告人しか暗証番号を知らない金庫に保管されていたなどの本件銀行印の管理状況等に照らせば,上記印影は,被告人が自ら本件銀行印を押印したことによって顕出されたと認められる。

  そして,被告人が,被告会社の経営を実質的に一人で担っており,口座振込が必要になった場合には,振替伝票に預金払出票,振込票及び請求書等の根拠資料が添付されて被告人の決裁が仰がれていたこと,被告会社とHの間では本件振替伝票に基づく取引が行われるまで取引を行ったことがなかったこと,本件振替伝票記載の名目が,24時間テレビの美術セットなどという特殊なもので,その金額も3,000万円と高額であったこと,被告人は,24時間テレビの舞台セットを実際に制作したのはL塗装店のMであり,その金額は300万円程度であると認識していたこと等に照らせば,遅くとも被告人が本件振替伝票に押印した時までには,Hに対する架空経費計上を認識していたと認められる。

  (2) これに対し,被告人は,本件振替伝票には記憶がないなどと述べ,弁護人は,被告人が気付かないまま本件振替伝票等に押印していた可能性があるなどと主張する。しかしながら,前記(1)記載の各事情からすれば,被告人が本件振替伝票の内容を確認せずに本件銀行印を押印したとは考え難いし,本件振替伝票及びこれに対応する振込受付書等を見てもCが数字を付け足したり書きかえたりするなどの改ざんをして被告人の決裁金額よりも過大な資金を移動させたような跡はうかがわれず,平成20年頃以降は被告会社の資金を横領した形跡のないCが本件振替伝票等だけ被告人を欺いて被告人の認識と異なる内容のものを作成する動機も見当たらないこと等からすれば,Cが被告人の認識と異なる内容の振替伝票及びその根拠資料を添付するなどの方法を用いて,被告人に本件振替伝票に押印させたとは考え難い。以上によれば,被告人が気付かないまま本件振替伝票等に押印していた可能性は乏しく,弁護人の主張は採用できない。

  2 K証言について

 (1) K証言の要旨

  Kは,概要,①被告人が,当初,3,000万円の20%の割合でMにお金をもうけさせてあげたいという話をしていたこと,②Mから断りの連絡があった後,Kが,被告人に対し,Mから断られたことを伝えてHを使うことを提案し,被告人が了承したこと,その後KがHのNに架空請求書を発行することを依頼したこと,③平成25年8月15日に,被告会社からHに振り込まれた約3,150万円のうち3,000万円をKが受領した上で被告会社の事務所に持っていき,喫茶店において被告人に対して現金2,400万円を手渡したと証言する。

  (2) K証言の信用性

  ア K証言は,被告人が,遅くとも本件振替伝票に押印した時までには,Hに対する架空経費計上を認識していたとの事実(前記1(1)参照)や,被告会社からH名義の口座に約3,150万円が振り込まれた当日に3,000万円が出金されてKに渡った事実とよく整合し,加えて,Mが24時間テレビの舞台セットの製作について高額での受注を断念し,結局300万円で引き受けたとのM証言ともその限度で整合する上,それ自体の内容にも特段不自然な点はない。したがって,前記(1)のK証言は信用でき,被告人が,KからのHを用いた脱税の提案を了承し,平成25年8月15日に,被告会社からHに振り込まれた約3,150万円のうち現金2,400万円をKから手渡されたとの事実が認められる。

  イ(ア) これに対し,弁護人は,Kの証言のうち被告人に2,400万円を渡した場所に関する証言及び3,000万円の現金を二つに分けた経過に関する証言に変遷があるため,K証言は信用できないなどと主張する。しかしながら,K証言は,Kが平成25年8月15日に被告人に2,400万円を渡したことについては一貫している。弁護人が主張する証言の変遷は,瑣末な点の変遷にすぎず,これらの点に変遷があったからといって,Kが平成25年8月15日に被告人に2,400万円を渡したとする証言の根幹部分の信用性が失われるとはいえない。この点についての弁護人の主張は採用できない。

  (イ) また,弁護人は,平成25年8月15日には,多忙な大供養会が開催されているため,その合間を縫って喫茶店に赴くことは考え難いと主張するが,本件全証拠を精査しても,被告人及びKが同日に喫茶店等で現金の授受をすることが不可能であったといえるような事情はなく,多忙な大供養会が開催されていたことを前提としても,被告人及びKが現金の授受をすることは十分可能であったというべきである。弁護人の主張する事情は,前記(1)のK証言の信用性を失わせるほどの事情とはいえない。

  3 結論

  以上によれば,被告人は,平成25年8月期のHに係る3,000万円の架空広告宣伝費の計上に関して,ほ脱の故意を有していたものと認められる。

 (法令の適用)

  【被告会社】

 罰条

  判示第1の各所為

    別表1の各番号ごとに,いずれも法人税法163条1項,平成26年法律第10号附則164条により同法による改正前の法人税法159条1項

  判示第2の別表2番号1から3まで及び5の各所為のうち

  各消費税ほ脱の点

     別表2の各番号ごとに,いずれも消費税法67条1項,64条1項1号

   各地方消費税譲渡割ほ脱の点

     別表2の各番号ごとに,いずれも地方税法72条の95第6項,1項1号

  判示第2の別表2番号4の所為のうち

  消費税ほ脱及び同不正受還付の点

     包括して消費税法67条1項,64条1項(消費税ほ脱の点は同項1号に,消費税不正受還付の点は同項2号に,それぞれ該当するが,両者は包括一罪と解されるため,刑法10条により,犯情の重い消費税ほ脱の罪の刑で処断)

   地方消費税譲渡割ほ脱及び同不正受還付の点

     包括して地方税法72条の95第6項,1項(地方消費税譲渡割ほ脱の点は同項1号に,地方消費税譲渡割不正受還付の点は同項2号に,それぞれ該当するが,両者は包括一罪と解されるため,刑法10条により,犯情の重い地方消費税譲渡割ほ脱の罪の刑で処断)

 科刑上一罪の処理

  判示第2の別表2各番号について

   各番号ごとに,いずれも刑法54条1項前段,10条(別表2の各番号の所為ごとに1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,それぞれ1罪として,いずれも犯情の重い消費税ほ脱の罪の刑で処断)

 併合罪の処理  刑法45条前段,48条2項(各罪所定の罰金の多額を合計)

  【被告人】

 罰条

  判示第1の各所為

    別表1の各番号ごとに,いずれも刑法60条,平成26年法律第10号附則164条により同法による改正前の法人税法159条1項

  判示第2の別表2番号1から3まで及び5の各所為のうち

  各消費税ほ脱の点

     別表2の各番号ごとに,いずれも刑法60条,消費税法67条1項,64条1項1号

   各地方消費税譲渡割ほ脱の点

     別表2の各番号ごとに,いずれも刑法60条,地方税法72条の95第6項,1項1号

  判示第2の別表2番号4の所為のうち

  消費税ほ脱及び同不正受還付の点

    包括して刑法60条,消費税法67条1項,64条1項(消費税ほ脱の点は同項1号に,消費税不正受還付の点は同項2号に,それぞれ該当するが,両者は包括一罪と解されるため,刑法10条により,犯情の重い消費税ほ脱の罪の刑で処断)

   地方消費税譲渡割ほ脱及び同不正受還付の点

    包括して刑法60条,地方税法72条の95第6項,1項(地方消費税譲渡割ほ脱の点は同項1号に,地方消費税譲渡割不正受還付の点は同項2号に,それぞれ該当するが,両者は包括一罪と解されるため,刑法10条により,犯情の重い地方消費税譲渡割ほ脱の罪の刑で処断)

 科刑上一罪の処理

  判示第2の別表2各番号について

   各番号ごとに,いずれも刑法54条1項前段,10条(別表2の各番号の所為ごとに1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,それぞれ1罪として,いずれも犯情の重い消費税ほ脱の罪の刑で処断)

 刑種の選択   いずれも懲役刑及び罰金刑の併科

 併合罪の処理  刑法45条前段

  懲役刑につき 刑法47条本文,10条(犯情の最も重い判示第1の別表1番号3の罪の刑に法定の加重)

  罰金刑につき 刑法48条2項(各罪所定の罰金の多額を合計)

 労役場留置   刑法18条

 刑の執行猶予  刑法25条1項(懲役刑につき)

  【被告会社及び被告人】

 訴訟費用の負担 刑事訴訟法181条1項本文,182条

 (量刑の理由)

  5年度分のほ脱税額は,法人税については合計約1億7,000万円と高額であり,消費税及び地方消費税については合計約4,000万円(不正受還付に係る金額を含む。)と少ない額ではない。法人税のほ脱率は5年度分平均約77%と高率で,消費税及び地方消費税のほ脱率(不正受還付に係る金額を含む。)も平均約58%と低くない。また,本件脱税に係る所得等の秘匿工作は,実体のない会社の銀行口座に金を振り込んで引き出すなど,資金移動の外観を作出するような巧妙な手法によるものが中心であり,悪質である。

  被告人の供述を踏まえて検討しても,動機等に酌量すべき事情は見当たらない。なお,前記のとおり,架空経費相当額の被告人への還流の有無や金額は,被告会社や被告人の刑事責任を特に軽減するような事情ではない。

  弁護人は,本件ほ脱所得の大半を占めるDに対する架空業務委託費の計上について,かつて被告会社の実権を握っていた被告人の元夫にその振込額が流れており,その計上は被告人が元夫の要求に応じざるを得なかったためであるから,刑事責任を被告人のみに問うのは酷であるなどと主張する。しかしながら,被告人が元夫の要求に応じざるを得なかったとまでいえるような事情はうかがわれず,最終的には,納税義務者である被告会社において名実共に経営者を務めていた被告人が,自らの意思で本件脱税に及んでいるのであるから,元夫の存在が本件脱税に一定の影響を与えたとしても,酌量すべき事情とはいえない。

  また,弁護人は,Jに対する架空販売手数料については,同社を設立したKが被告会社で実際に稼働していた期間の限度では全くの架空とは言い切れないなどと主張する。しかしながら,Kは稼働していたことの対価として業務委託費を受領しており,販売手数料の中に稼働していたことの対価は含まれていないというべきであるから,弁護人の主張はその前提を欠く。

  他方,被告人は,被告人個人の資産を用いるなどして被告会社につき本件各本税を全額納付したことが認められる。また,当公判廷において,本件脱税を一部の犯意を除いていずれも認めて反省の態度を示し,延滞税・加算税の支払いのために被告会社の財産を換価する準備もしている。これらは被告人及び被告会社にとって有利に考慮すべき事情である。

  以上の事情に加え,被告会社の現状等も踏まえて,被告会社の罰金刑を主文のとおりとするほか,被告人にも懲役刑に併せて相応の罰金刑を科し,被告人の懲役刑についてはその執行を猶予するのが相当と判断した。

 (求刑 被告会社につき罰金2,000万円,被告人につき懲役2年6月及び罰金4,300万円)

   平成31年3月18日

     大阪地方裁判所第12刑事部

         裁判長裁判官  増田啓祐

            裁判官  棚村治邦

            裁判官  水谷 翔

法人税法違反幇助を認めた秋田地裁平成30年判決

 

法人税法違反幇助,地方法人税法違反幇助,消費税法違反幇助,地方税法違反幇助被告事件

 

 

【事件番号】 秋田地方裁判所判決/平成30年(わ)第95号

 

【判決日付】 平成30年12月26日

 

【判示事項】 被告人は,分離前被告会社(土木工事業者)が法人税等を免れた際,架空の工事を理由とする請求書を分離前被告会社に郵送させるなどして,前記各脱税を幇助したとして法人税法違反幇助罪等に問われた事案。裁判所は,分離前被告会社のほ脱税額合計額は1億4050万円余りと高額であり,被告人は多額の架空外注費計上に加担しており,脱税への寄与度は高く,脱税協力報酬も相当高額な金員を受け取っており,報酬目的で本件各犯行に及んだ動機に酌むべき点はなく,被告人の刑事責任は相応に重いとしたが,各犯行を認め,各犯行に関わった会社経営から退いていることなどを考慮し,懲役8月・罰金1000万円・執行猶予3年に処した事例

 

【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 

  被告人を懲役8月及び罰金1000万円に処する。

  その罰金を完納することができないときは,金5万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

  この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。

 

        理   由

 

 (罪となるべき事実)

   被告人は,株式会社Aの代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが,分離前相被告人B(以下「分離前相被告人B」という。)および分離前相被告人C(以下「分離前相被告人C」という。)が別紙正犯事実記載の各犯行に及んだ際,その情を知りながら

 第1 平成26年2月頃,千葉市中央区(以下略)の株式会社A事務所において,Dに架空の工事を理由とする株式会社A作成名義の分離前相被告人株式会社E(以下「分離前相被告会社」という。)に対する請求書(請求金額2084万2500円)を作成させた上,これを秋田県由利本荘市(以下略)所在の分離前相被告会社事務所に郵送させるなどして,分離前相被告人B及び同Cの別紙正犯事実1(1)及び2(1)各記載の犯行を容易にし

 第2 別表1-1記載のとおり,平成27年4月頃から同年8月頃までの間,前記株式会社A事務所において,3回にわたり,前記Dに架空の工事を理由とする株式会社A作成名義の分離前相被告会社に対する請求書(請求金額合計7290万円)を作成させた上,これを前記分離前相被告会社事務所に郵送させるなどして,分離前相被告人B及び同Cの別紙正犯事実1(2)及び2(2)各記載の犯行を容易にし

 第3 別表1-2記載のとおり,平成27年12月頃から平成28年3月頃までの間,千葉市中央区(以下略)所在の□□103号の株式会社A事務所において,4回にわたり,前記Dに架空の工事を理由とする株式会社A作成名義の分離前相被告会社に対する請求書(請求金額合計1億2722万4000円)を作成させた上,これを前記分離前相被告会社事務所に郵送させるなどして,分離前相被告人B及び同Cの別紙正犯事実1(3)及び2(3)各記載の犯行を容易にし

 もってそれぞれ法人税法違反,地方法人税法違反,消費税法違反及び地方税法違反を幇助した。

 (証拠の標目)(括弧内の甲,乙を付した数字は,証拠等関係カード中の検察官請求証拠番号を示す。)

 判示事実全部について

 ・被告人の公判供述

・分離前相被告人B,同Cの各公判供述

・分離前相被告会社代表者Fの公判供述

・被告人の検察官調書(乙17)

・分離前相被告人B(乙2ないし4),同C(乙6ないし9)の各検察官調書

・G(甲13),H(甲14,15),I(甲16),J(甲17),K(甲18),L(甲19),M(甲20),N(甲29),D(甲30)の各検察官調書

・捜査報告書(甲4,21,25,26)

・外注費調査書(甲5)

・雑給調査書(甲6)

・減価償却費(製造原価)調査書(甲7)

・少額資産費(製造原価)調査書(甲8)

・減価償却費(販管費)調査書(甲9)

・支払手数料調査書(甲10)

・少額資産費(販管費)調査書(甲11)

・事業税認定損調査書(甲12)

・閉鎖事項全部証明書(甲31),電話聴取書(甲32)

・控除対象仕入税額調査書(甲36)

・未払消費税等調査書(甲38)

・履歴事項全部証明書(乙1)

 判示第1の事実について

 ・証明書(甲1,33)

 判示第2の事実について

 ・証明書(甲2,34)

 判示第3の事実について

 ・証明書(甲3,35)

 別紙正犯事実について

 ・分離前相被告人Oの公判供述

・分離前相被告人Oの検察官調書(乙11,14)

・Pの検察官調書(甲22,23)

・捜査報告書(乙12,13)

 (法令の適用)

 罰条

   判示第1及び第2の各所為のうち

    法人税違反幇助の点    いずれも刑法65条1項,62条1項,平成26年法律第10号附則164条により同法による改正前の法人税法159条1項

     消費税法違反幇助の点   いずれも刑法65条1項,62条1項,消費税法67条1項,64条1項1号

     地方税法違反幇助の点   いずれも刑法65条1項,62条1項,地方税法72条の95第6項,1項1号

   判示第3の所為のうち

    法人税法違反幇助の点   刑法65条1項,62条1項,平成29年法律第4号附則140条により同法による改正前の法人税法159条1項

     地方法人税法違反幇助の点 刑法65条1項,62条1項,地方法人税法33条1項

     消費税法違反幇助の点   刑法65条1項,62条1項,消費税法67条1項,64条1項1号

     地方税法違反幇助の点   刑法65条1項,62条1項,地方税法72条の95第6項,1項1号

 科刑上一罪の処理

  判示第1及び第2について

   いずれも刑法54条1項前段,10条(1罪として犯情の最も重い法人税法違反幇助の罪の刑で処断)

  判示第3について

   刑法54条1項前段,10条(1罪として犯情の最も重い法人税法違反幇助の罪の刑で処断)

 刑種の選択    いずれも懲役刑及び罰金刑を選択

 法律上の減軽   いずれも,懲役刑につき刑法63条,68条3号,罰金刑につき刑法63条,68条4号

 併合罪の処理   懲役刑につき刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重),罰金刑につき刑法45条前段,48条2項(判示各罪の罰金の多額を合計)

 労役場留置    刑法18条(金5万円を1日に換算)

 懲役刑の執行猶予 刑法25条1項

 訴訟費用の処理  刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)

 (量刑の理由)

  本件は,分離前相被告会社の代表者であった分離前相被告人B及び同Cが共謀して,架空外注費を計上するなどの方法により所得を隠匿したり(別紙正犯事実1),架空課税仕入れを計上したり(別紙正犯事実2)して,虚偽の確定申告をし,分離前相被告会社の法人税及び消費税等の合計1億4050万円余りを免れた際,被告人が,架空の工事を理由とする請求書を分離前相被告会社事務所に郵送させるなどして,上記脱税を幇助した事案である。

  分離前相被告会社のほ脱所得金額の合計は3億7690万円余り,ほ脱税額の合計は1億4050万円余りと多額であるところ,被告人は,多額の架空外注費計上に加担したもので,脱税への寄与の度合いは高く,脱税協力の報酬として相当高額な金員を受け取っている。被告人は,分離前相被告人Bから依頼を受けた仲介者を通じて脱税への協力を持ちかけられ,報酬目的で本件各犯行に及んだのであって,その動機に酌むべき点はない。

  そうすると,被告人の刑事責任は相応に重いというべきである。

  他方,被告人は各犯行を認めた上で,反省の態度を示していること,被告人には前科前歴がないこと,既に本件各犯行に関わった会社の経営から退いていることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。

  以上の事情を総合考慮して,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。

  よって,主文のとおり判決する。

 (求刑・懲役8月及び罰金1600万円)

   平成30年12月26日

     秋田地方裁判所刑事部

         裁判長裁判官  杉山正明

            裁判官  板東 純

            裁判官  藤枝健太

 

  (別紙)正犯事実

   分離前相被告会社は,土木,建築工事等の事業を営む株式会社,分離前相被告人Bは,分離前相被告会社の代表取締役として営業全般を統括していたもの,分離前相被告人Cは,分離前相被告会社の代表取締役として財務全般を統括していたものであるが,分離前相被告人B及び同Cは,共謀の上,分離前相被告会社の業務に関し

 1 架空外注費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

   (1) 平成25年9月1日から平成26年8月31日までの事業年度における実際所得金額が1億3888万8451円であったにもかかわらず,同年10月30日,秋田県由利本荘市給人町17番地所在の所轄本荘税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,所得金額が8393万0417円で,これに対する法人税額が1787万9700円である旨の虚偽の法人税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額3456万0100円との差額1668万0400円を免れ,

   (2) 平成26年9月1日から平成27年8月31日までの事業年度における実際所得金額が2億9622万0865円であったにもかかわらず,同年10月29日,前記本荘税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,所得金額が1億7603万3601円で,これに対する法人税額が3888万7200円である旨の虚偽の法人税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額7466万7600円との差額3578万0400円を免れ,

   (3) 平成27年9月1日から平成28年8月31日までの事業年度における実際所得金額が5億1513万3623円であったにもかかわらず,同年10月27日,前記本荘税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,所得金額が3億1334万4849円で,これに対する法人税額が6850万0200円であり,課税標準法人税額が6852万1000円で,これに対する地方法人税額が301万4900円である旨の虚偽の法人税及び地方法人税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額1億2238万3400円と前記申告法人税額との差額5388万3200円及び正規の地方法人税額538万5700円と前記申告地方法人税額との差額237万0800円を免れ,

  2 架空課税仕入れを計上する方法により

  (1) 平成25年9月1日から平成26年8月31日までの課税期間における実際の消費税の課税標準額が22億6186万5000円で,これに対する消費税額が1億0786万9316円であり,これから控除されるべき消費税額が9237万9261円で,納付すべき消費税額が1549万円であり,納付すべき地方消費税の譲渡割額が386万9000円であったにもかかわらず,同年10月30日,前記本荘税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,消費税の課税標準額が22億6186万5000円で,これに対する消費税額が1億0786万9316円であり,これから控除されるべき消費税額が9645万3431円で,納付すべき消費税額が1141万5800円であり,納付すべき地方消費税の譲渡割額が279万8500円である旨の虚偽の消費税及び地方消費税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同課税期間の正規の納付すべき消費税額と前記申告にかかる納付すべき消費税額との差額407万4200円及び同課税期間の正規の納付すべき地方消費税の譲渡割額と前記申告にかかる納付すべき地方消費税の譲渡割額との差額107万0500円を免れ,

   (2) 平成26年9月1日から平成27年8月31日までの課税期間における実際の消費税の課税標準額が31億5219万3000円で,これに対する消費税額が1億9831万4114円であり,これから控除されるべき消費税額が1億7508万8124円で,中間納付税額856万1700円を差し引いた後の納付すべき消費税額が1466万4200円であり,地方消費税の譲渡割額が626万5700円で,中間納付譲渡割額231万0300円を差し引いた後の納付すべき地方消費税の譲渡割額が395万5400円であったにもかかわらず,同年10月29日,前記本荘税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,消費税の課税標準額が31億5219万3000円で,これに対する消費税額が1億9831万4114円であり,これから控除されるべき消費税額が1億8425万4624円で,中間納付税額856万1700円を差し引いた後の納付すべき消費税額が549万7700円であり,地方消費税の譲渡割額が379万2200円で,中間納付譲渡割額231万0300円を差し引いた後の納付すべき地方消費税の譲渡割額が148万1900円である旨の虚偽の消費税及び地方消費税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同課税期間の正規の納付すべき消費税額と前記申告にかかる納付すべき消費税額との差額916万6500円及び同課税期間の正規の納付すべき地方消費税の譲渡割額と前記申告にかかる納付すべき地方消費税の譲渡割額との差額247万3500円を免れ,

   (3) 平成27年9月1日から平成28年8月31日までの課税期間における実際の消費税の課税標準額が35億5822万3000円で,これに対する消費税額が2億2416万8049円であり,これから控除されるべき消費税額が1億8761万1605円で,中間納付税額1054万4400円を差し引いた後の納付すべき消費税額が2601万2000円であり,地方消費税の譲渡割額が986万4500円で,中間納付譲渡割額284万5200円を差し引いた後の納付すべき地方消費税の譲渡割額が701万9300円であったにもかかわらず,同年10月27日,前記本荘税務署において,同税務署長に対し,財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により,消費税の課税標準額が35億5822万3000円で,これに対する消費税額が2億2416万8049円であり,これから控除されるべき消費税額が1億9944万3005円で,中間納付税額1054万4400円を差し引いた後の納付すべき消費税額が1418万0600円であり,地方消費税の譲渡割額が667万1900円で,中間納付譲渡割額284万5200円を差し引いた後の納付すべき地方消費税の譲渡割額が382万6700円である旨の虚偽の消費税及び地方消費税確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同課税期間の正規の納付すべき消費税額と前記申告にかかる納付すべき消費税額との差額1183万1400円及び同課税期間の正規の納付すべき地方消費税の譲渡割額と前記申告にかかる納付すべき地方消費税の譲渡割額との差額319万2600円を免れた。

http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e6%94%bf%e5%ba%9c%e3%80%81%e4%ba%ac%e3%82%a2%e3%83%8b%e5%af%84%e4%bb%98%e8%80%85%e3%81%ae%e7%a8%8e%e8%bb%bd%e6%b8%9b%e3%81%b8-%e7%81%bd%e5%ae%b3%e7%be%a9%e6%8f%b4%e9%87%91%e3%81%a8%e5%90%8c%e3%81%98%e6%89%b1%e3%81%84-%e3%80%8c%e5%9c%b0%e6%96%b9%e5%85%ac%e5%85%b1%e5%9b%a3%e4%bd%93%e3%81%b8%e3%81%ae%e5%af%84%e4%bb%98%e9%87%91%e3%80%8d%e4%bd%8d%e7%bd%ae%e3%81%a5%e3%81%91/ar-AAG8gjV?ocid=LENDHP


京アニへの寄付金は本来なら営利企業へ金がはいっていることで法人税の対象になりそうですが、世界的には災害・犯罪被害への補てん寄付への課税というのはありえない事態なので、問題化しています。この記事だと公共団体への寄付として非課税ということですが、租税法律主義からして問題はありそうです。

所得税法違反被告事件

脱税額2500万円弱と源泉徴収義務1700万円弱について懲役10月罰金500万円 懲役刑について執行猶予の岡山地裁平成30年判決

 

【事件番号】 岡山地方裁判所判決/平成30年(わ)第303号

 

【判決日付】 平成30年12月4日

 

【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 

  被告人を懲役10月及び罰金800万円に処する。

  その罰金を完納することができないときは,金5万円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。

  この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。

 

        理   由

 

 (罪となるべき事実)

  被告人は,岡山県倉敷市(以下略)に居住し,倉敷市内及び岡山市内において,飲食店4店舗を経営していたものであるが,

 第1 自己の所得税を免れようと考え,

  1 平成26年分の実際の総所得金額が3231万3870円であり,これに対する所得税及び復興特別所得税額が995万2700円であったにもかかわらず,その所得税の法定納期限である平成27年3月16日までに,岡山県倉敷市(以下略)所在の所轄倉敷税務署長に対し,所得税の確定申告書を提出しないで前記期限を徒過させたことにより,平成26年分の所得税及び復興特別所得税のうち,所得税額974万7992円を免れた。

  2 平成27年分の実際の総所得金額が3764万8629円であり,これに対する所得税及び復興特別所得税額が1226万1800円であったにもかかわらず,その所得税の法定納期限である平成28年3月15日までに,前記倉敷税務署長に対し,所得税の確定申告書を提出しないで前記期限を徒過させたことにより,平成27年分の所得税及び復興特別所得税のうち,所得税額1200万9598円を免れた。

  3 平成28年分の実際の総所得金額が1417万8858円であり,これに対する所得税及び復興特別所得税額が296万4100円であったにもかかわらず,その所得税の法定納期限である平成29年3月15日までに,前記倉敷税務署長に対し,所得税の確定申告書を提出しないで前記期限を徒過させたことにより,平成28年分の所得税及び復興特別所得税のうち,所得税額290万3134円を免れた。

 第2 倉敷市内及び岡山市内において経営する飲食店4店舗で稼働する従業員に給与の支払をする源泉徴収義務者であったところ,別表記載のとおり,平成26年11月から平成28年11月までの間,同4店舗の従業員に対し給与として合計1億0330万7047円を支払った際,これらの給与について所得税及び復興特別所得税として合計1694万1160円を源泉徴収し,各法定納期限までに前記倉敷税務署長に納付しなければらないのに,これを納付せず,もって源泉徴収して納付すべき所得税及び復興特別所得税合計1694万1160円のうち,所得税額1659万2715円を納付しなかった。

 (証拠の標目)

   (括弧内の番号は,証拠等関係カードの請求証拠の番号を示す。)

  判示事実全部について

   被告人の公判供述

    被告人の検察官調書(乙3,4,6から8)

    査察官報告書(甲3)

    捜査報告書(甲19)

  判示第1の1から3の事実について

   被告人の検察官調書(乙5)

    査察官報告書(甲2,4から9,11から15,18)

  判示第2の事実について

   査察官報告書(甲17)

 (法令の適用)

  被告人の判示第1の1の所為は平成26年法律第10号附則164条,平成27年法律第9号附則130条及び平成28年法律第15号附則168条により前記各法律による改正前の所得税法238条第3項に,判示第1の2の所為は平成26年法律第10号附則164条及び平成28年法律第15号附則168条により前記各法律による改正前の所得税法238条第3項に,判示第1の3の所為は所得税法238条第3項に,判示第2の各所為は別表番号ごとにそれぞれ同法240条1項(183条1項)に該当するところ,各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2別表番号22の罪の刑に法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計し,その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役10月及び罰金800万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予することとする。

 (弁護人の主張に対する判断)

  弁護人は,判示第2に関して,所得税法240条1項は源泉徴収義務者が源泉徴収しながら所定の源泉徴収税を納付しなかった場合に適用すべきものであり,源泉徴収義務者が源泉徴収しないままこれを納付しなかった場合には適用されないと主張した上で,被告人が源泉徴収した金額は,源泉徴収すべき所得税額1659万2715円のうち589万0309円にとどまるから,同額を超える部分については無罪であると主張する。

  しかしながら,所得税法183条1項が「所得税を徴収し,…これを国に納付しなければならない」と定めていることに照らせば,同法240条1項所定の「第183条…の規定により徴収して納付すべき所得税を納付しなかった者」とは,源泉徴収義務に係る所得税を納付しなかった者を指すものと解され,このことは,同法242条3号が「第183条…の規定により徴収すべき所得税を徴収しなかった者」と定め,同条ただし書が「第3号の規定に該当する者が同号に規定する所得税について第240条…の規定に該当するに至つたときは,同条の例による」と定めていることにも整合する。

  弁護人は,その主張の論拠として上記各規定および旧所得税法のうちこれに相当するものの改正沿革,法定刑,文理などを挙げるが,弁護人が指摘する諸点をみても,所得税法240条1項は,現実の源泉徴収の有無を問わず,源泉徴収義務に係る所得税を納付しない行為を処罰する規定であるとの解釈を妨げるべき事情は見当たらない。よって,判示第2については,被告人が源泉徴収しないまま納付しなかった部分を含めて,同法240条1項に該当するものというべきである。

 (量刑の理由)

  本件は,飲食店を経営する被告人が,3年分にわたり自身の所得税の確定申告をせず,その期間中の所得税の全額である約2466万円を免れたものと,2年間にわたり,同飲食店の従業員から源泉徴収して納付すべき所得税約1659万円を納付しなかったというものである。

  所得税を免れた点は,その金額や期間に加え,税務署職員等からの確定申告書の送付等を全て無視して無申告を継続したことを踏まえると,国家の財源確保や租税の公平な分担を旨とする所得税制度に対する悪影響の程度は相応に大きい。源泉徴収納付義務違反の点についてみると,その金額や従業員数,期間等に照らせば,上記のような所得税制度への悪影響の程度や,租税の確実な徴収を旨とする源泉徴収制度を害した程度はやはり大きい。特に,被告人自身の所得税を免れた額や不納付額が多額であることを考慮すると,被告人には不法な手段で利益を得ようとの強い意欲が窺われ,その刑事責任には重いものがある。よって,かかる被告人に対しては,主文の懲役刑に加えて不法利益の取得の目的が経済的に割に合わないことを感銘させる観点からの罰金刑を併科することは免れないが,被告人が事実を認めた上で,本件後に公訴事実以外の租税も含めて本税,加算税及び延滞税の未納の国税の全額を納付し,反省の態度を示していることや前科がないことも考慮すると,懲役刑についてはその執行を猶予するのが相当である。

 (求刑:懲役10月及び罰金1200万円)

   平成30年12月4日

     岡山地方裁判所第2刑事部

         裁判長裁判官  御山真理子

            裁判官  岡本康博

            裁判官  古川 翔

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