最近、Financial Timesに立て続けに2回も、"グーグルに領分を侵食されて困窮しているマイクロソフト"という風刺画が掲載された。両社の株価だが、グーグル(3番目の図)の大幅上昇に対して、とマイクロソフト(4番目の図)は下落している。

マイクロソフトが出現した時、コンピューターを企業の一部の特殊な人間が使う機械のお化けから、老若男女が簡単に使えるお役立ちマシーンに変身させた。その発展は非常に目覚しく、特に1985年ごろから1996年ごろまでは、早くて安くて簡単・便利という効果・インパクトが加速して、我々の仕事や日常生活をキラキラと輝かせてくれた。



素晴らしい変化を作り出したマイクロソフトだが、彼らと同様な情熱で、しかし異なったアプローチで、早くて安くて簡単・便利という効果・インパクトを追求するグループも出現した。

ネットスケープというインターネット・ブラウザーを開発して販売を始めたネットスケープ社だ。当初はインターネットを『おもちゃ、お遊び』と馬鹿にしていたマイクロソフトも、インターネットの計り知れない重要性を認識した後は、自社のブラウザー(Internet Explorer)を開発して追いつこうとした。
しかし、Internet Explorerは製品的には劣っていたらしく、このままでは自社のビジネス・モデルが破壊されると危惧したマイクロソフトは、自社のブラウザー(Internet Explorer)を無料化して、有料販売のネットスケープを倒産に追い込んだのだ。新興企業を暴力的に叩きのめしたのだ。


しかし、ネットスケープとブラウザーの出現によって、新しいパラダイムへの扉は開いてしまったのだ。
マイクロソフトのビジネス・モデルは、OSと各種ソフトウェアを密接に絡ませて、OSとソフトが分離しない一体構造的に動いている世界を作り出し、それによって『他社のソフトウェアよりもマイクロソフトのソフトウェアのほうが良さそうだ』と思わせる戦略だ。

この戦略によって、OSの高価な価格での販売が可能になる。
また、頻繁にOSのアップデートを繰り返すことで、他のソフトウェア企業が彼らのソフトを新しいOSに対応させる作業に時間を費やすように仕向けた。OSが変われば、ソフトウェアは動かなくなるからだ。OSに従属(隷属)する他社ソフトという関係を築いたのだ。
また、OSとソフトウェアの接点となる部分を他社には遅らせて公開することによって、自社ソフトが優位にたてるような措置もとられたようだ。特に、ワード、表計算という企業向けのソフトウェア分野では高い収益が望めたために、OSと同時に不要ともいえるようなアップデートが実施された。また、周辺の小さなソフトは、他社の力をそぐために意識的に無料で配布が行われた。



そんなマイクロソフトのビジネスモデルに対して、ネットスケープとブラウザーの出現によってもたらされた新しいパラダイムは以下のようなものであった。
(1)インターネットがパソコンの中心に位置するようになるのであるから、パソコンの中心はインターネット・ブラウザーになる。
(2)様々なソフトは、ブラウザーに付随するようにする。
(3)インターネットを通じてソフトが作動するように、ソフトは小さく軽量であるべきだ。
という考え方が基本になっている。

これは、マイクロソフトの考え方とは完全に反対である。マイクロソフトのソフトは、OSと分離不可能な方向を追求するため、複雑で重たく馬鹿でかいサイズになる。ソフトの一部分の変更でも影響が多方面に及ぶために、改良が困難になっている。また、筆者の勝手な推定では、OSとの密着性のため、セキュリティの確保が困難な宿命を背負っているように思われる。

もし、多くのソフトがブラウザーに付属するようになれば、OSの役割は非常に小さくなり、OSの高価な価格は設定不可能になるし、ブラウザーの変化にOSが追随するような状況に追い込まれることも考えられるのだ。