金融バブルの崩壊で苦しんでいる欧米を尻目に、中国とロシアが発言力を強めようとしている。
両国とも貿易黒字を維持しているわけで、資金繰りに苦慮している欧米とはえらい違いだ。しかも、欧米は景気拡大策の手法をめぐって仲たがいしているのは昨日書いたとおりだ

中国国内では、欧米など怖くない、弱腰外交政策から脱し、世界の強国として振舞うべきだという論調が出ている。下のFTの記事にも掲載されたが、『Unhappy China』という国粋主義的な本がベストセラーになっているようだ。
今年になって、中国からアメリカへの要求も声高になってきた。
(1)アメリカに投資している中国の財産が安全である様にしろ!=米国債権の下落を防止しろ!&USドルの下落を防止しろ!さもなければ米国債投資をやめるぞ!
(2)SDRは、ドル、円、ポンド、ユーロの加重平均だが、価値の下がりそうな通貨ではなく、もっと安全な構成に変更するべきだと主張
(3)中国の経済水域(?)に情報収集で進入した米国のスパイ船の活動を妨害、、、
などが目だっている。

これは、昨年来の対先進国向け輸出の縮小で失業した労働者(=農村出身の低所得者が多い)が、不満の捌け口として『国粋主義的な運動』に共鳴して過激な行動をとる状態がエスカレートすると困るという政治的な配慮(=ガス抜き的なことをする)も含まれて入るが、本質的な中国のベクトルが『中華思想=大国意識』であることいは間違いない。

最近はロシアも国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成資産にルーブルや人民元、金などを含めることを要求している。
SDRは5年ごとに構成割合などが見直されることになっている。次回は、2011年が見直しの年だと思うが、今後2年間はドルの比率低下が何かにつけて話題に上るだろう。

なお、欧州通貨(ユーロ、ポンド)はUSドルほどには世界の投資家から需要がない。
しかし、金融危機克服のために加えて、東欧危機への救済資金も必要で、赤字国債の発行が史上例を見ないレベルにまで急増している。
投資家は腰が引けている状態で、ドイツもイギリスでも、発行予定の国債が入札で需要不足(=札割れ)に陥る状態が起こっている。(下のFT記事)

2009年に始まったG20は、変化した世界経済を素直に反映した『お金に余裕のあるリーダー不在』を反映したものとなっているが、まだ始まったばかりだろう。
歴史は後戻りしない。欧米先進国には辛い時代が継続しそうだ。

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