facebookやブログで、何回書いてきたフレーズがある。
55を得るために、45を捨てる

企業が成長するために、
1:新分野に進出したり、
2:ビジネス・モデルを組み変えたり、
3:商品やサービスに改良を加えたり、
様々なチャレンジをする。

その時必ず、過去のベネフィットをあえて廃棄する決断を迫られる。
トレード・オフという言い方もあるだろうが、新世界に最適化した姿、組織、手法は、現(旧)世界に最適化したそれとは、異なる。
前に進むためには、その部分を切り捨てて、新しいものに入れ替えなければならない。

新世界に最適化した姿、組織、手法が、旧世界のそれよりも大きな利益改善を生むならするなら、廃棄する旧部分も大きくなる。

問題は、改善効果、改善後の利益増加と、廃棄する過去利益が、同時には入れ替えられない、という点だ。
過去の廃棄損失が先に出る。売り上げや利益の減少が先に表面化する
ラッキーであれば、その後逸失利益を大幅に上回る改善効果が顕在化する。
しかし、自分は頑張っても、ライバルが自分以上に頑張ったり、自分に先んじで新世界に到達したら、自分の「過去の廃棄」は当初予定の利益を生まない。

この将来利益の不確実性があるから、多くの企業は保守的になる。
前進するための自己破壊に怯え、たじろぐのだ。
そして座して死を待つ、という見苦しい状態を露呈する。
現(旧)世界での利益が大きければ大きいほど、見苦しいほどの保身行動に陥ってしまう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

マイクロソフトの悩みは、まさにこれである。
高価格のOSは、とんでもなく高いマージン率で、巨額の利益をもたらしてきた。
だから、ゲームや消費者向けネット・ビジネスで、他社なら倒産するほどの巨額赤字を出しても、マイクロソフト全体では高い利益を計上してこれた。
MS-Officeの高価格も同じだ。必ず企業が買ってくれるので、無料もしくは1/3以下の類似品を尻目に高価格をエンジョイしてきた。

マイクロソフトが思い描く新分野、新ビジネス・モデルに到達するために、OSやOfficeの価格をライバル並みに値下げする必要があるとしたら、マイクロソフトはどうするだろうか?

これは、10年以上も前から言われ続けてきた。しかし、アップルは混迷していたので、PCは安泰だったし、企業も「無駄金かもしれないと思いつつも」黙って、新OSと新Officeに金を払い続けてくれたので、左うちわ状態のマイクロソフトが続いてきた。

水面下では、様々な事がマイクロソフトにネガティブに変化していたかもしれないが、ビジネス・ファンダメンタルの数字となって表面化しなかった。
たまたまリーマンショックが引き金となって、PCビジネスを取り巻くファンダメンタルの悪化が加速した。
リーマン・ショックは、マイクロソフトにとって最も金払いの良い顧客である金融業界を直撃した。
業界はリストラ、縮小の嵐が吹き荒れている。2013年は少々改善するかもしれないが、まだまだ昔の姿には戻らないだろう。

同時にアップルの快進撃が始まった。iPadの大流行は、ただでされ苦境が始まっていたPCを打ちのめした。
高機能スマホの登場は、若者のPC離れを加速させた。


そんな中、2012年、マイクロソフトは、ついにOSの価格を大幅に引き下げた。
アップグレードに関しては、▼75%という値引きだと思う。
Officeの高価格維持もあやしい雲行きだと伝わってくる。

45を捨てざるを得ない状況になって、現実に捨て始めたのだ。
この「捨て」は、マイクロソフトの能動的な行為だろうか?
55の獲得「計画」に裏打ちされた45の廃棄だろうか?


55の獲得とは、スマホ、PCをクラウドでシームレスに接続して、企業も消費者も顧客として囲い込んで、そこから利益を得ようという意図だと思う。

それは正しい。
問題は、マイクロソフトが頑張っても、ライバル(グーグル、アップル、アマゾン)が、マイクロソフト以上に頑張ったり、マイクロソフトに先んじで新世界に到達したら、マイクロソフトの「過去の廃棄」は当初予定の利益を生まない、という懸念だ。

マイクロソフトは、ルビコンを渡り始めた。
しかし、渡るなら一気に渡らなければならない。
その「一気さ」があるのか?
今日現在の春山には、「まだYes判断ができない」

facebookコメントへ