2007年01月20日

昭和14年(その4)

1.映画主題歌 キング篇

1−1 戦時下でも商魂たくましい映画界

14年のキングで目立つ活躍したのは、男性では林 伊佐緒、樋口静雄、女性では松島詩子、三門順子が続く。
岡 晴夫がデビユーしたのも、この年のことである。

全部で24曲のうち、大ヒットした主題歌はコロムビアのようには多くはない。
そのなかで、最大のヒット曲といわれているこの曲からはじめよう。
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☆「新興 愛人の誓い」(監督;田中重雄) 15/1月封切    現代劇

主題歌「出征兵士を送る歌・林 伊佐緒、樋口静雄、児玉好雄他」(生田大二郎・林伊佐緒)
○「わが大君に召されたる 生命栄えある朝ぼらけ・・・・・」  

歌は14年10月に発表された大日本雄弁会講談社募集当選歌で、陸軍省選定とある。
映画は、河津清三郎、逢初夢子、美鳩まりらが出演しているが、内容は判らない。

さて戦時中を過ごした人々にとっては、今この歌を耳にすると、辛い思い、懐かしい思い、嫌な思いなど、人それぞれの感慨があることだろうと思う。

それほど当時の国民の心に浸透した歌だが、発表された時は映画主題歌ではなかつた。
後に新興キネマが映画化してから、宣伝文句のなかに映画主題歌と入れられるようになっいる。
こうした例は、この頃の有名な愛国歌、国民歌では、あたりまえのように通用していた。

映画界の商魂を見せつけた、他の曲の例も挙げてみよう。

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☆「松竹 父よ貴方は強かった」(監督;原 研吉) 14/3月封切  時局もの

主題歌「父よ貴方は強かった・伊藤久男、二葉あき子他」(福田 節・明本京静)コロムビア
                                     14/2月
「朝日新聞入選歌」として発表されたこの曲も、松竹によって映画化された時に主題歌扱いになって広告に載せられるようになった。

脚本家が書いた即席のシナリオの作品ではあるが、上原 謙、佐分利 信、夏川大二郎、徳大寺 伸、川崎弘子、水戸光子、坪内美子という錚々たるメンバーが出演している。
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☆「松竹 征戦愛馬譜・暁に祈る」(監督;佐々木 康) 15/4月  現代軍事劇

主題歌「愛馬進軍歌・霧島 昇、松原 操」(久保井信夫詩・新城正一曲)コロムビア14/3月
                          
主題歌「暁に祈る・伊藤久男」(野村俊夫 詩・古関裕而 曲)コロムビア 15/6月

陸軍省選定・愛国歌である「愛馬進軍歌」は、「愛国行進曲」と同じようにレコード6社が同時発売しており、その時点では勿論「映画主題歌」ではなかった。

ところが翌15年に松竹が☆「征戦愛馬譜・暁に祈る」を製作すると、コロムビアでは伊藤久男の「暁に祈る」だけでなく、霧島・松原の「愛馬進軍歌」も主題歌として広告を出し始めている。
ヒットした曲を後から主題歌にするのは映画会社の常套手段だったが、この「愛馬進軍歌」のようにレコード会社自ら主題歌に追認するケースは珍らしい。                 ---------            -------------------------------

☆「新興 太平洋行進曲」(監督;深田修造/曽根千晴) 15/5月封切  現代海洋劇

主題歌「太平洋行進曲・藤原義江、四家文子」(横山正徳詩・布施 元曲)ビクター 14/5月
              
「海軍省選定 東日大毎新聞募集歌」として発表されたこの愛国歌も、発表後1年目に映画化されて主題歌の仲間入りをしている。 

映画では、宇佐美 淳、山路ふみ子、逢初夢子、らが出演していた。
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映画界の商魂のたくましさは、前年(昭和13年)でも次のようにあった。
愛国行進曲」や「露営の歌」(大毎東日新聞当選歌)それに「大陸行進曲」(大毎東日新聞当選歌)も、みな発表後映画化されて、映画宣伝のなかでは主題歌になっていた。
本ブログ(昭和13年その1)参照

こうなる、戦時中に大ヒットした国民歌、愛国歌は、殆ど映画化されて主題歌扱いになっているのかと勘ぐりたくなるほどである。
あの時代、「映画」と「レコード」というメデアが、これほどまでに密着して国策に沿い国民を引っ張っていったのかと、知れば知るほど映画界の商魂のたくましさには驚くばかりである。

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1−2 戦時下を忘れさせる甘い主題歌

さてキングの主題歌に戻って、ほのぼのと甘い気持ちを誘う曲を一つ挙げてみよう。
戦前に唄った林 伊佐雄の代表曲のひとつであり、今でも知ってる年輩者は多いことと思う。

☆「松竹 女性の戦ひ」(監督;佐々木 康) 14/2月封切   現代悲劇

主題歌「女性の戦い・林 伊佐緒」(佐藤惣之助 詩・細川潤一 曲)14/3月
○歌詩「春よ乙女よ乙女よ春よ 街の夕陽にほろほろと 胸の小鳩が啼いたとて 散るな散らすな白椿。」

歌詞もいいが、メロディーが軽くほのぼのとした感じで、私の好きな曲の一つになっている。

映画のほうは、菊池寛の『婦人倶楽部』連載原作の映画化である。

「東京の百貨店に勤めて、質素な生活を送っている田澤なほみ(川崎弘子)は、その美貌がゆえに映画会社重役の秋田子爵(上原謙)から女優になるようスカウトされた。  
しかし彼女にはその気がなくて断った。そのころ彼女の養父が亡くなり、死際に実の父親(斎藤達雄)も華族という身分の高い議員であることを聞かされる・・・・・」
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1−3 あの農村文学映画の主題歌も

小杉 勇が演じた貧農の父親の勘次、その娘おつぎを演じた風見章子といえば、戦前を代表する劇映画の「土」だか、その主題歌のほうはあまりヒットしなかった。

☆「日活 土」(監督;内田吐夢) 14/4月封切    農村現代劇

主題歌A「・樋口静雄」(佐藤惣之助 詩・大村能章 曲 )14/8月
○歌いだし「朝も早ようから鋤鍬とれば 土の虫から手足の重さ・・・・・」
     「夜のよなべにゃ血肉ダコが痛む 筑波颪よ何故寒い・・・・」
                      (都新聞 14/8月掲載)
主題歌B「おつぎ十七・三門順子」(佐藤惣之助 詩・大村能章 曲 )

映画では、妻を失った貧農勘次と娘おつぎが、年老いた舅と幼い息子をかかえて、痩せた土を耕し貧乏と戦うという生活記録を描いている。
キネマ旬報昭和14年度日本映画ベストテン第一位入選。

このように地味な文芸作品の映画の主題歌となると、どうしてもヒットしずらい要素があるようだ。                                   
映画主題歌は、やはり甘いメロドラマ映画との相性が最もいいし、レコードもヒットしやすいものらしい
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2 まとめ

キング篇の主題歌をとおして、映画界の商魂のたくましさを、ちょっとだけ取り上げてみた。

この映画界とレコード業界との持ちつ持たれつの関係は、戦後も昭和40年ごろまで続いたか、その後の映画の凋落から次第にうすれて、今では昔の物語になってしまった。

次回は「昭和14年 その5」として、ポリドール篇から話題を拾ってみたい。
                      (つづく)


oke1609 at 14:06│Comments(0)TrackBack(0)音楽 | 映画主題歌

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