中国の輸出企業には目もくれず、内需企業ばかりを推薦するのかと質問される。
今日は少しまとめて書こうと思う。

まずは、日本と中国を「今の中国は日本の***年代」という言い方が多いが、私はそういう単純なパラレル比較には反対だ。日本と中国は、時代背景、国土の条件、利用できる産業金融技術、、全てが異なっている。
過去の歴史に学び、現在進行形で変化するファクターを考えるに際して参考になる部分だけを抽出して利用すれば良いのだと思う。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

下のチャートは1985年以降の日本の輸出企業とTOPIX(黒太線)の株価推移だ。
ここには掲載していないが、トヨタも1990年までは日立とほとんど同じ動きをしている。

1985年以降の日本の輸出がダメになったわけではないが、輸出企業の株価は内需企業に長期間にわたって負けてしまった。
1.円高、2.金利低下、3.円高恐怖症で国内にとどまってジャブジャブになった資金が一気に内需株に流れ込んだ。

日本輸出企業_20100604

外需企業の不振は円高の影響が大きい。
1985年2月28日:262.80円
1995年4月28日:79.95円
10年2カ月で、138円(▼70%)の下落=年間▼18円(▼6.9%、262円に対する単純年率)の下落だ。

1か月▼0.5%(当初価格に対する割合)にすぎない。。。のだが・・・
ただし、最初の2年間の下落率が激しかったので、輸出企業の株価への悪影響が大きく、その後の円高恐怖症が定着したと言える。

還元すれば、秩序だった通貨高であれば、企業も様々な対応ができていたかもしれないが、歴史にはたらレバはない。
そして、現在の中国は日本の轍を踏まないことに留意しているだろう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日本の戦後を振り返って、やや時代の特徴をデフォルメして書けば・・・・・
昭和20年代(1945-1954)、、、破壊され多くを失った状態から、とにかく立ち上がることを努力した
昭和30年代(1955-1964)、、、がむしゃらに働いたが、生活は少ししか豊かにならなかった
昭和40年代(1965-1974)、、、がむしゃらに働いたので、生活は豊かさを実感できるようになった
昭和50年代(1975-1984)、、、会社や住居の電化が進みは快適さを享受するようになった
昭和60年代(1985-1994)、、、がむしゃらには働かなくなったが、経済は何故かにぎやかだった。
そして、1995 年意向はジワジワとデフレ経済に突入したのが日本だった。1万円スーツ、百均、安価な中国製品の浸透が顕著になったのも、1995年以降だ。

戦後の日本の豊かさの実感の変化労働者の所得の名目上昇率に関係している。
この庶民の所得の上昇率は重要なポイントだと思っている。
企業が生み出した利益が、経営者、労働者、株主にどのように還元・配分されるかで、消費がどの程度盛り上がるかが決まるからだ。

そういう目で最近のホンダやFoxconnの賃上げ上昇の記事を読めば、今回のホンダ、Foxconnは+20%〜+30%で驚いてしまう。

賃上げ_20100603

しかし、6月6日には、マネージャークラスに限ってだが、賃金倍増に追い込まれている。下のBloomberg記事

Foxconn_20100607

これまでの過去10年に関して、業績の上昇を下回る賃金上昇に抑え込んで、我が世を謳歌していた輸出企業という実態がある。
Foxconnの過激な賃上げ実現を契機に、デモなどで不満を表明すれば、過激な要求を通せると考えて、かえって不満を爆発させる可能性もある。短期的には、社会の安定の維持という点からも、かなりネガティブな感じがする。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

やや乱暴で短絡的な表現だが、下の図を書いた。
鄧小平の先富論が明確に顕在化したのは、1992年の南巡講和以降だ。
そこからの10年間は、右端の飛び出した者が短期間に大幅に豊かになった。
富裕層が出現した。ポルシェやフェラーリが世界で一番たくさん売れる中国が出現する基礎ができた。

2003年〜2008年は、先進国で住宅金融バブルが発生し過剰消費になったので、BRICsに未曽有の好景気をもたらした。
賃金上昇率は高まり、農村からの出稼ぎ労働者も、それなりの恩恵に浴した。

しかし、2008年のリーマンショックで、農村からの出稼ぎ労働者の一部は使い捨てのモノ(=コスト要因)として切り捨てられた。これが変化の始まりだと思う。2009年から労働争議、暴動が顕在化した。
富の再配分が必要とされるレベル、時期になったというサインだと思う。

富の再配分_20100604

富の再配分とは、賃上げだ。業績上昇に比例する分の賃上げなら問題はない。
しかし、
労働者を部品同様のコスト要因(=モノ)として取り扱うビジネス・モデルでやってきて、業績以下の賃金支払いで済ませてきた輸出企業とっては、これからは荷が重たい時代が続く
そしてこの状況は、2010年代の大部分の特徴になると思う。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人民元と輸出企業の関係は大いにある。受け取る代金が自動的に減るのだ。
現在の輸出企業は以下のような「前門の虎、後門の狼」というジレンマの状況に置かれている。

世界景気が悪いので輸出がさえない。
だから貿易黒字が少ない。
その結果、人民元の切り上げ圧力を回避できる。

世界景気が回復すると輸出需要が増加する。
すると貿易黒字が増加する。
その結果、人民元切り上げ圧力を回避できない。

どっちに転んでも、輸出企業の利益には暗雲
が立ち込めている。
雲の濃い/薄いは多少はコントロールできるだろうが・・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一方、賃金上昇 は内需企業には朗報だ。
だから、リーマンショックを契機として内需/外需企業のパフォーマンス逆転が始まったのだ思う。
昨年までが、その第一フェイズだろう
2010年後半から第二フェイズが始まると思う。

中国内需_20100603

下はJPモルガンの資料でBloombergに出た「セクター別の年間所得の推移」だ。
縦軸は、人民元
金融の6万元=90万円だ。( 年収300万円=20万人民元と換算して良いと思う。 )
物価の違いがあるが、上海では、1000万円で、東京の1億円の生活ができるらしい。(裏を取っていないです・・・)
ならば、6万元=90万円というより、400〜600万円という価値換算がイメージ的に妥当だと思うが、最新の状況は住んでいないので知らない。

51077503

こんな資料もある。
追う者、追われるもの、、、こんな相対位置にあるようだ。

世界の所得_20100607