狭山養生鍼灸院

福西式お灸・指圧blog

 お灸に関する江戸時代の風俗を示すものとして、人形浄瑠璃のお染久松物語をご紹介しています。前回に引続いて近松半二作『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』から『お染久松野崎村の段』を取り上げましょう。

 

 前回は、久松の父・久作に対し、親孝行として久作が背中をもみ、許嫁(いいなずけ)のおみつが久作の足にお灸をすえようとしているところでした。今回はいよいよ本番になるところです。

 

                    ◇      ◇  

 

 燃ゆる思ひは娘気の、細き線香にたつ煙、

「サア/\親子ぢゃとて遠慮はない。(もぐさ)痃癖も大づかみにやって呉れ」

「アイ/\きつうつかえて御座りますぞへ」

「さうであらう/\次手(ついで)七九をやってたも、オットこたえるぞ/\

「サアすえますぞえ」

「アツアツアツゝえらいぞえらいぞ、明日が日死なうと火葬はやめにして貰ひませう、丈夫に見えてももう古家、屋根もねだもこりゃ一つ時に割普請(わりぶしん)ぢゃアツ・・・・・」

 

     

                     暮しに生きるツボの名称

 

 右文中、①『痃癖』 はケンベキと読みます。この言葉は当時のいろいろな物語にたくさん出てきます。たとえば西鶴の『好色五人女』の中にもよく見かけます。

 

 これは現在の大阪地方ではケンビキと言われています。つまり、背中の上部で、肩甲骨と背骨の中間あたりを指します。久作は、親子であるからといって遠慮するな、艾も大づかみに、ケンビキをもむのも大づかみに、思いきってやってくれと言っているのです。

 

②ケンビキをもむついでに『七九』をもんでほしいと久作が言っています。

 

 『七九』とはシチクと読み、大阪地方ではいまも使われます。これは胃のツボで、背骨の両横、ケンビキよりも下方に当り、ちょうど胃の裏あたりを指します。これから先は私の独断になりますが、七九とは、胸椎(きょうつい)の7番から9番にかけてをいうものと思われます。実際に患者さんがいう場所と、胸椎の7番から9番にかけてとが一致するのです。

 

 古き大阪の言葉は、何百年も変っていません。


狭山養生鍼灸院 福西佐元
      [上記は地方紙に掲載されたものです]



 




   図のお灸器具(3000円)を用いて「熱くない、アトのつかない“八分灸”」のすえ方とツボの取り方をお教えします。肩や腰をはじめ全身に御自分で施灸できます。
 一度来院されるのが最善ですが、無理な方には電話またはLineの動画でお教えします。お気軽にご連絡ください。
      お灸器具jpg


                                     TEL  :   072-367-3792


 東海林太郎さんの歌で知られた“お染久松”の物語は、熟年の人にとっては懐かしいものです。そこに出てくるお灸についてお話をしましょう。

 

 大阪の商家、油屋の娘であるお染と丁稚の久松とが恋仲になりますが、身分の違いで恋は成就せず、結局心中してしまうという悲恋物語です。

 

 当時、つまり江戸時代前期の実話をもとに、多くの人がいわゆる“お染久松もの”を書いています。今回引用するのは、近松半二作の人間浄瑠璃『新版歌祭文(しんぱんうたさいもん)』から『お染久松野崎村の段』です。なお、句読点とフリガナは私の独断と偏見でつけました。

 

<出て来る久作「どうじゃ、鱠は出来たであらう、(さて)祝言の事婆が聞いてきつい(よろこび)、ぢやが齢はよるまいもの、さっきのやっさもっさで取上したか頭痛もする、いかう肩がつかへて来た。アゝ(だいだい)の数は争はれぬものぢやはいの」、「さようなら、そろそろ私が()んであげませうか」

「ソリャ久松(かたじ)けない、老いては子に随へぢや、孝行にかたみ恨みのない様に、おみつよ、三里をすえて呉れ」

「アイアイそんなら風の来ぬ様に」と、なにがな表へあたり眼、門の戸ぴっしやりさし艾、燃ゆる思ひは娘気の、細き線香に立つ煙、・・・・・・>

 

お灸のことは当時の常識

  

 久松の養父である久作が、久松とおみつとの結婚の儀を大変喜んでいる様子、および久松には肩をもんでもらい、おみつには『三里』に灸をすえてもらう様が描かれています。『三里』のツボは、すねの骨(𦙾骨)の外側にあり、膝の下端で押して最も痛む所に取ります。当時にあってはこんなことは誰でも知っている常識だったのです。

 

 また、おみつが風の来ぬようにと戸を閉めたと記されています。これもお灸をすえる時の常識だったのです。風が吹いてくると、もぐさの火がイコッてしまい、熱くなるからです。『さし(もぐさ)』というのは、普通にお灸をすえる時のもぐさをいいます。『さし』とは、ヒフにさし当てるとの意から出た接頭語です。

 

 なお、私の本『家庭でできるお灸療法』(日東書院)にはツボについて詳しく記しています。書店でお求め下さい。

狭山養生鍼灸院 福西佐元
      [上記は地方紙に掲載されたものです]



 




   図のお灸器具(3000円)を用いて「熱くない、アトのつかない“八分灸”」のすえ方とツボの取り方をお教えします。肩や腰をはじめ全身に御自分で施灸できます。
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身体強壮の灸として、昔から“三里”に灸をすえることが広く行なわれてきました。俳人・松尾芭蕉も『奥の細道』への出発に際し、三里に灸をすえたと記されています。


 

ところで、足の三里以外に手にも“三里”という重要なツボがあることをご存知ですか?両者は、正確なツボのとり方が難しい点で似ています。そこで『十四経絡発揮(じゆうしけいらくはつき)鍼灸甲乙経(しんきゆうこうおつきよう)といった古典記述一般てい簡便法説明しょう。

 

 ■足三里 ―― すねの骨(脛骨)の前縁を、鉛筆を横にして擦り上げてゆくと、骨 の出っぱり(脛骨粗面)に当って止まります。そこから外方へ1寸のところが『足三里』です。足三里は、消化器疾患・中風のツボとしても大切です。

 

 ■手三里 ―― このツボは、どの古典を読んでも『曲池(きよくち)というツボら手にあ記されています。曲池ん。(ひじ)と、スジす(肘窩紋)。スジ外側曲池す。曲池の2で、ようのあ手三里す。は、頭痛神経痛必須ツボす。一般家庭におい足三里同様手三里すえ愛用さい。

 

1寸は各人の指の幅

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 さて、以上の文中で1寸・2寸とあるのは、物指しで測った長さではなく、図のように患者の指の幅を基準とします。したがって、同じ1寸といっても、人により実際の寸法はまちまちです。

 

 これを骨度法といいます。尺度を絶対的なものとせず、相対的なものとしたところに、古代中国人の知恵がみられ、興味のあるところです。

 


狭山養生鍼灸院 福西佐元
      [上記は地方紙に掲載されたものです]



 




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