では、『ブレードランナー2049』の話なんですけども。
 「そろそろ、ネタバレしてもいいかな?」って思ったんですよ。変な言い方だけど、今の段階で見てない人って、これから先も、もう見に行かないと思うので。
 なので、これから先も見る気がないという人にも、興味を持ってもらえるように喋ろうかと思うんだけど……いや、僕自身、この映画をそんなに強く推しているわけじゃないんだ。
 なぜかというと、先週も言った通り、俺、初めてこれを見た時の感想が「あれ?」だったんだよ。念のために、今週の月曜日にもう一度見に行ってみたんだけど。そしたら今度は、上映時間の半分くらい爆睡しちゃったんだよね(笑)。
 なので、「やっぱりこの映画、面白くねえよ!」と思ったんだけど。


 「ひょっとしてこの映画を面白くないと言ってるのって俺だけなのかな?」って、ちょっと不安に思ってたら、Facebookで友達になっている、『パトレイバー』を描いた漫画家の“ゆうきまさみ”さんも、「あれ? 俺、『ブレードランナー2049』イマイチなんだけど」って書いてたんだ。
 で、そうしたら、ゆうきまさみさんと繋がっている友達というのは、そうそうたるオタク界の重鎮みたいな人ばっかりなんだけど、そういう人らが「そんなことはない! 映像はいつまでも見れます!」とか、なんか一斉にフォローに回ってたんですよね。もう、本当に「我々は業界を上げてブレードランナーを守らなければならない!」という謎の秘密結社が出来てるのかと思うくらい(笑)。
 でも、俺はゆうきさんの言う、「あれ?」って感覚がすごくよくわかるんだ。

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 今日の話を結論からいうと、「予想、大当たり!」です。
 僕は、事前情報を全く見ないようにしていたんですけど、『ブレードランナー2049』は、スピルバーグの『A.I.』のリメイクだと思いました。
 『エイリアン:コヴェナント』とか『プロメテウス』が『2011年宇宙の旅』のリメイクだったのと同じく、やっぱりこれも、強烈なキューブリック・コンプレックスが作らせた作品だな、と。
 あとは、本当はリドリー・スコット監督の作品ではないはずなのに、“リドリー・スコット作品のレプリカント(複製品)”になってしまっているという残念さも、僕にはあったので、それについても語りたいと思います。

 ただし、こうは言っても、スピルバーグの『A.I.』も、『ブレードランナー』の影響を強く受けてるんだよね。
 『ブレードランナー』のラストで、レプリカントのロイ・バッティが「あとは消えるだけだ」というセリフを言うんだけど。『A.I.』でも、ジゴロのジョーっていう、最後まで主人公のデヴィッドと一緒に行動する、女の人を喜ばせる男型のセックスロボットが「僕は生きた。僕は消える」っていう台詞を言って消えていくんだ。あの台詞は、やっぱり、『ブレードランナー』のロイ・バッティから持ってきたものだと思うんだよね。
 だから、やっぱり「あれはこれのパクリだ」というよりは、「相互に引用し合って、すごい意識している」というふうに強く感じたな。

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 なんで、途中で寝ちゃうくらい、僕のこの映画に対する評価が高くないのかというと、確かに映像はすごく綺麗なんだけども、「基本的に、やろうとしていることがキューブリック映画だから」なんだよ。
 逆に言えば「これはキューブリック映画だ」と思って見たら、サービス満点でメチャクチャ台詞の多いキューブリック映画ではあるんだよね。これは『ブレードランナー2049』の楽しみ方の1つなんだけど。

 ただ、キューブリック映画として見た場合でも、ちょっと“画が弱い”。
 もちろん、映し出される映像は全般的にカッコいいんだよ? 例えば、一番最初、太陽光パネルがガーッと無数に並んでいるロサンゼルスの郊外の上をスピナーがシューッと飛んでいくシーンなんか、カッコいいはカッコいいんだけど。
 でも、「キューブリックだったら、こうは撮らないだろう」って思っちゃうんだ。まあ、こんなこと言ってもしょうがないんだろうけど。そういう弱さがあるんだよね。

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 じゃあ、なんで、以前の『ブレードランナー』が画として強く見えたのかというと、「かわいいから」なんだ。
 この“かわいい”という言語は、世界中でも日本人以外はあまり発見していない概念なんだけど。実は、この「かわいいか否か」というのは、映画がヒットするかどうかにすごく大きく関わっているんだよ。
 キューブリックの映画って、正直、かわいくないんだよ。ところが、『スターウォーズ』にしても『ブレードランナー』にしても、本当にミニチュアを作って、苦労して撮ってる特撮映画って、なんか、かわいいんだよね。前の『ブレードランナー』の、ビル街の中をスピナーが飛ぶシーンにしても、実際にミニチュア作って飛ばしているもんだから、そういった“無理してる感じ”がかわいく見えるんだ。
 だからといって、「今回の『ブレードランナー2049』は、特撮じゃなくコンピュータグラフィックだから、かわいくないのか?」って言うと、違う。だって、『カーズ』にしても『トイストーリー』にしても、ちゃんとかわいいでしょ? だから、「CGだからダメ」という話でもない。

 この、かわいさという、ちょっとした色気みたいなものを画面に乗せるかどうかってすごく大きいと思うんだ。
 ちゃんと日本でヒットしている『アベンジャーズ』シリーズなんかのマーヴェル映画と、『バッドマンvsスーパーマン』とか、『ジャスティスリーグ』みたいなDCコミック映画を比べると、DCの方はかわいくないんだよ、不思議なもんで。
 最近公開された『マイティ・ソー バトルロイヤル』は、俺、かわいいから見に行くことが決まってるんだ。ものすごい変な髪型をしたケイト・ブランシェットが、「アハハ」って振り返るシーンを見たら、もちろん「すごい! かっこいい!」っていうのがあるんだけど、同時に、なんかちょっとかわいいんだ。そういうふうに、画面全体にかわいげがあるんだよね。これ、案外、大事なんだよ。

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 その意味では、『ブレードランナー2049』は、キューブリック的な映画を撮ろうとしたあまり、画面からかわいげがなくなってしまっている。だって、特に苦労もなく、思った通りの画が作れてしまうわけだから。
 前の『ブレードランナー』は、所詮は特撮だから、なかなか思った通りの画が撮れないんだ。それを、ミニチュアとか合成で、なんとかごまかしてる。そこがかわいかったんだけど。今回は、そのかわいげが全然なくなってしまっている。
 で、そうやって、かわいげを見せないままに、ものすごい画を見せようと思うんだったら、キューブリックみたいに時間をかけて撮るしかないんだよね。もう本当に、構図1つについて何日もかけて考えるとかをしないといけないんだけど。
 それを、ハリウッド的なスピードで撮っちゃったので、かわいげはないわ、キューブリックみたいな非人間的な左右対称の構図なり、バッチリ決まったところもないわという、どっち付かずの画になっちゃったところが、寝ちゃうところだと思ったんだよ。
 俺、キューブリックの映画を見てても寝ないもんな。


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この記事は『岡田斗司夫ニコ生ゼミ』11月5日(#203)から一部抜粋してお届けしました。

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