新興国の問題
第一は、インフレだ
早い経済成長とは、巡航速度以上の経済成長だ。
巡航速度+αの経済成長が長期間継続すると、副産物としてインフレが発生する。
+αに追い付けない部分の物資やサービスが不足傾向になるからだ
これは自分のせい、つまり成長の痛みだ
インフレを抑えるには、+αに追い付けない部分(遅いランナー)に合わせて、経済成長をスピード・ダウンさせて一息つくしかない。
通常は金利レベルと、信用の量のコントロールが使われる。
一方、眼下の穀物高騰問題は、広い意味では+α速度の副産物だが、ペース・ダウンでは解決しない
何故なら、下図にあるようにタイムラグを伴って食文化が先進国化するので、経済成長速度を落としても、1〜2年という期間では、経済成長を多少減速させても、それが給与ダウン、食文化逆転というプロセスは発生しない。
仮に、起こっても長い時間差を経てようやく起こるので、それが起こる程度まで経済成長をダウンさせてしまえば、経済の根本にダメージを与えてしまう
第二の問題は、先進国で進行しているDe-Leverageingの余波を受けて、経済成長速度の+α部分が小さくなることだ
多くの新興国は成長のために資金が必要だが、国内にそれを賄う資金(蓄積された資本、社会的な貯蓄の絶対量)が足らない。海外から資金を輸入することになる。海外ローンが主たるものだ。
普通の投資家は、よくわからない海外には投資しない。かなりの魅力を上乗せ(=高金利)して初めて、海外投資家が振り向いてくれる。株式投資家が動き出すのは、さらにその後になる。
リーマン・ショックを経て、欧米の金融機関は軒並みレバレッジを下げさせられた。
レバレッジが高い時は、小さなマージン案件でも、大量に実施して、利益の絶対量を稼ぐことができた。
しかし、レベレッジが下がると、投入できる絶対的な資金量が減ってしまうので、以前よりも大きなマージンが無いと以前と同じ量の利益を稼げない。
新興国にとっては、以前以上にかなりの魅力を上乗せ(=高金利)して初めて、海外投資家が振り向いてくれることになる。新興国バブル+サブプライム不動産金融バブルのころだと、潤沢な資金が回ってきた「やや魅力に欠ける案件」には、現在の欧米の資金はサッパリ状態になっていると思う。投資家が本来の健全なリスク・リターン判断を取り戻したのだ。海外投資家が平時体制に戻ったのだ。
その結果として、新興国の経済成長の+α部分が小さくなる。長期的には健全で地道な経済発展が生み出されるので良いことだ。しかし、体力のある新興国と体力の無い新興国の格差は広がってしまう。
こんな時期は普通の株式投資家は国内株に籠って海外株には振り向かない平時の状態に戻ってしまう。これが2009年から現在まで続いている新興国のおかれた状態だ。言わばフツーの状態だ。
平時は国内株しか投資しない普通の投資家が海外株、ましてや新興国株に熱くなるのは、新興国相場がなかり温まって以降の話だ。これは毎度のことだ。過去の事例だと、2年連続で素晴らしいリターンがでたら、3年目にフツーの投資家が「何だ?何だ!」とやってくる。
先進国の問題
De-Leveragingは、資金の受け手(新興国など)に回る資金が減るだけではない。市場から資金を借り入れて、より高い案件に投資して利鞘を稼いでいた先進国の金融機関にも被害が及んでいる。
かれらは短期で借りて長期に投資する。長期金利は高く、短期金利は低いので、内外金利差+長短金利差のダブルで利鞘を稼ぐのが常だ。しかし、これは低利借り換えの自転車操業が永続的に可能だと言う前提に立っている。
De-Leveragingによって、市場に出回る資金が減少した。全員が低利借り換えの自転車操業の恩恵に浴する時代が終わったのだ。資金が来ないと、黒字でも倒産するのが、金融機関の宿命だ。
金融機関の連鎖倒産は、国家経済を麻痺させる。事実、リーマンショック後のDe-Leveragingによって、欧米の巨大金融機関があっけなく破綻した。その尻ぬぐいは民間では手に負えないほど巨大だった。国が国債を発行して、尻をぬぐった。
民間金融機関が抱え込んでいた不良資産と巨額借金は、政府部門に移転された。国民の税金が尻拭いすることになった。
Bail-Out=救済処理、Too Big To Failが欧米諸国を覆い尽くした。
これで終わりではない。問題は、不良資産と借金がまだ増えているということだ。これが先進国の眼下の問題だ。PIIGS諸国を見れば、当初見込みの数倍の金額が、Bail-Out=救済処理につぎ込まれている。
極端に言えば、現在のPIIGS諸国はドイツの白紙小切手によって生き延びている状況に陥ってしまった。( 下はPIIGSのCDSスプレッド )
今や、国家が当然の前提としていた低利の国債発行による永続的借り換えの自転車操業に疑問が呈され始めている。これがソブリン危機の本質だ。先進国がこのような事態に陥ると予想した投資家はごくごく例外的にしか存在しなかったと思う。
下は日本のCDSスプレッドだ。混迷する政局、低迷する経済、相次ぐ国債の格下げ、、、にもかかわらず、検討している。日本人が90%以上の国債を買っているからだ。
以前から何回か書いているが、100bpを越えたら、ミニ・パニック、が来ると思う。
いつなのか?
来るのか/来ないのか?
複雑な方程式なので、解が出てこない。
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目次 : 先進国 VS 新興国
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第一は、インフレだ
早い経済成長とは、巡航速度以上の経済成長だ。
巡航速度+αの経済成長が長期間継続すると、副産物としてインフレが発生する。
+αに追い付けない部分の物資やサービスが不足傾向になるからだ
これは自分のせい、つまり成長の痛みだ
インフレを抑えるには、+αに追い付けない部分(遅いランナー)に合わせて、経済成長をスピード・ダウンさせて一息つくしかない。
通常は金利レベルと、信用の量のコントロールが使われる。
一方、眼下の穀物高騰問題は、広い意味では+α速度の副産物だが、ペース・ダウンでは解決しない
何故なら、下図にあるようにタイムラグを伴って食文化が先進国化するので、経済成長速度を落としても、1〜2年という期間では、経済成長を多少減速させても、それが給与ダウン、食文化逆転というプロセスは発生しない。
仮に、起こっても長い時間差を経てようやく起こるので、それが起こる程度まで経済成長をダウンさせてしまえば、経済の根本にダメージを与えてしまう
第二の問題は、先進国で進行しているDe-Leverageingの余波を受けて、経済成長速度の+α部分が小さくなることだ
多くの新興国は成長のために資金が必要だが、国内にそれを賄う資金(蓄積された資本、社会的な貯蓄の絶対量)が足らない。海外から資金を輸入することになる。海外ローンが主たるものだ。
普通の投資家は、よくわからない海外には投資しない。かなりの魅力を上乗せ(=高金利)して初めて、海外投資家が振り向いてくれる。株式投資家が動き出すのは、さらにその後になる。
リーマン・ショックを経て、欧米の金融機関は軒並みレバレッジを下げさせられた。
レバレッジが高い時は、小さなマージン案件でも、大量に実施して、利益の絶対量を稼ぐことができた。
しかし、レベレッジが下がると、投入できる絶対的な資金量が減ってしまうので、以前よりも大きなマージンが無いと以前と同じ量の利益を稼げない。
新興国にとっては、以前以上にかなりの魅力を上乗せ(=高金利)して初めて、海外投資家が振り向いてくれることになる。新興国バブル+サブプライム不動産金融バブルのころだと、潤沢な資金が回ってきた「やや魅力に欠ける案件」には、現在の欧米の資金はサッパリ状態になっていると思う。投資家が本来の健全なリスク・リターン判断を取り戻したのだ。海外投資家が平時体制に戻ったのだ。
その結果として、新興国の経済成長の+α部分が小さくなる。長期的には健全で地道な経済発展が生み出されるので良いことだ。しかし、体力のある新興国と体力の無い新興国の格差は広がってしまう。
こんな時期は普通の株式投資家は国内株に籠って海外株には振り向かない平時の状態に戻ってしまう。これが2009年から現在まで続いている新興国のおかれた状態だ。言わばフツーの状態だ。
平時は国内株しか投資しない普通の投資家が海外株、ましてや新興国株に熱くなるのは、新興国相場がなかり温まって以降の話だ。これは毎度のことだ。過去の事例だと、2年連続で素晴らしいリターンがでたら、3年目にフツーの投資家が「何だ?何だ!」とやってくる。
先進国の問題
De-Leveragingは、資金の受け手(新興国など)に回る資金が減るだけではない。市場から資金を借り入れて、より高い案件に投資して利鞘を稼いでいた先進国の金融機関にも被害が及んでいる。
かれらは短期で借りて長期に投資する。長期金利は高く、短期金利は低いので、内外金利差+長短金利差のダブルで利鞘を稼ぐのが常だ。しかし、これは低利借り換えの自転車操業が永続的に可能だと言う前提に立っている。
De-Leveragingによって、市場に出回る資金が減少した。全員が低利借り換えの自転車操業の恩恵に浴する時代が終わったのだ。資金が来ないと、黒字でも倒産するのが、金融機関の宿命だ。
金融機関の連鎖倒産は、国家経済を麻痺させる。事実、リーマンショック後のDe-Leveragingによって、欧米の巨大金融機関があっけなく破綻した。その尻ぬぐいは民間では手に負えないほど巨大だった。国が国債を発行して、尻をぬぐった。
民間金融機関が抱え込んでいた不良資産と巨額借金は、政府部門に移転された。国民の税金が尻拭いすることになった。
Bail-Out=救済処理、Too Big To Failが欧米諸国を覆い尽くした。
これで終わりではない。問題は、不良資産と借金がまだ増えているということだ。これが先進国の眼下の問題だ。PIIGS諸国を見れば、当初見込みの数倍の金額が、Bail-Out=救済処理につぎ込まれている。
極端に言えば、現在のPIIGS諸国はドイツの白紙小切手によって生き延びている状況に陥ってしまった。( 下はPIIGSのCDSスプレッド )
今や、国家が当然の前提としていた低利の国債発行による永続的借り換えの自転車操業に疑問が呈され始めている。これがソブリン危機の本質だ。先進国がこのような事態に陥ると予想した投資家はごくごく例外的にしか存在しなかったと思う。
下は日本のCDSスプレッドだ。混迷する政局、低迷する経済、相次ぐ国債の格下げ、、、にもかかわらず、検討している。日本人が90%以上の国債を買っているからだ。
以前から何回か書いているが、100bpを越えたら、ミニ・パニック、が来ると思う。
いつなのか?
来るのか/来ないのか?
複雑な方程式なので、解が出てこない。
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目次 : 先進国 VS 新興国
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こちらのP.12右下の表をご覧いただけませんでしょうか?
http://www.mlit.go.jp/common/000131895.pdf
タイトルは「供給」なのですが、思い切って1人当たり平均既摂取データとみなすと、中国人は総カロリーや動物性を日本人以上に獲っていることになるので驚きました。
目先は牛肉の味にとりつかれる中国人が出ると思いますが、日本人ですらメタボを気にせざるを得なくなりましたので、人間の限界としてこれ以上のカロリーは止めようとなるかもしれないと感じました。
また、牛乳摂取は実はカラダに悪いという先進国の調査結果などもあり、中国人がそれに早く気付けば、牛による穀物不足も多少緩和されそうな気がしました。