前回の続きです。これで、今シリーズは一旦終了です。

輸出を支える製造業の棄損は、国内雇用に大きなダメージを与え、格差の拡大の再生産プロセスが動き出すとも書きました。貿易収支が赤字化した国家では、国家経営の考え方を変えて、格差の拡大の再生産プロセスを緩和しなければなりません。

まずは、下図のA国B国の比較をご覧ください。
両国は、同じような貿易赤字の推移をたどります。

A国
では、輸入が「80→189」と、倍以上に増加しますが、輸出も「100→155」に+50%増えます。
B国では、輸入が「80→143」と、それなりに増えますが、輸出は「100→110」と微増にとどまります。

A国は、輸出と輸入の差額である貿易収支の赤字は増えますが、輸出の絶対額も+50%も増えますから、国内の製造業はそこそこ元気で、製造業の雇用もそこそこ維持されるでしょう。
輸入が大幅に増えていますが、国内消費が旺盛な内需に支えられている結果でしょう。

B国は、輸出が横ばいです。国内製造業は沈滞ムードで、製造業の雇用の維持は厳しいでしょう。
A国と比べ貿易活動が不活発ですから、景気は低迷しているでしょう。

貿易収支比較

両国の違いは何でしょう?

端的に言えば・・・・
A国:国家経済の主役の変化に応じて、新しい経済の主役を応援して伸ばして行こうと考えるか?
B国過去の主役を守ることに拘泥して、新しい主役の伸びる芽を摘んでいるか?
・・・という事でしょう。

高齢者・富裕層・企業を中心とする証券投資などの投資活動による受け取り利息配当金の増加で、彼らはドンドン豊かになります。
A国は、彼らに国内でドンドンお金を使ってエンジョイしてもらい、そこから税金や雇用を生み出そうという作戦(政策)を推進します。
フェラーリ、ポルシェ、ヨット、別荘、なんでも買ってもらいましょう。
レストランで食事をして、タクシーにふんだんに乗ってもらいましょう。
お歳暮、お中元、贈答活動を活発にしてもらいましょう。
内需景気とはこうやって盛り上がるものです。

彼らをいじめて、「いっそ海外に移住。。。」なんて思わせないようにしましょう。
どうやったら、彼らから気持よくおこぼれを頂戴できるかの作戦を練りましょう。
国家、地方政府、、これらはホテルと同じです。
気持ちよくタマリとお金を落としてもらうのが筋です。


民主主義的には、新しい主役は不満が多いでしょう。
汗水たらさず金を稼ぐ連中が跋扈するように見えるからです。
しかし、新興国をはじめとして、世界にはもっと汗水たらして頑張るライバルが出現してしまったのです。
国家としては、戦法を変えなければなりません、、、国が滅びないように!

B国は、、、、やめときましょう

最後に、「A国のような状況で、輸出が維持&増加できるのでしょうか?」に関しての私の回答です。
貿易黒字時代と輸出品は変わります。
国内の豊かになった高齢者・富裕層・企業が消費するモノは海外から見ても魅力がある商品・サービスです。これが新しい輸出(物+サービス)の増加に寄与するのです。
それって何?初めは、トライ&エラー、下手な鉄砲も数撃ちゃ当る、という感じでしょう。そんな中から国内の豊かになった高齢者・富裕層・企業が気に入り、世界を魅了する商品サービスが生まれてくるものです。
これが新生日本の姿だと、私は期待しています。

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特集目次 : 経常収支の構造変化と新生日本
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