オカチンの記憶の固執

日々退化する脳細胞から記憶を呼び起こす

遊び

古墳の探検

kofun果てしないと思うほど田圃が広がる田舎の風景。
その田圃の真ん中に何故かボツンと小山があった。
小山には木々が生い茂り、なにか怪しい者が潜んでそうな雰囲気を醸す。
ポツンと言ったが存在感は凄く、何者も足を踏み入れてはいけないと思わせる神聖さがあった。
それもそのはず、この小山は古墳であり、どこの寺の管轄かは分からないが墓地ともなっていたからだ。
当然こんな場所は子供達の格好の心霊スポット扱いになり、幽霊が出たとか骨が放置されているとか様々な噂が立ち上っていた。

「あの小山には洞窟があるらしいよ」
誰かがこう言っていた。
恐いもの見たさに心がウズウズする。
探検してみたい。
しかし、1人で行けるほど肝は座ってない。
「なあ、あの墓のある小山を探検してみない?」
と僕はマコちゃんに言った。
マコちゃんを誘ったのは、彼の家がこの小山に近かったからで、何がしかの情報を持っているだろうと思ったからである。
「まえにお婆ちゃんと墓参りで行った事あるよ。なんでも昔のお墓だったみたい」
「洞窟があるの?」
「あ〜なんか穴があったよ。中に入ろうとしたらお婆ちゃんが罰が当るから止めろって言われた」
「ねえ、行ってみようよ。骨とかあるかもよ」
「じゃあ、シンちゃんも誘って行こうか」
「行こう!行こう!」
となった。

マコちゃん家に集合し僕等は小山を目指した。
踏切を渡り、高校を通過したら小山が見えて来た。
三人は小山に向かって田圃の中の畔道を進む。
小山に到着すると僕等はその雰囲気に呑まれ恐れを感じた。
森までは行かないが木々は林を形成し、山の斜面は所狭しと墓石が立てられている。
線香?腐葉土?何なのだろう墓地特有の匂いがする。
怖じ気づく三人。
恐る恐る墓石をぬい小山を上ってみる。
すると頂上付近に見下げる感じで穴が開いていた。
石室と言う穴なのだろう。
そんなことを知らない僕等は、冥界への入り口の様に感じた。
更に怖じ気づく三人。
そして誰が先に入るのか揉める。
穴は横一列で入っていける広さではないからである。
「じゃあ、じゃんけんで決めよう」
となった。

「じゃんけんぽん!」
負けたシンちゃんが先頭、次が僕、しんがりがマコちゃんと決定する。
三人は恐怖の為、グレイシートレインさながら、それぞれ前の者の肩を掴む体制になる。
斜面を下がって行くと穴は横に折れ、続く道には水が溜まっていた。
溜まった水には何故か蛙が生息していて落葉やゴミも沈んでいた。
懐中電灯を持ってくれば良かったと後悔する。
水に浸っている真っ暗な横穴は凄く不気味に映った。
これでまた更に怖じ気づく。
三人で恐る恐る横穴を伺っていたそのとき
ガァ〜〜〜ンンンンン!
鐘の様な音がした。
穴に反響したなんとも不気味な音。
冥界からの警鐘か。
その音が鳴ると同時に僕等は脱兎のごとく逃げ出していた。
走る走る走る。
恐怖に支配され、もう聞こえるのは風を切る音だけだった。

高校の近くまで来たところで僕等は立ち止まった。
息が切れ汗が吹き出る。
「なんだったんだろうあの音は... はぁはぁ」(汗)
「凄い音がしたよ... はぁはぁ」(汗)
僕等はさっき起った恐怖体験を語りだした。
そのとき
「...ごめん、あれ俺が石油缶蹴ったんだ」(汗)
とシンちゃんが告白。
何でも横穴の前に石油缶(一斗缶)が落ちていて横穴を覗こうとしたら思わず蹴ったようだ。
神経を張りつめていた僕等は、シンちゃんが誤って蹴った一斗缶の音に恐怖し逃げ出したと言う訳。
自然と笑いが起り僕等は腹を抱えて笑った。
なんともお粗末な結末。
でも凄く楽しかった。

それ以来、僕等はその古墳へは行っていない。
何か禁忌なものを感じたのか、興味が他のものへと移行したのか。
帰省した時に車窓からその小山を見る事ができた。
周辺は整備され道は広く住宅が立ち並んで当時の雰囲気とはかなり違っていた。
しかし、その小山を見た瞬間頭の中に音が響き渡った。
ガァ〜〜〜ンンンンン!
思わず笑みがこぼれた。続きを読む

バスごっこ

busgokko幼稚園に、4人乗りのブランコがあった。
2人ずつ向かい合わせに乗る大きなゆりかご状のヤツ。
当時、このブランコをバスに見立て“バスごっこ”が流行っていた。
電車ごっこではない。
バスごっこ。
田舎の主要移動手段はバスである。
電車は街まで行かなければ無い、しかも乗る機会も滅多に無い。
よって子供達が一番身近な乗り物であるバスが模倣されるのである。

役割は、運転手、車掌、乗客。
一番人気は車掌役。
ブランンコの中央に立って切符を切ったり、運転手に合図を送ったりする。
その様がカッコいいのである。
その為、この役が何時も取り合いになったり、時間交代制となる事が多かった。
そして、乗客役はほとんどが女の子だったので、女の子にウケるかどうかで車掌の善し悪しが決まった。
乗客ウケする車掌はもてはやされる訳である。
因みに、運転手は外からブランコを揺らす係なのであまり人気がなかった。
この役は、力仕事なので主に大柄の子がやっていたと記憶する。

乗客が手を上げる。
「どちらまで?」
草のお金を貰い、葉っぱの切符をパチンとパンチングする仕草。
「はい、出発します」
乗客の着席を確認。
「発車オーライ」
ちょっと眩しそうな顔をし運転手に告げる。

僕の車掌像は、黙々と仕事をこなす少し影のあるクールガイ。
バスに乗る度にリアル車掌さんを研究してた僕。
もう完璧な役作りが出来てるはずである。
僕は、完璧だ。
僕は、カッコいい。
乗客の女の子達の憧れの目、目、目。
僕は、注目の的だ。
車掌役は僕以外にいない。
と、思っていた。

ある日、女の子達の笑い声がブランコから聞こえてきた。
気になって見てみるとブランコでバスごっこ中。
ケンちゃんが車掌役をやっているようである。
女の子達の歓声。
大ウケしてるケンちゃん車掌。
「なんでケンちゃんが人気あるんだ」
よくよく見るとケンちゃんは車掌役にボケを入れていた。
酔っぱらった車掌の設定のようだ。
フラフラしたり、バスから落ちたり。
なんとケンちゃんはコントで女の子の人気を得ていたのだ。
「俺の正反対の事をやってる…」
その光景を見て僕は戦慄した。
僕のポジションが危うくなったように感じたのだ。

次の日、休み時間になると速攻でブランコへ行く。
バスごっこで車掌役を取るためだ。
今日の車掌役で確認するつもり。
何を?
自分の実力と自信を確認するのだ。
ケンちゃんよりウケなくちゃいけない。
かといってケンちゃんの真似をする訳にもいかない。
僕は、何時ものクールガイスタイルを通す。
いつもの完璧な車掌業務。
ケンちゃんには負けてないはず。
俺の方がカッコいいはず。

乗客役の女の子が言う。
「つまんない、昨日の車掌さんの方がいい」

僕の車掌生命が終った。

橋を作ろう

hashitsukuri家の前に川がある。
川と言っても田圃の用水のための幅が1mにも満たない小川。
メダカやフナなどが生息し、僕等子供にとっては格好の遊び場で、タモ1つあれば一人でも飽きなく遊んでいられた。
しかし、今でこそコンクリートで固められ暗渠になっているが、当時は剥き出しで道の横はすぐ川。
向こう岸に行くには川を跳び越えるか、点在する民家用の小さな橋を利用するしかない。
小学生くらいになると楽々と跳び越える事が出来るだろうが、小さな子供では跳び越えるには勇気がいる。
一歩間違えれば川に落ちてしまうし、跳べたとしても向こう岸は田圃の畦道、勢い余って田圃にダイブとなる。
だからよく川に落ちた。
子供だけじゃない、大人もちょっとの不注意で、落ちた。
僕は、子供心に考える。
「これは橋が必要だ。僕等子供達が川を縦横無尽に遊び回るには、もっともっと橋が必要だ。いや、これは大人の為にもなるのだ」と。

橋の工事に着手した。
パートナーは、近所のマーちゃん
大きな板を載せただけの簡易の橋では移動されたり不安定なのでその案は却下。
第一そんな大きな板なぞ見つからない。
僕等はもっとしっかりとした不動の橋を作ろうと思っていた。
第一の橋の候補地は主要の橋と橋との中間点。
ここに橋があれば何かと便利だろう。
その地点の田圃が最近埋め立てられ、その砂がまだ山積みになって残っているから丁度いい。
資材が既に現場に置いてあると云う事だ。
ここを拠点にあちこちに橋を造ろう。
僕等が考えた橋は、砂で川を埋めその上を移動しようとしていた。
考えれば、川を塞き止めてしまう結果になるのだが、オバカなちびっ子には結果がどうなるか分からない。
僕等はせっせと砂を運び橋造りに勤しんだ。

少量の砂では、川の流れに流されてしまう。
ここはブルドーザーの様に大量の砂を一気にぶち込まなければならない。
袋を使い砂を側まで運搬し山の様に溜まったら足と手を浸かって押し流す。
しかし、その方法でも半分は流れてしまう。
負けじとこの作業を繰り返し、なんとか半分まで橋(塞き止め)が出来てきた。
なんとなく形になってきたので、僕とマーちゃんは嬉しくなり勢い付いていく。
夢中になり橋の建設に勤しむ2人。

そんな時、母が買い物帰りなのか前を通りかかった。
僕は誇らしげに母に言う。
「お母ちゃん見て、僕等橋を造ってんの」
僕とマーちゃんは得意満面で母の顔を見上げる。
しかし、「なにやってんのあんた達!早く元どおりにしなさい!」と母は血相を変えて叫んだ。
まあ当然と言えば当然の結果であるが。
褒められると思いきや怒鳴られたので僕等2人は面食らう。
マーちゃんが平静を装うとしたのだろう、「よ、よし!直すぞ!」とうわずったかけ声をあげる。
しかし、ここまでやってまた砂を引き上げるのは重労働。
勢い付いていたのとは反対に徒労感が支配する。
「これでいいよね」
誰に許しを得るとも知れない言葉を吐き、足で砂を川に押し流し良しとした。

直ぐに川が砂を流して跡形もなくなると思っていたが、その後、何日も残ったままだった。
その前を通る度に、頓挫した橋建設計画を思い出した。
善かれと思ってやった事が、とんでもない事であったと言う話し。(笑)

カブト虫よりザリガニ その2

kabutozarigani2J湖は、予想以上に遠かった。
国道脇を延々と歩き、汗と埃に塗れ、やっと目的の湖畔に辿り着いた。
ヨッツンが自慢していたザリガニの漁場である。
しかし、探せどザリガニの影すら見えない。
予想はしていたが当てが外れガッカリした。
近くで釣りをしてるおじさんいる。
面白いように魚を釣るので、僕等はザリガニを諦めその様子に見入っていた。
それに気づいたおじさんが僕等に訊いてきた。
「どうかしたのか?」
「あ、いや…、ザリガニがいるって聞いたから…」
「ザリガニか〜、ザリガニはいないな〜、ザリガニは田んぼとかだろう」
とおじさんは器用に魚を釣りながら僕等と会話する。
その間も面白いように釣れていた。

僕等は、徒労感を背負いトボトボと来た道を返した。
真直ぐ続く国道は果てしなく見えたものだ。
「やっぱり嘘だったんだ。アイツの言う事はいい加減だからな〜」
誘った手前、僕はバツが悪いので、盛んにヨッツンのことを罵った。
日がかなり傾き空が赤くなってくる。
すると、急に弟のことが心配になってきた。
早く帰らなければと、少し早歩きになる僕。
そんな時、国道にかかる川で釣りをしてる三人の少年がいた。
見たところ僕等と同い年だが、知らない顔ばかり。
多分違う学校、この辺の地区の子供達だろう。
人懐っこいセーやんが声をかける。
「ねえ、なんか釣れた?」
向うも人懐っこいようだ、返事が返って来た。
「鯉が沢山釣れたよ」
「え〜!じゃあ見せてよ」
とセーやんは彼らの元に走って行く。
弟の事が心配な僕は、この行為に少し苛つく。
「セーやん!早く帰ろうぜ!」
「ちょっと待って、鯉見せてもらうから」
見せてもらった捕獲網の中は小さなフナばかりだった。
「だから言ったろ、“ちっこい”って!」
その冗談に僕以外が笑った。

やっとこさカブト虫の猟場に戻った。
しかし、弟が見つからない。
近くにいた建材屋の子に聞いてみた。
「あ〜、あの子か〜、最初名前呼んで探してたけど泣いて行っちゃったよ」
「どっちの方?」
「県道の方へ行ったから家に帰ったんじゃない」
なんか凄く悲しくなった。

セーやんと別れ家路につく。
家に帰ると弟は無事帰っていた。
来たときの記憶をたよりに帰れたみたいだ。
怒っていると思いきや、けろっとしていた。
母に訊いてみる。
「フミちゃん、泣いて帰って来た?」
「うん、コーちゃんがいないって泣いて帰って来たよ。はぐれたの?」
「う、うん… カブト虫捕りにいって友達と違うところで捕っていたらフミちゃんとはぐれちゃって…」
「ああ、そうだったの」
叱られると思ったので、弟を残してJ湖に行った事は言わなかった。
母には叱られなかったが、弟の笑顔を見ると胸が痛んだ。

休み明け、僕とセーやんは先生に呼び出しをくらう。
2人でJ湖に行ったのが何故かバレたようだ。
別に悪い事をしたつもりは無かったので、先生がなんで怒っているのかが分からなかった。
まあ子供だけで湖に行くのは危険と言うことだろう。
一緒に呼び出されたニッちゃんは、お父さんと釣り堀に行った事を怒られていた。
僕等は、まあいいとして、これは本当に訳が分からなかった。(笑)

おわり

カブト虫よりザリガニ その1

kabutozarigani1夏休み、僕は弟を連れてカブト虫を捕りに行った。
僕が五年生、弟が二年生の時だ。
場所は、以前兄と行き大猟に捕れた中学校裏の山。
そこは製材所のおがくず捨場にもなっていたので、カブト虫にとっては絶好の環境。
子供達の間では、カブト虫の猟場で有名だった。
以前、大猟に捕れたので、今度もそれを狙ってのこと。
弟にとっては、初めてのカブト虫捕りだった。

猟場に着くとすでに数人の子供がおがくずを掘り返し捕獲に精をだしていた。
大体が見知った顔。
状況を訊くと今日は不猟のようである。
「この下を掘ってみ、カブト虫がいるかもしれん」
そう言うと弟は、側にあった板きれを拾い素直に穴を掘り出した。
5センチ位掘ったらもう「おらんよ」と言う。
「もっと深くほらんと」と僕がやって見せる。
30センチ位掘っては場所を変える。
暫く2人でこの作業を繰り返していた。

いつの間にか子供の数が増えていた。
その中にクラスメイトの子を見つける。
「セーやん!」
「おお、コーちゃん!」
「誰と来たの?」
「一人だよ」
驚いた。
いつも仲間を集めての野球三昧の彼が単独行動をとるのは、珍しかったからだ。
そして僕の口からこんな言葉が出た。
「なあセーやん、カブト虫よりザリガニを捕りに行かん?」
「本当に!ザリガニってどこで捕れるの?」
「J湖に行けば沢山捕れるってヨッツンが言ってた」
「じゃあ行こう!行こう!」
となった。

J湖は、隣り町にある小さいけど一応湖。
道は、以前釣りに行った事があったので分かるが、片道は約3Kmもある。
弟を連れて歩く距離じゃないし、弟がいたんでは自分が自由に動けない。
「フミちゃん、ちょっとここで待ってろ。すぐ戻るから」
と弟に言うと、弟は何の疑いも持たずに「うん」と返事をしておがくずを掘り返す作業を続けていた。
すぐ帰るつもりだった。
しかし、子供の脚で往復6Kは、すぐに帰れる距離ではない。
当時は、どういう感覚だったのだろうか。

何故そんな誘いをセーやんにしたのだろうか。
以前、ヨッツンが自慢していたザリガニ大猟捕獲の話を聞いたからか?
否、ヨッツンの情報だから信憑性は薄いとみて話し半分で聞いていたはずだ。
本当にザリガニ捕りがしたかったのか?
多分、このまま弟と遊ぶより、同い年の子と遊んだが方が面白いと思ったからだろう。
その証拠に何の準備もしていない。
あるのは、カブト虫の捕獲用に用意したビニール袋だけだった。

僕とセーやんは、弟をその場に残し山道を下った。
テクテクあるいて国道に出る。
2人してザリガニの話題で盛り上がっていた。
僕の育った田舎では、ザリガニがほとんどいなかった。
農薬で全滅したのか、繁殖がここまで達してなかったのか、
田んぼや小川でザリガニを見かけかることはなかった。
たまに誰かが捕獲して学校に持ってくると、その子はヒーローになれたほどだ。
ザリガニは、それほど珍しかったのだ。

つづく
プロフィール

オカチン

あーかいぶ
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