宗会議員・北山 孝治
昨年に引き続き3件の議員立法をしました。

◎第一号宗務院規程中改正案
第十条第三号総務局総務部総務課の事務分掌中「宗制に関する事項」を削り「宗務役職員の勤務及び出張事務に関する事項の次に「宗制の発行に関する事項」を加える。
この改正案は宗会の運営の関する事項で、直接皆さま方に影響する改正案ではありませんので詳細な説明は省きます。
「宗制に関する事項」の「宗制」を日蓮宗に関わる法律と捉えるか、宗憲・宗制が記載されている『日蓮宗宗制』という本と捉えるかで毎回議事運営委員会が紛糾します。この解釈の違いで、宗会に提出された全ての制定案・改正案を総務委員会で審議するのか、宗会規程第57条の示す通りに、各部の所管に則って三委員会に配分して審議するのかで対立が生じてしまいます。
この条文での「宗制」の文言定義を明確にさせれば、このような不毛な紛糾を宗会ごとにする必要はなくなってしまいますから同心会の主張の通りに、この条文の「宗制」は本のことであると文言定義するための改正案でしたが、なぜか否決されてしまいました。

◎第二十六号住職担任教導選定規程中改正案
第十九条中「三年以内」を「六年以内」に改める。
この改正案は住職代務者に関わるものです。
現在、「住職担任教導選定規程」の第19条に「代務期間は三月とする。但し、特別の事由がある寺院に限りこれを三年以内とすることができる。」とあり、特別な事由を認められても寺院・教会の代務期間は最長3年となっています。
代務の理由は様々ですが、過疎地域寺院においては、檀信徒の減少により寺院が維持できずに住職不在となり、仕方なく住職代務者を置いている場合が大半です。中には一人の住職が数ケ寺の寺院の代務者とならなければならない場合もあります。
代務者の再任は可能ですから、3年ごとに承認を受ければ延長はできるのですが、問題はこの承認を受けるときに宗務院及び宗務所に納める手数料と法務局に変更の登記を行う費用です。過疎地域寺院の場合は、経済的な理由で寺院が維持できずに代務となっているケースがほとんどですから、これらの費用は大きな経済的負担となってしまっています。代務期間を3年から6年に延長すれば、その費用負担は半減されるわけですから、過疎地域寺院に対して、有用な改正となるはずです。
しかし、代務期間を長期にすれば寺院の私物化につながるとの理由で否決されました。「寺院の私物化」などという理由を持ち出すのならば、寺院の世襲は即刻やめるべきではないのでしょうか。
現在でも本山の代務は1年、優等寺院の代務は長くて2年しか認められていないのですから、規程を適正に運用すれば私物化どころか寺院存続のための救済手段になることは間違いありません。

◎第四十五号懲戒規程中改正案
第三十九条第一項の次に次の一項を加える。
「2 高度情報通信ネットワーク上において、本宗の教風に著しく反した文言、図画等を摘示し、本宗および本宗教師の信用を毀損した者又は加担した者は、喪位以下の懲戒に処する。」
平成27年に「呪殺祈祷僧団」を名乗る本宗僧侶達が、経済産業省前にて大曼荼羅の前に「殺」の文字を掲げて法要もどきを行い、その模様をインターネット上に載せたことは皆さまご存知のことと思います。本年1月にまたしても「呪殺祈祷僧団」のたすきをかけて同じ行為をし、その模様が今もインターネット上に掲載されています。どのような理由があろうとも、本宗の祈祷に呪殺の文字を掲げる行為は許されることではありません。
ご承知の通り、一旦インターネットに載せた文言、画像は瞬時に世界中に配信され、完全に削除することは不可能です。今やインターネットによる情報発信の影響力は計り知れず、国法においては、インターネット上の文言、画像等に対しての刑法の適用がすでになされています。
またこれは本宗僧侶ではないので対応が難しいのですが、荒行堂前やご廟所において本宗の権威を貶める行為をなし、その様子をインターネット上に掲載する事案も発生しています。
このまま放置したならば、今後同様のことは何度も起きます。現行の懲戒規程では、本宗教師が、僧侶としてあるまじき言説、行動をインターネット上に掲載したとしても、たとえ本宗の教義を否定したとしても、国法に抵触しない限り黙認せざるを得ません。
よって今後このような行為を抑止する意味あいを含めて、上記の改正案を提出したのですが、時期尚早との理由で否決されました。時期尚早どころかもう事件は起きているのです。一体誰が宗門の権威を護るのか、まさに「行政の不作為」の責任は大きいと言わざるをえません。
(つづく)