Steamcarjuice記憶では8月の一桁日の辺り。
毎年夏休みに町内会地区の海水浴が開催される。
この行事は、僕にとって夏祭りと両肩を並べるくらいのビッグイベントである。
朝早起きをして駅前に集合し汽車で約20k先の海水浴場へいく日帰り小旅行。
今回は、たぶん小学一年生の夏、その海水浴が終ってさあ帰ろうという時の話。

楽しかった海水浴も終わり、あとは汽車に乗って帰るだけ。
みんなが集合するまで僕等子供達は海の家の横でブラブラしていた。
その時、コーヘイちゃん、マーちゃんやゲゲ君たちが缶ジュースを持っているのを見た。
見ると海の家で缶ジュースを売っているではないか。
で、みんなが持っているから当然僕も欲しくなる。
そして父にお金(たぶん30円)をねだり僕もジュースを買った。
透明のプラ製の蓋を取りオープナーで穴を2ヶ所開ける。
飲み方を知っていたので今回が初めてと言う訳ではなさそうだ。
一口飲む。
ミカンの味が口一杯広がる。
「はぁ〜うまい!」

当時の缶ジュースはプルトップ式のものではなく、付属の穴開け器(オープナー:鷹の爪のような金属器具)で穴を開けて飲んだ。
穴も液体の流動をスムーズにする為に、飲み口と空気穴の2ヶ所を対角線上に開けなければならない。
そして種類も少なくミカンジュースだけだったよう思う。
調べてみるとたぶんこれ『明治オレンジジュース』。
穴を開ける時、缶詰の缶切りの様にかなりの手応えを感じる。
それもそのはず当時の缶は鉄製だったのだ。
そしてオープナーが落ちないように透明のプラ製の蓋が付いていた記憶がある。
当時、ジュースと言えばビンが主流。
みんながなぜビンではなく缶ジュースを買ったのかこの後知る。

僕が一口飲み終えた時、缶ジュースを持ったコーヘイちゃんが現れた。
「なんだコーベー(近所の子は僕をこう呼ぶ)汽車の中で飲まないのか?」
はっ!となった。
「俺達みんな汽車の中で飲むぜ」
そうなのだ、旅と言えば汽車、汽車と言えば車内での飲食。
窓から景色を見ながらジュースを飲む。
今日一日なんと楽しかった事かと感慨深げにチビチビ飲むのだ。
夏休みのビッグイベントの締めにはふさわし行為である。

し、しまった!

僕はこの時すごく悔しくて彼にこう返答する。
「でも、いいぜ!」
なにがいいのか分からないが、たぶん
「俺には俺の考えがある。俺は飲みたい時に飲む!」
とまあこう言いたかったのだろう。

しかし、まだ一口しか飲んでいない。
蓋をして置けば溢れる事もない。
僕も汽車の中で景色を楽しみながらこの残りのジュースを飲もう。
そう決めたその時
「お父ちゃん喉乾いちゃったよ。そのジュース半分くれ」
と父が申し出た。
えっ!
なんと予想外のハプニング。
しかし、スポンサーに逆らえる訳もなく
「いいよ」と言って父に缶ジュースを差し出した。
父は「暑いな〜」と言いジュースをゴクゴクと半分のんだ。
そして僕に缶ジュースを返すと
「お前も早く飲んじゃえ、もう汽車の時間だぞ」
と残りのジュースを飲み干せと急かされた。
僕は父に言われたとおり残りのジュースを渋々飲んだ。
「あ〜汽車の中でみんなとワイワイやりながらジュースを飲みたかったな〜」

追記:兄は、この缶ジュースの空き缶に海で獲った貝を入れて持ち帰ろうとしたが、汽車の中に忘れた。
駅について50mくらい歩いたところで気がつき残念がった。