5〜6年ほど前だったか、地元のお遍路さんと高野山へ行ったときの事。80歳を軽く超えたおばあちゃんがお一人でお大師様参りへ。
高野口のドライブインでトイレ休憩の時、清掃中のトイレの前でなんとおばあちゃんがすべってひっくりかえってしまったではないか!
「いったぁ〜い。いたぁ〜い」
慌てて駆け寄ったが、どこかを強打したらしく、ただでさえシワシワのおばあちゃんの顔が、苦痛に耐えもっとシワシワに!(失礼っ。)こりゃいかんと、すぐに救急車を要請。本体はドライバーとガイドさんで高野山山頂へ。僕は念のためおばあちゃんと救急車で緊急病院へ!
「ピィ〜ポ〜、ピィ〜ポ〜」 大急ぎで町の病院へ。
と言いたいところだが、高野山の山道と、救急車が揺れると同時に負傷ヶ所がそうとう疼くのかおばあちゃんの雄叫びがこだまする。 救急隊員も大音響のサイレンを流しつつ、時速30少々の速度で救急病院へ急行。
相変わらず激痛に耐えるおばあちゃん。そんなおばあちゃんが口にしたひとこと。
「おだいっさん(お大師様)お参りに来たのにぃ・・・。おだいっさんに見放されたぁ〜(涙)」
ようやく、病院に到着。ドクターの緊急オペ! というか、単なる片の脱臼という事で、スポッ!と片をいれてもらったら、なんとおばあちゃんケロっと、一言
「やっぱり、おだいっさんやわ〜。なむだいしぃ〜〜へんじょーこんご〜〜ぅ」
あのおばあちゃんの笑顔は忘れない。不謹慎かと思うが、おもろかった。
そのあと、その日のうちに、おばあちゃんと仲良く二人で高野山山頂の宿坊へ、他のお遍路さんと合流。運ばれた病院から橋本駅までタクシー。そこから極楽橋駅までは南海電車で。極楽橋駅から高野山まではケーブルカーで。高野山山頂から宿坊までは山頂のバスで。
おばあちゃんも元気に精進料理に舌包み。
次の日も全員と同じようにお参りをして無事地元へ到着。最後におばあちゃんが僕に言った一言。
「添乗員さん、ありがとなぁ〜。添乗員さんとおだいっさんのおかげでええお参りができた。ほんで、乗りモンにもよ〜け乗れたぁ。観光バスに乗って、船に乗って、タクシーに乗って、電車に乗って、ケーブルカーにも乗って、おまけに救急車にも乗れたわぁ〜。ありがとなぁ〜。」
恐るべし、お大師様マジック!! これが四国霊場の魅力なのであ〜る!