2011年07月

2011年07月30日

天使達の鎮魂詩 特別編1 カチュア

報を聞いて愕然とした。

「ミネルバ様が・・・!!!!!!????」

しかも、マリア姫様も殺されたという。
牢の窓から落とされ、見る影も無い姿にされて。

しかもやったのはアベルという騎士。
レフカンディで見たきりだが、
エストはカッコいいとはしゃぎ、
姉パオラも見惚れていた美丈夫だ。

ミネルバの戦死により、
マケドニア白騎士団は改変せざるをえなくなる。

しかもミシェイル王子の竜騎士団に統合されると
なれば、ミネルバの子飼いであった3姉妹の
扱いは難しかった。



カチュアは、ミシェイル王子に呼び出された。

「ミネルバの仇を討つ気はあるか?」

開口一番の質問がそれだった。

「それは、実行犯を殺せという命でしょうか?
それともその人物の属した一軍を潰すと
いう作戦の参加の是非でしょうか?
もしくはミネルバ様を追い詰めた人物への
報復ということでしょうか?」

すべて自分自身への皮肉だった。

ミネルバ様のためにと思ってやった事がすべて裏目に出た。
それは彼女を追い詰め、死に追いやった。
悔やんでも悔やみきれなかった。

「・・・く」

・・・?

「・・・・くく。くはは。くははははははは。
ふはははははははははははははは。
あはははははははははははははははは!!!!!!」

「・・・ミシェイル殿下?」

「カチュア。俺を殺せ」

もう訳がわからなかった。
ミシェイルは自ら、愛用の白銀の槍をカチュアに渡す。

彼の瞳には、光はもう見えない。


カチュアはその場で跪き、槍を返す。

「カチュア」

諭すような、懇願のような。
そんな声。

カチュアは、答えた。

「殿下は死するべきではありません」

もしここでミシェイルが死んだら、
2人の死は本当に無駄になる。

人生の半分を牢で過ごしたマリア姫。

その妹を助けるため羅刹と化した主ミネルバ。

その死を無駄にしないためには、
覇を唱えた王子が死んではならない。

「失礼します」

何の反応も示そうとしないミシェイルに一言ことわって、
退室する。

廊下を暫く歩いた時、またあの笑いが
聞こえた気がした。

カチュアは、今日も涙した。

どうしてこんなことに。

それだけだった。

そして、ふと気付く。


ミシェイル王子も、きっと同じ気持ちだと。

 続く


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2011年07月28日

偽りのアルタイル 第2章あとがき

まずは久遠のプレイ日記。
今回の話の基のプレイ。

・第2章 ガルダの海賊

出発の時門番に「へっへっへ王子。昨晩は
お楽しみでしたね」とか言われちまったぜ。
国王とオグマが血の涙流しながら睨んでくるが
どうかしたかな?

後顧の憂いを断つ為、ガルダの海賊の
殲滅に向かう。オグマはシーダに剣を捧げる
頼りになる傭兵だ。
こっちのサジマジバーツはノルンにイチコロだが
おこぼれが回るこた無い。
ただでさえ男女比率が悪いのに役立たずが
いい目見れると思ってんのかああん?
遠目に拝んで死んでいけ。

お「この文章の前半と後半の質の違いは
なんとかならんのか・・・・!?」

まずは北の部隊との攻防。定石はドーガを橋に
武器無しで居てもらい、手槍などで迎撃。
おおちゃんと肉の壁になってノルンの経験値の
足しになったなサジマジバーツ。
仰向けに倒れた先にノルンちゃんのパンチラは
あったか?
「オグマ隊長・・・すまねえッ・・!」
全員おなじセリフかよ。さすがMOB。
つっまんねーw

お「人でなしかお前はぁぁぁぁあああっ!!!!」

西からの部隊と、詐欺師カシム。「母の薬代が
必要なんです・・・」
シーダが金渡す。仲間に。
ところでこの金どうなるでしょう?
「フレイ。拾っておけよ」「はっ」
ひとをだますなんて。ころされてももんくは
いえないよかしむ。
「クク。タダで囮役が手に入るとはな。戦場と
いうのは面白い」
左様ですな。
バシュゥゥゥゥウウウウ・・・・
「母さん・・・ごめんよ・・・」

お「お前一辺でいいから振りかえれぇぇぇぇえ!!!」

マルス、フレイ、シーダと、そこそこのメンツが
いる上、ノルンも役目を果たす位の器量はある。
順調に撃破し、経験も積まれる。
シーダ結構強くね?力も平均よりちょっと下くらいで
速さがベラボーに高い。
ノルンも順調。いい感じ。

レナを救えっつて金くれた。
いいけど・・・
売られたほうが幸せじゃね?
俺らが助けるとほぼ死ぬよww
一回は食うし、二回目がないようなら下賜するし
全員飽きた時に使えなそうなら・・・・・・・・・

エサになって貰うしwww

お「ドライ通り越してダークすぎるわぁぁぁあ!!!!」

お決まりのセリフになりつつあるな。

どこが手強いんだこれw

お「くっ・・・今はせいぜいほざいているがいい・・・」
(しかし一人も死なせずにというプレイしかしたこと
ないため、ある程度犠牲を許容するとどの程度の
難度かはっきりと言えず、不安な私)

 続く

・ガルダの海賊 補足

お「バーカw」

ちっ。しまった。おかのん の的確だがカタい文をゲシガシ削ったら
仲間一人分丸々消しちまった。
ダロスって海賊がいただろす。
また存在感の薄いヤツでおかのんに指摘されるまで気付かなかった。
ちゃんと仲間にしてたのになあ。
で、こいつもハゲ坊主。
まあデータを聞くとクズなので、ぼちぼち育てていこう。
最終決戦には強制参加の「SFCでは削除」組なので、しょうがない。

「もう、海賊はイヤだ」
ああそう。食い扶持くらいは働けよこら。

ボスの武器は手斧なのでノルンだと危ない。
シーダも武器の相性が・・・ フレイでいくか。

しばらくかかりそうなので目の前の砦で
シーダと休憩コース。
ノルンも物欲しそうにしてたので3P。
しかしあれだなシーダお前意外に巨乳だな。
ケツもやわこくてでかいし。
ノルンはスレンダーだが抱くとちゃんとオンナ。
身体中ぷにぷにでイイね。
後、毛が生えてないのも気に入った。
ボンキュッボンでユルめのシーダとしゃらんとしてキツキツのノルン。
うん。当分飽きねえわ。
4発ほど中に出すと「シ、シーダねえさま、たすけてくださいいぃぃぃ・・・」
といってぐったりし始めたので、シーダに任せる。
ゆったりレズプレイを見ながら2発ほど出すうちに
城攻めも終わったようだ。

さて、レナの具合も楽しみだ。

 *

はいここまで。
・・・カシムは生き残ってもらいました。

私は個人的にはだいっ嫌いなんですが、
キャラが立ち過ぎてるのでつかいやすそうで、つい。

今後もこんな風に生き残って、戦闘以外で使うキャラが
出てくるかもです。
その辺も許していただけるようならぜひ楽しみに。

オグマさえろくな目に遭いません。
どうなるんだろう。
(↑本気)



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2011年07月26日

~偽りのアルタイル~ 第2章 ガルダの取引 その3 協定

「くそっ、くそっ、くっそぉぉぉぉおお!!!」

ガルダの副頭領・・・デネブが頭領を殺した以上
事実上のトップの男だ。
見たままに荒れている。

「どうすんです、親分」

「うるせえ!てめえもちったあ考えろ!」

「降伏する際大事なのは印象っす。逆らう気が
ないことをちゃんと証明するには・・・」

「やつらをぶっ殺す方法をだよ!!」

海賊らしいセリフかもしれないが今は薄っぺらい。

兵力はすでに事実上ない。
ここにいるのは幹部クラスだ。

そもそもガルダ海賊は、ガルダ港を牛耳るドーン一家が、
ライバル商船を邪魔する目的で作った私設軍のようなもの。
自警団と海運業を兼ねている。

独占によって海産物の値引きがされにくいのが
問題な程度で、住民にはメリットのほうが
多いくらいだ。

前の頭は常にガルダ全体を見ていた。

荒くれ者が娘を襲ったり、
酒によって暴れるのはどこででもある。

ならば纏め上げてある程度でも管理する。
自分達が守ってやってると思わせればムチャは
しなくなるし、血の気は海賊業ではらせる。

なにより幹部の意見を吟味した。
ルタルハが参謀になれたのはそのおかげだ。

だがゴメスはただの鉄砲玉だ。
ごねてその位置にいるに過ぎない。

ルタルハはあの人の作ったガルダが消えるのが
我慢ならなかった。玉砕して何になる。
しかし率いるのがゴメスではどうにもならなかった。

 ・

「ノルン」

「はい」

「『自壊』は出来るな?」

「するまでもないでしょう」

「ほう?」

落ち着き払った声に興味がわく。

「参謀のルタルハは実利主義ですが義理堅い。
あの男はガルダを残したいはずです。
城を囲えばたいして待たずに動くかと」

ふむ。

・・・・・・

「モロドフを呼べ」

「はい」

 ・

「では、一両日中はヒマだな」

「おまえはな」

こっちは王子としての仕事がいくらでもある。
優先度の高いものからこなさなければならない。

「手伝おう」

・・・・・・・・・

「明日は槍でも降るのかという顔だな」

矢ならわりと降るので笑えない。

「こうみえて慣れている。まあ見ていろ」

言ってみたかったらしい。満足気だ。

実際有能だった。こちらがアドバイスを受ける
場面が頻繁にあったほどだ。

途中からノルンがモロドフの件で入室した際、
彼女も手伝うと言い始め、甘えるが、
村長の仕事も手伝っていたと言う彼女と比べても
随分と速かった。

「なんでまた手伝う気になった?」

くふ、と笑い、

「今夜の相手をして欲しいのでな」

「ばっ・・・・!!」

あわてて止めるがあの夜のことは周知の事実だ。
ノルンも聞きおよんでいるだろう。

彼女のほうをみやると、耳まで真っ赤にしながら
しかしちらちらとこちらを窺っている。

デネブがとんでもないことを言い出す。

「おまえも混ざるか?」

「よろしいのですか!?」

は!?

「二人で可愛がってやろう。なあ?」

抗える道理はなかった。
弱みはこちらにある。
最高に最悪なことに、すでに仕事は
あらかた片付いている。

 ・

「可愛かったなぁ?」

すよすよと眠るノルンの髪を撫でながらデネブがからかう。

ノルンか、俺か。両方か。

シーダも、ノルンも、犯したのは両方俺なのに、
今回はマルスに寝取られたような気分だった。

ノルンはアリティア勢の中でも、
素に近いアイルを知っているだろう。
それでも認識は、『マルス』としてだ。

どう答えたものかわからず、
どれでもない答えを探してしまい、つい、

「お前がか?」

などと口走った。

流石に驚いたようだったが、
まんざらでもない様子を見せるので、
今度は本当に可愛く見えてしまった。

引っ込みがつかなくなり、
初恋の女が寝ている横で、再び肌を重ねた。

 ・

またさらに2日後。
内からの手引きでゴメスはフレイに打ち倒される。
その時点で全面降伏してきた。

「カシム」

「は、はいっ・・・」

「お前は今日から『シュテルン商会』の大旦那だ」

シーダ、ノルン、モロドフはともかく、
海賊含めその場全員のあいた口が塞がらない。

アリティア騎士達を下がらせる。

「貴様はこの界隈じゃ有名な詐欺師だ。
だからこそ『心を入れ替えた』と触れ込み、
行動が伴えば、絶大な信頼を得る。

海賊ども。
お前らにすれば頭がすげ変わるというだけだ。

励め。
ルタルハを中心に好きにやれ。

カシムは担ぎ上げておけばいいが乗せる必要は全くない。
精々看板として引っ張りまわせ。

・・・いいなカシム。身を粉にしろよ。
立派な大旦那であることがお前の生命線だ」

真っ青でコクコク頷くカシムを尻目に、

「何かやらかしたら俺に伺いをたてずにさっさと殺せ。
その時はルタルハ。

・・・お前が後釜だ」

と、ルタルハにつげる。

大旦那とは名ばかりで、ガルダの奴隷に等しい。
今はシュテルン商会だったか。

 ・

城攻めの最中、町の者から直訴があった。
レナというシスターが攫われたのを助けて欲しいと言うのだ。

快く引き受けてはおく。

「どうするのだ?」

「・・・まあ、どうせサムスーフは通らねばならん。
大した手間でもあるまい」

ふと意趣返しを思いついた。

「なんだ、やきもちか?」

反応は期待と反対であった。

「可愛いものだろう?」

と、甘えた上目遣いをしてくる。
相手が女である時点でこの手のことはハンデが
ありすぎる。

アイルは沈黙するしかなかった。

 続く

okanonn at 22:30|PermalinkComments(4)TrackBack(0) FEFFN 偽りのアルタイル 

2011年07月24日

タクティクスオウガ

ゲームの選択肢のイメージ。

宝箱です。開けますか?

→はい
 いいえ

という、何でもないもの。

頼む! 攫われたお嬢様を救い出してくれ!!

→はい
 いいえ

という、選択の余地のないもの。

準備はいいか?

→はい
 いいえ

単に確認。

重要な選択肢はあるにはあるけど、
マルチストーリー的なものに触れたのはこれが初めて。

そして受けた衝撃ではコレに勝るものにいまだめぐり合っておりません。
タクティクスオウガ
オウガ1
オウガ3
オウガ4

エピソードⅦにあたるそうで、
「伝説のオウガバトル」の続編、「オウガバトル64」の序章・・・
だ、そうですが。

要はスターウォーズと同じで風呂敷たたむ気あるのかという
長丁場なんですが、ファンは何時まででも待ってんですよ。

それぞれ関連はあっても独立してるのが救い。

記事の最初の選択肢の話ですが、ちょっと書けません。
知ってる人には今更で、知らない人にはネタバレだし。

でもこの『手加減ナシに戦争』な選択をプレイヤーに委ねる
この感じは、ゲームならではな気がします。

遭遇戦やトレーニングに時間を食うので、
ちょと長くなりますが、最近出たリメイク版はどうなのかなあ。

GBAの外伝はなんとしてもコレをやった後で。

「主人公XXXXXXの若い頃ってマジ!?」

存分に慄いてください。


okanonn at 22:30|PermalinkComments(2)TrackBack(0) ゲームの話 

2011年07月22日

天使達の鎮魂詩 第6弾 ミディア編

天使達の鎮魂詩 第6弾 ミディア編

「・・・んあ?」
「騒がしいのう」

数日前から彼らはここにいた。

アカネイア騎士の生き残りが何故か地下から移されたのは
どういうことなのか。

「戦闘が起こっているようです」

ミディアは軍靴の音を聞きつけた。

牢の中では外部の情報など手に入らない。
だが、王都パレスが戦闘状態ということは・・・

「「ニーナ様が軍を起こして帰還されたのだ」」

「・・・そう考えたいのう」

ミシュランとトムスが同時に語る。

ボアが相槌を打つ。

ミディアは高揚感を憶えた。

自分が雌伏に耐えた事は、無駄ではなかった。

「けどよ。俺達がここに移された理由ってのはすると・・・・」

トーマスがふると、重騎士二人がそれぞれ

「人質か」
「取引材料か」

と答える。

「まあそんなとこじゃろう」

その時、弓兵と魔導師が部屋に入ってきた。

「あれか。見せしめに殺しておくという騎士達は」

「・・・もっと最悪だったか」

「時間が無い。さっさと殺すぞ」

「やめろっ!!!!!!」

構える矢の前にミディアが壁になる。

「ミディア。そりゃあ逆じゃ。
盾になるべきは老い先短いわしじゃろう」

ボアの言葉にしかしミディアは耳を貸さない。

「いえ。誰一人失っていい仲間など」
「そりゃそうじゃがお前が一番死ねんじゃろうが。
アストリアはどうするんじゃ」

下唇を噛む。

「それでも・・・」

守りたかった。彼らを。
共に戦い、ニーナ様を守った。
最後はカミュに敗北したが、
カミュに会えたからこそ姫は逃げ延びた。
彼らが、いたから。

「ええいうるさいッ!!!!! やれ!」

ヒュッ!

「ぐうっ!!!!」

肩に刺さりこむ鏃。

「うおおッ!!!」

ミシェランが庇おうとするが、狭い牢の中では上手くいかない。
壁を背にして、無傷でいられるのは1人かせいぜい2人。

トーマスはまるで動こうとしない。
目が死んでいる。

その彼が、ポツリと呟く。

「ミディア・・・」

「な・・に・・・?」

「俺さ。お前に惚れてたんだ」

は・・・・・!?

「この牢生活の中で、俺も歪んじまったけどな。
あの誰とも繋がれない地獄で、お前を犯すのを
想像することだけが舌を噛まなかった理由だ」

今更なぜそんなことを。
いや、今だからか。

「・・・なら、ここから脱出出来たら一度だけ・・・

一度だけ、しようよ」

トーマスが、強張った。

身体を許す、とか、犯されてあげる、とは出てこなかった。
その程度には、見てくれていた?


しようよ。


「だから、あきらめないで。お願い」

「無駄だよ」

それは、まだわからないはずだ。

「それは無駄だった時でいい!!!!!」

 ・

マルスがたどり着いた時には、
ミディアはこときれていた。

「遅かった・・・・か・・・・」

言葉を交わす者もいない。

マルスは、鍵を持っていないといって、その場を離れた。

四人だけになった時、トーマスはミディアの服を脱がし始めた。

「何をやっとるんじゃお前さんは!?」
「うるせえジジイッ!!!!!」

振り返った彼は眼が血走っていた。

彼の中に渦巻くものは何だったのか。

だがそれでも、この下劣な行為を、もう誰も止めなかった。
止めれば止められたろう。
しかし、止めなかった。

「コイツと俺との、約束だ」

絹ずれと、ぴちゃぴちゃという卑猥な音だけが静かに響く。

「へへ、まだあったけぇや」

最低なセリフだった。
震えた声でなければ、さらに最悪だった。

倒れる時に、トーマスを見て、彼女は微笑んだ。
それを知っているのは、彼だけだった。

 終


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2011年07月20日

~偽りのアルタイル~ 第2章 ガルダの取引 その2 詐欺師

二日後。
あえて宣言どおりの日。

ガルダの本拠地に向けてアリティア軍が進む。

こちらは鎧を着けた軍隊だけに、水上は動けない。
だがむこうは海賊。
平気で渡って来るし、斧の一撃はなかなか強力だ。

「・・・セオリーどおりの進軍だな」

デネブは退屈そうだ。

「・・・だからといって飛び回るなよ。
ハンターも少なからずいる。用心しろ」

「わかったわかった」

と言いながら、事もあろうに突然飛び立った。

「おいッ!!!!!!!!!!!!!!」

「用心はする」

その声が聞こえたかどうかも解らない。
すでに小さくなっていた。

 ・

位置関係からして中ほどの小島の上空。

「しばらくかかりそうだな・・・」

のろのろとした進軍だ。
デネブはおやつにすることにした。

持ってきたマドレーヌその他と、
果物の汁を混ぜた茶を取り出す。

凍らせておいたのでちょうどいいころだ。
マドレーヌも茶もアイルの手製だ。

食べることにかなりの執着を持つアイルは、
城の厨房によく行く。

しかも作るほうでもだ。

シーダも上手かったようで記憶の中にはレシピもあるが、
当のデネブが料理に興味がない。

そこへ行くとアイルは上手かった。

きっちり量を測りタイミングを計って、
単純ながら集中力の必要な作業を繰り返す。

化学反応としての解釈をしながら、
舌に快楽を感じさせる工夫を凝らす。

「あいつは生まれてくる親をそもそも
間違えたのだろうな」

気がついたら孤児であった時点で、その可能性は高かった。

そんなことを考えながら、
手のひらほどもある菓子を2つもたいらげ、
最後のタルトにかかろうとした時、

ヒュッ!!!!!

「ひゃ!!?」

幸いペガサスの方がよけたが、
デネブは自分で結界を張っていた。
であるからむしろ、

「私のタルト・・・」

菓子を落としたほうが痛恨のようだった。

「・・・真下の小島か」

タルトの恨みは恐ろしいのだ。

 ・

数時間後。
デネブが戻ってくる。

若干不機嫌にアイルが問う。

「・・・なにをやっていた」

「それなのだがな」

「王子!」

ハンターが一人ついて来ていた。

聞けば母親の薬代が欲しくて、
海賊に雇って貰っていたという。

食い物の恨みで追い回したら、どうやらシーダの
記憶にあったので話しかけてみたらしい。

アイルは笑顔を崩さず、

「そうか。心強いよ。

さっそくだけどここから南西の砦に補給物資があるんだが、
正確な量がわからないんだ。

明日本隊が着く前に纏めておいてもらえないだろうか。

いきなり雑用のようなことでごめん。
でも今は手の空いてるものがいなくて・・・」

「お任せください!!!!!!!!」

カシムと名乗ったハンターは足取り軽く
砦へ向かった。

 ・

「あいつはこの辺りじゃ有名な詐欺師だ」

「・・・・・・そうなのか!?」

素か。素でか。

「有名すぎて、雇い入れる前に難癖つけて相場の
半値に値切ってから、母の薬代の文句を聞いて
8割で雇うというのがこの辺の常識だ」

ようはアホである。
成功してない時点で詐欺師ですらない。

「で、お前はそのアホにいくら渡した」

「500G・・・」

「小遣い全部か!?」

ちなみに1Gでパンが1個買える位である。

日雇い1週間分くらいか。

「屈辱だ!」

まごう事無くな。

・・・全く・・・

だんだん解ってきた。

コイツは人を陥れるのは上手いし、
それを楽しむ類の女なのは間違いない。

しかし同時に本人も隙だらけで阿呆だ。

「落ち着け。なんとかしてやる」

振り回していた腕が止まる。

「どうするのだ?」

「というか、もう種は蒔いた。ノルン!!!」
「は」

木陰から出てくる。

「『流布』はできるな?」
「勿論です」

 ・

「なぁにぃ!?カシムがうらぎったぁ!??」
「へい、で、今は南の砦でこそこそと
何かやってるようですぜ」

ガルダ本拠地である古城ではすでに
カシムの裏切りが露見していた。
 
 ・

日が暮れる前に砦は包囲された。

「な、なんでこんなことに・・・・・・」

軍事物資は質が良い物も多く、ちょろまかせば
さらに一儲け・・・と思って入った途端であった。

しかも裏切りまでばれていた。

冗談抜きで殺される!!!!!!

 ・

「クク。ただで囮が雇えるとはな。
戦場というのは面白い」

「左様ですな」

フレイも追いついていた。

「私の500G・・・」
「わかっている」
「焼き菓子も落としたのだ」
「いくらでも作ってやる」

このアホ丸出しの会話をシーダ姫でやるから
始末におえない。

 ・

結果、砦の攻防は、
カシムをいたぶろうとしていた背後を突かれて海賊どもの大敗。

ガルダはもう本拠地にいる者たちだけとなったようであった。

カシムは重傷を負って腕を切り落とすハメになる。

むなぐらを掴んでアイルが脅す。

「あまり俺を舐めるな。逃げられると思うなよ。
俺がタリス王を人質に取られてどうしたかくらい知ってるだろう。

とてもとても健康な母親共々、
飲み続けなければ死ぬ薬で働かされるのも嫌だろう?

わかったら後詰めの部隊で寝ていろ。

ああ、あと1000Gを返してもらおう」

なぜ倍!?と思ったのが顔に出たのだろう。

ニヤリと笑われ、

「手間賃と利子だ。安いものだろう?
なんなら貴様を『助けに』出向いた騎士団の
運用費も計算に入れてやろうか?」

カシムは気絶した。
滂沱しながら、呟く。

「母さん・・・・・ごめんよ・・・・」

ハンターとしてのカシムの最後の言葉だった。

 ・

閑話休題。

せめて「いくらでも」とは言うのではなかった。
その夜はアイルはずっとスイーツ作りだった。

すでに7枚目。

今日の菓子は例の中ほどの小島に生えていた
野苺とイチジクのタルトだ。

その匂いにつられてきたノルンにも分けた。

疲れきっていたアイルは、女弓兵と輸送隊の
給仕係にも配る約束に至った経緯がどうしても
思い出せなかった。

 続く

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2011年07月18日

荒吐 ~アラハバキ~

Q・同じ作者でも好きな作品と嫌いな作品はある。

→YES
 NO

はい。
描くもの全部好きな先生もいますけど、
「この作品だけ好き」とか、「この作品だけ嫌い」とか・・・
わりとあります。

さて、今回はそんな作品。
六道神士先生の荒吐 ~アラハバキ~
荒吐

エクセル・サーガがアニメ化してますが、
どうにも好きになれません。エクセル。
完結したら目を通そうとは思いますが・・・

でもコレは面白かった!
なかなかエグいシーンもありますが、その分リアルかも。

力を「すんげえ修行したから」とか「トラウマ乗り越えたから」とか
そんな理由でホイホイ手にして、
「オレはもう間違えねえ!」って決意しただけで
ホントに間違わずにキメちゃう少年系バトルモノとは違う、
「力を持つ」怖さや、「力の代償」など、
かなり生々しく描いています。

この人の作品は、戦隊、ヒーロー、おとぎ話など、
「お決まりのキレイな」モノに対するアンチテーゼ的な部分が
いくらかありまして、そこを好きになれる人には是非な作品です。

でも全作品がお気に入りとして語れるかというと、無理!

厭世感や、やるせない諦念、人間の欲望のどうしようもなさ、
「それをやっちゃあお終いでしょ」ってことを平気でやる人なので、
フツーのマンガにあきたらどうぞ。という感じ。

根強いファンがつくタイプかと。

「デスレス」は楽しみ。

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