人形浄瑠璃の『新版歌(しんぱんうた)祭文(ざいもん)』から『お染久松野崎村の段』の話を続けましょう。

 

 久松が父・久作の背中をもみ、許嫁(いいなずけ)のおみつが足にお灸をすえている場面です。

◇    ◇

 「はてよいわいの、昼中にうっとうしい、ナウ久松々々、コリャ久松、よそ見ばかりして居ずと、しか/\と揉まぬかいの」

 「サアよそ見はせぬけれど、エエ覗くが悪い折が悪い/\悪い」と目顔の仕方、

 「ヤ悪いの覗くのと足こそすえて居れ、どこもおみつは覗きはせぬ」

 「サアアノ悪いと言ひましたは、(たし)か今日はうんこう日(それ)に灸は悪い/\と云ふたので御在ります」・・・・

◇      ◇

 少し解説しましょう。

 お灸をすえるのですから久作の肌があらわになります。すえるのはまだ娘のおみつですから、久松の方が娘心に気を使っているのです。久作の方は、おみつはどこものぞいたりしないから、よそ見をせずにしっかり揉んでほしいと久松に頼んでいるのです。

 

針灸治療にも“暦”の良し悪し

 

 これに対し久松は、いろいろ悪いと言ったのは、今日は“うんこう日”だから灸に悪いと言ったまでだとごまかしています。ここで、『うんこう日』という語が出てきます。

 

 『うんこう日』とは、日月が運行することから、暦を指します。つまり、お灸をすえてよい日と悪い日が決まっていたのです。これは平安時代にあっては厳格なものでした。このことは、平安貴族の日記によく出てきます。

 

 平安時代の医書である『医心方』から『うんこう日』の記述を引用しましょう。

 

 <華他法云凡諸月朔晦節気上下弦望日、血忌、反支日皆不可針灸治久病滞疾。記在暦日>

 

 これは、月々のついたち、上弦・下弦の月のころ、満月の日、月経の日、反支の日などには、慢性の病気には針灸治療をしてはいけないと言っているのです。

 

 『うんこう日』については面白い話を別にしましょう。

 

 話は変わりますが、私の本『家庭でできるお灸療法』(日東書院)が書店にない場合にはご連絡ください。

狭山養生鍼灸院 福西佐元
      [上記は地方紙に掲載されたものです]



 




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