『シン・ゴジラ』が変えてしまった認識、三つ目。

日本の映画プロデューサーのものの見方が変わるんじゃないかな、という話です。

日本映画のプロデューサーが『シン・ゴジラ』を見たら変わるだろう認識は、アイドルがでる漫画原作映画ってのはもう終わるだろうなと。

ゴジラの演技ってものすごく、おもしろく見えるんですね。
でも日本の映画俳優はみんな下手だと僕は言いました。
でも、舞台の上での彼らはすごくうまい。
なにが違うのか。


別方向から説明します。

実相寺アングルという言葉があります。
これは実相寺昭雄さんという監督が始めた独特のカメラアングルによる演出技法です。
実相寺監督は、ウルトラマンとかウルトラセブンとかの監督さんです。
実相寺監督が担当した回は、独特のカメランアングルで撮影しています。

カメラの前に何かものがあって、そのもの越しに、「なめ」っていうんですけどね。
なめ越しに人物を撮ったり、極端な魚眼レンズで撮るんですよ、
それがあまりにも特徴的だったので、実相寺アングルって呼ばれています。

なぜそんなことをしたのかというと、答えは簡単。
セットもしょぼければ衣装もしょぼくて、役者さんもそんないい役者さんを雇えるわけじゃない。
だから、画面の中で構図を斜めにするとか、魚眼レンズで取るとか、手前に電話機をおいて、大きく映ってる電話機の間から役者を撮るとか、そういうふうにしないと絵が収まらないよ、と実相寺さんは言ってます。

で、今回も『シン・ゴジラ』でそういうカメラアングルのシーンがありました。

具体的に言うと、放射線線量の異常が確認されたかどうかというシーンで、ヘルメットが手前にばーっとあって、向こうの方に小さく人物があったり。

あと、石原さとみと矢口が歩いてくるときに、カメラがそのままクレーンで上がっていって、向こうの方にモノレールのレーンがドーンと並んでる。この辺も、ある意味実相寺アングルなんですね。

なぜそいう見せ方になるのかっていうと、役者さんの演技だけではちょっと絵としてもたないからです。ほかに大きい背景を入れて、端っこのほうで一部見てもらいましょう、という。

それは、例えば落語家が、面白い話になってきたら、段々段々、今僕がやってるみたいに声を小さくするんですね。
声を小さくすることによって、聞いてる人の集中力を上げていって、バンッって声を出すっていう話し方を落語家さんはよく使います。

それと同じような働きが実相寺アングルにはあるんです。

最初に話した邦画『ゴジラ FINAL WARS』に出演している國村隼は、今回の『シン・ゴジラ』にも出てます。

『シン・ゴジラ』の國村隼は、自衛隊員です。
セリフ少ないですけど、すごく印象的で演技もめちゃくちゃ上手く見えます。

例えば、ヤシオリ作戦の立案で、こういうふうにするっていうの決めた後のシーン。
矢口に「ありがとうございます。申し訳ありません」っていうふうに言われた後、「仕事ですから」っと短く答えるんですね。
この時の國村隼は、すごく自信があり気で、演技が上手く見える。

では、それとそんなに時代が違わない、FINAL WARSの時の國村隼どうだったのか。

冒頭、変な外人の役者が、SFセットの真ん中で轟天号っていう潜水艦だか宇宙船だか分かんないやつに乗っているシーンです。ゴジラが手前にいて、ゴーっと言ってビームを発射する。横の方でグラグラ揺れてるところで手すりを握りながら、國村隼が「艦長、もう限界です」と言ってるんです。

何度も、この「艦長、もう限界です」って言ってる日本映画の中の典型的なダメ演技をやっている國村隼と、今回のめちゃくちゃ上手い國村隼は同一人物なんですよ。

つまり、國村隼の演技が下手なんじゃないんですね。
そうじゃなくて、シン・ゴジラの中での國村隼っていうのは、やることが決まってるんです。

普通の邦画の欠点は、役者にやることを考えさせちゃう点です。
言い換えると、役者の想像力ではなくて、空想力に頼っちゃってるんです。

(中略)

そうじゃなくて、もっと徹底的に役者を縛らなきゃだめなんです。
徹底的に、これしかできないというふうに縛る。

例えば『シン・ゴジラ』の会議シーンがなぜ面白いのかって言うと、役者がみんな無表情だからなんですよね。

日本人の会議って、無表情で当たり前なんですよ。
官僚の会議も無表情で当たり前だから、僕達はその無表情から相手の真意を読もうとするんですね。

観客が空想力というか想像力を使うのが正しくて、役者は表現力しか使っちゃいけないんですよ。

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この記事は『岡田斗司夫ニコ生ゼミ』2016年8月7日から一部抜粋してお届けしました。

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