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水泳授業の飛び込み事故 学校事故と国家賠償責任 最高裁 昭和62年
水泳授業の飛び込み事故 学校事故と国家賠償責任 最高裁 昭和62年
行政判例百選 第6版 223事件 第7版 215事件 50! 2版 民事訴訟法判例百選第6版 A22
損害賠償請求事件
最高裁判所第2小法廷判決/昭和59年(オ)第1058号、昭和59年(オ)第1059号
昭和62年2月6日
【判示事項】 一、公立学校における教師の教育活動と国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」
二、損害賠償請求権者が一時金による支払を訴求している場合と定期金による支払を命ずる判決の許否
【判決要旨】 一、法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。
二、損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。
【参照条文】 国家賠償法1-1
民法722-1
民法417
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事150号75頁
判例タイムズ638号137頁
金融・商事判例784号44頁
判例時報1232号100頁
【評釈論文】 ジュリスト886号20頁
ジュリスト890号56頁
別冊ジュリスト118号136頁
時の法令1329号72頁
判例タイムズ677号126頁
月刊法学教室81号102頁
民事研修618号42頁
民商法雑誌97巻3号439頁
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
一 上告代理人猪狩庸祐の上告理由第一及び上告代理人小川善吉、同瀬沼忠夫の上告理由第四点一、二について
国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
二 上告代理人堀家嘉郎の上告理由第二点、上告代理人猪狩庸祐の上告理由第二並びに上告代理人小川善吉、同瀬沼忠夫の上告理由第一点、第二点及び第四点三、四について
学校の教師は、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負つており、危険を伴う技術を指導する場合には、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務があることはいうまでもない。本件についてこれをみるに、所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、右の事実関係によれば、松浦教諭は、中学校三年生の体育の授業として、プールにおいて飛び込みの指導をしていた際、スタート台上に静止した状態で頭から飛び込む方法の練習では、水中深く入つてしまう者、空中での姿勢が整わない者など未熟な生徒が多く、その原因は足のけりが弱いことにあると判断し、次の段階として、生徒に対し、二、三歩助走をしてスタート台脇のプールの縁から飛び込む方法を一、二回させたのち、更に二、三歩助走をしてスタート台に上がつてから飛び込む方法を指導したものであり、被上告人今野良彦は、右指導に従い最後の方法を練習中にプールの底に頭部を激突させる事故に遭遇したものであるところ、助走して飛び込む方法、ことに助走してスタート台に上がつてから行う方法は、踏み切りに際してのタイミングの取り方及び踏み切る位置の設定が難しく、踏み切る角度を誤つた場合には、極端に高く上がつて身体の平衡を失い、空中での身体の制御が不可能となり、水中深く進入しやすくなるのであつて、このことは、飛び込みの指導にあたる松浦教諭にとつて十分予見しうるところであつたというのであるから、スタート台上に静止した状態で飛び込む方法についてさえ未熟な者の多い生徒に対して右の飛び込み方法をさせることは、極めて危険であるから、原判示のような措置、配慮をすべきであつたのに、それをしなかつた点において、松浦教諭には注意義務違反があつたといわなければならない。もつとも、同教諭は、生徒に対して、自信のない者はスタート台を使う必要はない旨を告げているが、生徒が新しい技術を習得する過程にある中学校三年生であり、右の飛び込み方法に伴う危険性を十分理解していたとは考えられないので、右のように告げたからといつて、注意義務を尽くしたことにはならないというべきである。したがつて、右と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
三 上告代理人堀家嘉郎の上告理由第一点一について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、原審の付添看護費用に関する損害額の算定方法は、正当として是認することができる。また、損害賠償請求権者が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の申立をしている場合に、定期金による支払を命ずる判決をすることはできないものと解するのが相当であるから、定期金による支払を命じなかつた原判決は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
四 その余の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官林 藤之輔 裁判官牧 圭次 裁判官島谷六郎 裁判官藤島 昭 裁判官香川保一)
中国の大学が外国語を捨てた…本当の理由
債務免除益課税事件 東京地裁平成30年
債務免除益課税事件 東京地裁平成30年 渕圭吾『租税法講義』有斐閣・2024年・9頁133頁以下
佐藤修二監修 木村・向笠・安田著 対話でわかる租税法律家入門 88頁
所得税更正処分等取消請求事件
東京地方裁判所判決/平成26年(行ウ)第649号
平成30年4月19日
【判示事項】 一 賃貸用の建物の建築資金とするための借入れに係る債務の返済に充てられた借入金の債務につき、その債務の免除を受けることにより得た利益が不動産所得に当たるとされた事例
二 農業用機械の購入資金とするための借入金の借換え等に係る債務の返済に充てられた借入金の債務につき、その債務の免除を受けることにより得た利益が事業所得に当たるとされた事例
【参照条文】 所得税法26-1
所得税法27-1
【掲載誌】 判例時報2405号3頁
【評釈論文】 ジュリスト1534号126頁
税務事例51巻8号45頁
税務事例53巻10号7頁
税法学582号175頁
国税速報6696号23頁
主 文
一 処分行政庁が原告の平成二一年分の所得税について平成二五年三月一一日付けでした更正のうち総所得金額二億八六七二万八六九一円及び納付すべき税額一億〇二六四万八〇〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定のうち一六二万四五〇〇円を超える部分を取り消す。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを二〇分し、その九を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
処分行政庁が原告の平成二一年分の所得税について平成二五年三月一一日付けでした更正のうち総所得金額二億五九三二万七九〇九円及び納付すべき税額九一八一万二六〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
第二 事案の概要
本件は、農業等を営んでいた原告が、A農業協同組合(以下「A農協」という。)に対する借入金債務について債務免除(以下「本件債務免除」という。)を受け、その債務免除益(以下「本件債務免除益」という。)を一時所得として、平成二一年分の所得税の修正申告をしたところ、処分行政庁から、本件債務免除益は、借入金の目的に応じて事業所得、不動産所得及び一時所得に該当するとして更正(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)を受けたため、処分行政庁が属する国を被告として、本件更正処分のうち総所得金額二億五九三二万七九〇九円及び納付すべき税額九一八一万二六〇〇円を超える部分並びに本件賦課決定処分の取消しを求める事案である。
一 関係法令等の定め
本件に関係する法令等の定めは、別紙二「関係法令等の定め」記載のとおりである。
二 前提事実 〈編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します〉
(1) 当事者等
ア 原告は、米麦の作付けを中心とした農業や不動産賃貸業を営むほか、農産食料品の販売等を目的とするB株式会社(昭和五九年××月××日に原告が設立。以下「B」という。)の代表取締役、農業用畜舎の設計施工及び管理等を目的とする株式会社C(昭和六〇年××月××日設立。現在の商号はD株式会社。以下「C」という。)の取締役等を務めるなどしてきた者である。
なお、原告は、昭和五七年七月八日、A農協の正組合員としての資格を取得した。
イ A農協は、昭和二三年度にA村農業協同組合として設立され、昭和三六年度にE農業協同組合との合併を経た後、平成二二年三月一日にF農業協同組合(以下「F農協」という。)と合併するまで存続した農業協同組合である。
(2) A農協からの借入れ等
ア 原告は、昭和五八年三月一日にA農協との間で金銭の借入れに係る取引を開始し、以後、A農協から継続的に金銭の借入れ等をするようになり、原告のA農協に対する借入金債務は、平成一一年九月三〇日時点で六億〇四三〇万八一九五円(三四件)となっていた。
なお、B及びCもA農協から金銭の借入れを行っており、同各社のA農協に対する借入金債務は、Bにつき五七一六万九三一四円(二件。同年一〇月二九日時点)、Cにつき三〇六五万七八六二円(一件。同年六月一八日時点)となっていた。
イ 原告及びBのA農協に対する借入金債務については、平成一一年一〇月二九日、債務の借換え及び組替え(以下「本件借換え等」という。)がされ、その結果、原告のA農協に対する借入金債務は、①借入年月日を平成九年一二月一二日、借入金額を一一〇〇万円とするもの(ただし、本件借換え等の後の残債務は六〇〇万二五一九円。以下「借入金(a)」という。)、②借入年月日を平成一一年一〇月二九日、借入金額を一億七一七〇万円とするもの(以下「借入金(b)」という。)、③借入年月日を同日、借入金額を一億四三〇〇万円とするもの(以下「借入金(c)」という。)、④借入年月日を同日、借入金額を二〇〇〇万円とするもの(以下「借入金(d)」という。)と整理されることになった(以下、借入金(a)から借入金(d)までを併せて「本件借入金」といい、本件借換え等が行われる前の原告のA農協に対する債務を「本件旧借入金」という。)。
なお、借入金(b)は、別表一「本件旧借入金一覧」《略》(以下「旧借入金一覧」という。)のうち「延滞元金」及び「延滞利息及び遅延損害金」に係る債務の借換えを目的としたもの、借入金(c)は、旧借入金一覧のうち「担保区分」欄が「不動産担保(根抵当)」とされているものにつき、その「約定残高(期日未到来元本)」及び「未収約定利息」に係る債務の組替えを目的としたもの、借入金(d)は、原告のA農協に対する購買未収金を返済するための借入れを目的としたものである。
ウ 本件債務免除等
(ア) A農協は、平成二〇年一二月二四日にP1弁護士に対し、原告、B及びC(以下「原告外二社」という。)に対する債権の回収を委任したほか、P2弁護士及びP3弁護士(以下、P1弁護士及びP2弁護士と併せて「P1弁護士ら」という。)にも同様の委任をした。
(イ) P1弁護士らは、平成二一年二月一七日付けで、原告外二社が一括してA農協に一億三〇〇〇万円を弁済することを条件として、A農協が抵当権者となっている抵当権を原告外二社が指定する金融機関に譲渡するとともに、原告外二社に対する「残債権の一切を免除することに異存ありません」などと記載した通知書を送付した。
(ウ) 原告外二社は、平成二一年三月二七日、A農協に対して、弁済金として一括して一億三〇〇〇万円(内訳は、原告分が四三〇〇万円、B分が五七〇〇万円、C分が三〇〇〇万円である。)を支払い(以下、この支払に係る金銭を「本件弁済金」という。)、A農協は、同月三〇日付けで原告外二社に対して、「証書貸付金の残債務について、一切を放棄致します」と記載した通知書を送付した。
(エ) なお、上記(ウ)の弁済前の時点における原告のA農協に対する債務の額は、別表二「平成二一年三月二七日の本件弁済金の支払前の時点における原告の債務の額」《略》記載のとおりであり、本件弁済金は、別表三「原告の債務への充当額の本件借入金ごとの内訳」《略》記載のとおり充当された。
(3) 本件訴え提起に至る経緯
ア 処分行政庁は、本件債務免除益の額は、上記(2)ウ(エ)の原告のA農協に対する債務の総額四億七四一〇万八八九七円から同(ウ)の原告の債務に係る弁済額である四三〇〇万円を控除した四億三一一〇万八八九七円であるとした上で、平成二四年一一月、原告に対して、平成二一年分の所得税の修正申告のしょうようをした。
イ 原告は、平成二五年二月一三日、本件債務免除益の全額を一時所得として計算し、別表四「所得税の課税処分等の経緯」《略》(以下「別表四」という。)の同日付け「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を処分行政庁に提出した。
ウ 処分行政庁は、平成二五年二月二二日付けで、本件修正申告書に対する過少申告加算税の賦課決定をした。
エ 処分行政庁は、平成二五年三月一一日付けで、本件債務免除益の額として認定した四億三一一〇万八八九七円のうち、六八一七万五一一二円は事業所得の総収入金額、五五三九万八〇一三円は不動産所得の総収入金額、三億〇七五三万五七七二円は一時所得の総収入金額にそれぞれ算入されるとして、別表四《略》の「本件更正処分等」欄のとおり本件更正処分等を行った。
オ 原告は、本件更正処分等を不服として、平成二五年五月八日、処分行政庁に対し、異議申立てをしたが、処分行政庁は、同年七月四日付けで、上記原告の異議申立てを棄却する旨の決定をした。
カ 原告は、平成二五年八月五日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、平成二六年七月一日付けで、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をした。
キ 原告は、平成二六年一二月二二日、本件訴えを提起した。
三 争点
(1) 本件債務免除益の所得区分
(2) 理由の差し替えの可否
(3) 国税通則法六五条四項所定の正当な理由の有無
四 争点に対する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件債務免除益の所得区分)について
(被告の主張)
ア 債務免除益に係る所得区分の判断方法
所得税法は、所得をその源泉又は性質によって一〇種類に区分しているが、これは、所得がその性質や発生の態様によって担税力が異なるという前提に立って、公平負担の観点から各種所得の金額の計算においてそれぞれの担税力の相違を加味しようという考慮に基づいたものと考えられる。したがって、所得区分の判断に当たっては、その所得の性質や態様等といった担税力を基礎付ける事情を踏まえた検討を欠かすことはできないというべきである。これを債務免除益について見ると、その直接の発生原因(債務免除行為)自体は全ての債務免除益に共通している事情であるから、債務免除行為それ自体から所得(債務免除益)の性質等が決定されるとはいい難く、債務免除益が債務を免れたという消極的な形で経済的利益を得るものであることからすれば、その所得の性質は当該債務と密接に関連するというべきである。
そして、このことを借入金に係る債務免除益について見ると、所得税法は、期中における消費額と純資産増加額の合計を所得と捉えているが、借入金それ自体は所得ではないと解されている。これは、借主が借入金を取得する一方で同額の債務を負うことから、両者を差し引くと経済的に見て何ら純資産が変動しないことを前提にしたものと考えられる。そうすると、借入金債務の全部又は一部を免れた場合には、上記の前提が覆り、当初の借入金との関係で純資産の増加としての所得(債務免除益)の発生を観念できる。
このように、借入金に係る債務免除益が所得とされる実質的な根拠(実質的な担税力)は、消極財産を減少させた債務免除行為ではなく、当該債務の発生時にその対価として受領した経済的対価にあるというべきであるから、その所得の性質は、当該借入金債務の性質等を踏まえて検討すべきと考えられる。
このことは、所得税基本通達三六-一七(平成二六年課個二-九による削除前のもの)の取扱いを法令上明確化した所得税法四四条の二(平成二六年法律第一〇号による改正後のもの)が、同条二項各号に規定された各所得を生ずべき業務等に係る債務の免除を受けた場合の債務免除益については、その元となる債務の発生原因に応じて所得区分を判断するという考え方を定めていることからも明らかである。
したがって、債務免除益の所得区分を判断するに当たっては、当該免除益の直接の発生原因よりも、それを生み出す元となった債務の発生原因を重視すべきものと解される。
イ 本件債務免除益のうち事業所得に該当するもの
(ア) 事業所得該当性の判断基準
所得税法二七条一項に規定する「事業」とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいい、ある経済活動が事業に該当するか否かは、活動の規模と態様、相手方の範囲等、種々のファクターを参考として判断すべきであるところ、一般的に事業の遂行上生じた付随収入は事業所得に該当すると解されている。そして、こうした付随収入が事業所得に該当するか否かは、当該事業の本体をなす業務の遂行と当該付随収入の関連性の強さを考慮して判断すべきであるところ、前記のとおり、債務免除益の所得区分を判断するに当たっては、当該債務免除益の直接の発生原因よりも、それを生み出す元となる債務の発生原因を重視すべきであるから、本件債務免除益のような借入金に係る債務免除益が事業所得に該当するか否かは、当該事業の遂行と借入金の使途との関連性の強さを考慮して判断することになる。
(イ) 本件旧借入金の使途について
a 旧借入金一覧順号(以下「順号」という。)一一の借入金について
原告は、平成八年一月三〇日、A農協から二三〇〇万円を借り入れ、当該借入金を、同月二二日に購入した群馬県《番地等略》(以下「旧A町」という。)(現在の群馬県F市(以下「F市」という。)《番地等略》)の農地の対価の支払に充てた。
なお、上記農地については、平成八年一月三〇日、原告を債務者、A農協を根抵当権者とする根抵当権(極度額三八〇〇万円)が設定された。
b 順号二〇の借入金について
原告は、平成九年四月二五日、A農協から一六〇〇万円を借り入れ、当該借入金を、同月一日に購入した旧A町《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の農地の対価の支払に充てた。
なお、原告は、平成二四年七月三日、上記農地を原告が代表取締役を務めるG株式会社(以下「G」という。)に売却した。
c 順号二四の借入金について
原告は、平成九年一一月二〇日、A農協から二〇〇〇万円を借り入れ、当該借入金を、同月二一日に購入した群馬県《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の各農地の対価の支払に充てた。
なお、原告は、平成一三年一〇月二日、上記各農地を旧A町《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の農地と交換し、平成一六年四月二七日、上記交換により取得した農地をBに売却した。
d 借入金(a)及び順号二五の借入金について
原告は、平成九年一二月一二日、A農協から農地購入資金として一一〇〇万円を借り入れ、同日に購入した旧A町《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の農地の対価の支払に充てた。
なお、原告は、平成一一年二月一七日、当該農地を旧A町《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の各農地と交換し、平成二二年七月二七日、上記交換により取得した各農地をBに売却した。
e 順号二七の借入金について
原告は、平成一〇年二月二日、A農協から四四〇〇万円を借り入れ、当該借入金を、平成九年一一月二八日にA農協から借り入れた四九〇〇万円の借入金の返済に充てているところ、上記四九〇〇万円の借入金は、別の九件の借入金の返済に充てられたものであり、当該九件の借入金のうち六件の借入金(返済当時の残債務は八四三万三一八二円)は、農業用機械であるコンバイン、トラクター乾燥機及びホイールローダーの購入に充てられたものである。
(ウ) 小括
a 原告は、現在まで、米麦等の作付けを中心とした農業を営んでいる者であり、前記(イ)の農地及び農業用機械の取得は、原告の農業の遂行と密接な関連性を有すると認められる。したがって、本件債務免除益のうち、前記(イ)の借入金(以下「本件農地取得借入金」という。)に係る部分(順号二七については前記八四三万三一八二円の返済に係る部分に限る。)は、原告が従事する事業(農業)と関連する付随収入であるから、所得税法二七条一項所定の事業所得に該当する。
なお、原告は、農地を取得した理由につき、農業を行うためではなく、当初から農地転用を図り、原告が主宰する会社へ売却する目的で取得したものと考えられるなどと主張するが、借入れから大きく遅れた時期にB等に売却した合理的な理由はないし、本件借入金に係る平成二〇年分の約定利息及び遅延利息については、原告の平成二〇年分の事業所得の総勘定元帳において、その全額が必要経費に算入されていることと整合しないというべきである。
b そして、本件債務免除益は、本件借換え等の前の使途を表す本件旧借入金と直接の対応関係は存在しないことから、資金使途に応じて本件旧借入金ごとに按分して考えるのが合理的であり、本件債務免除益のうち、本件農地取得借入金に係るものとして按分された部分の金額である八一〇九万七六一三円が原告の平成二一年分の事業所得として総収入金額に算入されるべきである。
ウ 本件債務免除益のうち不動産所得に該当するもの
(ア) 所得税法二六条一項は、「不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(括弧内略)の貸付け(括弧内略)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と規定し、同条二項は、「不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。」と規定しており、不動産所得の金額について「総収入金額」という文言を用いている。その趣旨としては、利子所得、配当所得、給与所得及び退職所得については、その収益の内容が比較的単純であるので「収入金額」の文言を用い、これに対し、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得、一時所得及び雑所得については、副収入や付随収入等も加わってその収益の内容が複雑になる場合が多いことから、「総収入金額」という文言を用いることによって、その所得に係る収入金額の総額を計算し、これに総体として対応する必要経費をそれから控除して、それらの所得の金額を計算するという所得税法上の所得計算の態度を示したものと解されている。なお、同条一項の「による」という文言は、単に因果関係を示すものにすぎず、貸付けによる所得は、貸付けと因果関係のある所得であれば足り、貸付けの経済的対価等に限定されるものではない。
そうすると、不動産所得には、事業所得と同様、不動産等の貸付けの対価たる性質を有するものに限らず、不動産等の貸付けに伴う副収入や付随収入等も含まれ、不動産等の貸付業務の遂行により生ずべき収入は不動産所得に該当すると解するのが相当である。そして、こうした付随的な業務から生じる所得が不動産所得に該当するか否かは、当該所得と本体をなす業務の遂行との関連性の強さを考慮して判断すべきであるところ、借入金に係る債務免除益が不動産等の貸付業務の遂行により生ずべき所得か否かを判断する際には、当該不動産等の貸付業務の遂行と借入金の使途との関連性の強さを考慮して判断すべきである。
(イ) 本件旧借入金の使途について
a 順号四の借入金について
原告は、平成六年一一月二九日、A農協から一二〇〇万円を借り入れ、当該借入金を、同月二一日に購入した旧A町《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の農地の対価の支払に充てた。
なお、上記農地は、平成一二年二月二九日に地目が宅地に変更され、原告が所有する賃貸用マンションであるHの敷地の用に供されてきた。
b 順号一二の借入金について
原告は、平成八年二月七日、A農協から三〇〇万円を借り入れ、当該借入金を、同日に農地法三条の許可を受けることを条件として購入した旧A町《番地等略》(現在のF市《番地等略》)の農地の対価の支払に充てた。
なお、上記農地は、平成八年二月七日、原告を債務者、A農協を根抵当権者とする根抵当権(極度額二〇〇〇万円)が設定されたほか、平成一二年二月二九日に地目が宅地に変更され、前記aのHの敷地の用に供されてきた。
c 順号二六の借入金について
原告は、平成一〇年一月一四日、A農協から三六〇〇万円を借り入れ、当該借入金を賃貸用の共同住宅Iの建設資金の一部の支払に充てた。
(ウ) 小括
一般に不動産等の貸付業務の遂行には、その賃貸の用に供する不動産等を所有していることが不可欠であるから、不動産等を購入して賃貸の用に供したのであれば、当該不動産等の購入は、賃貸業務の遂行と密接な関連性を有していると認められる。そして、前記(イ)の各借入金(以下「本件賃貸不動産取得借入金」という。)は、いずれも賃貸用不動産の取得に充てられており、これらは不動産等の賃貸業務の遂行と密接な関連性を有する。
したがって、本件債務免除益のうち、本件賃貸不動産取得借入金に係るものとして按分された金額である六七九九万一九五四円は不動産所得の総収入金額に算入されるべきである。
エ 本件債務免除益のうち雑所得に該当するもの
(ア) はじめに
本件債務免除益のうち、本件農地取得借入金及び本件賃貸不動産取得借入金以外に係る部分は、原告の何らかの経済活動に費消されたと考えられるものの、その使途が明らかではないから、これらが所得税法三四条一項の掲げる利子所得ないし譲渡所得のいずれかに区分することは困難であり、一時所得に該当するか否かを検討することになる。
そして、所得税法三四条一項は、「一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。」と規定しており、一時所得に当たるというためには、当該所得が、上記利子所得ないし譲渡所得以外の所得であることを前提として、①営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること(非継続性要件)、②労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであること(非対価性要件)が必要である。
(イ) 非継続性要件について
a 営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるところ、前記のとおり、債務免除益の所得区分の判断に当たっては、当該免除益の直接の発生原因よりもその元となる債務の発生原因を重視すべきであることからすれば、債務免除益に係る一時所得の非継続性要件の判断においても、債務の発生原因を重視しつつ、その債務の発生から免除に至るまでの諸事情を総合考慮して、その債務免除益が継続的行為から生じた所得に該当するか否かを判断すべきである。
b 本件においては、原告は、昭和五八年三月一日にA農協と金融取引を開始し、それ以降、継続的にA農協から融資を受けていたところ、平成一〇年に実施された群馬県常例検査で指摘されたとおり、当該融資の中には本来行われるべき理事会への付議が行われないまま実施されるなどしたものも含まれており、特に、平成七年四月以降には、原告外二社、J株式会社及びP4(以下、これらの者のうち原告以外の者の全部又は一部を指して「関連会社等」という。)への融資が急増しているが、当該融資にはA農協のP5が中心的立場として関与していた。
また、原告は、上記群馬県常例検査後の本件借換え等において、その後の期限内償還を約束していたにもかかわらず、一回目の返済日から滞納し、その後、平成二〇年三月二六日まで一切返済しなかったばかりか、通常、債務が完済されるまで解除が認められるはずのない根抵当権の一部解除を申し出て、A農協に根抵当権を解除させ、その結果、根抵当権の対象となる不動産は、根抵当権極度額に見合う価値を有しないこととなった。
そして、原告は、A農協が、F農協との合併に当たって、F農協から合併に向けた期日までに原告及び関連会社等に対する債権を含む不良債権の処理を求められていることを知りながら、自身の債務については返済の引き延ばし工作とも思える提案を繰り返し、本件借入金が平成二〇年三月二六日まで全く返済されないままとなっていた。
その後、原告は、A農協が原告及び関連会社等に対する債権を系統債権管理回収機構株式会社(以下「債権回収機構」という。)へ売却することを決定した直後に、根抵当権が設定されている土地の一部について、A農協に対して二〇〇万円の弁済を条件に根抵当権の解除を申し入れているところ、かかる申入れに対して、P5がA農協の正規の決裁を待たずに、上記土地に第二順位の根抵当権の設定を受けていた群馬県農業信用基金協会(以下「信用基金協会」という。)に対して根抵当権の一部解除を申請することで承諾を得たものである。また、原告は、原告及び関連会社等に対する債権を債権回収機構へ売却するとのA農協の方針について、A農協に民事訴訟を提起するなどと発言する一方で、A農協の担保評価額である八八〇〇万円を返済するので残債務を免除して欲しいと申し出るなど、硬軟織り交ぜてA農協と交渉し、債権回収機構へ売却することに対して抵抗した。
その結果、A農協から債権回収の委任を受けていたP3弁護士を通じて、原告外二社が合計一億三〇〇〇万円を返済することを条件に本件債務免除の合意に至ったものである。
このように、原告は、P5と通謀した上で、少なくとも平成七年四月以降から平成二一年三月三〇日の本件債務免除までの一四年近くの期間、多くの不正の借入れを繰り返し、本件借換え等以降平成二〇年まで一度たりとも返済することなく、かえって、融資の担保であった根抵当権を解除するなどの行為を繰り返し、A農協が債権回収機構に売却して原告及び関連会社等に対する債権を処理しようとするや、民事訴訟を提起すると発言するなどして抵抗する一方で、A農協の担保評価額と同額である八八〇〇万円を返済するから残債務を免除してもらいたい旨申し出るなど交渉し、その結果として四億三一一〇万八八九七円もの債務免除を受けたことからすれば、本件債務免除益の元となる債務は、原告とP5との通謀関係に基づいてA農協から長期間にわたり繰り返し受けた多額の不正融資によるものというべきである。そして、原告は、かかる債務について、A農協への償還を滞らせ続けた末に、本件債務免除をさせたものであり、本件旧借入金の借入れから本件債務免除に至るまでの上記個々の行為は全体として本件債務免除に向けて行われたものであり、本件債務免除益は、一連の継続的行為から生じたものといえる。
したがって、本件債務免除益は、非継続性要件を満たさない。