シリーズ

【師匠シリーズ】 ドッペルゲンガー 【後編】


京介さんがもう一人の自分に気づいたのは、小学生のときだった。

はじめは、ふとした拍子に視線の端に映る人間の顔を見て、オバケだと思ったという。
視界のいちばん隅。そこを意識して見ようとしても見えない。
なにかいると思ったのは、あるいはもっと昔からだったかも知れない。
でも、視線の端の白っぽいそれが人の顔だとわかり、オバケだと思ったすぐあと、

「あ、自分の顔だ」と気づいてしまった。

それは無表情だった。立体感もなかった。そこにいるような存在感もなかった。
顔をそちらに向けると、自然とそれも視線に合わせて移動した。まるで逃げるように。
いつもいるわけではなかった。
けれど疲れたときや、なにか不安を抱えているときにはよく見えた。
怖くはなかった。

中学生のとき、ドッペルゲンガーという名前を知った。

その本には、ドッペルゲンガーを見た人は死ぬと書いてあった。
そんなのは嘘っぱちだと思った。
そのころには、それは顔だけではなかった。トルソーのように上半身まで見えた。
ただ、その日着ている自分の服と同じではなかったように思う。
どうしてそんなものが見えるのか不思議に思ったけれど、だれかに話そうとは思わなかった。
自分と、自分だけの秘密。

高校生のとき、自己像幻視という病気を知った。精神の病気らしい。

嘘っぱちだとは思わなかった。
ドッペルゲンガーにしても、自己像幻視にしても、結局自分にしか見えないなら同じことだ。
そういう病気だとしても同じことなのだった。

そのころには全身が見えていた。
視線の隅にひっそりと立つ自分。
表情はなく、固まっているように動かない。

そして、それがいる場所をだれか他の人が通ると、
まるでホログラムのように透過してしまい、揺らぎもなく、またそのままそこに立っているのだった。
全身が見えるようになると、それからは特に変化はないようだった。
相変わらず疲れたときや、精神的にピンチのときにはよく見えた。
だからといってどうとも思わない。ただそういうものなのだと思うだけだった。

それがである。
最近になって変化があらわれた。
ある日を境に、それの『そこにいる感じ』が強くなった。
ともすればモノクロにも見えたそれが、急に鮮やかな色を持つようになった。そしてその立体感も増した。
だれかがそこを通ると、『あ。ぶつかる』と一瞬思ってしまうほどだった。
ただ、やはり他の人には触れないし、見えないのであった。

ところが、ある日部屋でジーンズを履こうとしたとき、それが動いた。
ジーンズを履こうとする仕草ではなく、意味不明の動きではあったが、確かにそれの手が動いていた。
それから、それはしばしば動作を見せるようになった。
けっして自分自身と同じ動きをするわけではないが、
なにかこう、もう一人の自分として完全なものなろうとしているような、そんな意思のようなものを感じて気味が悪くなった。
相変わらず無表情で、自分にしか認識できなくて、自分ではあるけれど少し若いようにも見えるそれが、
はじめて怖くなったという。

京介さんの独白を聞き終えて、俺はなんとも言えない追い詰められたような気分になっていた。
逃げてきた先が行き止まりだったような。そんな気分。

「ある日を境にって、いつですか」

なにげなく聞いたつもりだった。

「あの日だ」

「あの日っていつですか」

京介さんはグーで俺の頭を殴り、「またそれを言わせるのかこいつ」と言った。
俺はそれですべてを理解し、「すみません」と言ったあとガクガクと震えた。

「どう考えても、無関係じゃないな」
おまえのも含めて。

京介さんは最後のトーストを口に放り込み、コーヒーで流し込んだ。
俺はそのときには、京介さんの部屋へタリスマンを返しに行った時の違和感の正体に気がついてしまっていた。

「部屋の四隅にあった置物はどうしたんです」

あの日、結界だと言った4つの鉄製の物体。
それが1週間前には部屋の中に見当たらなかった。

「壊れた」

その一言で、俺の蚤の心臓はどうにかなりそうだった。

「それって、」

しゃくり上げるように俺が口走ろうとしたその言葉を、京介さんが手で無理やり塞いだ。

「こんなところでその名前を出すな」

俺は震えながら頷く。

「ドッペルゲンガーっていうのは、大きくわけて2種類ある。自分にしか見えないものと、他人にも見えるもの。前者は精神疾患によるものがほとんどだ。あるいは一過性の幻視か。そして後者はただの似てる人物か、あるいは生霊のような超常現象か。どちらにしても、異常な現象にしては合理的な逃げ道がある。
私が前者でおまえが後者だが、それが同じ出来事に触れた二人に現れたというのは、
しかし、偶然にしては出来すぎだ」


つまり、あの人なわけですね。


俺は頭の中でさえ、その名前を想起しないように意識を上手く散らした。

「甘く見ていたわけじゃないんだが、まずいなこれは」

京介さんは眉間に皺を寄せて、テーブルを指でトントンと叩いた。
俺は生きた心地もせず、ようやくぼそりと呟いた。

「こんなことならタリスマン、返すんじゃなかった」

その瞬間、京介さんが俺の胸倉を掴んだ。

「今なんて言った」

「だ、だから、あの魔除けのなんとかいうタリスマンを返したのは失敗だった、って言ったんですよ。
 また貸してくれませんか」

なぜか京介さんは、珍しく険しい形相で強く言った。

「なに言ってるんだ、おまえはタリスマンを返してないぞ」

俺はなにを言われているのかわからず、うろたえながら答える。

「先週返しにいったじゃないですか、ほら風呂入るから帰れって言われた日ですよ」

「まだ持ってろって言ったろ?!あれをどうしたんだ」

「だから返したじゃないですか。だから今はないですよ」

京介さんは俺の胸元を触って確かめた。

「どこで無くした」

「返しましたって。受け取ったじゃないですか」

「どうしたっていうんだ。おまえは返してない」

会話が噛み合わなかった。
俺は返したと言い、京介さんは返してないと言う。
嘘なんか言ってない。俺の記憶では間違いなく京介さんにタリスマンを返している。
そして少なくとも、いま俺が魔除けの類をなにも持っていないのは確かだった。

京介さんはいきなり自分のシャツの胸元に手を突っ込むと、三角形が絡み合った図案のペンダントを取り出した。

「これを持っていろ」

それはたしか、京介さん以外の人が触ると力が失せるとか言っていたものではなかったか。

「よく見ろ。あれは六芒星で、これは五芒星」

そう言われればそうだ。

「とりあえずはこれで、もう一人のおまえにどうこうされることはないだろう。
 だがなにが起こるかわからない。しばらく慎重に行動しろ。なにかあったら私か……」
そこで京介さんは言葉を切り、真剣な表情で続けた。

「あの変態に連絡しろ」

あの変態とは、俺のオカルト道の師匠のことだ。京介さんは師匠とやたら反目している。はずだった。
「まったく」と言って、京介さんは喫茶店の椅子に深く沈んだ。
そして「ドッペルゲンガーは」と繋いだ。

「死期が近づいた人間の前に現れるっていうのはさ、嘘っぱちだと思ってた。
 ずっと前から見えてたのに、今まで生きてたわけだし。でも、違うのかも知れない。
 ただの幻が、いまドッペルゲンガーになろうとしているのかも知れない」

俺は死にたくない。まだ彼女もいない。●貞のまま死ぬなんて生き物として失格な気がする。

「その、もう一人の京介さんは今もいますか」

うつむき加減にそう聞くと、京介さんは頷いて長い指でスーッと側方の一点を指し示した。
そこにはなにも見えなかった。

京介さんの指先は店内の一つの席をはっきり指していたのに、そこにはだれも座っていなかった。
店内はランチタイムで混み始め、ほとんどの席が埋まってしまっているというのに、

そこにはだれも座っていないのだった。

【師匠シリーズ】 ドッペルゲンガー 【前編】


大学1回生の秋。

オカルト系ネット仲間の京介さんの部屋に、借りていた魔除けのタリスマンを返しに行ったことがあった。
京介さんは女性で、俺より少し年上のフリーターだった。
黒魔術などが好きな人だったが、少しも陰鬱なところがなく、
無愛想な面もあったが、その清潔感のある性格は一緒にいて気持ちが良かった。

その日は、買ったばかりの愛車をガードレールに引っ掛けた、という間抜けぶりを冷やかしたりしていたのだが、
これから風呂に入ってバイトに行くから、という理由であっさりと追い払われた。
このところオフ会でも会わないし、なんだか寂しかったが仕方がない。

目の前でドアを閉められる時、何度かお邪魔したこともある部屋の中にわずかな違和感を感じたのは、
気のせいではなかったと思う。
なにか忘れているような。そんなぼんやりとした不安があった。



それから1週間はなにごともなかった。
自堕落な生活ですっかり曜日の感覚がなくなっていた俺が、
めずらしく朝イチから大学の授業に出ようと思い、家を出た日のこと。
講義棟の前に鈴なりのはずの自転車が、数えるほどしかなかったあたりから予感はされていたことだが、
掲示板の前で角南さんという友達に会い、「今日は祝日だぞ」とバカにされた。
「だったらそっちもなんで来てるんだよ」と突っ込むと笑っていたが、
急に耳に顔を寄せて、「昨日歩いてたのだれ?やるじゃん」と囁いてきた。

なんのことかわからなかったので、「どこで?」と言ってみると、「うわーこいつ」と肘打ちを喰らい、
意味のわからないまま彼女は去っていった。
俺は首を捻りながら講義棟を出た。

昨日はたしか駅の地下街を歩いたはずだ。
角南さんはそのあたりの店でバイトしているはずなので、そこで見られたようだ。

しかし、昨日俺は一人だった。だれかと歩いていたはずなんてない。
たまたま同じ方向に進んでいた人を連れだと思われたのか。
なぜか急に背筋が寒くなってきて振り返ったが、閑散としたキャンパスが広がっているだけだった。

俺は自転車をとばして、逃げるようにアパートへ引き返した。
そのあいだ後ろからだれかがついて来ているような気がして、ときどき振り向きながらペダルをこいだ。
なぜかだれともすれ違わなかった。
俺のアパートは学校から近いとはいえ、その途中に通行人の一人もいないなんてなんだか薄気味が悪い。

駐輪場に自転車を止め、階段を登り、アパートの部屋のドアを開ける。
学生向けのたいして広くもない部屋は、玄関からリビングの奥まで見通せるつくりになっていた。
はずだった。のに。
キッチンに俺がいた。
俺は無表情でこちらに目も向けずトイレのドアを開けると、スッと中に消えた。
パタンとドアが閉まる。
現実感がない。
玄関で俺は靴も脱がず立ち尽くしていた。そして今見たものを反芻する。
鏡ではもちろんない。生きて動いている俺がトイレのドアを開けて中に入った。という、それだけのことだ。


それを俺自身が見ているという、異常な事態でさえなければ。


怖い。

この怖さをわかってもらえるだろうか。
思わず時計を見た。まだ朝のうちだ。部屋の窓のカーテン越しに射す太陽の光が眩しいくらいだ。
だからこそこの逃げようのない圧迫感があるのだろう。
夜の怖さは明かりをつけることで。あるいは、夜が明けることで克服されるかも知れない。
しかし、朝の部屋が怖ければ、どこに救いがあるというのか。

部屋にはなんの音もない。
トイレからもなんの気配も感じられない。
おそらく俺は10分くらい同じ格好で動けなかった。
そして、今のはなんだろう今のはなんだろうと、呪文のように頭の中で繰り返し続けた。
見なかったことにして、とりあえずコンビニでも行こうかとどれほど思ったか。
でも逃げないほうがいい。なぜかそう決めた。

たぶん、幻覚だからだ。

というか、幻覚じゃないと困る。
俺はオラァと大きな声を出すとズカズカと部屋の中へ進み、躊躇なくトイレのドアを開け放った。
開ける瞬間にもオラァとわけのわからない掛け声をあげた。
中にはだれもいなかった。
ほっとした、というよりオッシャアと思った。
念のためにトイレの中に入ろうとしたとき、視線の端で何かが動いた気がした。
閉めたはずの玄関のドアが開いていて、その隙間から俺の顔が覗いていた。

再び自転車を駆って休日の道を急ぐ。
今日は朝イチで大学の講義に出て、清清しい気持ちになっているはずだったのに、なんでこんな目にあっているのだろう。

俺はさっきまで自分の部屋のトイレに立てこもっていた。
中から鍵を掛けてノブをしっかり握っていた。俺が玄関から入ってきたらどうしよう。
オラァとかいう声が外から聞こえたら失神していたかも知れない。

どれほど中にいたのかわからないが、とにかく俺はついにトイレからビクビクと出てきて電話をした。
こういう時にはやたら頼りになるオカルト道の師匠にだ。

しかし出ない。携帯にもつながらない。

焦った俺は次に京介さんへ電話をした。
『はい』という声が聞こえたときは心底嬉しかった。
そして、つい1週間まえにも通った道を数倍の速度で飛ばした。

京介さんは、住んでいるマンションのそばにある喫茶店にいるということだった。
店のガラス越し、窓際の席にその姿を見つけたときには、俺は生まれたばかりの小動物のような気持ちになっていた。
ガランガランという喫茶店のドアの音に振り向いた京介さんが、「ヨオ」と手をあげる席に走って行き、
俺は今日あったことをとにかく捲くし立てた。


「ドッペルゲンガーだな」

あっさりと京介さんは言った。

「自分とそっくりな人間を見る現象だ。
 まあほとんどは勘違いのレベルだろうが、本物に会うと死期が近いとか言われるな」


ドッペルゲンガー。

もちろん聞いたことがある。そうか。そう言われればドッペルゲンガーじゃん。
不思議なもので、正体不明のモノでも名前を知っただけで奇妙な安心感が生まれる。
むしろそのために、人間は怪異に名前をつけるのではないだろうか。

「おまえのはどうだろうな。白昼夢でも見たんじゃないのか」

そうであってほしい。あんなものにうろちょろされたら心臓に悪すぎる。

「しかし気になるのは、その女友達が見たというおまえだ。
 おまえとドッペルゲンガーの二人を見たような感じでもない。
 話しぶりからすると、おまえと一緒に歩いていたのは女だな。本当に心あたりがないのか」

頷く。

「じゃあ、ドッペルガンガーがだれか女と歩いていたのか。おまえの知らないところで」

「今度聞いておきます。角南さんがどこで俺を見たのか」

俺は注文したオレンジジュースを飲みながらそう言った。
そう言いながら、京介さんの様子がいつもと違うのを訝しく思っていた。
あの飄々とした感じがない。
逼迫感とでもいうのか、声がうわずるような気配さえある。
『ドッペルゲンガーだな』と言ったその言葉からしてそうだった。

「どうしたんですか」

とうとう口にした。

京介さんは「うん?」と言って目を少し伏せた。
そして溜息をついて、「らしくないな」と話し始めた。

【師匠シリーズ】 四隅 【後編】


夢の中で異様に冷たい手に右肩をつかまれて悲鳴をあげたところで、次の日の朝だった。


京介さんだけが起きていてあくびをしている。

「昨日起ったことは、京介さんはわかってるんですか」

朝の挨拶も忘れてそう聞いた。

「あの程度の酒じゃ、素面も同然だ」

ズレた答えのようだが、どうやら『わかってる』と言いたいらしい。
俺はノートの切れ端にシャーペンで図を描いて考えた。


ACoCo    B京介

Dみかっち  C俺


そしてゲームが始まってから起ったことをすべて箇条書きにしていくと、ようやくわかって来た。
酒さえ抜けると難しい話じゃない。
これはミステリーのような大したものじゃないし、正しい解答も一つとは限らない。
俺がそう考えたというだけのことだ。でもちょっと想像してみて欲しい。あの闇の中で何がおこったのか。


1 時計
2 時計
3 時計
4 反時計
5 時計
6 時計
7 時計
8 時計
9 時計
10 時計
……


俺が回った方向だ。
そして3回目の時計回りで、俺はポケットに入った。

仮にAが最初のスタートだったとしたら、時計回りなら1回転目のポケットはD、
そして同じ方向が続く限り、2回転目のポケットはC、3回転目はB、と若くなっていく。
つまり同一方向なら、必ず誰でも4回転に一回はポケットが来るはずなのだ。
とすると、5回転目以降の時計回りの中で俺にポケットが来なかったのはやはりおかしい。
もう一度図に目を落とすと、3回転目で俺がポケットだったことから逆算するかぎり、
最初のスタートはBの京介さんで、時計回りということになる。

1回転目のポケット&2回転目のスタートはCoCoさんで、
2回転目のポケット&3回転目スタートはみかっちさん、そしてその次が俺だ。

俺は方向を変えて反時計回りに進み、4回転目のポケット&5回転目のスタートはみかっちさん。
そしてみかっちさんはまた回転を時計回りに戻したので、5回転目のポケットは……俺だ。

俺のはずなのに、ポケットには入らなかった。誰かがいたから。

だからそのまま時計回りに回転は続き、そのあと一度もポケットは来なかった。
どうして5回転目のポケットに人がいたのだろうか。

『いるはずのない5人目』という単語が頭をよぎる。

あの時みかっちさんだと思って遠慮がちに触った人影は、別のなにかだったのか。

「ローシュタインの回廊ともいう」

京介さんがふいに口を開いた。

「昨日やったあの遊びは、黒魔術では立派な降霊術の一種だ。
 アレンジは加えてあるけど、いるはずのない5人目を呼び出す儀式なんだ」

おいおい。降霊術って……

「でもまあ、そう簡単に降霊術なんか成功するものじゃない」

京介さんはあくびをかみ殺しながらそう言う。
その言葉と、昨日懐中電灯をつけたあとの妙に白けた雰囲気を思い出し、俺は一つの回答へ至った。

「みかっちさんが犯人なわけですね」

つまり、みかっちさんは5回転目のスタートをして時計回りにCoCoさんにタッチしたあと、
その場に留まらずに、スタート地点まで壁伝いにもどったのだ。
そこへ俺がやってきてタッチする。
みかっちさんはその後、二人分時計回りに移動してCoCoさんにタッチ。そしてまた一人分戻って俺を待つ。
これを繰り返すことで、みかっちさん以外の誰にもポケットがやってこない。
延々と時計回りが続いてしまうのだ。

「キャー!」という悲鳴でもあがらない限り。


せっかくのイタズラなのにいつまでも誰もおかしいことに気づかないので、自演をしたわけだ。
しかしCoCoさんも京介さんも昨日のあの感じでは、どうやらみかっちさんのイタズラには気がついていたようだ。
俺だけが気になって変な夢まで見てしまった。情けない。

朝飯どきになって、みかっちさんが目を覚ました後、
「ひどいですよ」と言うと、「えー、わたしそんなことしないって」と白を切った。
「このロッジに出るっていう、お化けが混ざったんじゃない?」
そんなことを笑いながら言うので、そういうことにしておいてあげた。



後日、CoCoさんの彼氏にこの出来事を話した。
俺のオカルト道の師匠でもある変人だ。

「で、そのあと京介さんが不思議なことを言うんですよ。
 5人目は現れたんじゃなくて、消えたのかも知れないって」

あのゲームを終えた時には4人しかいない。
4人で始めて5人に増えて、また4人にもどったのではなく、
最初から5人で始めて、終えた瞬間に4人になったのではないか、と言うのだ。

しかし、俺たちは言うまでもなく最初から4人だった。
なにをいまさらという感じだが、京介さんはこう言うのだ。


「よく聞くだろう、神隠しってやつには最初からいなかったことになるパターンがある」と。


つまり、消えてしまった人間に関する記憶が周囲の人間からも消えてしまい、
矛盾が無いよう過去が上手い具合に改竄されてしまうという、オカルト界では珍しくない逸話だ。

しかしいくらなんでも、5人目のメンバーがいたなんて現実味が無さ過ぎる。
その人が消えて、何事もなく生活できるなんてありえないと思う。

しかし師匠はその話を聞くと、感心したように唸った。

「あのオトコオンナがそう言ったのか。面白い発想だなあ。
 その山岳部の学生の逸話は、日本では四隅の怪とかお部屋様とかいう名前で古くから伝わる遊びで、
 いるはずのない5人目の存在を怖がろうという趣向だ。
 それが実は5人目を出現させるんじゃなく、5人目を消滅させる神隠しの儀式だったってわけか」

師匠は面白そうに頷いている。

「でも、過去の改竄なんていう現象があるとしても、
 初めから5人いたら、そもそも何も面白くないこんなゲームをしますかね」

「それがそうでもない。山岳部の学生は一晩中起きているためにやっただけで、むしろ5人で始める方が自然だ。
 それから、ローシュタインの回廊ってやつは、もともと5人で始めるんだ」

5人で始めて、途中で一人が誰にも気づかれないように抜ける。
抜けた時点で回転が止まるはずが、なぜか延々と続いてしまうという怪異だという。

「じゃあ自分たちも5人で始めたんですかね。それだと途中で一度逆回転したのはおかしいですよ」

5人目が消えたなんていうバカ話に真剣になったわけではない。
ただ師匠がなにか隠しているような顔をしていたからだ。

「それさえ、実際はなかったことを、5人目消滅の辻褄あわせのために作られた記憶だとしたら、
 ストーリー性がありすぎて不自然な感じがするし、なんでもアリもそこまでいくとちょっと引きますよ」

「ローシュタインの回廊を知ってたのは、追加ルールの言いだしっぺのオトコオンナだったね。
 じゃあ、実際の追加ルールはこうだったかも知れない
 『1.途中で一人抜けていい。2.誰もいない隅に来た人間が次のスタート走者となり、方向を選べる』とかね」

なんだかややこしい。
俺は深く考えるのをやめて、師匠を問いただした。

「で、なにがそんなに面白いんですか」

「面白いっていうか、うーん。
 最初からいなかったことになる神隠しってさ、完全に過去が改竄されるわけじゃないんだよね。
 例えば、誰のかわからない靴が残ってるとか、集合写真で一人分の空間が不自然に空いてるとか。
 そういうなにかを匂わせる傷が必ずある。
 逆に言うと、その傷がないと誰も何か起ってることに気づかない訳で、そもそも神隠しっていう怪談が成立しない」

なるほど、これはわかる。

「ところでさっきの話で、一箇所だけ違和感を感じた部分がある。
 キャンプ場にはレンタカーで行ったみたいだけど……
 4人で行ったなら、普通の車でよかったんじゃない?」
師匠はそう言った。


少なくとも、京介さんは4人乗りの車を持っている。
わざわざ借りたのは、師匠の推測の通り6人乗りのレンタカーだった。
確かにたかが1泊2日。ロッジに泊まったため、携帯テントなどキャンプ用品の荷物もほとんどない。
どうして6人乗りが必要だったのか。
どこの二つの席が空いていたのか思い出そうとするが、あやふやすぎて思い出せない。
どうして6人乗りで行ったんだっけ……

「これが傷ですか」

「どうだかなぁ。ただアイツが言ってたよ。かくれんぼをしてた時、勝負がついてないから粘ってたって。
 かくれんぼって、時間制限があるなら鬼と隠れる側の勝負で、時間無制限なら最後の一人になった人間の勝ちだよね。
 どうしてかくれんぼが終わらなかったのか。あいつは誰と勝負してたんだろう」

師匠のそんな言葉が頭の中をあやしく回る。
なんだか気分が悪くなって、逃げ帰るように俺は師匠の家を出た。

帰り際、俺の背中に「まあそんなことあるわけないよ」と師匠が軽く言った。
実際それはそうだろうと思うし、今でもあるわけがないと思っている。

ただその夜だけは、いたのかも知れない、いなくなったのかも知れない、
そして、友達だったのかも知れない5人目のために祈った。

【師匠シリーズ】 四隅 【前編】


大学1回生の初秋。

オカルト系のネット仲間と、『合宿』と銘打ってオフ会を開いた。
山間のキャンプ地で、『出る』という噂のロッジに泊まることにしたのである。
オフ会は普段からよくあったのだが、泊まりとなると女性が多いこともあり、
あまり変なメンバーを入れたくなかったので、ごく内輪の中心メンバーのみでの合宿となった。
参加者はリーダー格のCoCoさん、京介さん、みかっちさんの女性陣に、俺を含めた計4人。
言ってしまえば荷物持ち&力仕事専用の俺なわけだが、呼ばれたことは素直に嬉しかった。
日程は1泊2日。

レンタカーを借りて乗り込んだのだが、シーズンを外したおかげでキャンプ地はわりに空いていて、
うまい空気吸い放題、ノラ猫なで放題、やりたい放題だったはずだが、
みかっちさんが「かくれんぼをしよう」と言い出して、始めたはいいものの、CoCoさんが全然見つからずそのまま日が暮れた。
夕飯時になったので放っておいてカレーを作り始めたら、どこからともなく出てきたのだが、
俺はますますCoCoさんがわからなくなった。
ちなみに、俺以外は全員20代のはずだったが……



その夜のことである。

『出る』と噂のロッジも、酒が入るとただの宴の会場となった。
カレーを食べ終わったあたりから急に天気が崩れ、思いもかけず強い雨に閉じ込められてしまい、
夜のロッジは小さな照明が揺れる中、ゴーゴーという不気味な風雨の音に包まれている、
という素晴らしいオカルト的環境であったにも関わらず、酒の魔力はそれを上回っていた。
さんざん芸をやらされ疲れ果てた俺が壁際にへたり込んだ時、前触れもなく照明が消えた。

やたらゲラゲラ笑っていたみかっちさんも口を閉じ、一瞬沈黙がロッジに降りた。
「停電だぁ」と誰かが呟いてまた黙る。屋根を叩く雨と風の音が大きくなった。
照明の消えた室内は真っ暗になり、ヘタレの俺は急に怖くなった。

「これは、アレ、やるしかないだろう」と京介さんの声が聞こえた。

「アレって、なんですか」

「大学の山岳部の4人が遭難して、山小屋で一晩をすごす話。かな」
CoCoさんが答えた。

暗闇のなか体を温め眠気をさますために、
4人の学生が部屋の四隅にそれぞれ立ち、時計回りに最初の一人が壁際を歩き始める。
次の隅の人に触ると、触られた人が次の隅へ歩いていってそこの人に触る。
これを一晩中繰り返して、山小屋の中をぐるぐる歩き続けたというのだが、
実は4人目が隅へ進むとそこには誰もいないはずなので、そこで止まってしまうはずなのだ。
いるはずのない5人目がそこにいない限り……

という話をCoCoさんは淡々と語った。
どこかで聞いたことがある。子供だましのような話だ。
そんなものノリでやっても絶対になにも起きない。しらけるだけだ。

そう思っていると、京介さんが「ルールを二つ付け加えるんだ」と言い出した。

1.スタート走者は、時計回り反時計回りどちらでも選べる。
2.誰もいない隅に来た人間が、次のスタート走者になる。

次のスタート走者って、それだと5人目とかいう問題じゃなく普通に終わらないだろ。
そう思ったのだが、なんだか面白そうなのでやりますと答えた。

「じゃあ、これ。誰がスタートかわかんない方が面白いでしょ。あたり引いた人がスタートね」

CoCoさんに渡されたレモン型のガムを持って、俺は壁を這うように部屋の隅へ向かった。

「みんなカドについた?じゃあガムをおもっきし噛む」

部屋の対角線あたりからCoCoさんの声が聞こえ、言われたとおりにするとほのかな酸味が口に広がる。
ハズレだった。アタリは吐きたくなるくらい酸っぱいはずだ。
京介さんがどこの隅へ向かったか気配で感じていた俺は、全員の位置を把握できていた。


CoCo    京介


みかっち  俺


こんな感じのはずだ。

誰がスタート者か、そしてどっちから来るのかわからないところがゾクゾクする。
つまり自分が『誰もいないはずの隅』に向かっていても、それがわからないのだ。
角にもたれかかるように立っていると、バタバタという風の音を体で感じる。
いつくるかいつくるかと身構えていると、いきなり右肩を掴まれた。

右から来たということは京介さんだ。

心臓をバクバク言わせながらも声一つあげずに、俺は次の隅へと壁伝いに進んだ。
時計回りということになる。
自然と小さな歩幅で歩いたが、暗闇の中では距離感がはっきりせず、妙に次の隅が遠い気がした。
ちょっと怖くなって来たときに、ようやく誰かの肩とおぼしきものに手が触れた。みかっちさんのはずだ。
一瞬ビクっとしたあと、人の気配が遠ざかって行く。

俺はその隅に立ち止まると、また角にもたれか掛かった。壁はほんのりと暖かい。
そうだろう。誰だってこんな何も見えない中で、なんにも触らずには立っていられない。

風の音を聞いていると、またいきなり右肩を強く掴まれた。京介さんだ。わざとやっているとしか思えない。

俺は闇の向こうの人物を睨みながら、また時計回りに静々と進む。
さっきのリプレイのように誰かの肩に触れ、そして誰かは去っていった。
その角で待つ俺は、こんどはビビらないぞと踏ん張っていたが、やはり右から来た誰かに右肩を掴まれビクリとするのだった。

そして、『俺が次のスタート走者になったら方向を変えてやる』と密かに誓いながら進むことしばし。
誰かの肩ではなく垂直に立つ壁に手が触れた。
一瞬声をあげそうになった。
ポケットだった。
誰もいない隅を、なぜかその時の俺は頭の中でそう呼んだ。たぶんエア・ポケットからの連想だと思う。
ポケットについた俺は、念願の次のスタート権を得たわけだ。
今4人は四隅のそれぞれにたたずんでいることになる。
俺は当然のように反時計回りに進み始めた。

ようやく京介さんを触れる!
いや、誤解しないで欲しい。なにも女性としての京介さんを触れる喜びに浸っているのではない。
ビビらされた相手へのリベンジの機会に燃えているだけだ。
ただこの闇夜のこと、変なところを掴んでしまう危険性は確かにある。
だがそれは仕方のない事故ではないだろうか。
俺は出来る限り足音を殺して右方向へ歩いた。
そしてすでに把握した距離感で、ここしかないという位置に左手を捻りこんだ。

次の瞬間、異常な硬さが指先を襲った。指をさすりながらゾクッとする。

壁?ということはポケット?そんな。俺からスタートしたのに……
呆然とする俺の左肩を何者かが強く掴んだ。京介さんだ。
俺は当然、壁に接している人影を想像して左手を出したのに。なんて人だ。
暗闇の中、壁に寄り添わずに立っていたなんて。
あるいは罠だったか。
人の気配が壁伝いに去っていく。
悔しさがこみ上げて、残された俺は次はどういくべきか真剣に思案した。

そしてしばらくしてまた右肩を掴まれたとき、恥ずかしながら「ウヒ」という声が出た。
くそ!京介さんだ。また誰か逆回転にしやがったな。
こんどこそ悲しい事故を起こすつもりだったのに。
頭の中で毒づきながら時計回りに次の隅へ向かう。そしてみかっちさん(たぶん)には遠慮がちに触った。

次の回転でも右からだった。その次も。その次も。
俺はいつまでたっても京介さんを触れる反時計回りにならないことにイライラしながら、
はやくポケット来いポケット来いと念じていた。
次ポケットが来たら当然反時計回りにスタートだ。
俺はそれだけを考えながら回り続けた。

何回転しただろうか、闇の中で気配だけが蠢く不思議なゲームが急に終わりを告げた。

「キャー!」という悲鳴に背筋が凍る。

みかっちさんの声だ。

ドタバタという音がして、懐中電灯の明かりがついた。
京介さんが天井に向けて懐中電灯を置くと、部屋は一気に明るくなった。
みかっちさんは部屋の隅にうずくまって頭を抱えている。

CoCoさんが「どうしたの?」と近寄っていくと、

「だって、おかしいじゃない!どうして誰もいないトコが来ないのよ!」

それは俺も思う。ポケットが来さえすれば京介さんを……まて。なにかおかしい。
アルコールで回転の遅くなっている頭を叩く。
回転が止まらないのは変じゃない。5人目がいなくても、ポケットに入った人が勝手に再スタートするからだ。
だから、ぐるぐるといつまでも部屋を回り続けることに違和感はないが……
えーと、最初の1人目がスタートして次の人に触り、4人目がポケットに入る。これを繰り返してるだけだよな。
えーと、だから……どうなるんだ?
こんがらがってきた。

「もう寝ようか」というCoCoさんの一言で、とりあえずこのゲームはお流れになった。
京介さんは俺に向かって「残念だったな」と言い放ち、人差し指を左右に振る。
みかっちさんもあっさりと復活して、「まあいいか」なんて言っている。
さすがオカルトフリークの集まり。
この程度のことは気にしないのか。むしろフリークだからこそ気にしろよ。
俺は気になってなかなか眠れなかった。

【師匠シリーズ】 鉄塔


師匠が変なことを言うので、おもわず聞き返した。

「だから鉄塔だって」



大学1回生の秋ごろだったと思う。

当時の俺は、サークルの先輩でもあるオカルト道の師匠に、オカルトのイロハを教わっていた。
ベタな話もあれば、中には師匠以外からはあまり聞いたことがないようなものも含まれている。
その時も『テットー』という単語の意味が一瞬分からず、二度聞きをしてしまったのだった。

「鉄塔。てっ・と・う。鉄の塔。アイアン……なんだ、ピラァ? 
 とにかく見たことないかな。夜中見上げてると、けっこういるよ」

師匠が言うには、郊外の鉄塔に夜行くと、人間の霊がのぼっている姿を見ることが出来るという。
どうして幽霊は鉄塔にのぼるのか。
そんな疑問のまえに、幽霊が鉄塔にのぼるという前提が俺の中にはない。
脳内の怪談話データベースを検索しても、幽霊と鉄塔に関する話はなかったように思う。
師匠は「えー普通じゃん」と言って真顔でいる。
曰くのある場所だからではなく、鉄塔という記号的な部分に霊が集まるのだと言う。

近所に鉄塔はなかったかと思い返したが、子供のころ近所にあった鉄塔がまっさきに頭に浮かんだ。
夕方学校の帰りにそばを通った、高くそびえる鉄塔と送電線。
日が暮れるころにはその威容も不気味なシルエットになって、俺を見下ろしていた。
確かに夜の鉄塔には妙な怖さがある。

しかし、霊をそこで見たことはないと思う。

師匠の話を聞いてしまうとやたら気になってしまい、俺は近くの鉄塔を探して自転車を飛ばした。
いざどこにあるかとなると自信がなかったが、なんのことはない。鉄塔は遠くからでも丸分かりだった。
住宅街を抜けて川のそばにそびえ立つ姿を見つけると、近くに自転車を止め基部の金網にかきついた。
見上げてみると送電線がない。
ボロボロのプレートに『○×線-12』みたいなことが書いてあった。
おそらく移設工事かなにかで、送電ルートから外れてしまったのだろう。
錆が浮いた赤黒い塔は、怖いというより物寂しい感じがした。
というか、日がまだ落ちていなかった。

近所のコンビニや本屋で時間をつぶして、再び鉄塔へ戻った。
暗くなると俄然雰囲気が違う。人通りもない郊外の鉄塔は、見上げるとその大きさが増したような気さえする。
赤いはずの塔は今は黒い。
それも夜の暗灰色の雲の中にその形の穴が開いたような、吸い込まれそうな黒だった。
風が出てきたようで、立ち入り禁止の金網がカサカサと音を立て、
送電線のない鉄塔からは、その骨組みを吹き抜ける空気が奇妙なうなりをあげていた。

周囲に明かりがなく、目を凝らしてみても鉄塔にはなにも見えない。
オカルトは根気だ。
簡単には諦めない俺は、夜中3時まで座り込んで粘った。
『出る』という噂も逸話もない場所で、そもそも幽霊なんか見られるんだろうか、という疑念もあった。
骨組みに影が座っているようなイメージを投影し続けたが、
なにか見えた気がして目を擦ると、やっぱりそこにはなにもないのだった。
結局、見えないものを見ようとした緊張感から来る疲れで、夜明けも待たずに退散した。


翌日、さっそく報告すると、師匠は妙に嬉しそうな顔をする。

「え?あそこの鉄塔に行った?」

なぜか自分も行くと言いだした。

「だから、何も出ませんでしたよ」と言うと、「だからじゃないか」と変なことを呟いた。

よくわからないまま、昼ひなかに二人してあの鉄塔に行った。
昼間に見るとあの夜の不気味さは薄れて、ただの錆付いた老兵という風体だった。
すると師匠が顎をさすりながら、「ここは有名な心霊スポットだったんだ」と言った。
頭からガソリンをかぶって焼身自殺をした人がいたらしい。
夜中この鉄塔の前を通ると熱い熱いとすすり泣く声が聞こえる、という噂があったそうだ。

「あのあたりに黒い染みがあった」

金網越しに師匠が指差すその先には、今は染みらしきものは見えない。

「なにか感じますか」と師匠に問うも、首を横に振る。

「僕も見たことがあったんだ。自殺者の霊をここで」

そう言う師匠は、焦点の遠い目をしている。

「今はいない」
独り言のように呟く。

「そうか。どうして鉄塔にのぼるのか、わかった気がする」

そして、陽をあびて鈍く輝く鉄の塔を見上げるのだった。
俺にはわからなかった。聞いても「秘密」とはぐらかされた。

師匠が勝手に立て、勝手に答えに辿りついた命題は、それきり話題にのぼることはなかった。
けれど今では鉄塔を見るたび思う。
この世から消滅したがっている霊が、現世を離れるために、
『鉄塔』という空へ伸びる、シンボリックな建築物をのぼるのではないだろうか。
長い階段や高層ビルではだめなのだろう。

その先が人の世界に通じている限りは。
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