*** 2010年の株価形成の主役は交代する ***

株式投資は人間が営んでいる行動だ。
人間の決断は理性に基づく計算を感情が背中を押すことによって最終判断が実行されている、と私は解釈している。

通常は、理性が確認して計算した答えを、感情が後押ししている。
バランス良く、役割分担がなされている。

しかし、心が恐怖に支配されてしまうと、理性の確認計算を無視して、または省略して、逃げ出したいという感情が全てを支配してしまう。こうしてパニックが起こる。
反対に心が高揚感に支配されてしまうと、
理性の確認計算を無視して、または省略して、私も参加したいという感情が全てを支配してしまう。こうしてバブルが起こる。
図に描くと下のようなものだろう。

理性と感情_2_20091217


大底からの反発という第1フェイズは、パニックから平常時に移行するという変化を反映した株価の動きだ。第2フェイズは、平常時の状態を反映した株価の動きだ。したがって、第1フェイズと第2フェイズでは、株価を支配する主役が異なる。

第1フェイズの主役は、「札束を積み上げて啖呵を切った」バーナンキFRB議長

09年の大底からの反発の第1フェイズでバーナンキ議長が演出したのは、世界の中央銀行による無制限の資金供給という札束攻勢を指導して「悲壮感に支配された人々の感情を沈めた」ことだ。経済全体が凍り付いて全員の金繰りが干上がった状態を中央銀行の「見せ金」が投資家の頬をひっぱたいたのだ。

その功績が認められて、タイム誌Person of the Yera 2009(今年の人)に選定された。(下の写真)

Person of the year TIME_20091217


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しかし、反発上昇の第2フェイズ(2009年10月以降、第2フェイズに入ったと私は判断している。)では投資家の態度が様変わりする。
また第2ファイズの特徴はイライラする時間が長いことだ。図示すれば下図のようなイメージだ。終わってみれば上がっているが、その間のほとんどの時間はヤキモキしていることになる。

第2フェイズ図_20091221


第2フェーズの投資家は、冷静にリスク・テイクを進める

投資家は既に理性を回復し、冷静にリスクを判断している。それゆえ、危険な投資先には誰も資金を投じないため資金偏在が長期化する。投資家は各国、各企業に現実の利益がシッカリと戻ってくるのかを見極めている。

利益見通しが改善しなければEPSの改善を希望的に先取りした高い株価を支えきれない。第1フェイズではとりあえず期待を先取りして、戻ってくるだろうEPSに対応した株価まで買い上げているのだ。
仮にその期待が揺らぐようだと、株価は不安定になる。09年10月半ば以降に下落した日本株がそれだ。投資家の冷静さが、地域や国の配分に関しても、魅力のある地域を積み増す行動を加速させる。反対に魅力のない投資対象は長期間見捨てられることになる。これが第2フェイズの格差拡大の要因だ。

いずれにしても投資家はもう冷静だ。第1フェイズで買えなかった投資家の多くは、「また暴落が来ないかな? そしたら今度こそ買うんだ!」と言う。ここ半年ほどの間に頻繁に聞いた台詞だ。
そんな暴落はなかなか来ないものだ。新興国で▼70%という激震は簡単には再現されない。

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第2フェーズの主役は、民間セクター(設備投資と個人消費)

第1フェースの主役はバーナンキFRB議長だったが、第2フェイズの主役は民間セクターにバトンタッチされる。

歴史的に見て第2フェイズでは、企業経営者の姿勢が好転して企業の売り上げ見通しを改善させ設備投資意欲が盛り上がる。同時に個人所得増加の希望が復活して消費が持続的に拡大する。この民間セクターの両輪の活性化を反映して、株価は順調に上昇していく。

第2フェイズで民間セクターの両輪が活性化すれば資金需要が増大する。
民間銀行は企業の増大した資金ニースに応じて資金を貸し出す。中央銀行は経済の活性化に対応して、市中銀行に資金を供給するが、民間企業には直接資金を供給しない。

もし、(1)民間セクターのマインドが好転しなかったり、(2)金融機関が将来見通しに悲観的になって企業への資金供給を絞り込んでしまって場合には、、、、、、
民間企業に直接的に資金を貸し出したいと考えても、中欧銀行は民間銀行の代役として直接企業へ貸し出すことができないし、あくまでも民間セクターが自分でマインドを好転させるのを待つしかない

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株式投資の世界で、第2フェイズで重要なことは、投資家が期待する現実の利益の復活だ。
投資家が要求しているのは、民間セクターの復活(設備投資や消費)なのだ。
これを中央銀行は直接創り出すことはできない。
つまり、中央銀行・FRBは民間セクター(=民間銀行や民間企業や消費者)の代役にはなれないのだ。

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09年後半の経営者の姿勢や消費者の態度を考慮すれば、経済が相当程度に安心できる安定成長軌道に乗るまでは、先進国の中央銀行は超低金利の副作用を理解しつつも、超低金利の資金供給を停止できないだろう。

その結果FRBの大量の資金供給が市場の金余りを拡大させて低コストのドル・キャリー・トレードの原資を供給し続ける状態が第2フェイズの間中継続する。
( キャリー・トレード:低金利国で資金を借りて、その資金使って高金利国に投資する手法。ドル・キャリー・トレードは、ドル資金を借りて、即ドル売り/外貨買いの為替取引をして外貨を得て投資するので、ドルは売圧力にさらされる。)

ドル安新興国の資産バブルを引き起こすというドル・キャリーの副作用を認識しつつも超低金利政策を続けざるをえない。

そんな金融政策に対して部外者は無責任な非難を浴びせかけるだろう。
インフレになったらどうする! 低金利では預金が増えない! 過剰流動性は悪だ!
2010年はアメリカは中間選挙の年になる。選挙民に擦り寄った政治家の暴言が増えるのが2010年だ。こんな無責任な政治的な圧力を上手にかわしながら確固たる金融政策を維持する政治手腕がバーナンキ議長には求められているのだ。

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2010年を通じて第2フェイズが維持される可能性が高い。何故なら金融引き締めの開始は現在のコンセンサスよりも後ズレすると考えているからだ。

なお、第一フェイズと第二フェイズの違いを図示すれば下記のようになる。

2010年_2

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