12月4日か5日のギリシアの国民投票

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23974020111103
にあるように、事実上の最後通牒が出た・
(1)サルコジ大統領は「ギリシャは引き続きわれわれと共に進みたいかを決めなければならない」と発言。
(2)メルケル首相も、ギリシャを加盟国としてユーロ圏が安定することを望むが、ユーロ圏の安定は、最終的にはギリシャの救済よりも重要との認識を示した。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-23973520111103
から読み取れるのは、
パパンドレウ首相が、
(1)政界だけでなく、より幅広い総意が必要
(2)民主主義の賛成を得るための甘いエサ(緊縮の延期など)が欲しい
と主張している事実だ。
民主主義とは、ここまでギリシアを甘やかしてしても維持するべきモノなのだろうか?

いずれにしても、これから1か月・・・様々な駆け引きが暗躍する
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_336258?mod=WSJWhatsNews
に書かれているように、
サルコジ仏大統領とメルケル首相によると、パパンドレウ首相は、国民投票は早ければ12月4日か5日に実施される可能性があると述べた。
その前にギリシャ議会は、国民投票を実施するかどうかについて採決しなければならない。

ギリシアの一部には、現在の厳しい緊縮条件付き援助を否決して、でもユーロには留まりたい
そう言っているグループもいるようだ。

これまでも、出来ない緊縮を「やります」と言い続けて、騙し騙し、援助をもらってきた
それがギリシアだった。
それが一転、その芝居を止めるのだろうか?
そして、次は何を演じるのだろう?

現状でも、ギリシア国民が「冷静なら」緊縮条件付き救済案は可決されるだろうが、
馬鹿なグループが、民衆を扇動すれば否決される

日本のTVでも「年金が削減されるなんて、ギリシア国民が反対するのは当然ですよね」などという感情的な同情論を言うコメンテイターもいる。民主主義の投票は水ものである。

投資家が恐れている事は、ドミノ倒し
1.ギリシアが、デフォルトして、ユーロから離脱
2.なら、ポルトガルだって、スペインだって、イタリアだって・・・

そういう連想で、市場(=投資家)がPIIGsの資金調達をシャットダウンする

PIIGsは借金の自転車操業の継続が、「notデフォルト、ユーロ維持の必要条件」だから、資金調達は何が何でも継続しなければならない。

そして資金調達とは、投資家の金を得る事だ。

もし、うるさい投資家に見切りをつけるなら、自分でお金を印刷するしかないが、ECBにユーロ紙幣の印刷権限を握られているので、
1.ユーロから離脱して、自国紙幣を印刷する
2.ECBから紙幣の増刷を黙認してもらう
3.欧州外の誰かから、何かと交換条件で、援助をしてもらう
という、危ない橋を渡ることになる


現在は、紙幣を印刷できないので、ブンデスバンクに借金しているのがギリシア

<< ユーロ・システムは、金本位制に酷似 >>

前回(ユーロ導入は、金本位制で味わったと同じ苦痛を、参加国に課している)、ギリシアは、
(1)統一通貨のユーロ・システムに参加した。
(2)貿易相手国がユーロ採用国なので、景気が悪化や貿易赤字増大、信用リスク悪化を、為替レート切り下げで吸収することができない、
と説明した。

この状態は、金本位制の時代に世界の経済政策が「固定為替という金の鎖」に縛られていた状態である。


<< 為替が変動しないので、貿易収支は一方的に格差が拡大する >>

為替が動かせない場合、国際競争力の改善には非常に長い時間がかかる。その間に貿易収支の赤字は一方的に増加する。
投資家は競争力改善を呑気に待ってはくれない
あっという間に債務不履行懸念が増長し国際的な危機が発生する。

もし、同一国内の地方間格差であれば、地方交付税などを使って中央政府が調整できる。
夕張市に対する地方交付税は、その典型例だ



<< ユーロ紙幣とゴールドは、同じ地位にある >>

輸入代金の支払い(貿易決済)だが、自国通貨を持つ国なら、通貨を印刷して、それを貿易決済通貨に両替して相手に払えば良い。
勝手に自国通貨を印刷すれば、為替は下落するが、当座の支払いに窮することはない

ユーロ採用国では、輸入代金を支払う手段はユーロ紙幣だ。
ユーロ紙幣の印刷権限はECBが持っている。各国政府は勝手に印刷ができない。
ユーロ紙幣の国内在庫が尽きれば、輸入代金支払が不可能になる。

この状態は、金本位制の下で、「貿易赤字になれば国際決済通貨である金貨・ゴールドがどんどん国外に流出し、ゴールドが尽きれば輸入ができなくなる」のと同じだ。
金貨やゴールは、紙幣のように印刷して増やすことができない。
その意味では、ユーロ紙幣はゴールドと同じ地位にある。

<< 足らないお金を支払う手段は? >>

ユーロ・システムでは、ある国でユーロ紙幣が不足したら、別の国から借りることになっている。
正確に言えば、黒字国の中央銀行が赤字国の中央銀行にユーロ紙幣を融通(=貸与)している。

貿易信用は、当該国の銀行が企業に貿易信用を供与するが、その信用決済は細かな部分を捨象すれば最終的には中央銀行に集約される。
そしてユーロ採用国間では、各中央銀行間の相互の信用供与の形に収斂する。

下図は、ユーロ・システム内部の中央銀行間の貸借関係を示したものだ。
この中央銀行間の貸し借りは、現状では自動的&無制限に行われている。
ドイツやルクセンブルグなどの少数の黒字国の中央銀行が、その他多くの赤字国に資金を融通している状態が明確に見て取れる。

( 下図上部:ユーロ・システム内部の貸借関係 )
 ドイツにおんぶにだっこ
(上図下部:ブンデスバンク(ドイツ中央銀行)が他国に融通している金額)

これまで、貿易とサービスの決済の過不足を、中央銀行間で自動的に無制限に貸し借りしてきたのは、ユーロ発足以降2007年までは赤字国があっても、規模が少額だったからだ。
最大の債権者であるブンデスバンクでも、上チャートで見れるように、2007年までは他の中央銀行に対する資金貸し出しは少額だった。

その状況が一変したのは、サブプライム証券化商品が崩壊した2007年夏以降だった。
その後はドイツの貿易黒字・サービス黒字が巨大化して、欧州間の赤字国と黒字国の格差が広がる一方だ。


<< ギリシアの負債は、ギリシア国債、救済ファンド、中央銀行の借金 >>

ギリシアが返済する義務を負っている負債は多額だ。
ギリシア国債、EFSF(=救済ファンド)から救済融資、中央銀行の借金、そのすべてを完済する必要はないが、「一旦は形式的に返済して、また信用を得て借り換える」という永久自転車操業を維持する必要がある。
そのためには、将来的に一時的かもしれないが、一旦は負債総額が減少するかもしれないと投資家を思わせる必要がある。

国家がデフォルトを宣言されれば、この中央銀行間の自動融資システムも止まるか条件付になるだろう。
その場合は、欧州内の貿易サービスは決済リスクに直面し、ビジネス・リスクの回避コストが上昇して経済の縮小が余儀なくされるだろう。
これが欧州各国が、ギリシアのデフォルトを必死で回避しようとしているもう一つの理由だ。

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目次 : ちょっと真面目に、為替を考えてみる

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